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エピソード15 MAOH WORLD!
魔王と天啓と発動効果
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「そ……そのまんまでも大丈夫……だと?」
シュータの言葉を聞いたギャレマスは、訝しげに首を傾げた。
「そ……それはどういう意味だ? そ、それに、“今の状態”とは、一体……?」
「ああクソ、面倒くせえなぁ」
問いを重ねるギャレマスに、シュータは再び機嫌を損ね、露骨に眉を顰める。
「んなモン、いちいち訊くんじゃねえ。いちいち懇切丁寧に説明してもらわなきゃ動けねえ新入部員かよ、テメエは?」
「い、いや……そうではないが……」
「俺が大丈夫っつったら大丈夫なんだから、四の五の言わずにちゃっちゃと動けやこのボケ」
シュータは、躊躇するギャレマスに苛立ちを露わにしたが、ふとサリアの方に視線を向けた。
そして、“ステータス確認”で彼女の情報を読み取るや、表情を曇らせる。
「……いいから早くしろ! 本当に時間が無さそうだぞ!」
「ッ!」
シュータの緊迫した声に、ギャレマスも表情を強張らせ、娘の方に目を向けた。
「いかん……ッ!」
“ちーと能力”を用いるまでもなく、娘がいよいよ予断を許さぬ状況に陥っているのを悟ったギャレマスは、自分の体が超高重力に囚われていている事も忘れて、無我夢中で地面を蹴る。
――次の瞬間、
「……お、おおっ?」
彼の口から驚きの声が漏れた。
「う、動ける……?」
さっきまで、凄まじい重力のせいで指一本動かすのも一苦労だったのに、今はゆっくりではあるが体を動かす事が出来る……!
なぜ急に動けるようになったのかの理由が分からず、戸惑うギャレマスだが、今はそんな事を考えている暇など無い。
「――待っておれ、サリア! 今、この父が助けに行くぞ!」
三十歩ほど離れた石床の上で、苦しげに肩で息を吐いている娘に向けて声をかけたギャレマスは、圧し掛かる高重力によって全身の筋肉と骨が悲鳴を上げるのを感じながら、それでも歯を食い縛って一歩一歩ゆっくりと彼女に近付いていく……。
「……そうだよ。それでいい」
そんな彼の事を、金色に光る瞳で見つめながら、シュータは口の端を緩めた。
“ステータス確認”が発動している彼の視界には、ギャレマスの現在のステータスが見えている。
その頭上に表示されている『イラ・ギャレマス』というNAME欄は、いつもの表示とは少し違って黄金色に輝いており、その下には装飾枠の付いた文字列が新たに表示されていた。
そこには、こう書いてある。
【天啓・“愛は1000パーセント”発動中】
――と。
「……まだ気付いてねえのかよ、あのボケ。自分の天啓によ」
シュータは、呆れ顔で呟いた。
「“愛は1000パーセント”……発動効果は、『自身が心の底から愛する者の危機に際して発動し、全ステータスに最大十倍の能力異常亢進がかかる』……か」
“ステータス確認”を通して、ギャレマスの天啓の効果を改めて確認したシュータは、「まったくよぉ」と零しながら、僅かに苦笑んだ。
「……『愛する者の危機に際して発動』なんて、全然ラスボス魔王らしくないけど、この上なくイラ・ギャレマスらしい天啓だぜ、マジで」
――一方、
「ぐ……うう……っ!」
シュータにそんな事を言われているとは露知らぬギャレマスは、自身の身にかかる超高重力に必死で抗いながら、サリアの元へ近づいていく。
「ま……待っておれ、サリア……! もう……もう少しの辛抱だ……!」
“愛は1000パーセント”を発動して、能力に十倍の能力異常亢進がかかっているとはいえ、その身体には通常時の五十倍以上の負荷がかかっている。そのせいで、立って歩くのだけで精いっぱいだ。
その上、高重力がかかるギャレマスが一歩踏み出すごとに、その凄まじい重みに耐え切れずに石床が砕け、ますます彼の足場を危うくさせた。
それでも、彼は殊更に高く足を振り上げながら、娘へ近付く次の一歩を踏み出し続ける。
その甲斐あって、ようやくサリアまであと十歩ほどまでの距離まで接近したギャレマスは、少しでも早く娘の元に辿り着こうと、それまでよりも大股に足を伸ばし――それが裏目に出た。
大きく足を踏み出した事で、彼の身体の重心が大きくブレたのだ。
そのブレがギャレマスの身体の平衡を崩し、崩れた平衡は荷重となって、彼の身体の一点に集中する。身体の真ん中――腰へと。
――ゴキリ。
「……あ」
腰の辺りで鳴った、聞き覚えのある嫌な音に、ギャレマスの顔がみるみる青ざめる。
「が……し、しまっ……た……! こ、こんなタイミングで……がががががががっ!」
絶望感に塗れた彼の声は、途中で苦悶の絶叫へ変わった。
「こ、腰が……腰ががががががあああああっ!」
顔面蒼白で断末魔のような悲鳴を上げたギャレマスは、腰を押さえながらその場に崩れ落ち、顔面からダラダラと脂汗を垂らしながら石床の上でのたうち回る。
……それも致し方ない。何せ、この大事な局面で、彼が抱える最大にして最悪の弱点が牙を剥いたのだ。
そう――“魔女の一撃”が。
「お……おのれ……こ、ここまで来て……!」
ギャレマスは、腰を襲う激痛に七転八倒しながらも、何とかサリアの元まで辿り着こうと、執念で石床を這いずる。……が、その進みはカタツムリよりも遅かった。
そうしているうちにも、サリアの状況はどんどん悪くなっていく。
そんな娘の姿に胸が張り裂ける思いを抱きながら、彼は天を振り仰いだ。
「い、一体……サリアが何をしたというのだ? 答えろ、神よ!」
娘の不運を嘆き、ギャレマスは天に向けて咆哮するが、当然のように何の答えも返ってこな――、
「――陛下!」
答え……否、応えは、意外な方向から返ってきた。
その声にハッとしたギャレマスは、慌てて振り返る。
彼の目に映ったのは……大きく広げた両手を自分の方に向けた蒼髪の少女の姿――!
「――す、スウィッシュ?」
「陛下! 歯ぁ食い縛って!」
「……へ?」
スウィッシュの口から出た鋭い声の意味を測りかね、思わず当惑の声を上げたギャレマス。
と、次の瞬間――、
彼が腹這いになっている石床の下に浮かび上がった蒼い魔法陣の中から巨大な氷筍が屹立し、
「う、うおおおおおお~ッ?」
その身体を斜め前に吹き飛ばしたのだった――!
シュータの言葉を聞いたギャレマスは、訝しげに首を傾げた。
「そ……それはどういう意味だ? そ、それに、“今の状態”とは、一体……?」
「ああクソ、面倒くせえなぁ」
問いを重ねるギャレマスに、シュータは再び機嫌を損ね、露骨に眉を顰める。
「んなモン、いちいち訊くんじゃねえ。いちいち懇切丁寧に説明してもらわなきゃ動けねえ新入部員かよ、テメエは?」
「い、いや……そうではないが……」
「俺が大丈夫っつったら大丈夫なんだから、四の五の言わずにちゃっちゃと動けやこのボケ」
シュータは、躊躇するギャレマスに苛立ちを露わにしたが、ふとサリアの方に視線を向けた。
そして、“ステータス確認”で彼女の情報を読み取るや、表情を曇らせる。
「……いいから早くしろ! 本当に時間が無さそうだぞ!」
「ッ!」
シュータの緊迫した声に、ギャレマスも表情を強張らせ、娘の方に目を向けた。
「いかん……ッ!」
“ちーと能力”を用いるまでもなく、娘がいよいよ予断を許さぬ状況に陥っているのを悟ったギャレマスは、自分の体が超高重力に囚われていている事も忘れて、無我夢中で地面を蹴る。
――次の瞬間、
「……お、おおっ?」
彼の口から驚きの声が漏れた。
「う、動ける……?」
さっきまで、凄まじい重力のせいで指一本動かすのも一苦労だったのに、今はゆっくりではあるが体を動かす事が出来る……!
なぜ急に動けるようになったのかの理由が分からず、戸惑うギャレマスだが、今はそんな事を考えている暇など無い。
「――待っておれ、サリア! 今、この父が助けに行くぞ!」
三十歩ほど離れた石床の上で、苦しげに肩で息を吐いている娘に向けて声をかけたギャレマスは、圧し掛かる高重力によって全身の筋肉と骨が悲鳴を上げるのを感じながら、それでも歯を食い縛って一歩一歩ゆっくりと彼女に近付いていく……。
「……そうだよ。それでいい」
そんな彼の事を、金色に光る瞳で見つめながら、シュータは口の端を緩めた。
“ステータス確認”が発動している彼の視界には、ギャレマスの現在のステータスが見えている。
その頭上に表示されている『イラ・ギャレマス』というNAME欄は、いつもの表示とは少し違って黄金色に輝いており、その下には装飾枠の付いた文字列が新たに表示されていた。
そこには、こう書いてある。
【天啓・“愛は1000パーセント”発動中】
――と。
「……まだ気付いてねえのかよ、あのボケ。自分の天啓によ」
シュータは、呆れ顔で呟いた。
「“愛は1000パーセント”……発動効果は、『自身が心の底から愛する者の危機に際して発動し、全ステータスに最大十倍の能力異常亢進がかかる』……か」
“ステータス確認”を通して、ギャレマスの天啓の効果を改めて確認したシュータは、「まったくよぉ」と零しながら、僅かに苦笑んだ。
「……『愛する者の危機に際して発動』なんて、全然ラスボス魔王らしくないけど、この上なくイラ・ギャレマスらしい天啓だぜ、マジで」
――一方、
「ぐ……うう……っ!」
シュータにそんな事を言われているとは露知らぬギャレマスは、自身の身にかかる超高重力に必死で抗いながら、サリアの元へ近づいていく。
「ま……待っておれ、サリア……! もう……もう少しの辛抱だ……!」
“愛は1000パーセント”を発動して、能力に十倍の能力異常亢進がかかっているとはいえ、その身体には通常時の五十倍以上の負荷がかかっている。そのせいで、立って歩くのだけで精いっぱいだ。
その上、高重力がかかるギャレマスが一歩踏み出すごとに、その凄まじい重みに耐え切れずに石床が砕け、ますます彼の足場を危うくさせた。
それでも、彼は殊更に高く足を振り上げながら、娘へ近付く次の一歩を踏み出し続ける。
その甲斐あって、ようやくサリアまであと十歩ほどまでの距離まで接近したギャレマスは、少しでも早く娘の元に辿り着こうと、それまでよりも大股に足を伸ばし――それが裏目に出た。
大きく足を踏み出した事で、彼の身体の重心が大きくブレたのだ。
そのブレがギャレマスの身体の平衡を崩し、崩れた平衡は荷重となって、彼の身体の一点に集中する。身体の真ん中――腰へと。
――ゴキリ。
「……あ」
腰の辺りで鳴った、聞き覚えのある嫌な音に、ギャレマスの顔がみるみる青ざめる。
「が……し、しまっ……た……! こ、こんなタイミングで……がががががががっ!」
絶望感に塗れた彼の声は、途中で苦悶の絶叫へ変わった。
「こ、腰が……腰ががががががあああああっ!」
顔面蒼白で断末魔のような悲鳴を上げたギャレマスは、腰を押さえながらその場に崩れ落ち、顔面からダラダラと脂汗を垂らしながら石床の上でのたうち回る。
……それも致し方ない。何せ、この大事な局面で、彼が抱える最大にして最悪の弱点が牙を剥いたのだ。
そう――“魔女の一撃”が。
「お……おのれ……こ、ここまで来て……!」
ギャレマスは、腰を襲う激痛に七転八倒しながらも、何とかサリアの元まで辿り着こうと、執念で石床を這いずる。……が、その進みはカタツムリよりも遅かった。
そうしているうちにも、サリアの状況はどんどん悪くなっていく。
そんな娘の姿に胸が張り裂ける思いを抱きながら、彼は天を振り仰いだ。
「い、一体……サリアが何をしたというのだ? 答えろ、神よ!」
娘の不運を嘆き、ギャレマスは天に向けて咆哮するが、当然のように何の答えも返ってこな――、
「――陛下!」
答え……否、応えは、意外な方向から返ってきた。
その声にハッとしたギャレマスは、慌てて振り返る。
彼の目に映ったのは……大きく広げた両手を自分の方に向けた蒼髪の少女の姿――!
「――す、スウィッシュ?」
「陛下! 歯ぁ食い縛って!」
「……へ?」
スウィッシュの口から出た鋭い声の意味を測りかね、思わず当惑の声を上げたギャレマス。
と、次の瞬間――、
彼が腹這いになっている石床の下に浮かび上がった蒼い魔法陣の中から巨大な氷筍が屹立し、
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