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回想 薫の過去2
しおりを挟む「僕が、ここのおうちに来たときお父様はどうして泣きそうな顔をしたんですか?」
バラ園の方に歩いていた薫は、ふと父の顔を見上げて言った。
「えぇ?そんな顔をしていたかい?そうだなぁ、薫がまだ生まれて間もない頃に心臓に疾患があると言われて、そのうち歩ける様になってここに来る前に大変な大手術をしたって聞いていたから何だか嬉しかったんだよ。」
「病気だから?」
「違うよ、君を産んだお母様が自分の命と引き換えに産まれて来た子が、僕等の家族になるんだと思うと、いてもたってもいられなくてその場で抱きつてしまったんだよ。」
彼はにこにこしながら、薫を抱え上げた。
「でも、お父様は最初僕みたいな子じゃなくて、もっと別の子を捜していたんでしょう?」
「誰に聞いたの!?」
薫の言葉に彼はびっくりした。
「おじさん。」
「おじさん??あぁ、薫を紹介してくれたおじさんね。彼は僕の遠い親戚にあたる人なんだけどね、父・・・じゃない、薫のお祖父様と仲が良くてね、研究者なんだ。彼のお父様も科学者でナントカって言う研究をしてらっしゃるんだけど、まぁそれはどうでもいいや僕は女の子が欲しかったんだけど、あの頃は女の子がいなかっただろう?」
「うん。皆急に居なくなっちゃった。」
「だから、他に男の子でも良いからって捜していたんだ。そしたらお母様が薫見て気に入ってね・・・だから、彼女がお母様って呼んでもらえるのが楽しみで仕方なかったんだよ。」
薫を抱きかかえたまましゃべっていると、辺り一面に広がるバラ園にたどり着いた。
「さぁついたよ。あぁ・・・・」
「?どうしたの?」
「リーナを連れてくればよかった。」
「どうして??」
薫はがっかりした声で呟く父を見て、首を傾げた。
「バラの花びらでジャムやゼリーを今日の夕食で食べたいなぁと思ってね。」
「ふぅ~ん。あ、ルー発見!!」
薫は赤い八重咲きのバラの隙間から見える青いシャツの男の方へ向かって走りだした。
「ルー!!おはよう!!」
「んあ?・・・おはようございます。薫様。」
「おはよう、ルー。マスターはどこにいるんだい??」
「あ、おはようございます。ヒューイ旦那様、マスターですか?今日は腰を痛めて小屋で休んでますよ?それより、旦那様仕事には行かれなくて良いんですか?」
薫の後ろから、にゅっと出て来たヒューイにちょっとびっくりしつつも、何でお仕事の日に旦那様がいるのか分から
ずに、目をぱちくりさせながら聞いた。
「マスターはぎっくり腰か?」
「えぇ、昨日珍しい花が入ったからって、一人で苗入れを抱え上げて・・・」
はぁ。とあきれかえった顔をしてマスターのいる小屋へ、ヒューイを連れて行った。
その頃、薫はルーと幼なじみで赤い髪をした女性の方に走っていっておしゃべりをしていた。
「あら、珍しい。旦那様がいるじゃない。どうしちゃったの?さっき、奥様がフラフラになりながら、ここの前を通り過ぎるのをみたけど。」
「お父様とお母様が追いかけっこしたんだよ、ジュリア。」
「へぇ。エリナ奥様がねぇ・・・・ってえぇぇ!?・・・あぁあ、加野さんが大変だね。あ、そうだ。さっき幸太郎が捜していたよ。何でも電報だとか。まぁ、あとであいつが直々に持っていくだろうから、薫が言わなくてもいいとは思うけど。」
「こらっジュリア!!呼び捨てにするんじゃないよ。」
「はいはい。ママがうるさいから、薫あっちに行こうぜ。」
「ジュリアァッッッ!!」
バラの植木鉢の向こうから甲高いジュリアを怒る声を出して、ハサミをジョキジョキ鳴らしながらママは叫んだ。
「ねぇ、ジュリア。どうしてミセス安津子をママって呼ぶの?」
ジュリアのあとを彼女と同じ方に走りながら、薫は言った。
「え?何でって・・・・何でだろ、皆が言っているから?」
どうしてだろう?と言いながら立ち止まって考えたらしいが、どうやら理由は分からなかったらしい。
「まったく、起きなくてもいいから、苗はどこなんですか!!」
「あら。旦那様は小屋の中?」
「みたいだね。何か新しくて珍しい苗が来たっていうから、見に来たんだけど見かけないなぁって。」
「新しい苗??」
「うん」
ジュリアは持っていたハサミを腰に付けていた道具入れに押し込むと、恐い顔をして小屋に向かって歩き出した。
「え?どうしたの??」
薫は慌てて彼女の後を追った。
「こんのくそオヤジっっっ!!」
「!?」
勢いよく小屋の扉を彼女は蹴破って入って来た。
「ジュ、ジュリア!?」
「やほージュリアどうしたんだい?」
マスターの顔が少し焦っている様に見えた。
「やほーじゃないっ。見た事ないやつがあるなぁと思って捨てたけど、またあんたかい。」
「ちょ、ちょっとどうしたの??」
ルーとヒューイは慌てた。
「旦那様っ!!このオヤジ、庭師の間で噂になってる化け物花を飼いやがったんです。」
「化け物花??何だいそれは。」
「薫様ぐらいの小さな子供を食べる悪魔のような植物ですよ。何かどっかの研究室から流れ出て来ているらしくて、今皆が躍起になって焼却処分をしている植物です!!」
「えぇぇぇぇ!?」
「じゃぁ最近の事件はその花が犯人!?」
「さぁ、それはわかりませんけど、およそ3割はそれのせいだって、町の連中が・・」
少し怒りが収まってきたのかジュリアは、徐々に落ち着いた表情を見せごにょごにょとしゃべった。
「ほぉ、マスターは薫が被害に遭ってもいいと思ったんだな。」
「い、いえ・・・そんなつもりは。」
「どんなつもりだね?私はバラの苗だと君に聞いたんだがね??」
ずずいとマスターのもとに顔を寄せると、ヒューイはマスターの胸ぐらを掴んで言った。
「あ、え、あ・・・わ、私の趣味で・・・・」
「趣味で。・・・・じゃぁないでしょうがっ!!オヤジっここはあんただけの庭じゃないのよ!?雇われ庭師が自由
にしていい訳ないでしょ。」
ジュリアは仁王立ちでさっき安津子がしたように、腰に挿していたハサミを取り出すと、ジョキジョキ言わせながら怒った。
「ジュリア・・・君はそのハサミで何をする気だい?」
ヒューイは、驚きながら彼女を見ながら言った。
「オヤジ自慢の質のいい髪を全部切る!!」
「あ・・・・そう。」
何とも言えない空気がその場に漂い、マスターは後ろに縛った長い髪を両手で隠す様に覆った。
「ねぇ。マスタ?僕にも嘘をついたの?」
妙な空気を破ったのは泣きそうな顔と声で、上半身を起こしているマスターの膝元で上目づかいで言った薫だった。
「え・・・あ・・はい。で、でも、バラの苗はちゃんと今日届くんですよ?」
薫の泣きそうな声に慌てて正直な事を言ったが、さらに泣きそうな顔をみていい訳のような弁解の言葉を言った。
「そう・・・お父様。僕、お母様の所にいます。それと、さっき幸太郎さんが捜していたそうです。」
「ん。わかった。マスターがまた妙なものを買わない様にルーかジュリアが、買い付けの時はついていきなさい。あ
とその売ってきたブローカーが何者なのかも今から君達が問いつめてあとで報告しなさい。」
「あ、はい!!」
元気よく返事をしたが、ヒューイの圧倒的な威圧感に二人はその場で固まってしまった。
「さぁ、薫。お母様の所に行こうか。」
「うん。」
二人に言い残すとくるりときびすを変え、しょげている薫をよいしょと肩車すると、バラ園から出て行った。
「あぁ・・・・怖かった。」
ジュリアはヘナヘナと地面に手をついて座り込んだ。
「で、マスター??逃げないでください?」
ルーはぎっくり腰で動けないはずの彼が、上半身をおこしておくことが出来るのかと、先程から疑問視していたので、後ろでゴソゴソ聞こえる音に警戒して声をかけた。
「あれ?オヤジ、腰痛めてんじゃなかったの?」
「どうも嘘みたい。」
「は!?嘘!?」
「でしょ?最近、様子がおかしいし、変な苗買ってくるしどうしちゃったんですか?」
呆れた顔でルーの言葉を聞いていたが、同感だというふうにジュリアは首を縦に振った。
「だって、安かったし最近苗の市場がよくないし。」
「市場が悪いからって、変なの買ってこないでよ。」
ジュリアは呆れたようにため息をつくと、マスターの頭を小突いてベットの上に座った。
「ジュリアの言う通りですよ?マスター、困るのは旦那様や奥様なんですから。で、誰から買ったんです?」
「う・・・最近話題のサトハエレメンツ・・・・」
「はぁあ!?、あのサトハエレメンツ?!あすこの研究室には異常なほどに子供に執着する研究者がいて、ホムンクルスをつくり出そうとしたり、アンドロイドとか言う化け物に変えたりして楽しんでるそうじゃない。そんなとこから変なもの、珍しいもの買ってくるの禁止。」
「・・・・・・。」
「返事は!!」
「はいぃ!!」
ジュリアの迫力のある声にマスターは、びっくりして兵隊が敬礼するように返事した。
「じゃあ僕は、旦那様に伝えてくるよ。」
「そうね。よろしく。」
「はぁぁ。」
「お嬢様どうしました?」
大きなため息をついてしょげているエレナを見て加野は、彼女の顔を覗き込んだ。
「加野?また、隣町で女の子が消えたそうよ。しかも、薫と同じ年の子・・・・」
「考え過ぎではないですか。あまり、ストレスを抱えると体調を崩されますよ。」
加野は、外からにぎやかな声が聞こえたのでバルコニーから顔を出した。
「旦那様。」
「あぁ、加野。さっきここに幸太郎が来なかったか?」
「えぇ、何でも緊急の電報だとか。」
懐にしまっていた赤い封筒を取り出すと、ヒューイに手渡した。
ガサゴソと封筒の封を切ると、ヒューイは険しい顔になった。
「どうなさいました?旦那様?」
加野はヒューイの顔が険しくなるにつれ、さっきエレナが言っていた話を思い出していた。
「隣町で女の子がいなくなったんでしょう?。」
沈黙を破る様にエレナが口を開いた。
「いや、さっき本部のシューリッヒ本部長の自宅が何者かに放火されたらしい。彼と奥さんと息子の遺体は見つかったらしいが、彼の末の娘の遺体が見つからないそうだ。」
「そんな・・・・彼もお休みでしたの?」
「あぁ。」
「旦那様、何か心配でも?」
ヒューイの足元にくっついていた薫の手をひいて部屋の中に入ると、険しい顔をしたままのヒューイと悲しそうな顔をしたエレナを見て加野は言った。
「報道では子供がいなくなったとしか、書いてないが実際はどの家も放火されていて、いなくなった子供以外は皆死んでいるんだ。」
「・・・・!!」
どさっという音ともにエレナが椅子の上から落ちた。
「エレナお嬢様!?」
「エレナ!?」
ヒューイと加野は同時に叫んだ。
「お父様?どうしたの?」
薫は二人の声でうとうとしていたのか、少し寝ぼけた様子でバルコニーの方を向いて声をかけた。
すると、加野が彼女を抱えたままカーテンに行く手を阻まれて、立ち往生していたので薫は彼にへばりついているカーテンをひいた。
「どうしちゃったの?」
「気を失ったおられるだけですよ。薫様、お嬢様がお目覚めになるまでここで一緒に寝ていてください。」
「うん。添い寝だね。」
薫は靴を脱いで母親の寝ている布団に潜り込むとスヤスヤと眠りだした。
「薫?起きなさい、薫?」
午後の明るい日差しがベットの中まで照らす気持ちのいい風とともに、薫を揺らすエレナの声が聞こえた。
「ん・・・お母様?」
「あらあら、よく寝てたみたいね。」
ふふふっと笑い、眠い目をこすりながらゴソゴソとベットから出てくる薫の頭をなでた。
「・・・?お母様はもう大丈夫なの?」
「えぇ、気を失ってただけですもの。」
自分を心配してくれている薫の顔を見ながら、エレナは世間の話がこのまま消えてしまえば良いのにと思った。
「どうしたの?お母様?暗い顔をして?・・・さっきお父様の話が怖いの?・」
薫はエレナが倒れる前に話してた事を思い出して寂しくなった。
そして、
「お母様。僕はいなくならないよ?だっていなくなる理由なんてないんだもん。」
薫はえっへんと両手を腰につけ、胸を張った。
「・・・そうね。薫はここにいるんだもの。簡単に親子の縁は切れないわね。さ、おなかすいちゃった。お昼は何かリーナに聞きにいきましょう?」
エレナと薫は手をつなぐと、リーナがいるであろう厨房の方に歩いていった。
そのころ、エレナが気を失い倒れた後、ヒューイは加野と幸太郎は机を挟んで向かい合い、怖い顔をして黙っていた。
しかし、その重い沈黙を破ったのは幸太郎だった。
「ではシューリッヒ本部長の次女、アリス様はかの研究機関に連れ去られたと?」
「あぁ、その可能性が高い。彼はあの極悪だと言われる例の研究機関に内部調査として何人かの部下を送り込んでい
るが、誰もが行方不明、事故、自殺でこの世からいなくなっている。」
「では・・・・」
「彼が何かを突き止めたのは分かっているが、聞く前に亡くなってしまった。」
ヒューイは頭を抱え、「彼はとてもいいやつだったのに」と声を殺して泣いた。
「旦那様、一つお聞きしても宜しいですか?」
「あぁ、どうした。」
「その死んだ部下には子供はいらっしゃったんですか?」
「あぁ。皆女の子だったそうだが、彼女達も・・・・・」
ヒューイは、そう言いかけて固まった。
「どうしたんですか?旦那様?」
幸太郎と加野は難しい顔をして考え事をし始めたヒューイを見ていった。
ちょうどその時、部屋の扉が勢いよく開き、ルーが入ってきた。
「あ・・・・何か。今入ってきたらヤバかった????」
「・・・・あれほど、入ってくるときはノックを・・・と」
加野は、「はぁ・・・」とため息をつき頭をポリポリかくと、入り口まで歩きながら言った。
「ごめーん。加野さん。」
「まったく、ここの子はどうしてこう礼儀がなってないですかねぇ。まったくエレナお嬢様が甘やかし過ぎなんですよ。そう思いませんか?幸太郎。」
「まぁ、いいじゃないですか。今のこの重たい空気をはねのけてくれたんですから。」
幸太郎は、ふふっと笑うとバラの葉っぱだらけになって息を切らせて入ってきたルーの肩を、ポンと叩いた。
「で、ルー。君は何をしにきたんだい?」
「え?あぁ、旦那様にね、マスタがしょっちゅう変な苗を買ってくるから、その出所がどこなのか聞いておけって言われたから、報告しに来たんだけど。今やっぱり、まずかった?」
「いや、かまわないよ。ルー。」
難しい顔をしながら、ヒューイはルーの方を見るとにこっと笑った。
「よかった。僕が聞いちゃいけない話してんのかと。」
「ははっ。そんなことないよ。で、どこだったんだい?」
「最悪ですよ。どこだと思います?」
ものすごい顔をしながら、ルーはヒューイの方に歩み寄った。
「?」
「あの極悪研究機関「サトハエレメンツ」ですよ!!」
ルーの言葉に三人が凍り付く。
そんな三人に、ルーは何かまずい事を言ったのかと、青ざめて固まってしまった。
「あぁ、そんなに固まらなくていいよ。」
「そ・・・・ですか?」
ルーは青ざめたままクルリと回れ右をすると、部屋の外に出て行った。
「やはり、黒幕は例の研究機関でしたか。」
「そのようだな。亡くなった部下達はそれぞれ薫と同じ施設から子供を貰っている。」
「では・・・」
「それは無いだろう。薫は正真正銘の男の子だ。シューリッヒには申し訳ないが、薫は大丈夫だろう。」
三人は、ルーが入ってくる前以上に暗い顔をして、ため息をついた。
「しかし、どうしましょう?・・・・ところで。」
「ん?」
「マスターの買ってくる苗っていうのは?」
「あぁ、例の機関から流れてくる不良品らしくてな、小さな子供を食べる食人植物とか、有害物質が出る植物とかが市場に出回っているらしい。たぶんそれだ。」
幸太郎は頭を抱えて叫んだ。
「あんのバカ親父!!すみません。旦那様・・・」
「何を謝ってる。君のやったことではないだろう?」
「しかし、身内ですから。」
申し訳なさそうに幸太郎は頭を深々と下げた。
「まぁ、片っ端からジュリアが焼いているみたいだけどね。心配ないと思うよ。」
「そうでしょうか。ココ最近頻発している事件の場所にはその・・・」
「その?」
「その・・・。その、おばけ植物が多く庭に植えられていたらしく、消防隊も近隣の者も立ち入れなかったとかで・・・」
おずおずと幸太郎はイスに座りながら言った。
「しかし、シューリッヒの庭にはそんなもの無かったぞ?」
「いえ、あったそうです。アリス様のお部屋に。」
「・・・・そうか。」
ヒューイはうなだれた。まさかとは思うが、あのシューリッヒが買い与えたとは思えないし、どうして、その植物がある所ばかりが狙われるのかが心配になってきた。
「幸太郎。」
「はい?」
「マスターにはよくよく言い聞かせて、買わない様に言っておいてくれ。」
「はい。」
「それから、本部に行って例の機関から流れてきているであろう植物を一斉捜査して、破棄するように伝えてくれ。そして、出来るならば買った者には罰金制度を作る様にと。」
「わかりました。伝えておきます。もちろん、マスターにも。」
深々をお辞儀をすると、幸太郎は急ぎ足で玄関の方に向かって行った。
「さて、マスターの処分はどうなさいますか?」
「そうだな。苗の買い付けはジュリアとミセス安津子に任せよう。当分マスターは本邸の庭から出る事を禁じ、行商など来ても買う事を禁じる。これでいいかな?」
「そうですね。買っているのを見つけ次第、即刻解雇したほうがいいかもしれませんね。」
「そうだな。そこのところは加野、君に任せるよ。珍しい物好きには困るな。」
「えぇ。」
加野は困った顔をしながら笑った。
コンコン
「旦那様ー??」
ノックの音と共にリーナが顔を出した。
「あ、いた。エレナ奥様と薫様が起きられて、外で昼食をとっておられますけど・・・いかがなさいます?」
「あ、いた。じゃないでしょう。」
「げっ。」
「げっっとはなんですか、げっとは!!」
あきれ顔の加野と少しいじけたリーナの顔を交互に見ながら、ヒューイは二人の肩を組んだ。
「まぁまぁ。」
「さぁ、二人とものどかな庭で、食事にしよう。リーナ、メイド達を呼んで皆で外で食事をしようじゃないか。」
「旦那様、それはいけません。」
「たまにはいいじゃないか、君はジュリア達を呼んできてくれ。」
「まったく・・・」
ブツブツと文句を言いつつ、加野はヒューイに一礼すると規則正しい足音をたてながら庭の方へ歩いていった。
リーナは、走っていこうとしたが、ヒューイの手前競歩するように変な歩き方をしてスタスタと歩いて行ってしまった。
「二人とも面白いなぁ。」
「お父様ぁーーーっ」
声がする方に振り返ると、たくさんのバラの花束を抱えて走ってくる薫を見つけた。
「どうしたんだい。そんなにバラを抱えて。」
「だって朝、お父様がバラをジャムやゼリーにしたいって言ってたから、ミセス安津子に頼んで、ジャムに出来るバラを貰ってきたんだよ。」
汗をキラキラ光らせながら、太陽みたいに顔を明るくして笑った。
ヒューイは、先ほどの恐ろしい話を少し思い出したが、こんなに明るく笑う我が子と愛しいエレナの為に被害者として名が乗らない様にしようと決意しつつ、薫に悟られないように、大きな声で笑った。
「はっはっはっ。そうか、薫。よく覚えていたな。よし、リーナの所に持って行って皆で外で食事をしよう。」
「リーナ達も?」
「そう、リーナも加野もルー達も。だ。」
「加野さんに怒られなかった?それはいけませんっって。」
「ん?あははははは。よく分かったな。でも、お父様が良しとしたんだ、それでいいんだよ。」
「ふぅーん。よくわかんないや。」
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