たっくんとゆうちゃん

kromin

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第三章

愛と恋の違い

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「あー、今回は超簡単だから、一人で行って来て。でも一応サポートの人付けるからね」

「へー、珍しいですね」


俺は一人で現場の寒村へと向かった。

「やあ、君がたっくんだね。初めまして」

その人は40そこそこの穏やかな和装の男性だった。

「僕はあまり有名ではないが、物書きをしていてね。主に恋愛関係の作品が多いんだ」
「へー、そうなんですね」
「うん、だから仕事柄、愛や恋についてよく考えるんだけどね。奥が深いけど、恥ずかしいことにまだこの年になってもなかなか答えが見つからないんだよ」

「そうですね。俺もまだ全然よく分からないけど、難しいですもんね」

「まあ、答えが出ないことを探すのも楽しいんだけどね」

「それでね、今回の人なんだけど、昭和中期の書生さんでね。両想いの人が居たんだけど、まあ家庭の事情で結ばれなかったんだ」

「それで、寿命で亡くなった後も、未練が強くて恋をしていた頃の姿で彷徨っているんだ」
「…ああ、可哀想ですね」

「まあ、とても心優しい人だから、すぐに祓えるよ」

そうして、彼はそこにいた。

「ああ、智恵子さん。どうして僕は、あの時貴女を連れて逃げられなかったのだろう」
「…仕方ないですよ」
「さあ、楽にしてあげよう」

そう言って彼は年季の入った万年筆で、さらさらと半紙に呪言を書き記し、優しく霊に貼り付けた。

「…ああ、智恵子さん。僕はまた、貴女に会えるのでしょうか」
「…すぐ、会えますよ」
「天国では、きっと結ばれるよ」

そうして、彼は優しく消えて行った。

「…どうか、あの世で結ばれますように」
俺はそっと義手を合わせた。

「―たっくん、僕は、恋と愛の違いについて、良く考えるんだけどね」

「あくまで僕の持論だけど、恋は自己満足で、愛は自己犠牲だと思うんだ」
「そして恋は奪うもので、愛は与えるものだと思う」

「…きつい事を言うようだけど、彼のそれはずっと恋だったのだと思う」

「あの世では、きちんと愛になると良いね」

「…ええ、そうですね」

「まあ、恋も愛も、どちらも素敵な物だと思うけどね」

「…そうですね」


「…たっくんには、ゆうちゃんという素敵な恋人がいると聞いた。恋を楽しんでいるかい?」
「…はい、とても。…でも、いつかは愛になりたいと思います」

「うん、そう思えるのは、良い事だね。君はとても優しい良い子だから、きっとなれるよ」
「はい、ありがとうございます」

「…あの、貴方の本読んでみたいので、タイトルとか教えて貰えますか?」
「うん、良いよ。ありがとうね」
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