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エピソード16 魔王と円卓の勇士たち
魔王と勇者と心配
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「ん……?」
ふと気配を感じて振り返ったファミィは、自分たちの方に近付いてくる者の姿を見て、安堵の表情を浮かべた。
「目が覚めたのか、魔王。……って、どうした、そのザマは?」
「あ、あぁ……」
両脇をアルトゥーとスウィッシュに支えられて歩いてきたギャレマスは、額に脂汗を浮かべながら、バツ悪げに答える。
「さ……さっきの戦いでギックリ腰になっていた事を忘れていて、うっかり急に動いたら……痛ちちち……」
「いや、うっかりて……相変わらず、魔王のクセにしまらない男だな……」
ギャレマスの答えに呆れ顔を浮かべたファミィだったが、心配そうな顔で彼を支えているスウィッシュに対しては表情を一変し、優しく微笑みかけた。
「まあ……それはともかく――良かったな、スウィッシュ。魔王が無事に目を覚まして……」
「……うん」
ファミィの優しい言葉に、スウィッシュは涙で濡れていた頬を綻ばせ、大きく頷く。
「本当に良かった……お元気で……」
「あっ、起きたんだね、魔王さん!」
大きな三角耳でふたりの会話を聞きつけたジェレミィアも、朗らかな声を上げながらギャレマスの元へと駆け寄った。
だが、土気色の顔色をして、苦しげに息を吐いている魔王の様子を見て、訝しげに首を傾げる。
そんな彼女に、ファミィがそっと耳打ちした。
「……ギックリ腰だそうだ」
「あぁ~、そういう事~」
ファミィに理由を教えられたジェレミィアは、目を丸くしながら、納得した様子で何度もうんうんと頷く。
「確かに、死んだウチのばーちゃんがギックリ腰の時もそんな感じだった。――魔王さん、だいじょーぶ?」
「あ、あぁ……」
ジェレミィアに気遣いの言葉をかけられたギャレマスは、決して大丈夫そうじゃなさそうな顔をしながらも、ぎこちなく首を縦に振ってみせた。
「も、問題無……くはないけれど、まあまあ大丈……ぐががががっ!」
「あんまり大丈夫じゃなさそうだねぇ……」
強がろうとしたものの、まんまと失敗したギャレマスに哀れむような視線を向けたジェレミィアは、何かを思いついた様子でポンと手を叩き、「あ、そうだ! いいこと考えた」と声を弾ませながら、おもむろに後ろを振り返る。
「ねえ、シュータ! さっきみたいに魔王さんを回復してあげなよー」
「ヤダよ、めんどくせえ」
ジェレミィアに声をかけられたシュータは、石床に膝をついたままの格好で振り返りもせず、不機嫌な声で即答した。
「何で、勇者の俺が魔王なんかを治してやらなきゃいけねえんだよ?」
「えーっ? でも、さっきは回復させてあげてたじゃん?」
「アレは、あの敵に対抗できそうなのが魔王しか居なかったからだ。たかがギックリ腰ごときに使ってやるほど、俺の“超回復”は安くは無えんだよ」
ジェレミィアの問いかけに憮然とした声で答えたシュータは、そこでようやく肩越しにギャレマスの方を一瞥し、『こっちに来い』と言うように顎をしゃくる。
「テメエの腰なんかクソどうでもいい。……それより、コイツが目を覚まさない事の方がよっぽど心配だ」
「……っ!」
ギャレマスは、シュータの言葉にハッとして、彼が膝をついている石床の方に目を向けた。
彼の前には、古龍種のポルンが腹這いになって座っており、その巨大な腹にもたれかかるようにして、ひとりの少女が体を横たえている。
「サリア……!」
ぐったりとした愛娘の姿を目にした途端、ギャレマスは上ずった声で彼女の声を呼びながら、腰の痛みも忘れた様子で彼女の元へ急いだ。
「おお、サリア……」
スウィッシュに身体を支えられながら、横たわるサリアの傍らに膝をついたギャレマスは、上ずった声で娘の名を呼びながら、その赤い髪を震える手でそっと撫でる。
「サリア様……!」
彼の隣に控えたスウィッシュも、サリアの手を取りながら、泣きそうな顔で呼びかけた。
……だが、彼女は依然として目を覚まさない。
「サリア様……起きて……早く起きて下さい……!」
「サリア……皆が待っておる。だから、早く起きるのだ……!」
ふたりが、懇願するようにサリアへ必死に声をかけるものの、それでも彼女の目は固く閉じられたままだ……。
「サリア……」
「……さっきからずっとこんな調子だ」
さすがに不安を覚えるギャレマスに、珍しく困惑した様子でシュータが首を傾げた。
「エラルティスの対魔完滅法術で浄滅寸前まで削られたサリアの理力は、俺の“超回復”で全回復させた。だから、すぐにでも目を覚ますはずなんだけどよ……」
「やはり……考えたくはないが……」
シュータの言葉に表情を曇らせたのは、アルトゥーだった。
「もう、姫の精神……いや、魂が大きなダメージを受けてしまっ――」
「縁起でも無い事言わないでッ!」
アルトゥーの沈痛な響きの籠もった言葉を、スウィッシュが金切り声で遮った。
「だ……大丈夫だってば! サリア様は絶対に助かるの! だって……さっき陛下がおっしゃったもの……ルコーナ様が守って下さってるって、!」
そう、大きく頭を振りながら叫んだスウィッシュは、縋るような目をギャレマスに向ける。
「そうですよね、陛下ッ?」
「あ……あぁ! そうだとも!」
紫瞳を涙で潤ませたスウィッシュにそう問いかけられたギャレマスは、一瞬間をおいてから力強く頷いた。
「スウィッシュの言う通りだ! 心配ない! サリアの……そして、ツカサの魂も無事だ、多ぶ……いや、絶対に!」
「……だったら、何で目を覚まさねえんだよ、コイツらはっ?」
キッパリ (?)断言するギャレマスに苛立ちを見せながら、シュータが声を荒げる。
「ケガも治したし、理力も戻した! ……なのに、なんでずっと眠ったままなんだよ? 何がネックになってるって言うんだよ、オイ!」
「い、いや、それは……正直余にも……」
シュータに胸倉を掴まれ、タジタジとなるギャレマス。
彼は内心戸惑い、そして驚いていた。
いつも人を小馬鹿にしたような顔をしているシュータが、今は打って変わって必死の形相をしているからだ。
こんなに余裕が無い彼は、今まで見た事が無い……。
――と、
「ヒョッヒョッヒョッ!」
突然、シリアスな空気を吹き飛ばすようなバカ笑いが上がった。
その場に居た全員が、一斉に笑い声の主へ目を向ける。
「そりゃあ……アレじゃな」
皆の注目を浴びた老エルフは、顎髭を撫でながらしたり顔で言った。
「ここはひとつ、“おとぎ話のテンプレ”に倣うのはどうじゃろ?」
「おとぎ話……のてんぷれ……?」
ヴァートスの言葉に首を傾げながら、ファミィが訊き返す。
「倣うって……どう倣えばいいと言うんだ? ……というか、“古典のてんぷれ”って、そもそも何なんだ?」
「ヒョッヒョッヒョッ! そんなの、言うまでも無かろう!」
ファミィの問いかけに、ヴァートスは下卑た笑いを浮かべながら高らかに答えた。
「呪いや魔法や毒リンゴで深い眠りについたお姫様を起こす一番の特効薬は、姫を愛する人からの接吻と相場が決まっておるもんじゃ、ウヒョッヒョッヒョッ!」
ふと気配を感じて振り返ったファミィは、自分たちの方に近付いてくる者の姿を見て、安堵の表情を浮かべた。
「目が覚めたのか、魔王。……って、どうした、そのザマは?」
「あ、あぁ……」
両脇をアルトゥーとスウィッシュに支えられて歩いてきたギャレマスは、額に脂汗を浮かべながら、バツ悪げに答える。
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「いや、うっかりて……相変わらず、魔王のクセにしまらない男だな……」
ギャレマスの答えに呆れ顔を浮かべたファミィだったが、心配そうな顔で彼を支えているスウィッシュに対しては表情を一変し、優しく微笑みかけた。
「まあ……それはともかく――良かったな、スウィッシュ。魔王が無事に目を覚まして……」
「……うん」
ファミィの優しい言葉に、スウィッシュは涙で濡れていた頬を綻ばせ、大きく頷く。
「本当に良かった……お元気で……」
「あっ、起きたんだね、魔王さん!」
大きな三角耳でふたりの会話を聞きつけたジェレミィアも、朗らかな声を上げながらギャレマスの元へと駆け寄った。
だが、土気色の顔色をして、苦しげに息を吐いている魔王の様子を見て、訝しげに首を傾げる。
そんな彼女に、ファミィがそっと耳打ちした。
「……ギックリ腰だそうだ」
「あぁ~、そういう事~」
ファミィに理由を教えられたジェレミィアは、目を丸くしながら、納得した様子で何度もうんうんと頷く。
「確かに、死んだウチのばーちゃんがギックリ腰の時もそんな感じだった。――魔王さん、だいじょーぶ?」
「あ、あぁ……」
ジェレミィアに気遣いの言葉をかけられたギャレマスは、決して大丈夫そうじゃなさそうな顔をしながらも、ぎこちなく首を縦に振ってみせた。
「も、問題無……くはないけれど、まあまあ大丈……ぐががががっ!」
「あんまり大丈夫じゃなさそうだねぇ……」
強がろうとしたものの、まんまと失敗したギャレマスに哀れむような視線を向けたジェレミィアは、何かを思いついた様子でポンと手を叩き、「あ、そうだ! いいこと考えた」と声を弾ませながら、おもむろに後ろを振り返る。
「ねえ、シュータ! さっきみたいに魔王さんを回復してあげなよー」
「ヤダよ、めんどくせえ」
ジェレミィアに声をかけられたシュータは、石床に膝をついたままの格好で振り返りもせず、不機嫌な声で即答した。
「何で、勇者の俺が魔王なんかを治してやらなきゃいけねえんだよ?」
「えーっ? でも、さっきは回復させてあげてたじゃん?」
「アレは、あの敵に対抗できそうなのが魔王しか居なかったからだ。たかがギックリ腰ごときに使ってやるほど、俺の“超回復”は安くは無えんだよ」
ジェレミィアの問いかけに憮然とした声で答えたシュータは、そこでようやく肩越しにギャレマスの方を一瞥し、『こっちに来い』と言うように顎をしゃくる。
「テメエの腰なんかクソどうでもいい。……それより、コイツが目を覚まさない事の方がよっぽど心配だ」
「……っ!」
ギャレマスは、シュータの言葉にハッとして、彼が膝をついている石床の方に目を向けた。
彼の前には、古龍種のポルンが腹這いになって座っており、その巨大な腹にもたれかかるようにして、ひとりの少女が体を横たえている。
「サリア……!」
ぐったりとした愛娘の姿を目にした途端、ギャレマスは上ずった声で彼女の声を呼びながら、腰の痛みも忘れた様子で彼女の元へ急いだ。
「おお、サリア……」
スウィッシュに身体を支えられながら、横たわるサリアの傍らに膝をついたギャレマスは、上ずった声で娘の名を呼びながら、その赤い髪を震える手でそっと撫でる。
「サリア様……!」
彼の隣に控えたスウィッシュも、サリアの手を取りながら、泣きそうな顔で呼びかけた。
……だが、彼女は依然として目を覚まさない。
「サリア様……起きて……早く起きて下さい……!」
「サリア……皆が待っておる。だから、早く起きるのだ……!」
ふたりが、懇願するようにサリアへ必死に声をかけるものの、それでも彼女の目は固く閉じられたままだ……。
「サリア……」
「……さっきからずっとこんな調子だ」
さすがに不安を覚えるギャレマスに、珍しく困惑した様子でシュータが首を傾げた。
「エラルティスの対魔完滅法術で浄滅寸前まで削られたサリアの理力は、俺の“超回復”で全回復させた。だから、すぐにでも目を覚ますはずなんだけどよ……」
「やはり……考えたくはないが……」
シュータの言葉に表情を曇らせたのは、アルトゥーだった。
「もう、姫の精神……いや、魂が大きなダメージを受けてしまっ――」
「縁起でも無い事言わないでッ!」
アルトゥーの沈痛な響きの籠もった言葉を、スウィッシュが金切り声で遮った。
「だ……大丈夫だってば! サリア様は絶対に助かるの! だって……さっき陛下がおっしゃったもの……ルコーナ様が守って下さってるって、!」
そう、大きく頭を振りながら叫んだスウィッシュは、縋るような目をギャレマスに向ける。
「そうですよね、陛下ッ?」
「あ……あぁ! そうだとも!」
紫瞳を涙で潤ませたスウィッシュにそう問いかけられたギャレマスは、一瞬間をおいてから力強く頷いた。
「スウィッシュの言う通りだ! 心配ない! サリアの……そして、ツカサの魂も無事だ、多ぶ……いや、絶対に!」
「……だったら、何で目を覚まさねえんだよ、コイツらはっ?」
キッパリ (?)断言するギャレマスに苛立ちを見せながら、シュータが声を荒げる。
「ケガも治したし、理力も戻した! ……なのに、なんでずっと眠ったままなんだよ? 何がネックになってるって言うんだよ、オイ!」
「い、いや、それは……正直余にも……」
シュータに胸倉を掴まれ、タジタジとなるギャレマス。
彼は内心戸惑い、そして驚いていた。
いつも人を小馬鹿にしたような顔をしているシュータが、今は打って変わって必死の形相をしているからだ。
こんなに余裕が無い彼は、今まで見た事が無い……。
――と、
「ヒョッヒョッヒョッ!」
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その場に居た全員が、一斉に笑い声の主へ目を向ける。
「そりゃあ……アレじゃな」
皆の注目を浴びた老エルフは、顎髭を撫でながらしたり顔で言った。
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「倣うって……どう倣えばいいと言うんだ? ……というか、“古典のてんぷれ”って、そもそも何なんだ?」
「ヒョッヒョッヒョッ! そんなの、言うまでも無かろう!」
ファミィの問いかけに、ヴァートスは下卑た笑いを浮かべながら高らかに答えた。
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