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エピソード16 魔王と円卓の勇士たち
姫と目覚めのキスと適役
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「……は?」
ヴァートスの言葉を聞いたシュータは、思わず目を点にした。
「ちょ! ちょっとま――あががががぁっ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!」
すかさず声を荒げかけるも、腰に走った激痛によって悶絶するギャレマスに代わって、スウィッシュが反論の叫びを上げる。
「な、何言ってるんですか、ヴァートス様ッ! ま、魔族の姫君であるサリア様にキスをして起こす役目を、よりにもよって勇者シュータなんかにやらせようだなんて……そ、そんなの、臣下として絶対に認められませんッ!」
「まあまあ、そんなに目くじら立てんでも良かろう、氷のお姐ちゃんや」
激しい剣幕で詰め寄るスウィッシュに辟易しながら、ヴァートスは肩を竦めた。
「そうは言うても、他に適当な者が居らんのじゃから、しょうがなかろう」
「い……居るわよ!」
老エルフの言葉に、スウィッシュはブンブンと首を左右に振る。
「ええと……た、例えば……そう、アルとか!」
「……お、己?」
いきなり名指しされたアルトゥーは、自分の事を指さしながら当惑の表情を浮かべた。
そんな彼に、スウィッシュは大きく頷きかける。
「そう! アナタは魔族だし、若いし……サリア様のファーストキスの相手としては、ギリギリのギリで及第点というか……」
「い……異議ありッ!」
スウィッシュの言葉に上ずった声で反対の声を上げたのは、ファミィだった。
彼女は、おもむろにアルトゥーの身体をひしと抱きかかえ、断固とした様子で頭を振りながら叫んだ。
「だ、ダメだダメだ絶対にダメ! アルトゥーがサリアにき、キスするなんて、たとえ本人が承知しても、私が死んでも許さないからッ!」
「……安心しろ、ファミィ」
自分の体にしがみつくファミィの顔を見下ろしたアルトゥーは、苦笑を浮かべながらも優しく声をかけた。
「たとえ、王が己に命じたとしても、従いはしないさ。お前が嫌だと言うのならな」
「アルトゥー……!」
アルトゥーの言葉を聞いたファミィは、うっとりとした表情を浮かべて、彼の身体を更に強く抱きしめる。
そんなアツアツのふたりを羨望混じりの目で見ながら、ぷうと頬を膨らませるスウィッシュ。
と、ジェレミィアが彼女に「じゃあさー」と声をかけた。
「あの人はどうかな? ほら、四天王のひとりの……」
「……イータツ様には悪いけど、ぶっちゃけシュータよりも無し」
ジェレミィアの提案に、スウィッシュは、今は呪祭拝堂の外に出て、事態を収拾するべく魔王軍を指揮しているイータツが聞いたらショックを受けるに違いないドライさで言い切った。
――だが、それに対して、ジェレミィアは「違う違う」と苦笑いしながら頭を振り、彼女たちから少し離れたところで瓦礫に腰かけ、化粧直しに没頭している男を指さす。
「あの人……えっと、確か……ユーワク将だっけ?」
「癒撥将よん、獣人ちゃん」
口紅をピンク色のポーチの中にしまいながら、マッツコーは答えた。
そして、困ったように肩を竦めながら、小さく首を横に振る。
「……残念だけど、ワタシじゃご期待には沿えそうもないわ。ごめんなさいねぇん」
「そうかなぁ?」
マッツコーの答えを聞いたジェレミィアは、訝しげに首を傾げた。
「おじーちゃんが言ってた、『ハンサムな若い男』って条件にドンピシャだと思うんだけどなぁ。……やっぱり、オカマさんだから?」
「うふふ、ハンサムって言ってくれてありがと。ワタシは確かにオカマだけど、ルックスを褒めてもらえたら、やっぱり嬉しいわねぇん」
ジェレミィアの率直な言葉に、マッツコーは顔を綻ばせ、それから少し残念そうに続ける。
「確かに、オカマだからっていうのもあるけど……それ以前に、ワタシがキスしても、陛下ちゃん……じゃなかった、今は“姫ちゃん”か……の目を覚まさせる事は出来ないと思うわよん」
「何で?」
「そこのお爺ちゃんが一番最初に言ってたじゃない。――姫ちゃんの目を覚ますのは、姫ちゃんを愛する人からのキスだって」
そこで、マッツコーは小さく頭を振った。
「ワタシも、姫ちゃんの事は嫌いじゃないわよん――もうひとりの方も含めてねん。……でも、ワタシの“好き”は、“愛してる”って意味の“好き”じゃないからねん。だから、ワタシがキスしても、多分効果は無いわよん」
少しだけしみじみとした声でそう言ったマッツコーだったが、ふっと表情を和らげると、「だから――」と続け、ひとりの男に目を向ける。
「やっぱり、さっきお爺ちゃんが言った通り、ワタシも勇者ちゃんが適任だと思うわよん。――そうよねん?」
「……な、何言ってんだよ、クソオカマが」
マッツコーの言葉に、シュータが不貞腐れた顔で毒づいた。
「へ、変な事を言ってんじゃねえよ。その言い草だと、まるで俺がサリアの事をす……好きみてえじゃねえかよ……!」
「あら? そうじゃないのん?」
「……」
わざとらしくマッツコーから訊き返されたシュータは、ますます渋い顔をして沈黙する。
そんな彼にニヤニヤと笑みかけながら、マッツコーは尚も言った。
「うふふ、もう隠さなくってもいいわよん。っていうか、勇者ちゃん自身は隠しおおせてると思ってたかもしれないけど、傍から見てたらバレバレだったからねん」
「そうそう!」
マッツコーの言葉に、ジェレミィアも得たりと頷く。
「魔王城でお世話になってた時さ、サッちゃんと会う度に嬉しそうにしてたじゃん。他の人なら気付かないかもしれないけど、長い間一緒に旅をしてたアタシはちゃんと気付いてたよー」
「お、おい、ジェレミィア! テメ、何を言って――」
「いい加減に素直になりなよ、自分の気持ちにさ」
シュータが言い返そうとするところを遮って、ジェレミィアは真顔で言った。
「シュータは、サッちゃんの事がふたりとも好きなんでしょ? だから、ふたりのサッちゃんを助けようとして、あんなに頑張ってたんだよね。――自分が悪役になってでも」
「……」
ジェレミィアの言葉に、シュータは黙ったまま目を逸らす。
そんな彼に、彼女は優しく諭すように言った。
「大丈夫だよ。シュータの気持ちは、ちゃんと伝わってるはずだよ。サッちゃんにも……そして、サッちゃんにも、ね」
ヴァートスの言葉を聞いたシュータは、思わず目を点にした。
「ちょ! ちょっとま――あががががぁっ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!」
すかさず声を荒げかけるも、腰に走った激痛によって悶絶するギャレマスに代わって、スウィッシュが反論の叫びを上げる。
「な、何言ってるんですか、ヴァートス様ッ! ま、魔族の姫君であるサリア様にキスをして起こす役目を、よりにもよって勇者シュータなんかにやらせようだなんて……そ、そんなの、臣下として絶対に認められませんッ!」
「まあまあ、そんなに目くじら立てんでも良かろう、氷のお姐ちゃんや」
激しい剣幕で詰め寄るスウィッシュに辟易しながら、ヴァートスは肩を竦めた。
「そうは言うても、他に適当な者が居らんのじゃから、しょうがなかろう」
「い……居るわよ!」
老エルフの言葉に、スウィッシュはブンブンと首を左右に振る。
「ええと……た、例えば……そう、アルとか!」
「……お、己?」
いきなり名指しされたアルトゥーは、自分の事を指さしながら当惑の表情を浮かべた。
そんな彼に、スウィッシュは大きく頷きかける。
「そう! アナタは魔族だし、若いし……サリア様のファーストキスの相手としては、ギリギリのギリで及第点というか……」
「い……異議ありッ!」
スウィッシュの言葉に上ずった声で反対の声を上げたのは、ファミィだった。
彼女は、おもむろにアルトゥーの身体をひしと抱きかかえ、断固とした様子で頭を振りながら叫んだ。
「だ、ダメだダメだ絶対にダメ! アルトゥーがサリアにき、キスするなんて、たとえ本人が承知しても、私が死んでも許さないからッ!」
「……安心しろ、ファミィ」
自分の体にしがみつくファミィの顔を見下ろしたアルトゥーは、苦笑を浮かべながらも優しく声をかけた。
「たとえ、王が己に命じたとしても、従いはしないさ。お前が嫌だと言うのならな」
「アルトゥー……!」
アルトゥーの言葉を聞いたファミィは、うっとりとした表情を浮かべて、彼の身体を更に強く抱きしめる。
そんなアツアツのふたりを羨望混じりの目で見ながら、ぷうと頬を膨らませるスウィッシュ。
と、ジェレミィアが彼女に「じゃあさー」と声をかけた。
「あの人はどうかな? ほら、四天王のひとりの……」
「……イータツ様には悪いけど、ぶっちゃけシュータよりも無し」
ジェレミィアの提案に、スウィッシュは、今は呪祭拝堂の外に出て、事態を収拾するべく魔王軍を指揮しているイータツが聞いたらショックを受けるに違いないドライさで言い切った。
――だが、それに対して、ジェレミィアは「違う違う」と苦笑いしながら頭を振り、彼女たちから少し離れたところで瓦礫に腰かけ、化粧直しに没頭している男を指さす。
「あの人……えっと、確か……ユーワク将だっけ?」
「癒撥将よん、獣人ちゃん」
口紅をピンク色のポーチの中にしまいながら、マッツコーは答えた。
そして、困ったように肩を竦めながら、小さく首を横に振る。
「……残念だけど、ワタシじゃご期待には沿えそうもないわ。ごめんなさいねぇん」
「そうかなぁ?」
マッツコーの答えを聞いたジェレミィアは、訝しげに首を傾げた。
「おじーちゃんが言ってた、『ハンサムな若い男』って条件にドンピシャだと思うんだけどなぁ。……やっぱり、オカマさんだから?」
「うふふ、ハンサムって言ってくれてありがと。ワタシは確かにオカマだけど、ルックスを褒めてもらえたら、やっぱり嬉しいわねぇん」
ジェレミィアの率直な言葉に、マッツコーは顔を綻ばせ、それから少し残念そうに続ける。
「確かに、オカマだからっていうのもあるけど……それ以前に、ワタシがキスしても、陛下ちゃん……じゃなかった、今は“姫ちゃん”か……の目を覚まさせる事は出来ないと思うわよん」
「何で?」
「そこのお爺ちゃんが一番最初に言ってたじゃない。――姫ちゃんの目を覚ますのは、姫ちゃんを愛する人からのキスだって」
そこで、マッツコーは小さく頭を振った。
「ワタシも、姫ちゃんの事は嫌いじゃないわよん――もうひとりの方も含めてねん。……でも、ワタシの“好き”は、“愛してる”って意味の“好き”じゃないからねん。だから、ワタシがキスしても、多分効果は無いわよん」
少しだけしみじみとした声でそう言ったマッツコーだったが、ふっと表情を和らげると、「だから――」と続け、ひとりの男に目を向ける。
「やっぱり、さっきお爺ちゃんが言った通り、ワタシも勇者ちゃんが適任だと思うわよん。――そうよねん?」
「……な、何言ってんだよ、クソオカマが」
マッツコーの言葉に、シュータが不貞腐れた顔で毒づいた。
「へ、変な事を言ってんじゃねえよ。その言い草だと、まるで俺がサリアの事をす……好きみてえじゃねえかよ……!」
「あら? そうじゃないのん?」
「……」
わざとらしくマッツコーから訊き返されたシュータは、ますます渋い顔をして沈黙する。
そんな彼にニヤニヤと笑みかけながら、マッツコーは尚も言った。
「うふふ、もう隠さなくってもいいわよん。っていうか、勇者ちゃん自身は隠しおおせてると思ってたかもしれないけど、傍から見てたらバレバレだったからねん」
「そうそう!」
マッツコーの言葉に、ジェレミィアも得たりと頷く。
「魔王城でお世話になってた時さ、サッちゃんと会う度に嬉しそうにしてたじゃん。他の人なら気付かないかもしれないけど、長い間一緒に旅をしてたアタシはちゃんと気付いてたよー」
「お、おい、ジェレミィア! テメ、何を言って――」
「いい加減に素直になりなよ、自分の気持ちにさ」
シュータが言い返そうとするところを遮って、ジェレミィアは真顔で言った。
「シュータは、サッちゃんの事がふたりとも好きなんでしょ? だから、ふたりのサッちゃんを助けようとして、あんなに頑張ってたんだよね。――自分が悪役になってでも」
「……」
ジェレミィアの言葉に、シュータは黙ったまま目を逸らす。
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