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第一章 一度目の異世界
03.目覚め
しおりを挟む気がつけば朝になっていた。
どうやらあの四次元空間をみて気絶したみたいだ。
いや、ただでさえ異世界転移という意味がわからない状況の上、あの四次元空間……キャパオーバーしない方が無理でしょ。
「てかそんな事よりも、熱っ!」
俺は慌てて起き上がり男の子の元へ向かった。
「すぅ……」
「よかった。熱も下がってるし呼吸も落ち着いてる」
どうやら薬が効いたみたいだ。俺は嬉しくて男の子の頭を撫でていると
「うーん……」
「あっ起こしちゃったね、ごめ……」
キラキラと輝く星を閉じ込めたような金色の瞳
「きれい……」
「っ!」
男の子は布団の中に隠れしまった。目が覚めたら見知らぬ人が居たら怖いよね。
「怖がらさせてごめんね。えっと……俺の名前は秋也っていうんだ」
「……シューヤ?」
「うん。君のお名前は?」
「……ユリウス」
「ユリウスくんか!いいお名前だね」
「……」
うーん……やっぱり警戒されてるか、どうしよう。
きゅるるるる~……
その時可愛らしいお腹の音が鳴った。
「くすっ、お腹空いたんだね。ちょっと待っててね」
「?」
恐る恐るこっちを見るユリウスくんに、俺はあのバックに手を入れて
「テッテレ~みかんゼリー(裏声)」
「……」
「……」
うん……なんか、ごめん。
「えっと……これ一緒に食べない?美味しいよ」
ユリウスくんは俺の顔をじっと見てからコクリと頷いた。
◇◆◇
「はい、あーん」
「あ~」
もぐもぐとゼリーを食べるユリウスくん。
「美味しい?」
食べるたびに耳と尻尾がパタパタと動いているから、どうやらお気に召したようだ。
さっきまでビクビクと警戒してたのが嘘みたいだ。
すごく美味しそうに食べてくれる。
そういえば瑠夏と冬真もこれくらいの歳の頃、こうやってよく食べさせてたな~懐かしい。
でもいきなり異世界転移されたから2人とも心配してるよな……早く帰らないと。でも異世界ものだと大体が帰れないことがほとんどだし……え?それってやばくないか?
一人でぐるぐると考えていると——
つんつん……
どうやらスプーンが止まっていたみたいでユリウスくんが腕を突いていた。
「あ~」
と、雛鳥のように口を開けて催促してくる。
「ぐふっ」
めっっっっちゃ可愛いな!!!
え?何なのこの可愛い生き物は!!キラキラしたお目々とピクピクと動く耳ともふもふの尻尾!可愛いを限界突破して、愛らしく全てが尊い……!
なにを隠そう俺は、動物がめっちゃ好きなんだよね。それにもし、異世界に行けたら獣人に会いたいって思ってたから、それが叶ってもうマジ最高!これに関しては素直に嬉しい。
さっきの不安は一瞬で飛んでいった。我ながら単純だけど思うが、もうその時はその時、なるようになる!俺は謎のポジティブ思考で目の前の耳と尻尾に癒された。
「もふもふ……最高」
「?」
あぁ~可愛い、他にも獣人は居るのかな?会ってみたいな~
と、考えている内にゼリーを完食したユリウスくんがこっちをジッと見ている。
「完食できたね。えらいえらい」
俺はユリウスくんの頭を撫でた。
どうやらユリウスくんは撫でられるのが好きみたいだ。尻尾がブンブンと振っている。
(あ、そうだった。ユリウスくんにこの世界の事とかいろいろ聞かないと、でもまずは)
「ユリウスくんはいま、いくつになのかな?ちなみに俺は19歳だよ」
「ご、5さい……」
思っていた年齢より幼かった。この歳でさすがに1人って事はないよね?
「そっか~、ねぇここには両親……お父さんとお母さんと住んでるのかな?」
「……」
あ、やばい。いきなり踏み込みすぎたかな?
「……かあさまとすんでた。とうさまは……しらない」
(住んでた。ってことは今は居ない?どうして?それにお父さんは知らないって事はシングルマザーなのかな?)
「そうなんだ。お母さんは今どこに居るのかな?」
「……」
ユリウスくんはしばらく何も言わずに下を向いていた。そして体が少し震え始め、あの金色の瞳に今にもこぼれ落ちそうな涙が溢れていた。
「っ……!」
俺はユリウスくんを抱きしめた。
「ひっく……うぅ、あ〝あ~」
ユリウスくんは我慢出来なくなり、俺の胸の中で泣き出した。
俺は背中を優しく撫でた。この子のお母さんは亡くなっている。それはいつなのかはわからないが、俺が現れるまではずっとひとりぼっちで、熱で苦しんでいたのだろう。その時この子はどんなに辛くて寂しくて怖かった事だろう……
「大丈夫、俺が側にいるよ」
俺の服を必死に掴むユリウスくん。
もう一人じゃないよ。大丈夫だよ。と安心させるために俺はずっとこの子の背中を撫で続けた。
これが、ユリウスとの出会いだった——
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秋也は最初、ユリウスのことを冬真より少し下、小学低学年くらいだと思ってました。
ちなみに秋也の身長は172㎝でこの時点のユリウスは100㎝くらいです。
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