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魔王との最終決戦時
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「…ついに、この時が来たね。長かったな」
(そうだねー。お母さんと僕が出会ってからもう200年近くは経ってるよね)
「そうだね。…体は相変わらずなのが本当に可哀想だけど、勘がものすごく研ぎ澄まされたお陰で話せない以外の五感はほぼ戻って良かったよね」
(うん、もう自分で移動したり食事や諸々の処理とかできない以外はほとんど困らないしさ。ずっと付いててくれる団員さんやお世話係の人達には感謝しかないねー)
「うん、君本当にずっと明るかったから私も元気づけられたし。…あんまり気を遣わせたくなかったから言わなかったけど、君に会えてなかったら、ここまで本気で戦闘員やって無かったかもしれないしさ」
(あーうん、とっくに察してた。まあお母さん隠し事超苦手だしね。でも裏表のないお母さんのそういう所も僕好きだよ)
「あはは、まあ自覚あるけど私超不器用だしそうだよね。うん、じゃあ間もなく破壊力ある子達が先行して城壁ぶっ壊してくれるから、私達もそれに続こう。頑張ろうね」
(うん、頑張ろー。…あー、もうすぐ僕達元の体に戻れそうだし、今だから僕も言っちゃうけどさ。出会ったばっかの頃に話したら絶対お母さん傷付いちゃうと思って黙ってたんだけどさ)
「……うん」
(さすがの僕もさ。こんなアレな姿にされた直後は痛いし悲しいしで相当ショック受けてさ。もうはっきりとは覚えてないけど、まあ10年くらいは心ぶっ壊れちゃってたんだよね)
「…うん、きっとそうなっちゃうだろうね。バカで察し悪い私でも、流石に想像付くよ」
(あははー、そっか。あーもうとっくに過ぎた事だし、もう僕全然平気だからそんなしんどそうにしないで笑い飛ばしちゃって良いよ)
「…ごめんね。流石にこればっかりは、ちょっと笑えないかな」
(そっかー、うんまあそりゃそうだよね。普通の親なら子供がそんな事になってたら笑えないよね。お母さん、ド変態だけど本当に優しいもんね)
「…うん、ありがとね」
(あーまあそれでさ。僕の生い立ちはもう前に話したけど、僕元々は生まれて間もなくに相当クソな商人の召使いとして買われたんだけどさ。僕昔っから跳ねっかえりでクズなのに偉そうにしてる奴に従うの大嫌いだった訳で、しょっちゅうそのクソ主人から引っぱたかれたり飯抜きにされたり折檻されてたんだけどさ。まあ流石に潰したりとかは無かったけど)
「…うん」
(そんでたぶん僕が12かそのくらいの、まあ良い感じの年頃になってきた時そのクソが押し倒してアレな事しようとしやがってさ。僕そういうの興味無いし、そんな不細工でクソな奴にやられるのなんて絶対嫌だったから全力で引っかいたり噛みついたり、あとアレも思いっきり蹴り飛ばしてやったんだよね)
「…ふふ、君らしいね。君猫型獣人っぽい種族だもんね」
(うんうん。んでそのクソ主人ブチ切れてさ。もう永遠にクビだって、わざわざ沖まで船出して僕簀巻きにして投げ込まれちゃったんだよね)
「…うん、他にも似た境遇の子結構いるけど、大変だったね」
(で、僕当時は泳げないしで。死なないけどこのまま永遠に土座衛門とか嫌だしどうしよって困ってたら、ちょうど通りかかった海賊船の人達に救助されてさ。それからは正義感ある海賊団の一員として、まあ義賊みたいな感じで楽しくやってたんだよね)
「うん、君の海賊団、クソ魔王軍やそいつらに加担してる悪徳商人とかそういう奴らしか襲わなかったもんね」
(そうそう。でもまあ、そんな事やってるから当然クソ魔王軍に目付けられちゃってさ。僕がたぶん14歳くらいになったある時罠にかかって待ち伏せされて。なんとか船長や大半の団員さんは逃げられたんだけど、僕運悪く逃げ遅れて捕まっちゃってさ。んで魔王も引くレベルのクソサディストな幹部に見せしめでこんなにされちゃったってわけ)
「……うん」
(で、その後こうされた僕は逃げ延びた海賊船の甲板に放り捨てられてさ。僕見つけた団員さん達が、ひょっとしたらこれあの子だよねって大騒ぎになって。それからは団員さん達必死に看病したり、色々医者や治療術師呼んでくれたけど全員これはもうどうしようも無いし、このままじゃ気の毒だから何とか不死の呪い解いて楽にしてやった方が良いと思うって言う始末でさ)
「……そうなっちゃうだろうね」
(でも、僕もだけど船長や団員さんもみんな諦めが悪くてさ。まあ海賊だから当然だけど反骨精神の塊のような人達だから、この子ならきっといつかは立ち直ってくれるって信じて、ずっと誰かつきっきりで、皆優しいから言わないけどたぶん泣いたりして看病してくれたんだよね)
「…うん、団員さん達すごく優しいもんね」
(で、10年そこら経った頃、ほんとに少しずつだけどテレパシーで返事するようになってきて。その頃の事はもうほとんど覚えてないんだけどさ)
「…うん、本当に良かった」
(んでそれからさらに数年経ったらかなり元気出て来てさ。よくよく考えたら僕超絶中二なわけで、この傷だらけで何も出来ない体超痛くてかっこいいじゃんってなってさ。それからはもうメンタル超元気になったの)
「…うん、本当君強い子だよね」
(へへー、ありがとね。で、すっかり立ち直った頃船長が何も出来ないんじゃ気の毒過ぎるからって魔法のフック取り寄せてくれてさ。傷がひどすぎて義肢とかは付けられなかったんだけど、それならなんとか接続できたから。両腕のあった所に接続してくれて、思った通りに伸縮自在で動かせてそれからは戦闘でもかなり活躍してたよ)
「うん、君本当強いもんね」
(へへー、今やレジスタンスでもフック無双って呼ばれてて、最大で同時に8本くらい動かせるしね。まああんまり多数付けると絡まった時大変だから、実戦ではせいぜい4本程度だけどね)
「ふふ、そうだね」
(あー、お母さん笑ってくれて良かった。ごめんね、決戦前だってのにしんどい話しちゃって。まあもうこれだけ戦力揃ってれば絶対勝てるだろうし、クソ魔王軍相当追い込まれててもう本拠地の城に籠城するくらいしかないし、今なら言っちゃっても良いかなーってさ)
「うん、そうだね。魔王軍も相当倒したり降伏して、メイドの子みたいにこっそり寝返って重要な情報流してくれた奴もいるしね」
(だね。他の幹部とかは極刑は免れないだろうけど、メイドの子は本当に何も悪い事してないし話聞いたら相当気の毒だったから、あの子は何とか処刑しないであげて欲しいんだけどなー)
「うん、まあレジスタンスの人達も鬼じゃ無いし、ああいう仕方なく魔王に付き従ってたような子ならきっと恩情をくれるでしょ」
(あ、先鋒隊の人達いよいよ突入するみたいだね。たぶん例のアレなユニットにされてる子とかでっかい人達が城壁ぶっ壊してくれるから、そしたら僕達も行こう。まあいつも通り僕は団員さんに押してもらうんだけどさ)
「あはは、そうだね。気を引き締めて、でもいつも通りリラックスして行こう!」
(あはは、矛盾してるじゃんそれ)
そうしてアレなコアにされてる巨大アーマーに乗り込んだ子が先陣を切って城壁をぶっ壊してくれ、続いてトロールやサイクロプス等巨大で力自慢の種族の人達も殴り込み慌てふためく警備兵達をなぎ倒してくれ、私達本隊もそれに続き魔王城へ突入した。
500年以上に渡る戦いで魔王軍は予想以上に疲弊していたようで、まともに立ち向かって来る兵士達は少なかった。
魔王の腹心のメイドの子が事前に内部の本当はもう戦いたくない兵士達に話を通してくれてあり、そう言った部下達は突入して来たレジスタンスを見るなり武器を捨ててすぐに投降した。
さらにメイドの子が教えてくれた重要な装備や武器を収蔵してある武器庫も隠密行動に長けた仲間達が事前に潜入し火を放ち使い物にならなくしてくれ、魔王軍はあっという間に総崩れとなり追い込まれた。
数少ない降伏せず最後まで抵抗を続けた幹部や一部の兵士を先生やあの人が倒してくれ、私とあの子、ほか特に腕利きの子供や仲間達は最上階の魔王の間になだれ込んだ。
魔王は部下達の多数が即時降伏したり最も信頼していたメイドの子が裏切ったのにかなりショックを受けていたようで、動揺を隠せない様子だった。
「ふーん。あんたも大事な人に裏切られたら流石に傷付くんだ。ちょっと意外」
「…畜生。しょせん俺は独りぼっちか。…まあ良い、かかって来い。虫けらども」
そうして自棄になりブチ切れた魔王は強大な魔力を解放し、恐ろしい魔獣やクリーチャーを多数召喚し自身は強固な障壁の中に立て籠もった。
「母さん、頑張って。渾身の力で行軍歌を歌うね」
楽師の子が美しい声と音色で味方全体の士気を向上させてくれ、他の補助技得意な子供達も私にステータス向上の呪文をかけまくってくれた。
更に全身身売りされちゃった子が魔王やその取り巻きにデバフ技をかけまくってくれ、大魔導士さんと駆けつけてくれた例の女神様が同時に召喚獣による強烈無比な一撃をぶっ放し、クソ魔王の障壁を破壊してくれた。
クリーチャーたちも他の腕利き団員や子供達にフルボッコにされているのを見た魔王は流石に旗色が悪いと悟ったのか、羽を広げ逃げ去ろうとした。
(おーっと、逃がさないよクソ魔王ー)
そこをすかさずあの子が全てのフックを使ってがんじがらめにし拘束してくれ、私達の戦う姿に感化され重い腰を上げた最高神様が魔王の不死の呪いを解除してくれた。
「…ふざけんな、このクソ神が。俺が散々クソな目に遭った時は放置したくせして、今更人助けかよ」
「…済まんな、魔王の子よ。私が間違っていた」
「…さあ、母君。機は熟した。今こそ全てを終わらせる時だ」
「ああ、クソ魔王の息の根を止めちまえ。ババアに譲るのは癪だがよ」
「うん、そうだね」
「…もう二度と、アレが出来なくなったっていい。私の全ての性欲を、こいつを倒す力に!」
私は肉体にわずかに残った全性欲を絞り出すように更に力に換え、光り輝く闘気をまとい高々と剣を振り上げ飛び上がり、クソ魔王の脳天に振り下ろしその身体を真っ二つにした。
「…ふざ、けん、な。…どうして俺ばかり、こんな目に遭うんだよ。…クソ、こんな世界、…滅びちまえ」
そう呪詛に満ちた断末魔を上げ、クソ魔王は塵となって消えて行った。
「………終わった」
「…ああ。見事だ、母君」
「…こいつも、事情を知ったら少し気の毒だったけどな」
「…そうだね。母さんや罪も無い人々にやった事を思えば、許せはしないけれどね」
「…あー、そうだよね。幹部とかは詳しくは語らずみんな自害したけど、メイドの子や女神様に全部教えてもらったもんね。…こいつにも、色々あったんだね」
(だねー。こいつも元々は僕達と同じで先代魔王がクソな事して生まれちゃった私生児だと思うと、そこは可哀想だよね。ま、もう全部終わった事だしいいじゃん。こいつも地獄送りにされる自覚はしてたでしょ)
「…そうだね。まあ、女神様も出来るだけ減刑を嘆願してくれるって言ってたし、相当先だろうけどいつかは転生させてもらえるんじゃないかな。…あー、全性欲ぶん投げたせいか超賢者モード入って疲れて来た。…やば、ねっむ」
(あー、まあそりゃそうなるよね。もう残党もあらかた他の子や仲間達がぶっ殺してくれたし、お母さん寝てなよ。神様が希望者はすぐ不死の呪い解いて、元の姿に戻してくれるってさ。お母さんはたぶん不死のままでいたいだろうけどどうするの?)
「あーうん、そうだね。みんなやあの人達とずっと一緒にいたいから不死のままではいたいけど、やっぱ折角だし体は普通になりたいかな。神様そういうのも聞いてくれるかな」
(あ、女神様が言ってたけど、本当は聞けないけどここの人達は長年本当に散々で気の毒だったから、そういうのも特別に個別に聞いてくれるってさ。僕も中二だから多少はアレな姿にすると思うけど、お母さんや皆悲しませたく無いし不死のまままともな姿にしてもらって来るね)
「そっか、君のしたいようにすればいいと思うよ。先生やあの人達もたぶんそろそろ来てくれるだろうけど、もう大丈夫って言っておいて。…あーごめん、マジで超眠い。じゃ、おやすみー」
(うん、ゆっくり休んで。おやすみー)
そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。
慣れ親しんだレジスタンスの基地で目覚めた私は、バーサク状態が終わってもずっと五体満足の普通の体になっていた。
「うわー、バーサク化すればほぼ普通だったけど完全に手足もある姿とか何百年ぶりだろ。嬉しいけどなんか逆に慣れないなー」
「あー、起きたね英雄様、じゃなくてお母さん。おはよ」
「…あ」
そこには、猫耳で片手片足はフックと義足だけど可愛らしい獣人タイプの少女が立っていた。
「…良かった、本当に良かった。うん、おはよう」
「あー、お母さん泣いちゃった。ごめんね、泣かせちゃって」
「…ううん、気にしないで。これは、すごく嬉しい涙だから」
そして私が目覚めたと知った後は、あの人や他の子供達、レジスタンスの仲間達が次々に部屋に押しかけて来た。
やって来た仲間や子供達は、大半が呪いが解け五体満足の普通の体をしていてとても嬉しかった。
人形の子やサイボーグの子等は今の身体が気に入ってるのでという事でそのままだったが、とても幸せそうだった。
アレな状態で生体ユニットにされているだいぶ私と同類の少女は、そのままで一向に構わないとの本人の談だったが引き気味な周囲の説得によりしぶしぶ普通の姿になった。
そうしてあれよあれよという間に私は魔王を倒し国を救った英雄という事になって、正義感のある賢王から爵位と勲章を授与もされ、気恥ずかしいがバーサク状態の姿で銅像も世界中に多数建てられた。
(アレな姿の銅像は流石に一般人の目の毒すぎるので無かったが、いわゆる秘宝館的な所には数体建っている)
そして。
「…あー、あのさ。私達不死だけど明らかに死亡フラグになりそうだから、全部終わるまで言うの我慢してたんだけどさ」
「…私、あなたの事出あったその瞬間から大好きなの!だから、ド変態で悪いんだけど私と結婚してくれないかな!」
「ああ、喜んで」
「…へへー、ありがと!私、本当幸せ者だなー!」
「…んじゃ正式に婚姻も成立した事だし、私アレ超絶好きな訳で早速。…あ、あれ」
「え、う、嘘。全っ然ムラムラしない。なんで??」
「…ま、まさかクソ魔王ぶっ殺す時全性欲ぶん投げたせい!?」
「か、神様。嘘ついちゃって本当申し訳無いんですが、この前いったあの発言だけは取り消します。すいません今後も未来永劫めちゃめちゃアレしたいですうううう」
「ご、ごめんなさい神様。私からアレ取り上げたらマジで何も残らないただのアホ女になっちゃうし。お願いします神様助けてええええええ!!!」
そして数週間後、必死の祈りが通じたのかどうにかだいぶ減退していたがまたアレ欲が復活して来て、私は神様に深く感謝した。
その少し後天界で神様に再会した時は相当引いていた。
(そうだねー。お母さんと僕が出会ってからもう200年近くは経ってるよね)
「そうだね。…体は相変わらずなのが本当に可哀想だけど、勘がものすごく研ぎ澄まされたお陰で話せない以外の五感はほぼ戻って良かったよね」
(うん、もう自分で移動したり食事や諸々の処理とかできない以外はほとんど困らないしさ。ずっと付いててくれる団員さんやお世話係の人達には感謝しかないねー)
「うん、君本当にずっと明るかったから私も元気づけられたし。…あんまり気を遣わせたくなかったから言わなかったけど、君に会えてなかったら、ここまで本気で戦闘員やって無かったかもしれないしさ」
(あーうん、とっくに察してた。まあお母さん隠し事超苦手だしね。でも裏表のないお母さんのそういう所も僕好きだよ)
「あはは、まあ自覚あるけど私超不器用だしそうだよね。うん、じゃあ間もなく破壊力ある子達が先行して城壁ぶっ壊してくれるから、私達もそれに続こう。頑張ろうね」
(うん、頑張ろー。…あー、もうすぐ僕達元の体に戻れそうだし、今だから僕も言っちゃうけどさ。出会ったばっかの頃に話したら絶対お母さん傷付いちゃうと思って黙ってたんだけどさ)
「……うん」
(さすがの僕もさ。こんなアレな姿にされた直後は痛いし悲しいしで相当ショック受けてさ。もうはっきりとは覚えてないけど、まあ10年くらいは心ぶっ壊れちゃってたんだよね)
「…うん、きっとそうなっちゃうだろうね。バカで察し悪い私でも、流石に想像付くよ」
(あははー、そっか。あーもうとっくに過ぎた事だし、もう僕全然平気だからそんなしんどそうにしないで笑い飛ばしちゃって良いよ)
「…ごめんね。流石にこればっかりは、ちょっと笑えないかな」
(そっかー、うんまあそりゃそうだよね。普通の親なら子供がそんな事になってたら笑えないよね。お母さん、ド変態だけど本当に優しいもんね)
「…うん、ありがとね」
(あーまあそれでさ。僕の生い立ちはもう前に話したけど、僕元々は生まれて間もなくに相当クソな商人の召使いとして買われたんだけどさ。僕昔っから跳ねっかえりでクズなのに偉そうにしてる奴に従うの大嫌いだった訳で、しょっちゅうそのクソ主人から引っぱたかれたり飯抜きにされたり折檻されてたんだけどさ。まあ流石に潰したりとかは無かったけど)
「…うん」
(そんでたぶん僕が12かそのくらいの、まあ良い感じの年頃になってきた時そのクソが押し倒してアレな事しようとしやがってさ。僕そういうの興味無いし、そんな不細工でクソな奴にやられるのなんて絶対嫌だったから全力で引っかいたり噛みついたり、あとアレも思いっきり蹴り飛ばしてやったんだよね)
「…ふふ、君らしいね。君猫型獣人っぽい種族だもんね」
(うんうん。んでそのクソ主人ブチ切れてさ。もう永遠にクビだって、わざわざ沖まで船出して僕簀巻きにして投げ込まれちゃったんだよね)
「…うん、他にも似た境遇の子結構いるけど、大変だったね」
(で、僕当時は泳げないしで。死なないけどこのまま永遠に土座衛門とか嫌だしどうしよって困ってたら、ちょうど通りかかった海賊船の人達に救助されてさ。それからは正義感ある海賊団の一員として、まあ義賊みたいな感じで楽しくやってたんだよね)
「うん、君の海賊団、クソ魔王軍やそいつらに加担してる悪徳商人とかそういう奴らしか襲わなかったもんね」
(そうそう。でもまあ、そんな事やってるから当然クソ魔王軍に目付けられちゃってさ。僕がたぶん14歳くらいになったある時罠にかかって待ち伏せされて。なんとか船長や大半の団員さんは逃げられたんだけど、僕運悪く逃げ遅れて捕まっちゃってさ。んで魔王も引くレベルのクソサディストな幹部に見せしめでこんなにされちゃったってわけ)
「……うん」
(で、その後こうされた僕は逃げ延びた海賊船の甲板に放り捨てられてさ。僕見つけた団員さん達が、ひょっとしたらこれあの子だよねって大騒ぎになって。それからは団員さん達必死に看病したり、色々医者や治療術師呼んでくれたけど全員これはもうどうしようも無いし、このままじゃ気の毒だから何とか不死の呪い解いて楽にしてやった方が良いと思うって言う始末でさ)
「……そうなっちゃうだろうね」
(でも、僕もだけど船長や団員さんもみんな諦めが悪くてさ。まあ海賊だから当然だけど反骨精神の塊のような人達だから、この子ならきっといつかは立ち直ってくれるって信じて、ずっと誰かつきっきりで、皆優しいから言わないけどたぶん泣いたりして看病してくれたんだよね)
「…うん、団員さん達すごく優しいもんね」
(で、10年そこら経った頃、ほんとに少しずつだけどテレパシーで返事するようになってきて。その頃の事はもうほとんど覚えてないんだけどさ)
「…うん、本当に良かった」
(んでそれからさらに数年経ったらかなり元気出て来てさ。よくよく考えたら僕超絶中二なわけで、この傷だらけで何も出来ない体超痛くてかっこいいじゃんってなってさ。それからはもうメンタル超元気になったの)
「…うん、本当君強い子だよね」
(へへー、ありがとね。で、すっかり立ち直った頃船長が何も出来ないんじゃ気の毒過ぎるからって魔法のフック取り寄せてくれてさ。傷がひどすぎて義肢とかは付けられなかったんだけど、それならなんとか接続できたから。両腕のあった所に接続してくれて、思った通りに伸縮自在で動かせてそれからは戦闘でもかなり活躍してたよ)
「うん、君本当強いもんね」
(へへー、今やレジスタンスでもフック無双って呼ばれてて、最大で同時に8本くらい動かせるしね。まああんまり多数付けると絡まった時大変だから、実戦ではせいぜい4本程度だけどね)
「ふふ、そうだね」
(あー、お母さん笑ってくれて良かった。ごめんね、決戦前だってのにしんどい話しちゃって。まあもうこれだけ戦力揃ってれば絶対勝てるだろうし、クソ魔王軍相当追い込まれててもう本拠地の城に籠城するくらいしかないし、今なら言っちゃっても良いかなーってさ)
「うん、そうだね。魔王軍も相当倒したり降伏して、メイドの子みたいにこっそり寝返って重要な情報流してくれた奴もいるしね」
(だね。他の幹部とかは極刑は免れないだろうけど、メイドの子は本当に何も悪い事してないし話聞いたら相当気の毒だったから、あの子は何とか処刑しないであげて欲しいんだけどなー)
「うん、まあレジスタンスの人達も鬼じゃ無いし、ああいう仕方なく魔王に付き従ってたような子ならきっと恩情をくれるでしょ」
(あ、先鋒隊の人達いよいよ突入するみたいだね。たぶん例のアレなユニットにされてる子とかでっかい人達が城壁ぶっ壊してくれるから、そしたら僕達も行こう。まあいつも通り僕は団員さんに押してもらうんだけどさ)
「あはは、そうだね。気を引き締めて、でもいつも通りリラックスして行こう!」
(あはは、矛盾してるじゃんそれ)
そうしてアレなコアにされてる巨大アーマーに乗り込んだ子が先陣を切って城壁をぶっ壊してくれ、続いてトロールやサイクロプス等巨大で力自慢の種族の人達も殴り込み慌てふためく警備兵達をなぎ倒してくれ、私達本隊もそれに続き魔王城へ突入した。
500年以上に渡る戦いで魔王軍は予想以上に疲弊していたようで、まともに立ち向かって来る兵士達は少なかった。
魔王の腹心のメイドの子が事前に内部の本当はもう戦いたくない兵士達に話を通してくれてあり、そう言った部下達は突入して来たレジスタンスを見るなり武器を捨ててすぐに投降した。
さらにメイドの子が教えてくれた重要な装備や武器を収蔵してある武器庫も隠密行動に長けた仲間達が事前に潜入し火を放ち使い物にならなくしてくれ、魔王軍はあっという間に総崩れとなり追い込まれた。
数少ない降伏せず最後まで抵抗を続けた幹部や一部の兵士を先生やあの人が倒してくれ、私とあの子、ほか特に腕利きの子供や仲間達は最上階の魔王の間になだれ込んだ。
魔王は部下達の多数が即時降伏したり最も信頼していたメイドの子が裏切ったのにかなりショックを受けていたようで、動揺を隠せない様子だった。
「ふーん。あんたも大事な人に裏切られたら流石に傷付くんだ。ちょっと意外」
「…畜生。しょせん俺は独りぼっちか。…まあ良い、かかって来い。虫けらども」
そうして自棄になりブチ切れた魔王は強大な魔力を解放し、恐ろしい魔獣やクリーチャーを多数召喚し自身は強固な障壁の中に立て籠もった。
「母さん、頑張って。渾身の力で行軍歌を歌うね」
楽師の子が美しい声と音色で味方全体の士気を向上させてくれ、他の補助技得意な子供達も私にステータス向上の呪文をかけまくってくれた。
更に全身身売りされちゃった子が魔王やその取り巻きにデバフ技をかけまくってくれ、大魔導士さんと駆けつけてくれた例の女神様が同時に召喚獣による強烈無比な一撃をぶっ放し、クソ魔王の障壁を破壊してくれた。
クリーチャーたちも他の腕利き団員や子供達にフルボッコにされているのを見た魔王は流石に旗色が悪いと悟ったのか、羽を広げ逃げ去ろうとした。
(おーっと、逃がさないよクソ魔王ー)
そこをすかさずあの子が全てのフックを使ってがんじがらめにし拘束してくれ、私達の戦う姿に感化され重い腰を上げた最高神様が魔王の不死の呪いを解除してくれた。
「…ふざけんな、このクソ神が。俺が散々クソな目に遭った時は放置したくせして、今更人助けかよ」
「…済まんな、魔王の子よ。私が間違っていた」
「…さあ、母君。機は熟した。今こそ全てを終わらせる時だ」
「ああ、クソ魔王の息の根を止めちまえ。ババアに譲るのは癪だがよ」
「うん、そうだね」
「…もう二度と、アレが出来なくなったっていい。私の全ての性欲を、こいつを倒す力に!」
私は肉体にわずかに残った全性欲を絞り出すように更に力に換え、光り輝く闘気をまとい高々と剣を振り上げ飛び上がり、クソ魔王の脳天に振り下ろしその身体を真っ二つにした。
「…ふざ、けん、な。…どうして俺ばかり、こんな目に遭うんだよ。…クソ、こんな世界、…滅びちまえ」
そう呪詛に満ちた断末魔を上げ、クソ魔王は塵となって消えて行った。
「………終わった」
「…ああ。見事だ、母君」
「…こいつも、事情を知ったら少し気の毒だったけどな」
「…そうだね。母さんや罪も無い人々にやった事を思えば、許せはしないけれどね」
「…あー、そうだよね。幹部とかは詳しくは語らずみんな自害したけど、メイドの子や女神様に全部教えてもらったもんね。…こいつにも、色々あったんだね」
(だねー。こいつも元々は僕達と同じで先代魔王がクソな事して生まれちゃった私生児だと思うと、そこは可哀想だよね。ま、もう全部終わった事だしいいじゃん。こいつも地獄送りにされる自覚はしてたでしょ)
「…そうだね。まあ、女神様も出来るだけ減刑を嘆願してくれるって言ってたし、相当先だろうけどいつかは転生させてもらえるんじゃないかな。…あー、全性欲ぶん投げたせいか超賢者モード入って疲れて来た。…やば、ねっむ」
(あー、まあそりゃそうなるよね。もう残党もあらかた他の子や仲間達がぶっ殺してくれたし、お母さん寝てなよ。神様が希望者はすぐ不死の呪い解いて、元の姿に戻してくれるってさ。お母さんはたぶん不死のままでいたいだろうけどどうするの?)
「あーうん、そうだね。みんなやあの人達とずっと一緒にいたいから不死のままではいたいけど、やっぱ折角だし体は普通になりたいかな。神様そういうのも聞いてくれるかな」
(あ、女神様が言ってたけど、本当は聞けないけどここの人達は長年本当に散々で気の毒だったから、そういうのも特別に個別に聞いてくれるってさ。僕も中二だから多少はアレな姿にすると思うけど、お母さんや皆悲しませたく無いし不死のまままともな姿にしてもらって来るね)
「そっか、君のしたいようにすればいいと思うよ。先生やあの人達もたぶんそろそろ来てくれるだろうけど、もう大丈夫って言っておいて。…あーごめん、マジで超眠い。じゃ、おやすみー」
(うん、ゆっくり休んで。おやすみー)
そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。
慣れ親しんだレジスタンスの基地で目覚めた私は、バーサク状態が終わってもずっと五体満足の普通の体になっていた。
「うわー、バーサク化すればほぼ普通だったけど完全に手足もある姿とか何百年ぶりだろ。嬉しいけどなんか逆に慣れないなー」
「あー、起きたね英雄様、じゃなくてお母さん。おはよ」
「…あ」
そこには、猫耳で片手片足はフックと義足だけど可愛らしい獣人タイプの少女が立っていた。
「…良かった、本当に良かった。うん、おはよう」
「あー、お母さん泣いちゃった。ごめんね、泣かせちゃって」
「…ううん、気にしないで。これは、すごく嬉しい涙だから」
そして私が目覚めたと知った後は、あの人や他の子供達、レジスタンスの仲間達が次々に部屋に押しかけて来た。
やって来た仲間や子供達は、大半が呪いが解け五体満足の普通の体をしていてとても嬉しかった。
人形の子やサイボーグの子等は今の身体が気に入ってるのでという事でそのままだったが、とても幸せそうだった。
アレな状態で生体ユニットにされているだいぶ私と同類の少女は、そのままで一向に構わないとの本人の談だったが引き気味な周囲の説得によりしぶしぶ普通の姿になった。
そうしてあれよあれよという間に私は魔王を倒し国を救った英雄という事になって、正義感のある賢王から爵位と勲章を授与もされ、気恥ずかしいがバーサク状態の姿で銅像も世界中に多数建てられた。
(アレな姿の銅像は流石に一般人の目の毒すぎるので無かったが、いわゆる秘宝館的な所には数体建っている)
そして。
「…あー、あのさ。私達不死だけど明らかに死亡フラグになりそうだから、全部終わるまで言うの我慢してたんだけどさ」
「…私、あなたの事出あったその瞬間から大好きなの!だから、ド変態で悪いんだけど私と結婚してくれないかな!」
「ああ、喜んで」
「…へへー、ありがと!私、本当幸せ者だなー!」
「…んじゃ正式に婚姻も成立した事だし、私アレ超絶好きな訳で早速。…あ、あれ」
「え、う、嘘。全っ然ムラムラしない。なんで??」
「…ま、まさかクソ魔王ぶっ殺す時全性欲ぶん投げたせい!?」
「か、神様。嘘ついちゃって本当申し訳無いんですが、この前いったあの発言だけは取り消します。すいません今後も未来永劫めちゃめちゃアレしたいですうううう」
「ご、ごめんなさい神様。私からアレ取り上げたらマジで何も残らないただのアホ女になっちゃうし。お願いします神様助けてええええええ!!!」
そして数週間後、必死の祈りが通じたのかどうにかだいぶ減退していたがまたアレ欲が復活して来て、私は神様に深く感謝した。
その少し後天界で神様に再会した時は相当引いていた。
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ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
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疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
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