碧の幻獣使い

星村直樹

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ファイブディメンション

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 現場に着いた、ここは、水深の浅い棚にあたるはずなのに、海溝がある。ここを海流が通っていた。海の川だ。
 サーチライトに照らされた海溝は、水深300から400メートル。人の肉眼でやっと知覚できる深さだ。

「本当に、海の中に川がある。どうでもいいけど暗いな。潜水艇に照らしてもらわないと見えないんじゃないか」
― 大丈夫だ。ソナーがある。これで、地形を3D化して、視覚に同調させるよ

「ほら、あそこに仲間がいっぱいいるでしょう。あの岩が飛び出したところに間違いないわ」

「ポポさん。潜水艇を寄せられますか」

「川の上は、そんなでもないから、近くまでは行けるよ。でも、あの中に入ったら、この船は、ばらばらだ」

「近くまででいいっす」

 潜水艇は、水の妖精がいっぱいいるところに停泊した。

「ホンじゃあ行ってきます」
「私も出る」
「シャディは、アディが来るまで待ってろよ」
「すぐには来れないわ。みんなと話したい。みんなでいた方がいろいろ話せるのよ」
「わかった」

「気いつけてな」
「多分、川の水温は、ものすごく低いぞ。突発的な水圧がかかると、一瞬エアーバリヤーが外れるぞ。物も流れているわかるな」
 ロウガは職人らしい分析をする。

「大丈夫だ。おれの青線が入った服は防護服だ。保温も通気もする優れものだ」

「神官服と同じだ。だが気を抜くな」

 おれは手をあげて、それに答えた。


 海中に出ると、シャディが、クリオネのように見えるようになった。そして、音声を止めテレパシーで話しかけてきた。おれのは、ロウガが詳細に作ったせいか、人形のホルムが強い。

「みんなに、場所を聞きましょう」

 泳ごうかなと思ったが、シャディとスピードが違いすぎる。結局、腰のエアー放出機を使って移動した。

 こりゃあ、川でもそうするしかないな

  樽は、川面に有って、上から蹴ればいいだけかと思っていたが、妖精みんなが指さす方を見ると、川の中、それも底の方をぐるぐる回っている。

「あれか、やばいじゃないか」

「火の守りがなかったらバラバラだよ。だから、壊れていないと思う」
「流れに戻して」

「潜水艇に戻って、ずっと樽を照らすように言ってくれよ。シャディ。おれは川上から川に入って底を目指す。樽のあるポイントを見失いたくないんだ」
「分かったわ」

 妖精たちが、「下僕なのにすごいね」、「あんな所に入ったら、死んじゃうんじゃない」、「下僕だから、いいんだよ」と、ムッとすることを言っている。多分、川の中で危なくなったら、パトーナムで防衛するから見てろよと、思う。

「みんな、障害物が来ないか見ていてくれ。何人か上流に行ってくれ。中継は、シャディだ」

「了解」
「了解」

 水の妖精がパッと散る。

 上流に向かう妖精たちと一緒に遡上し、途中から、川底を目指しながら流れに乗る。

「じゃあな」

「行った!」
「がんばって」

「うほっ、流れが強すぎる」
 エアー放出機で、ブレーキをかけながら進む。無意識にスキル、ベクトル変化を使って常態を保っている。遠くに、潜水艇のサーチライトで照らされたポイントが見える。

「よし、海底だ」
 その時、何かぞろぞろうごめいている者が見えた。

「ヒロ大変。軍隊エビよ。彼らのテリトリーに行かないで」

「無茶言うな。樽は川底だ」

 軍隊エビは、この悪天候で、海底から浮上している栄養を川底でむさぼっているようだ。体長が1メートルある。

「コンピューター、軍隊エビのレベルは」
― 10だ
「おれといっしょ?」
― 補強された剣の威力を考慮。こっちが勝つぞ
「そりゃ、一匹の場合だろ」
― 来たぞ

「こうなりゃ、やけだ。シャディ、今夜は、エビ尽くしだぞ。みんなにそう言え」

「無茶しないで。待って・・」

 軍隊エビは、自分のテリトリーを犯されたと思って、どんどん、おれに挑んでくる。こっちは剣が一本。相手は、はさみが二本。百枚甲がなかったら、腕をちぎられていたところだ。

 おれは、軍隊エビの頭の後ろに剣を刺して、脳を狙う。相手が体長1メートルでよかった。剣が脳に届く。その代わり、向こうのはさみも、おれに届く。ばらばら、百枚甲の手甲がそぎ落とされていく。それでも、そぎ落とされた後は、新品のような手甲に戻る。

 魔法アイテムすげえ

 死んだ軍隊エビは、川に逆らうことができず流されていく。

― レベル11になりました。
― レベル12になりました。剣技、回転突きを覚えました。
― レベル13になりました。

 三匹同時に襲い掛かって来た。

「パトーナム」
 両手でパトーナムを出し、盾の形ができるときの押し出し効果で、三匹を跳ね返す。

― レベル14になりました。パトーナム無双を覚えました


 限界だと思った時、サーチライトに照らされた、樽が目に入った。
- ヒロ
> ヒロ

「よし、つかんだ。エアー噴射最大」
 おれは、軍隊エビから逃げるために、川の流れに沿って遁走した。
> 駄目よ浮上して
― 前方に、巨大生物

 おれは川の中で、ぱっくり口を開けている巨大生物に飲み込まれた。殺した軍隊エビが撒き餌になって、更なるモンスターを呼び起こしたようだった。




 急にシャディの声が途絶えた。

「飲み込まれちゃったか。コンピューター。どんなやつだった」
― 頭が馬鹿でかいやつだ。レベル測定は間に合わなかったよ。海水も大量に飲み込んでいたから、此処なら、すぐには消化されないが、奥に行くほどまずいだろうな

「対策は?」
― 頭側に戻ってエラから逃げるとか
「こいつを抱えてか。でも、樽が無事でよかった」
― ほら、海水をこしながら、胃袋に餌を入れているだろ。あれが終わったら、消化が始まるぞ

「しょうがない、あれをやってみるか」
― なんだ、あれって
「おっ、やっとコンピューターを出し抜いたか。ディメンションだよ。おれは、この世界に来た時から、ずっと原因を考えていた。初期のころのお前は、おれとのレスポンスが無いに等しかったから、わからなかっただろけど。重力魔法と光魔法の合わせ技で、異次元の扉を開けたんだ。どうだ、可能性はあるか」
― あるけど、とんでもないエネルギーがないと無理だ
「多分、一瞬でいいんじゃないか。永遠の一瞬だよ。とにかく、それしかない。やるぞ」

 おれは、左に重力魔法を 右に光の防御魔法を展開した。

「ダークグラビティ。パトーナム」

 その左手のダークグラビティに、右手の白色化したパトーナムをぶつけた。

 左手の黒点化した重力の中に、光が照らされ、中央だけ、ソラリゼーションのように更に黒点化した。

― ファイブディメンション発生。しかし、すでに崩壊が始まっています。上部の空間、かろうじて維持

「分かった」
 一点だけ、明るい場所がある。
 おれは、腰のスイッチを全開にして、エアーを大放出した。そこは、怪物の潮吹き穴だった。他の場所では抜けられなかっただろう。運がよかったのだ。

「コンピューター!」
= ファイブディメンション失敗。スキル、獲得できません
「いや、結果往来だ」

 五次元空間。それは空間連鎖のことだ。同じ場所の違う空間。もし、怪物が、その場から移動していたら、そこは、だれもいない空間になる。実際は、そう言う空間の方が多いのだ。ヒロは、怪物の閉鎖空間を通り抜けるように外に出た。ただ、今のレベルで長距離は、難しい。閉鎖空間に取り残されると、圧死することになる。運が良かっただけだった。

>ヒロ、ヒロ無事なの

>エルフ様?
>エルフ様、万歳
>エルフ様が戻ってこられた

「なんとかな。樽は無事だ。でも、ミランダが来るのをまとう。ずいぶんぶつけたからな。サミルもいるんだろ。火の守りがちゃんとしているか見てもらう」
>わかった
「シャディ、みんなに、エルフじゃないって説明してくれよ」
>難しいわ。みんなに、潜水艇に集合してって言う

 振り向けば、提灯が無いアンコウの様な魚の化け物が、まだ、川を遡上しながら軍隊エビを食べていた。
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