勇者の拳士様

星村直樹

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水の王女シレーヌのゆうつ

ギガントクリスタル

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 遥はノームと、水の生活魔法。おれとリリーは、トプンと海中に入った。
「明るい海だな」
「はい、綺麗です。マスター苦しくないですか」

 ユウは、空気の気泡に全身を覆われた。時折、頭あたりから、トプンと、吐いた息が抜けていく。

「快適だよ。ちょっと動き回るから離れていてくれ。それと共感覚」
「イエスマスター」
 リリーとユウの感覚が共有される。これで、ユウが出した水障壁がリリーにも見えるようになる。ギガントアームもだ。

 ユウが水深10メートルのところで、リリーの空気に押されて物凄いスピードで泳ぎまわりだした。

 う~ん快適なんだけど、多分魚人から見たら歩いているようなもんだろうな。早く闇魔法の重力操作を覚えないと、海中じゃあ戦えない。

 ハイデルの目から見たら、ユウは、十分魚人と戦えると思う。ユウのシュミュレーションは、達人との戦いの話。

「じゃあ、巨人化してみるか」
― もう出来るんですか?
「昨晩、ビヨンド王子に、クリスタルシールドって言うのを教えてもらったんだ。その応用かな。巨人化は、風で出来ているから水でもできると思うんだ。見てろよ」 

 水属性を持っているものだと、ユウが巨人になったように見える。ハイデルは、ユウの巨人化を見て目を丸くしている。それも、クリスタルの巨人だ。

「どうだ?」
― 風の巨人より小さいです
「質量が違うからなぁ」
― でも、モームさんぐらいの大きさはあります
「嬉しいことを言ってくれる。後で組み手をしてもらおうかな」

 そう言ってユウは、一人演舞を始めた。輝玉流一の型から始まって二の型、三の型。木の葉返しに、昇竜拳、調子が出たところで、千手羅漢拳。

― あー、縮んでますよ
「千手羅漢拳は、まだ早いか」
 ユウから水の手が無数に伸びた分だけ、体が縮まってしまった。

「じゃあ、今度は二人で、泳いでみるか」
― 了解です

 リリーとユウは、コロシアムの中を並走して泳ぎだした。共感覚効果のせいかスピードが上がる。ハイデルから見ると超高速の泳ぎ。二人がハイデルのところに、ぷくっと浮かび上がった。二人とも、褒めてという顔をしている。

「どうだった」
「お、おう、まあまあなんじゃないか」
「もっと褒めてくださいよ」
「二人で泳いでいただろ。ありゃあ、魚人と変わらねえ泳ぎだった」
「うんうん」
「ユウは、一人で、あれぐらいの泳ぎにならないとな」
「頑張ります」

 ハイデルに褒められた二人は、増々早く泳ぐようになった。二人とも元気だなと思うハイデル、そこにシャーク船長とモームがやって来た。

「おっ、やってるな」
「二人共、すじがよさそうだ」

 二人とも、コロシアムの中で酒を飲むわけにはいかない。今、観戦に来たところ。

「筋がいいどころじゃないですぜ。ユウの奴、モームの旦那ぐらいの大きさになりやがった。ありゃあ、水の巨人だ」
「なんだって!」
「面白そうなことをやってるな。水障壁を応用した巨人化だろ」
「わかるんで」
「ちょっとな、じゃあ、わしと組み手ができるんじゃないか。ユウは拳士なんだろ」
「モーム、教えてやれよ」
「オレからもお願いします。ユウを手ほどきして下せえ」
「ワハハハ楽しみだ」

 コロシアムをクルクル回って、またハイデルに褒めてもらおうと戻ってきた二人に海中のモームが組み手をしようと誘ってくれた。


 遥は、リリーに風属性を体に巡らす覇気功を教えて、ユウと同じ剛気功に進んでいた。剛気功とは、息を吐くとき気を集め沈殿させ、その重い気を体内で巡らす呼吸法だ。覇気功と違い、積極的に息を吐くところが違う。思ったより苦しい呼吸法だが、慣れると、いちいち集中力をあげてなんてことを考えなくて済む。それぐらい呼吸が安定する。まだ、息を吸って体内で気を練る内陽功は教えてもらっていないけど、この、剛気功に、水属性が含まれている。その為、遥は、現在水属性の魔力が上がっている。 

「ハウルカ様から、水の魔力を感じます。それなのに、水魔法は、全くの素人なのですか」
「そうです。最近水の魔力を体内に巡らせることが出来るようになったばかり。だから、シャワーの水とか飲み水とか、自分で出来るとこはやりたいの」
「不思議なことがあるものですね。魔力の適性など、生まれた時から決まっているものなのに」
「そうですね。多分私とユウは、体内に宇宙を宿しているからじゃないでしょうか。宇宙は4大元素をその中に含みますから」
「それは神域ですか?」
「光と闇、表裏一体の世界の事です。これは、この世界の教えではないので、聞き流していただいてもいいと思います。古神道という教えの話です」
「はぁ、フーム。また教えてください。すいません、先生が教える方でしたね。水は、生命が育めるところには、必ずあります。ですから、それを手のひらに集めるイメージをすれば、手のひらに、水が集まります。ほら」

 ノームは手の平に水玉を生成して見せた。
「これは、無から水を出したわけでなく、水分を集めた水玉。このイメージがコツです」

「こうですか?キャッ」
 遥の手の平には、ギュウンと巨大な水玉が生成された。本人がびっくりしている。先生の教えがいいと直ぐできるものなのかしらと首をひねっている。

「いいですけど、水玉の大きさをイメージしませんでしたね。それでは大きすぎるので、これぐらいの大きさをイメージしてください。残りの水は、コロシアムに流していいですよ」
 ノームが本気になれば、このコロシアムぐらいの水玉を生成できる。適当な大きさにできるのも授業の内。

 バシャバシャバシャ。遥は、この小さな水玉を作るのに苦労した。自身の魔力が大きすぎて制御できなかったからだ。

「やっとできた。こうですね」
「はい、よくできました。なぜ水玉が宙に浮いているかというと、私たちは、空気中に浮いている水分を集めるイメージをしたからです。この水玉は、その空気中の水分が寄り集まっているだけ。だから宙に浮いています。この雲が凝縮されたような水は、動かすことが出来ます。集めることが出来たのです。水玉を回転させたり、遠くに飛ばすことも可能。では回転から」

 ノームの手の平にある水玉が、ぎゅーーーんと回転しだした。
「初めはゆっくりでもいいです。では、どうぞ」

「えっと」
「手のひらの水を感じて。ハウルカ様の魔力が、この水たちを繋いでいます」

 遥が、手のひらの水玉に集中すると、ぽちょんと水のしずくが垂れ、そこに波紋が広がったような気がした。
「わかります」
「それを回して。かき混ぜてもいい」

 遥の水玉が回転しだした。それは、ノームと違い中に気泡を含んでいた。
「水は流れるものです。かき混ぜるのを止めて流して。中心に向かって流れるようにするのです」

 水玉は、気泡を外に排出して、水だけで回転しだした。最初はゆっくり流れるように、そして、中心に向かって流れるように。
「そうです。目を瞑っていないで、ご自分の水玉を見てください」
「わっ、すごい!」

 遥の手の平にある水玉は、永遠と中心部に向かって水が流れていた。

「いいですね」
「私って天才?」
「これぐらい小学生でもできます」
「そうですか・・・」

「それでは、これを・・・・、・・」

 ノームが、次の指示を言い終わらないうちに、ドゴンという衝撃音と共に、コロシアムが揺れた。コロシアムの空には、モームが吹っ飛ばされて宙に浮いていた。遥は、この衝撃で、やっとうまく作った自身の水玉をコロシアムに落としてしまった。
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