あっぱれ!拙者、戦国配信者なり~どうも皆の衆、生きた化石系配信者である~

龍威ユウ

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第二章:生きた化石系配信者、爆誕!

第17話:攻略完了!

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 不意に、世界がぐらりと大きく揺らいだ。

 地震によるものではなかった。それはもうすぐ、この世界が消滅しようとしている。その合図である。

「ん?」と、雷志はそれをジッと見やった。

 つい先ほどまで戒玄が倒れていた場所に何かがあった。

 数珠だった。特徴としては、珠がすべて金剛石でできていることにある。

 なんとも物珍しい落とし物に、だが雷志ははて、と小首をひねる。

「あいつ、こんなもの持ってたのか?」

 金剛石には古くより、強い魔除けの効果があると信じられてきた。

 僧侶であった彼が持っていたとしてもおかしは話ではなかった。

 とはいえ、金剛石は極めて貴重であるがために簡単に入手できる代物でもない。

 どういった経緯であの坊主が手にしたかは、いささか気になるところではある。

 今更過ぎる話ではあるが、と雷志は自嘲気味に鼻でふっと笑った。

「……こいつは戦利品としてもらっていくぞ」

 亡き戦友に雷志は黙祷を捧げた。

「ライシさん!」と、ぱたぱたとユウカがやってきた。

 まだ外に避難していなかったようだ。やや後ろにはカナエの姿もあった。

「お前たち、まだここにいたのか!?」と、雷志は呆れたようにいう。

「当たり前じゃないですか! ライシさんだけ置いていくなんて、そんなことできませんよ!」

「遠目ではあったけど君たちの戦いを見ていたんだ――あれが、君の言う戦国の世の戦いなんだね」

「……とりあえず話は後だ。今はここから逃げるぞ」

 夜の森が再び視界に入った、とほぼ同時。

 ダンジョンとして存在した洞穴が消失した。

 驚くほど静かな消失に「ずいぶんとあっさりとしてるんだな」と、思わず口にしてしまった。

 とにもかくにも、ダンジョン配信は無事に終了した。誰一人欠けることなく、ここにいる。

 二人の少女の口からもほっと安堵の息がこぼれる。

「ふぅ……しかしだ。初配信でまさかこんなことになるなんてなぁ」と、雷志はもそりと呟いた。

 これまでにはない不可思議にして不可解な現象が相次いでいる。

 これは予感である。もちろんそこに確固たる証拠などというものはない。

 だが、雷志はこう確信していた――これからもっと、このようなことが起こるに違いない、と。

(それはそれで、楽しみではあるがな)

 あの合戦の続きをせよ――あたかも、仏がそう導いているかのよう。

 雷志は口角を緩めた。戦うことをなによりも好む武士としての顔だった。

「まぁともあれ、だ。無事にダンジョンは攻略したぞ」


【いや、なんていうか……マジですごいとしか言いようがなかった】
【あのレギオンって、ライシのまさかの知り合いだったの?】
【アイドル……ヴァルキュリアじゃないのになんであんな動きができるんや……】
【むかしのひとすごい(;゚Д゚)】


 様々なコメントの中に、生じて当然の疑問もあった。

 件のコメントに対して「いや、どうだろうな」と、雷志は言った。

 あれが果たして、生前の天鳳院戒玄てんぽういんかいげん本人だったか否か。

 今となってはもう確かめようがない。とはいえ、技は本人そのものだった。

 レギオンは、負の感情より生まれる。ならばあれは、生前の彼の未練だったのではないか。

 細菌などというものに成す術なく、皆呆気なく志半ばで絶命した。

 このような結末、当然納得できようはずもなし。レギオンになったのもそのためではないか。

 わからないことがあまりにも多すぎる。雷志はそっと空を仰ぎ見た。

「本当に、どうして俺はこの世界に……時代に招かれてしまったんだろうなぁ」

 その答えはおそらく、一生を賭しても見つからない。雷志はそんな気がした。

「――、というわけで今日の配信はここまでだ。また次回の配信で会おう。それじゃあ〆の挨拶をするぞ」

「あ、ちゃんと〆の挨拶もあるんですね」

「まさか、またあの金打きんちょうってやつじゃあないだろうね?」

「え? そうだが?」と、雷志はあっけらかんと答えた。

 二人はなにか言うわけでもなく、だがその目は明らかに物言いた気だった。

 かくして、配信は無事に終わった。あれから視聴者は5000人にまで膨れ上がっていたらしい。

「ふぅ……それで、今回の件。今までこんな事例はなかったんだな?」

「はい。今日のようなダンジョンは生まれてはじめて見ました」

「あくまでも仮説の域を脱しないが、君が大いに関係しているだろうね。君がいった浄流寺じょうりゅうじという古代の建造物、そしてあのレギオン……確か、カイゲンと言ったかい? 人型は確かにいるが、あそこまで人間らしいレギオンは未だかつてなかった」

「…………」

「いずれにせよ、君は本当にすばらしい逸材だよ! これからも私の実験に付き合ってもらうからね」

「それは、断る」と、雷志はきっぱりと突っぱねた。

 内容にもよるが、怪しげな薬を飲むなどというものは二度とやりたくない。

「とりあえず、今回の一件は報告しないといけませんね。とりあえず学院に戻って――」

「――、夜分遅くにすまない。貴殿が華御ライシだな?」

 不意に、一人の女性がやってきた。

 ユウカたちとは違って、彼女はれっきとした大人としての女性だった。

 さらさらと流れる栗色の髪に、凛とした顔立ちをしている。美しさの中に勇ましさがあった。

 青と白の生地を使った装い――ドレスというらしい。和式も取り入られた珍しい代物だ。

「……これはまたずいぶんと変わった来客だな」

 女性の頭には本来、あるはずのないものがあった。

 獣耳である。背中では尻尾がゆらゆらと揺れていた。ふさふさとして毛並みもいい。

(アイドルは三十歳を迎えれば神秘を失う。そうなってしまえばただの人――だが、稀に例外が出る、だったな)

 限界を超えても尚神秘を失わない者たちが少なからずいた。

 神秘の衰えもなく肉体は不老長寿となり、人々からは現人神として崇め奉られた。

 彼女もその現人神の一人なのだろう。雷志は興味深そうにジッと見つめた。

「イ、イズモの人!?」と、ユウカがぎょっと目を丸くする。

 あからさまに驚く彼女の横では、カナエが興味深そうな顔をしてる。

「某は中央区イズモよりやってきたアマト学院の学院長が一人・・・・・、月宮ルナという。先の配信、某も視聴させてもらったが見事だった」

「そいつはどうも。それで、その学院長が俺になにか?」

「貴殿についてはいろいろと話は聞いている。にわかに信じ難いものだったが、先の配信を見やれば否が応でも事実だったと理解できよう――話が逸れたな。貴殿には某と共にアマト学院にきてもらいたい」

「学院に?」と、雷志は訝し気な視線を送った。

「そうだ――先に言っておくが、手荒い真似はしない。我々としても貴殿については色々と情報を共有しておきたいのだ」

「……なるほどな。お上からの命令となれば従うしかないだろう。わかった」

「では明朝、迎えを寄越す。その者たちといっしょにイズモへときてほしい」

「あいわかった。それじゃあ明日また」

 ルナが去ってからしばらくして――

「こ、これはとんでもないことになったかも……」と、ユウカがそんなことを、ふと口にした。

「イズモの人間が出てくるなんて、相当のことだからねぇ。助手君、君の存在はもはやヤマシロだけで収まらないって意味だよ」

「そうなのか?」

 自分という男にそこまで価値があるとは、少なくとも雷志は思っていない。

「イズモ、か……どんな場所か楽しみだ」

 明日が訪れるのを期待と不安を抱きながら雷志は帰路に着いた。
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