狂った家族の愛の形

RodMond

文字の大きさ
9 / 14

しおりを挟む
「どうしたんだい?アゲハ。君なら、ミルクぐらいは飲めるだろう?」


「んあ?ううん、何でもない。ミルク?うん、飲む。」


嬉しそうに椅子から飛び降りると、パタパタと駆け寄って来た。

そして、ちょこんと僕の足の上に座ると、声をあげて笑った。

「ちょっ?アゲハ様。自分の席に戻ってくださいよー。薫様の邪魔になるでしょう?さぁ、こちらに。」

薫の横でグラスに水を注いでいた男が、慌てて声をかけた。

ぷすっとした顔をしたが、仕方ないという顔で僕の上から降りるとトコトコと走ってもとの席に座って、うんしょうんしょとミルクの入ったコップを持って、飲みだした。


と、ちょうどその時、大きな音をたてて扉が開いた。

志津緒が凄く真剣な顔で、何か書類を見ながら席に付き、食事を始めた。

そして、少し一生懸命ミルクを飲んでいるアゲハの方を見ると意味ありげな悲しそうな笑みを浮かべた。


「どうしたんですか?叔父上?今日は客人とお食事をされるんじゃ。」

「ん?あぁ、客ならさっき連絡があって、来るまでに小一時間かかるらしくてな。それまで何も食べずに待っているのもなんだから、食べてしまおうかと。まったく帰ってきてから、無駄な時間を過ごすところだった。それにしても『人形』とはいえ、あぁいうふうにしていたら、普通の子供だな。そうだ、明日暇があるか?」

「えぇ、どうかしたんですか?」

「あぁ、その『人形』を養女として迎えようかと思ってね。」

食べながら、モソモソとしゃべる叔父上の言葉にびっくりした。

「ほんとですか?!」

「あぁ。今日来るのは役所の人間でな。」

「アタシ、ここの子になれるの?」

アゲハは飲みほしたグラスをテーブルに置くと、嬉しそうに笑った。

食べ終わった薫と飲み終わったアゲハは、手をつなぐと嬉しそうに食堂をあとにした。


「うわぁ、嬉しいなぁ、僕に妹が出来るんだ。アゲハ、君はもう『人形』でなくていいんだ。」

ふと、食堂から聞こえる志津緒を使用人の話が聞こえて、その場から動けなくなった。

「いいんですか?あんな期待させるようなことを言って。」

「ははは。いいさ、目覚めてしまったのは仕方ない。責任をとるさ。薫の身体に移植したのはこの私だ。あいつの指示どおりにしてしまったが為に、兄さんは自分の子供の手で磔にされて死んだ。」

ドキリとした。

「サトハは今もまだ生きている。あいつのおかげでサトハは生きている。妹に対する異常な愛情を知ったあいつの囁きで、サトハは自分の父親を殺したんだ。母親は発狂して死んだ。異常なのは、アレだけではない。」

「は?」

「薫はあいつの子供だ。志津弥とアゲハの間に出来た子どもだ。サトハはたぶん今でも自分と妹の子供だと信じて疑わないだろうけどな。」

「えぇえ!?」

「あいつの妄想がここまで来たんだ。手を貸すつもりもなかったが、子供を作ったのは予想外だった。最近、ちっとも音沙汰がなかったあいつがここらへんで見るようになったと街の連中が言ってた。やつに知られる前に養女として迎えれば、何もしてこないだろう。言い張ればいい。私の子供だと。そうすればきっと・・・・・。兄は、子供にめった刺し、俺はここでサトハの見張り。こいつが動かぬ様見張る為にここにいる。」

ため息をつくような悲しい声で志津緒は言った。

「志津弥様は、確か双子の弟様でしたっけ?」

「そうだ、あいつは京介兄さん家族を実験台に生身の人間から、アンドロイドを作る実験を多くの人間を使って研究していたよ。俺が手を貸したのは、アゲハの心臓を鉛でコーティングして移植することだけだったがな。」


ため息まじりの声で、志津緒は扉の外に二人が居ることも知らず、そばにいた黒服の男にしゃべった。

薫とアゲハは食堂の扉の外で手をつないで震えていた。兄妹ではなかった僕らは親子だったんだ。

自分が叔父が引き取ってくれるまでいたあの暖かい家族を想い薫は、涙を流した。


「あの暖かい家族は、僕の目の前で火柱になった・・・・」


薫は、あの日の事を思い出して小声で呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...