狂った家族の愛の形

RodMond

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「ただいま、帰りましたぁ。」

「お帰りなさいっ。」

上の方から小さな女の子が、かわいい白いフリルのついた服をひらひらさせながら、階段を駆け下りて来た。

「どうしたの?薫・・兄様?」

少し照れながら、僕の袖をきゅっとつかんだ。

「あは。兄様か。君の名前が分かったよ。」

「え?アタシの名前?」

「そう、名前。『アゲハ』だよ。」

「・・・・・・・・・。」

少し戸惑っているみたいだった。だが、うつむいていた顔をあげた瞬間、花を咲かせた様なかわいい笑顔で笑った。

前に見た不気味な笑いよりも似合うとぼんやりと思った。

「アタシの名前!母様生きてるかな?」

「去年の夏に亡くなったそうだよ。あと何か聞いたような気がするんだけど、いっか。思い出した時でも。」

僕等は手をつないで階段を上がった。そして、部屋に入ると呼び鈴を押し、使用人を呼んだ。

「どうしましたか?薫様。」

「あれ?じいはどうしたんだ?」

入って来たのは、ごつい体をした男だった。

「彼ならだんな様が、やめさせましたよ?」

「え?病気でもしたのかな?そうなんだ。あ、そうだ夕食はまだかな?お昼食べ損ねてたんだよね。」

「もう出来てますよ。そちらのお嬢様のも用意しますか?」

「いや、連れて行くだけでいい。叔父上はどこに行ったんだい?」

部屋を出ながら、一緒に帰ってきたもののそのまま部屋に引っ込んだ叔父に一抹の不安をかかえながら言った。

「旦那様ですか?お客様が来ていらっしゃって後でお食事されるそうです。」

「そう。今日の夕食は何かな?」

「今日は子羊のソテーと新タマネギのポトフとサフランのリゾットに、デザートには洋梨のジュレです。」

「おいしそうだね。」


しっかりとアゲハの手を握って、前を歩く男に話しかけた。

そして、階段を降りきると階段したにある食堂に向かって歩いた。


ギィィィィ


重い扉が開いた。きらびやかな飾りのついたテーブルや、肖像画などの高価な装飾品が所狭しと飾ってあった。

食堂の隅っこには、青い光に照らされた水の入ったガラスの中に人のオブジェが不気味に光っていた。

そのオブジェを薫は横目に見ながら、『こんなもの食堂に置かなくたっていいのに・・・』と思った。

実は、ここに越してきた時に志津緒に怖いから、外してくれと言ったのだ。

しかし、彼は『これはここに置いておかなければならない大切で“ここから動かせないし、動くことも出来ないものなんだよ”』と言った。

今でも“動くことが出来ない”という言葉に、何か一抹の不安を持ったことを薫は見る度に思い出す。

そんなことを思っていると声がかかった。

「さぁ、薫様どうぞ。食べ終わったらお知らせください。」

薫に席を勧めると男は少し笑った。

「あぁ、そうだ。彼女、アゲハにも何か食べるものを・・・」

「かしこまりました。」

薫はナイフとフォークを持つとおいしそうに食べ始めた。

アゲハは使用人の男が扉の所で囁くように言った言葉に驚いて振り返った。

「どうせ数週間の命だ、せいぜい今を楽しめばいいさ。」
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