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第一話:白月の君
第7話:穏やかな夜
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香ばしい匂いが食堂にふわりと漂う。
さきほどの失敗が嘘のように、銀皿の上でステーキがどっしりと鎮座していた。
シンプルな献立ながらも、肉厚は見た目も相まって食欲を大いに促進させる。
とりあえず、まともな料理を前に自然と安堵の溜息がもれた。
「えへへ……じょ、上手にできたから食べてほしいな」
「……それじゃあ、遠慮なく――いただきます」
手を合わせる行為が珍しいのか。
エルトルージェが不思議そうな顔でまじまじと見つめる。
「これは俺の国の仕来りみたいなものだ」
「そうなんだ……! じゃ、じゃあわたくしもやってみようかな……」
簡潔にそう答えると、おずおずとしながらも同じように手を合わせた。
早速ステーキを口に運ぶ。
「これは……かなり美味いな」
一口運んですぐに、京志郎は目を軽く開いた。
「ほ、本当!?」と、エルトルージェが小さな身体を乗り出す。
期待に満ちた眼差しは、褒められるのを待つ幼子そのもの。
つくづく、これまでにあった吸血鬼のイメージらしくない。
京志郎はそんなことを、ふと思った。
「お世辞抜きにしてうまいぞ」
ステーキといえど侮ることなかれ。ただ焼くだけでは真の美味さは引き出せない。
焼き加減はもちろん、味付けについても文句の付け所は一切なし。
口に入れた瞬間、溶けるようにすっと消えた。それほど肉が上質なものであると、容易に察しがつく。
「しかしこれは……かなりいい肉なんじゃないのか?」
「う、うん。だけど、キョウシロウさんにぜひ食べてほしかったから……」
照れ臭そうに笑うエルトルージェ。
さっきまでおどおどとしていたが、もうすっかり落ち着いている。
「出会って間もないどころか、殺しにきたかもしれない男に出すには勿体なさすぎるな」
とはいえ、京志郎の手が滞ることはなかった。
あっという間に胃も満たされたところで――
「エルトルージェ。お前は本当に吸血鬼なのか?」
と、改めて最大の疑問をぶつけた。
一見すると十代前半の幼気な少女にしか見えない。
だが、彼女はれっきとした人非ざる者である。
それを象徴するように犬歯……もとい牙は小さくも鋭い。
なにより、エルトルージェも同じものを食している。
「もちろんですぞ。姫様は真祖であり、吸血鬼一族です」
ふわりと頭上から巨大な影が降り立った。
巨大な翼を器用に畳んで、エルトルージェの傍らに降り立つアルバトロス。
わざとらしい咳払いをした後、その口を開いた。
「真祖にとって、吸血は単なる栄養補給にありません」
「そうなのか?」
「同じ時を共にする……言い換えればこれは、婚約のようなものでもあります」
「婚約?」と、京志郎は怪訝な表情を示した。
一方でエルトルージェは、リンゴのように顔を赤く染める。
今にも顔からは湯気が立ち上りそうな勢いだった。
「少し待ってくれ。その意味だとつまり……」
京志郎はすぐにハッとした。
改めてエルトルージェを見やる。さっと視線をそらされた――思い過ごしではないようだ。
「二百年以上もの時を経てついに、ですな」
「も、もうアルバトロスったら……からかわないでよぉ」
和やかな空気を作る二人とは裏腹に、京志郎の表情はいぶかし気である。
(こんなことが、まさか現実で起きるとはな……)
エルトルージェが血を吸おうとした相手は、現状ここには一人しかいない。
世界的有名な怪物から求婚される……などという話は、世界中のどこを探してもいないだろう。
よもや自分が指名されるとは、夢にも思っておらず。
それだけに京志郎は、信じ難いこの現状を鼻で笑い飛ばすしかなかった。
「悪いが、俺にその気はないぞ」
元より結婚願望というものが、京志郎にはこれっぽっちもなかった。
まだ焦るような歳ではないし、なにより独り身でいるほうがなにかと都合がいい。
更にいえば、エルトルージェは見た目があまりにも幼い――二百歳以上とは、驚きではあるが。
よくて妹で、悪くて娘と誤認されても仕方がない。
「そんな……」
「姫様、お気を確かに」
あからさまにひどく落ち込んだエルトルージェを、アルバトロスが即座に慰める。
これではまるで、こちらが悪者みたいではないか。
言い分は決して間違いではない。しかし意気消沈した姿を見るのはなかなかに堪える。
ずきりと心がわずかに痛む――冤罪を受けた被害者とは、このような心境に違いあるまい。
京志郎は呆れた顔で溜息を隠そうともしない。
(子どもをあやしたりするのは、俺の本分じゃないんだがな……)
如何せん、幼子からはどちらかといえば警戒されていた。
いつも血濡れで現場を後にする姿が、幼気な彼らの心にあらぬ恐怖を与えたらしい。
致し方ないことではあるが、それ以降幼子との接し方が京志郎はよくわからなくなった。
ひとまず、形だけでも慰めるべきだろう。京志郎はそう判断した。
「別に俺は意地悪でそう言っているわけじゃあない」
「え……?」
「お前は政略結婚のような、愛情がない結婚を望むのか?」
間を置かず、エルトルージェが激しく首を横に振った。
彼女なりの人生設計はあるようだ。
そこに愛を重要視するならば当然、この質問への回答は否となる。
「俺とお前は出会ったばかりだ。だからお互いに人となりをまったく知らない。だから、まずはそこからだ」
「えっと……どういうこと?」と、エルトルージェがかわいらしく小首をひねった。
「つまり、キョウシロウ殿はもっと仲良くなってからにしましょう、と言っておられるのです」
アルバトロスからの補足が、エルトルージェの顔にぱっと花を咲かせた。
すっかり活気に満ちた瞳は陽光のように眩しく、ルビーのごとくぎらりと輝く。
言葉の綾にすぎない。仮に仲良くなったとしても、結婚することに繋がるとは限らない。
それに則ると京志郎にはやはり、エルトルージェからの申し出を受けるつもりは毛頭なかった。
「じゃ、じゃあ……キョウシロウさんのこと、もっと知りたい」
「俺のこと、か……」
純粋無垢な視線に対し、京志郎は難色を示す。
正直にいって、幼子に聞かせるにはあまりにも殺伐としすぎている。
京志郎の人生は一般家庭とは程遠い、どちらかといえば血生臭かった。
そのように生きるのも、すべて己の意思によるもの。
こうあるべきと選んだのだから、そこに後悔は微塵もない。
だが、間違ってもそれは英雄譚などでは断じてない。
(とりあえず、当たり障りのない話だけに留めておくか)
エルトルージェにはいささか刺激が強すぎるものばかりだ。
そこから安全であろう部分だけ摘出するのは、なかなか面倒なことだった。
そうして夜もすっかり更けたころ――
「……今日はここまでにしておこう」
と、京志郎は大きく伸びをした。
時計の針は、もうすぐ天頂に届こうとしている。
思いの他、長く話し込んでしまったらしく――なにか、要らぬことを口走ってはないだろうか。
今更ながらに一抹の不安が、京志郎の胸中にふとよぎった。
そんな彼とは対照的に、エルトルージェはむっとしている。
膨らんだ頬が不満であると強く主張していた。
「もっとお話聞きたい」
訴えは単純明快で、しかしながら人にはなかなか厳しい要求だった。
吸血鬼は人とは違う。いわば、ここからが彼女たちの時間なのだ。
「無茶を言わないでくれ。さすがに俺にも限界と言うものがある……」
さしもの京志郎も、エルトルージェの要求を拒否した。
新人時代で徹夜には慣れてしまった。だからといって、自ら進んでやるのも違う。
然るべき時に睡眠をしっかり取る。
当たり前を忘れがちになるのが、人ならではの悪癖だ。
「姫様、今日はここまでにしておきましょう」
アルバトロスという思わぬ助け舟に、つい安堵の溜息がもれる。
「キョウシロウ殿はまだ人間。我々吸血鬼と同じようにはなりません」
「でもぉ……」
「でももパレードもありませんぞ」
使い魔という立場にある彼だったが、ここでは保護者としての一面が強い。
聞き分けのない子に優しくも厳しく言いつける……その姿はとても頼り甲斐があった。
とはいえ、そこまで窘められても尚、エルトルージェが引き下がる様子はまるでなし。
「……先に言っておくが、俺はワガママな女は嫌いだ」
自身の癖を晒す羽目になるとは、果たして誰が想像できよう。
思わぬ形で暴露することに虫唾が走る。
その分の報酬は悪くなかった。予想通りの展開に、安堵から胸をそっと撫で下ろした。
「ご、ごめんなさい……」
「わかってくれたのならそれでいい」
目に見えて落ち込んだエルトルージェ。
言い過ぎた、とは思わないが……京志郎はそっと彼女の頭を撫でた。
指の間をさらりと抜けていく髪質が癖になる。
「また、明日にでも聞かせてやる」
それだけ言うと、エルトルージェはすぐに満面の笑みを浮かべた。
「――、さてと。どこで今晩を明かすべきか」
城内にある空き部屋は少なくとも、両手よりも遥かに多い。
部屋には困らないが、内観がどうしても受け入れにくい。
用意された寝具は、さぞ心地良い眠りを提供してくれるだろう。
だが質素な暮らしをしているだけに、豪華な空気が肌に合わなかった。
そうして悩み彷徨った末、偶然にも見つけたその部屋に決めた。
言葉悪くして言えば殺風景で、ひどく狭い。
倉庫らしい。丁寧に整理整頓されているが、それによってこじんまりとしている。
(俺には、これぐらいがちょうど良さそうだな……)
木箱の上にごろりと寝転がる。寝心地は、言わずもがなよくはない。
感覚の問題だった。よくはないが、しっくりくる分落ち着ける。
「とりあえず、明日一度村に戻るか……」
バードンとの約束を果たすことを最後の思考として、京志郎は目を閉じた。
たちまちやってきた心地良い睡魔に拒む道理もなく。意識は瞬く間に深淵へと沈んでいった。
さきほどの失敗が嘘のように、銀皿の上でステーキがどっしりと鎮座していた。
シンプルな献立ながらも、肉厚は見た目も相まって食欲を大いに促進させる。
とりあえず、まともな料理を前に自然と安堵の溜息がもれた。
「えへへ……じょ、上手にできたから食べてほしいな」
「……それじゃあ、遠慮なく――いただきます」
手を合わせる行為が珍しいのか。
エルトルージェが不思議そうな顔でまじまじと見つめる。
「これは俺の国の仕来りみたいなものだ」
「そうなんだ……! じゃ、じゃあわたくしもやってみようかな……」
簡潔にそう答えると、おずおずとしながらも同じように手を合わせた。
早速ステーキを口に運ぶ。
「これは……かなり美味いな」
一口運んですぐに、京志郎は目を軽く開いた。
「ほ、本当!?」と、エルトルージェが小さな身体を乗り出す。
期待に満ちた眼差しは、褒められるのを待つ幼子そのもの。
つくづく、これまでにあった吸血鬼のイメージらしくない。
京志郎はそんなことを、ふと思った。
「お世辞抜きにしてうまいぞ」
ステーキといえど侮ることなかれ。ただ焼くだけでは真の美味さは引き出せない。
焼き加減はもちろん、味付けについても文句の付け所は一切なし。
口に入れた瞬間、溶けるようにすっと消えた。それほど肉が上質なものであると、容易に察しがつく。
「しかしこれは……かなりいい肉なんじゃないのか?」
「う、うん。だけど、キョウシロウさんにぜひ食べてほしかったから……」
照れ臭そうに笑うエルトルージェ。
さっきまでおどおどとしていたが、もうすっかり落ち着いている。
「出会って間もないどころか、殺しにきたかもしれない男に出すには勿体なさすぎるな」
とはいえ、京志郎の手が滞ることはなかった。
あっという間に胃も満たされたところで――
「エルトルージェ。お前は本当に吸血鬼なのか?」
と、改めて最大の疑問をぶつけた。
一見すると十代前半の幼気な少女にしか見えない。
だが、彼女はれっきとした人非ざる者である。
それを象徴するように犬歯……もとい牙は小さくも鋭い。
なにより、エルトルージェも同じものを食している。
「もちろんですぞ。姫様は真祖であり、吸血鬼一族です」
ふわりと頭上から巨大な影が降り立った。
巨大な翼を器用に畳んで、エルトルージェの傍らに降り立つアルバトロス。
わざとらしい咳払いをした後、その口を開いた。
「真祖にとって、吸血は単なる栄養補給にありません」
「そうなのか?」
「同じ時を共にする……言い換えればこれは、婚約のようなものでもあります」
「婚約?」と、京志郎は怪訝な表情を示した。
一方でエルトルージェは、リンゴのように顔を赤く染める。
今にも顔からは湯気が立ち上りそうな勢いだった。
「少し待ってくれ。その意味だとつまり……」
京志郎はすぐにハッとした。
改めてエルトルージェを見やる。さっと視線をそらされた――思い過ごしではないようだ。
「二百年以上もの時を経てついに、ですな」
「も、もうアルバトロスったら……からかわないでよぉ」
和やかな空気を作る二人とは裏腹に、京志郎の表情はいぶかし気である。
(こんなことが、まさか現実で起きるとはな……)
エルトルージェが血を吸おうとした相手は、現状ここには一人しかいない。
世界的有名な怪物から求婚される……などという話は、世界中のどこを探してもいないだろう。
よもや自分が指名されるとは、夢にも思っておらず。
それだけに京志郎は、信じ難いこの現状を鼻で笑い飛ばすしかなかった。
「悪いが、俺にその気はないぞ」
元より結婚願望というものが、京志郎にはこれっぽっちもなかった。
まだ焦るような歳ではないし、なにより独り身でいるほうがなにかと都合がいい。
更にいえば、エルトルージェは見た目があまりにも幼い――二百歳以上とは、驚きではあるが。
よくて妹で、悪くて娘と誤認されても仕方がない。
「そんな……」
「姫様、お気を確かに」
あからさまにひどく落ち込んだエルトルージェを、アルバトロスが即座に慰める。
これではまるで、こちらが悪者みたいではないか。
言い分は決して間違いではない。しかし意気消沈した姿を見るのはなかなかに堪える。
ずきりと心がわずかに痛む――冤罪を受けた被害者とは、このような心境に違いあるまい。
京志郎は呆れた顔で溜息を隠そうともしない。
(子どもをあやしたりするのは、俺の本分じゃないんだがな……)
如何せん、幼子からはどちらかといえば警戒されていた。
いつも血濡れで現場を後にする姿が、幼気な彼らの心にあらぬ恐怖を与えたらしい。
致し方ないことではあるが、それ以降幼子との接し方が京志郎はよくわからなくなった。
ひとまず、形だけでも慰めるべきだろう。京志郎はそう判断した。
「別に俺は意地悪でそう言っているわけじゃあない」
「え……?」
「お前は政略結婚のような、愛情がない結婚を望むのか?」
間を置かず、エルトルージェが激しく首を横に振った。
彼女なりの人生設計はあるようだ。
そこに愛を重要視するならば当然、この質問への回答は否となる。
「俺とお前は出会ったばかりだ。だからお互いに人となりをまったく知らない。だから、まずはそこからだ」
「えっと……どういうこと?」と、エルトルージェがかわいらしく小首をひねった。
「つまり、キョウシロウ殿はもっと仲良くなってからにしましょう、と言っておられるのです」
アルバトロスからの補足が、エルトルージェの顔にぱっと花を咲かせた。
すっかり活気に満ちた瞳は陽光のように眩しく、ルビーのごとくぎらりと輝く。
言葉の綾にすぎない。仮に仲良くなったとしても、結婚することに繋がるとは限らない。
それに則ると京志郎にはやはり、エルトルージェからの申し出を受けるつもりは毛頭なかった。
「じゃ、じゃあ……キョウシロウさんのこと、もっと知りたい」
「俺のこと、か……」
純粋無垢な視線に対し、京志郎は難色を示す。
正直にいって、幼子に聞かせるにはあまりにも殺伐としすぎている。
京志郎の人生は一般家庭とは程遠い、どちらかといえば血生臭かった。
そのように生きるのも、すべて己の意思によるもの。
こうあるべきと選んだのだから、そこに後悔は微塵もない。
だが、間違ってもそれは英雄譚などでは断じてない。
(とりあえず、当たり障りのない話だけに留めておくか)
エルトルージェにはいささか刺激が強すぎるものばかりだ。
そこから安全であろう部分だけ摘出するのは、なかなか面倒なことだった。
そうして夜もすっかり更けたころ――
「……今日はここまでにしておこう」
と、京志郎は大きく伸びをした。
時計の針は、もうすぐ天頂に届こうとしている。
思いの他、長く話し込んでしまったらしく――なにか、要らぬことを口走ってはないだろうか。
今更ながらに一抹の不安が、京志郎の胸中にふとよぎった。
そんな彼とは対照的に、エルトルージェはむっとしている。
膨らんだ頬が不満であると強く主張していた。
「もっとお話聞きたい」
訴えは単純明快で、しかしながら人にはなかなか厳しい要求だった。
吸血鬼は人とは違う。いわば、ここからが彼女たちの時間なのだ。
「無茶を言わないでくれ。さすがに俺にも限界と言うものがある……」
さしもの京志郎も、エルトルージェの要求を拒否した。
新人時代で徹夜には慣れてしまった。だからといって、自ら進んでやるのも違う。
然るべき時に睡眠をしっかり取る。
当たり前を忘れがちになるのが、人ならではの悪癖だ。
「姫様、今日はここまでにしておきましょう」
アルバトロスという思わぬ助け舟に、つい安堵の溜息がもれる。
「キョウシロウ殿はまだ人間。我々吸血鬼と同じようにはなりません」
「でもぉ……」
「でももパレードもありませんぞ」
使い魔という立場にある彼だったが、ここでは保護者としての一面が強い。
聞き分けのない子に優しくも厳しく言いつける……その姿はとても頼り甲斐があった。
とはいえ、そこまで窘められても尚、エルトルージェが引き下がる様子はまるでなし。
「……先に言っておくが、俺はワガママな女は嫌いだ」
自身の癖を晒す羽目になるとは、果たして誰が想像できよう。
思わぬ形で暴露することに虫唾が走る。
その分の報酬は悪くなかった。予想通りの展開に、安堵から胸をそっと撫で下ろした。
「ご、ごめんなさい……」
「わかってくれたのならそれでいい」
目に見えて落ち込んだエルトルージェ。
言い過ぎた、とは思わないが……京志郎はそっと彼女の頭を撫でた。
指の間をさらりと抜けていく髪質が癖になる。
「また、明日にでも聞かせてやる」
それだけ言うと、エルトルージェはすぐに満面の笑みを浮かべた。
「――、さてと。どこで今晩を明かすべきか」
城内にある空き部屋は少なくとも、両手よりも遥かに多い。
部屋には困らないが、内観がどうしても受け入れにくい。
用意された寝具は、さぞ心地良い眠りを提供してくれるだろう。
だが質素な暮らしをしているだけに、豪華な空気が肌に合わなかった。
そうして悩み彷徨った末、偶然にも見つけたその部屋に決めた。
言葉悪くして言えば殺風景で、ひどく狭い。
倉庫らしい。丁寧に整理整頓されているが、それによってこじんまりとしている。
(俺には、これぐらいがちょうど良さそうだな……)
木箱の上にごろりと寝転がる。寝心地は、言わずもがなよくはない。
感覚の問題だった。よくはないが、しっくりくる分落ち着ける。
「とりあえず、明日一度村に戻るか……」
バードンとの約束を果たすことを最後の思考として、京志郎は目を閉じた。
たちまちやってきた心地良い睡魔に拒む道理もなく。意識は瞬く間に深淵へと沈んでいった。
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