あっぱれ!拙者、戦国配信者なり~どうも皆の衆、生きた化石系配信者である~

龍威ユウ

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第二章:生きた化石系配信者、爆誕!

第12話:初配信

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 その日の夜、雷志の顔はいつになく強張っていた。

 ついに配信者としてのデビューを果たした。

 今日はすなわち、記念すべき第一回目である。

「後少しで配信時間の開始か……」

 学院内にある配信部屋の一つ。

 広々としたスペースは、身体を動かすのに申し分なし。

 刻一刻と時間が迫ってくる。

「えっと、大丈夫だよなこれで……」

 そう呟く雷志の顔には不安の感情が色濃く滲んでいた。

 人生初の試みというだけあって、緊張しないわけがなかった。

 唯一の救いは――

「ライシさん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ!」

「ふむふむ。古代人が現代の技術を用いて配信をするというのは、なかなか興味深い光景だねぇ」

 頼もしい先輩がいる。この時点で雷志の心は幾分かの冷静さを取り戻していた。

 機械の操作についてはやはり不安ばかりがある。

 快く協力を申し出てくれたユウカ、とおまけのカナエには頭があがらない。

(こいつにはあえて言わなかったんだがなぁ……)

 どこで情報を聞きつけたのだろう。雷志は内心で小さく溜息を吐いた。

「いやはや、ユウカが教えてくれなかったらこんなに面白い場面立ち合えなかったよ」

 犯人が意外とすぐ近くにいたらしい。

「ユウカ……」と、雷志はジトっとした眼差しを向ける。

 ユウカとはたと目が合った。

 ぺろりと舌を出し「言っちゃいました」と、申し訳なさそうに謝った。

 こうなってしまったからには、もうどうしようもなかった。

 やるしかない。雷志は腹を括った。もう何度目かわからない時刻を再度確認する。

 配信までついに五分を切った――後少しで始まろうとしている。雷志は静かに深呼吸をした。

「しかし、意外だね」と、不意にカナエが口火を切る。

「君のことだから、てっきりダンジョン配信をするかと思っていたんだがねぇ」

「それはもちろん今後する予定だ。だが、主軸はこれでいこうと俺は考えている」

「どんな配信内容ですか?」と、ユウカが興味津々な様子で尋ねた。

「それは見てからのお楽しみだ」と、雷志は不敵に笑った。

 彼女たちとの会話を交えることで緊張はすっかり解消された。

 そうしてついに――

「始まりましたよライシさん!」

「よ、よし。いっちょやるかぁ!」

 と、雷志は思いっきり頬を叩いた。ぱしん、と小気味良くも鋭い音が鳴った。

 記念すべき初配信に、雷志は全力で挑む。

(基本は友好的に。かつ、線引きはしっかりとする。後は自由に、だったな)

 これまでのことを思い出しつつも、雷志は静かに口火を切った。

「あ、あー……これちゃんと音は入っているのか? と、とりあえずまずは……お初お目にかかる。生きた化石系という体で配信者をさせてもらうことになった、華御雷志はなみらいしという。以後お見知りおきを」

「ちょっと固いですよ」と、ユウカがもそりと呟いた。

(固い、か。俺としては普段と変わらない喋り方をしているだけなんだがなぁ)

 かといって、アイドルのような振る舞いはできそうにもない。

 試しに想像をしてみた――気持ち悪いだけだったので、即座に否定した。

 あれはあまりに自分らしくない。人目を汚すだけならば、しないほうが断然いい。

(さてと、俺への“こめんと”のほうはどうなってる?)

 雷志はちらり、とコメント欄を見やった。

 最初はなかなか視聴者はこないものだ。

 それが男となれば、尚更人目を集めるのは難しい。

 そのため、十人もくれば御の字だった。

 実際は、雷志が想像していたよりもずっと多かった。

(千人……初配信でそんなにもきてくれるものなのか?)

 雷志は内心で驚愕する傍らで、予想外の展開に狼狽した。


【あ、噂になってる男の人だ!】
【マジで配信者になってて草】
【この人かっこいいからちょっと楽しみ!】
【はじめまして! 初配信がんばってください!】


 暖かなコメントばかりに、雷志はひとまずほっと安堵の息を吐いた。

 配信とは、こうも緊張するものとは想像すらしていなかった。

 それを毎日、アイドルたちは人前でなにかと活動をしている。

 彼女たちはすごい。月並みな言葉ではあるが、雷志は純粋にそう思った。

「こ、今回は初配信ということだから気軽に雑談とやらからはじめて見ようと思う。確か、こういう時は質疑応答をするのが王道だったな。えっと、俺についてなにか聞きたいことはそもそもあるのか……?」

 次の瞬間、コメントが一気に殺到した。

 雷志は、それらから拾って返答するだけの力量はまだない。

 そこでユウカとカナエの出番である。

「そうそう、言い忘れていたが今回この配信には助っ人としてユウカ、そして……まぁ、カナエが手伝いにきてくれている」

「はいみなさんこんユウカです! 今日はアシスタントとして、サポートさせてもらいまーす」

「やぁやぁ――どうして私の扱いだけ雑なのか、その辺りの説明を求めるとしよう」

「お前はそもそも呼んでないんだがな……」

 二人が登場した途端、コメントの流れが一気に加速した。

 大瀑布よろしく、膨大なコメントが次々と流れていく。それだけで二人の人気度がうかがえた。

「じゃあ、早速ですけど無難なのからいきましょうか」

「あ、あぁ。ぜひ頼む」と、雷志はそっと姿勢を正した。

 ありふれた質問に、雷志は一つずつ丁寧に答えていく。

 中でも特に反響を呼んだのは――

「俺は、ここでいう古代人らしい」

 という、己の素性だった。

 もちろん、これを設定という風に捉える者は圧倒的に多かった。

 常人ならば、彼の言うことを真に受けようとはしない。ある意味では正しい反応だ。

 だが雷志がつらつらと身の内――歴史について語ればその評価もがらりと変わった。

 雷志は遥か昔の人間である。本日の配信をもって全国に知れ渡っただろう。

(まぁ俺としても、これぐらいの情報が露呈したところで問題はないからな)

 気が付けば、配信してからかれこれ二時間が経過していた。

 雑談だけならばもって一時間が限界だろう。そう思っていた雷志は、自身でも驚くほど長話をしていたことに驚いた。

 こんなにもたくさん喋ったのはおそらく、はじめての経験だろう。

 不意に「そういえば」と、雷志は雑談の途中で話題の方向性を転じた。

 肝心の配信の方針について、まだなにも伝えられていないことをハッと思い出した。

「俺の配信内容についてまだなにも話していなかったな。今から少しだけ、それについて話そうと思う」

 雷志は軽く咳払いをした。

「……ある男たちからこんなことを言われてな。どうすれば強くなれるのか、と。まずはそれについて答えたい――修練はもちろんだが、個人的な見解も踏まえて俺は、死といかに向き合うかだと思っている」

 戦国の世は、現代のように裕福だったとはお世辞にも言い難かった。

 明日はおろか、その日を生きることさえもどうかわからない。

 死が常に隣にいる状態は当然、心身に著しい悪影響を及ぼす。

 それが合戦場であればより一層色濃くなろう。

 人は、死をもっとも恐れる。その死から逃れるべく不老不死を求めた者も少なからずいた。

 結果は、あえて皆まで語る必要はなかろう。人は死から逃れられない。

 逃れられなければ、せめて遅らせればいい。そのために人は強くあろうとする。

「もちろん、強くなるためにはこれだけじゃあない。何のために剣を振るうのか、誰のためにその力はあるのか。そうした信念を最後まで貫き通すことが、俺は重要だと思う」

 信念なき刃で強くなれようはずもなし。

 仮に得たとしても、その強さははりぼてだ。真の強さには程遠い。

「さて、つまり俺がなにを言いたいかというと……俺が実際にやってきた鍛錬法をこの配信を通してやっていきたいと思う」

 男性の身体能力は明らかに、戦国の世と比較すればあまりに衰えている。

 大の男でも、その身体能力は当時に子どもと同等である。それを耳にした時、雷志は卒倒しそうになった。

 日ノ本の男児が、未来ではかくも弱くなってしまったのか。信じられない。信じたくはない。

 それでも、数少なくとも強くなりたいと渇望する者達がいることがわかった。

 その者たちのために、少しでも助力となるのであれば――雷志の配信は、こうして方針が定まった。

「剣の振るい方なんかも、なるだけわかりやすく伝えていくつもりだ。というわけで、俺の配信は“だんじよん”配信をはじめとし、こうした一緒に修練をするような内容にしていくので、よろしく頼む――では、またな」

 配信は無事に終了した――少なくとも、自分はそう思っている。

「なんとなやりきったな……」と、雷志は大袈裟に息を吐いた。

「お疲れ様ですライシさん! 初配信すっごくよかったですよ!」

「いやはや。最後にいった君の言葉には、かつてないほどの高揚を感じだよ」

「あぁ、ユウカ。ありがとうな……後、カナエ」

「……私はあくまでおまけ扱いなんだねぇ」

「まぁ、お前もいてくれて助かった。礼を言う」

「ッ……君、そういうのはあまりよくないと思うよ」

「なにがだ?」と、雷志ははて、と小首をひねる。

「わからなかったらそれで構わないさ」と、それだけを言ってそそくさと出ていってしまった。

 ひとまず配信は無事に終わった。

 忙しくなるのは、これからだ。今日はぐっすりと眠れそうだ。雷志は大きな欠伸を一つした。
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