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侮蔑

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 どうやら城壁の外では依然として交戦は継続されている様だ。

 その証左として断続的に同所へと響き渡る甲高い轟音が耳と出来る。

 ここまで届けられるそれは、無論ミコとて聞き及んでいた。

 とはいえそれはともかく、ミコは再度に渡り眼前へと視線を移す。

 当然ながらその瞳が捉えるのは一人の少女である。

 其処で先程から男達に求められているのは、ミコが苦手としているアイリスその人だ。

 ─八方美人

 彼女もとい、アイリスは、言われたから、そして自らが望まれているのを理解している。

 だからそう振る舞っている。

 ミコは今も男達より不躾な視線、そして狼藉を受けるアイリスを見て、そう思った。

 少なからず観察眼の程は高いミコだ。

 だが、アイリスの本質を今の段階で捉えるには至らなかった彼女である。

 ただ、側から見て勘違いをしても仕方が無いアイリスの振る舞いは、肉体の都合もあるせいのだ。

 まさかアイリスの側は、一方的にその様な不名誉極まる感慨を持たれているとは夢にも思わないしミコの心中など知る由もなかった。

 無論及ばないアイリスは肉体に主導権を奪われる形で男達からのセクハラ紛いの所業を受け続けている。

 とはいえこの場にフウガは今居合わせていないのだからそれも当然。

 彼は今自身の父へと挨拶をするべくして城壁の外にいる。

 フウガは当初アイリスを一人にするのを憚った。

 しかしその護衛対象である所のアイリス自身が豪鬼への顔見せを促した為、今の現状へと至る。

 故に今アイリスの身を守るのは、ミコを除いては同性である女達しか同所へと居合わせていない。

 けれど無論、彼女等とてアイリスばかりが男達の注目を浴びている現状に対しての不満はある。

 それ故、如何しても同性から反感を抱かれる運命にあるアイリスは、男等からの不躾な狼藉を受け入れざるを得ない。

 そんな末路を辿るアイリスはといえば、只々自身の肉体に翻弄されて男達からの横柄な態度を耐える限りとなる。

 そんな不憫極まる彼女を視界へと納めていたミコは不意に気を逸らす。

 そうして自らの意識へと捉えたのは他の配給の精を出す女達。

 その中でも見目においてはアイリスの次に美しい容姿を誇る者。

 即ち、ミコは再び自身の母を瞳で捉えたのであった。

「おいデメル、お前の娘がこっちをすげぇ怖い顔で睨んでるだが‥」

 だがそれに反応を示すのは自らの母の取り巻きの男である。

 彼は子供を目の当たりとして流石に決まりが悪いのか、ミコの母であるデメルの臀部へと回してた手を離す。

「行ってやれよ」

 そんな殊勝にも今更ながらに紳士を気取る彼の倣い同様、まるで続く様にして他の男も言う。

 どうやら彼等横柄な態度が目立つ柄の悪い男達とて、子供を前としては気が引ける様だ。

 現にそれの表れとして、不躾にもデメルの肩に回されていた腕も離れた。

 そして、一連の彼等の振る舞いを受けて漸く事に及び付いた彼女は言う。

「あらぁ、どうしたの?ミコちゃん。配給のお仕事、あの子に代わってもらったの?」

 本来であれば既に分かりきっている話。

 ミコは自らの母が、アイリスを前として、醜くもその美貌に僻みを抱いているのを知っている。

 先程にその光景を目の当たりとしていた。

 同性であるから、例え母が面に出さずとも理解出来る。

 聡明なミコはデメルの機微を悟っていた。

 それを知る由もない母である故、自らの娘に今し方疑問を呈したのだ。

「うん‥そうだよママ」

 ─キモチワルイ

 態度に露わとする事はない。

 けれど内心ではそう毒ずかずにはいられない。

 ミコにとっては、母の悪癖はそれ程までに度し難い。

 故に、その心境を物語る様にして僅かながらではあるが、若干の翳りを表情へと見せるミコだ。

 平素からその鉄仮面を揺らがせもしないミコを鑑みると、大変珍しい。

 ただそれは同時に、彼女自身の幼いが為の不安定な内心の露呈に他ならない。

 今に母と対面するミコは、デメルが雄に媚びるのを良しとしなかった。

 だが、そんなミコの内心などどこ吹く風とでも言わんばかりに後者は言う。

「そう、それなら歳も近いのだし、仲良くさせてもらったらいいのではないかしら?」

 無論悪意がある訳ではない。

 当然ミコの心中など知ってかしらずか口とされた言葉は、恐らくは偶然。

 鑑みるに頭の巡りにおいては娘にも劣る始末。

 そに手の職についているにも関わらずこの有様だ。

 どうやら思考の回転でも娘であるミコに一日の長がある様だ。

 だが、それがミコにとっての最良とは限らない。

 今し方に母より受けた言葉は、ミコへと相応の不快感を与えるに及んでいた。


「わかった‥」

 ところがミコはその提案に頷く他にない。

 何故ならばその理由は偏に、ミコが母と男達の関係の間に出る幕など皆無であるが為だ。

 仮にミコの肉体が成熟していたなら話は別だったやもしれない。

 けれど未だ未成熟なミコの身体は、男達にとっては見るに値しない代物だ

 故にそれを賢いミコは言われずとも自ずから既に理解していた。

 その為に彼女は、母と男達の逢瀬の邪魔をしない様自ら身を引いたのだ。

 流石はその人格はどうあれ、学業の面においてはトップクラスの成績をおさめているだけのことはある。

 大人同士の事情を汲み取るその手腕は、未だ幼いその年齢に反して目を見張るものがある。

 伊達に意識を高く持っていないミコだ。

 だが、そんな彼女の献身など捨て置いて、それを与えられた当の張本人たるデメルは言う。

「それじゃあお母さんも、お仕事があるから‥。確か‥アイリスちゃんだったかしら?彼女を手伝ってあげてね」

 そう言い置いた彼女はミコを残して男達の元へと戻る。

 ─穢らわしい

 至極一方的に自らの母から邪険にされたミコはそう思わずにはいられない。

 例え母といえど自らを煩わしく思うその浅ましい心中すら透けて見えた。

 曲がりなりにも母親。

 にも関わらず、薄情なその態度を目の当たりとしたミコの内心は察するに余りある。

 その心中はおそらく惨憺たるものだろう。

 そんなデメルの背を見送る限りのミコに向けられる視線の中には同情の色がある。

「おいおい、子供を放置していいのかよ?俺らは後でも構わないぜ」

「いいのよ。あの子はとても頭が良いから」

 そんなやり取りが交わされている。

 だが次の瞬間にはミコを残して母は行ってしまった。

 そして、先程の眼差しの出所は母の肉体を日々求める男から。

 これにはいつにも増してミコとて呆れるばかりである。

 今に自身が得た憐憫の原因が全て彼等であるとは一概にはいえない。

 それは重々承知しているミコだ。

 けれど少なからず関わっているのだからその同情はお門違いというものだろう。

 そうしてあまりの理不尽共に襲いくる屈辱に対して、世を儚んだミコは、気を逸らすべくして意識を切り替える。


 ─サイアク

 だが、意に反して再び視界へと納めてしまったのは、果たしてどの様な因果か、因縁の相手アイリスの姿である。

 そうして至極一方的に理不尽な理由で嫌っている相手を瞳へと捉えて内心では罵倒を浴びせかけるミコだ。

 無論その様な不条理極まる感情を抱かれているとは到底夢にも思わないアイリス。

 そんな彼女は今もその身に不躾な狼藉を受けている。

 まるで握り潰さんばかりに尻肉を揉みしだかれていたアイリスは、目を離した隙にいつの間にか乳房の先端を弄ばれていた。

 無自覚にも勃起したその硬い乳頭を、男達の逞しい五指で弾かれている。

 その様な塩梅に、一方的かつ何処か執拗に翻弄されるアイリスはといえば、やはり肉体に抗う事叶わず身を預ける他になかった。

 予期せず男達の魔の手に捕らえらえてしまったアイリスだ。

 そんなミコといえども思いがけない光景に瞠目する限り。

 まさかこの公衆の面前でその様なセクハラ許される筈もない。

 けれどそれは彼等とて同様に、ミコからの承諾など、鼻から必要としていないに相違ない。

 最早アイリスの豊満な肉体の虜とされている最中の彼等である。

 現在の男達の眼中には、目の前の極上の雌しか入らない。

 それ程までにアイリスという少女は何処か目を離し難い誘惑を兼ね備えていた。

 たっぷりと脂肪が乗った乳肉は、ゆさゆさと弾力的に揺れて男達の目を楽しませる。

 加えて現在も彼等の手中へと納められているアイリスの柔らかな尻たぶはむっちりと五指に押し潰されていた。

 果てには、淫らにも形を歪ませるその臀部の感触を与えられて男達の獣欲が殊更となる。

 その様な塩梅に陥っているアイリスであるがそれも束の間、拮抗していたセクハラも度を超える。

 その兆しは一人の男の手が、アイリスの大きな双丘へと手を伸ばし始めた時分から、より一層顕著に見られていたのであった。
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