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エピソード16 魔王と円卓の勇士たち
魔王と妃と操
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「……」
シュータがサリア・ツカサと楽しげ (?)に会話をしている円卓の向かいでは、魔王ギャレマスが、今すぐにでも彼らの間に割り込んで邪魔してやりたいという衝動を必死で抑えながら、血走った目で彼らの様子を凝視していた。
「お……おのれシュータ……! あんなに親しげに我が娘たちと……!」
彼は、シュータと話しているサリアの嬉しげな様子にショックを受けながら、テーブルの上に置いた拳をプルプルと震わせる。
「シュータめ……くれぐれも妙な事を考えるなよ。万が一、我が娘たちに邪な事をしようものなら、余は――」
「陛下……」
激しいジェラシーに心を焦がしているギャレマスのローブの袖を、スウィッシュがそっと引いた。
彼女は、今にも嫉妬で暴走しそうなギャレマスに、抑えた声で言う。
「サリア様たちの事を心配なさるお気持ちは分かりますが……それをやったら、多分サリア様にもツカサにも嫌われちゃいます……」
「ぐっ……!」
スウィッシュに釘を刺されたギャレマスは、ますます渋い顔をしながら歯噛みした。
そして、焦燥と憤懣と不安とが入り混じった、およそ魔王らしからぬ情けない表情を浮かべながら、スウィッシュに泣き言を漏らす。
「だ、だが……も、もしも、このままシュータとサリアたちがす……好き合うような事になってしまったら……よ、余は、父親として一体どうすれば……」
「陛下……」
ギャレマスの縋るような目から気まずげに視線を逸らしながら、スウィッシュは実に言いづらそうな顔で口を開いた。
「あの……大変申し上げにくいのですが……」
「な~にを寝呆けた事をほざいておりますの、このポンコツバカ親魔王は」
スウィッシュの言葉を遮ったのは、エラルティスの呆れ声である。
退屈そうな顔で円卓に頬杖をついていた彼女は、その翠瞳でギャレマスの顔を冷ややかに一瞥しながら、大げさに溜息を吐いた。
そして、頬杖をついたまま、サリアたちの方に顎をしゃくって、魔王に容赦なく現実を告げる。
「心配するまでもなく、あの娘たちはシュータ殿の事を憎からず思うようになってますわ。あのリアクションを見れば一目瞭然ではなくって?」
「こ、こら、この性悪聖女! も……もう少しこう何というか……オブラートに包めというか……」
スウィッシュが慌ててエラルティスを窘めるが――時既に遅しだった。
「な……な、な……そ、そんな事……さ、サリアが……シュータのこ、事ををを……?」
「まったく……鈍いですわさすが魔王クソ鈍感」
到底受け入れがたい現実を目の当たりにされたショックのあまり、ガクガクと震え出すギャレマスに、エラルティスはジト目を向ける。
「年頃の娘がいるクセに、まったく女心ってヤツを理解してないようですわねぇ。まぁ、冷酷非道な魔王ですから、さもありなんと言ったところですわね……」
「ちょっと! クズ聖女ッ!」
エラルティスのイヤミに、スウィッシュが険しい顔で声を荒げた。
「陛下は冷酷非道なんかじゃないわよ! 直ちに訂正しなさいッ! ……あっ、『女心を理解してない』って方はまったくもってその通りだから訂正しないでいいわむしろもっとドンドン言って!」
「いや……主を擁護したいのか責め立てたいのかハッキリしなさいな……」
最後は興奮して息継ぎ無しで捲し立てるスウィッシュにドン引きするエラルティス。
と、
「まあまあ、アナタの言う事も一理あるけど、雷王ちゃんの事をそんなに責めないであげてぇん」
そうエラルティスに声をかけながら、二種類の照り焼きバーガーを手つかずの彼女の皿の上に置いたのは、エプロン姿のマッツコーだった。
彼は、未だにショックで放心状態に陥っているギャレマスの事をチラリと見てから、胡乱げな目で自分を見上げるエラルティスに囁く。
「雷王ちゃんは、随分前に妃ちゃんが亡くなってからずっと、女を寄せ付けずに独身を貫いてたからねん……。年頃の女の子の気持ちに疎くなっちゃってもしょうがないのよん」
「女を寄せ付けず……ずっと?」
マッツコーの言葉に、エラルティスは目を丸くした。
「魔王なのに? その気になれば、女なんていくらでもとっかえひっかえできるでしょうに……」
「……ああ。その通りじゃ」
聖女の言葉に頷いたのは、照り焼きバーガーを運んできたワゴンカートを片付けて大広間に戻ってきたイータツである。
彼は、胸にかけていたクマさん柄のエプロンを外しながら、少し表情を曇らせた。
「ルコーナ様がお隠れになった後……ワシらも、さんざん後添えを娶って、後継ぎとなる男子をお作りになるよう言上し奉ったのだが、主上は頑として応じて下さらなかった……」
「『忙しい』とか何とか言って、おハゲちゃんたちが訴える度にのらりくらり躱してたけど……あれはやっぱり、亡くなった妃ちゃんに操を立ててた感じよねぇん……」
イータツの言葉に、マッツコーも彼にしては珍しく神妙な顔をしながら頷き、しみじみと呟く。
「妃ちゃんの事、ホントに愛してたのねん……」
「……」
それを聞いたエラルティスは、バツが悪そうに唇を噛み、「何ですの、それ……」と呟いた。
「操を立てるとか、愛してたとか……まるで穢らわしく品性下劣な魔族の王らしくない……!」
「……お主ら人間族にワシら魔族や主上の事がどう伝わっておるのかは知らぬし、興味も無いが……」
と、イータツは、エラルティスの言葉に対して静かに言う。
「人間族の聖女……今まで主上やサリア姫やスウィッシュたちと接してきて、まだ我ら魔族の事を『穢らわしく品性下劣』な生き物だと思うのか?」
「……それは――」
イータツの問いかけに対し、エラルティスは思わず言葉を詰まらせるのだった――。
シュータがサリア・ツカサと楽しげ (?)に会話をしている円卓の向かいでは、魔王ギャレマスが、今すぐにでも彼らの間に割り込んで邪魔してやりたいという衝動を必死で抑えながら、血走った目で彼らの様子を凝視していた。
「お……おのれシュータ……! あんなに親しげに我が娘たちと……!」
彼は、シュータと話しているサリアの嬉しげな様子にショックを受けながら、テーブルの上に置いた拳をプルプルと震わせる。
「シュータめ……くれぐれも妙な事を考えるなよ。万が一、我が娘たちに邪な事をしようものなら、余は――」
「陛下……」
激しいジェラシーに心を焦がしているギャレマスのローブの袖を、スウィッシュがそっと引いた。
彼女は、今にも嫉妬で暴走しそうなギャレマスに、抑えた声で言う。
「サリア様たちの事を心配なさるお気持ちは分かりますが……それをやったら、多分サリア様にもツカサにも嫌われちゃいます……」
「ぐっ……!」
スウィッシュに釘を刺されたギャレマスは、ますます渋い顔をしながら歯噛みした。
そして、焦燥と憤懣と不安とが入り混じった、およそ魔王らしからぬ情けない表情を浮かべながら、スウィッシュに泣き言を漏らす。
「だ、だが……も、もしも、このままシュータとサリアたちがす……好き合うような事になってしまったら……よ、余は、父親として一体どうすれば……」
「陛下……」
ギャレマスの縋るような目から気まずげに視線を逸らしながら、スウィッシュは実に言いづらそうな顔で口を開いた。
「あの……大変申し上げにくいのですが……」
「な~にを寝呆けた事をほざいておりますの、このポンコツバカ親魔王は」
スウィッシュの言葉を遮ったのは、エラルティスの呆れ声である。
退屈そうな顔で円卓に頬杖をついていた彼女は、その翠瞳でギャレマスの顔を冷ややかに一瞥しながら、大げさに溜息を吐いた。
そして、頬杖をついたまま、サリアたちの方に顎をしゃくって、魔王に容赦なく現実を告げる。
「心配するまでもなく、あの娘たちはシュータ殿の事を憎からず思うようになってますわ。あのリアクションを見れば一目瞭然ではなくって?」
「こ、こら、この性悪聖女! も……もう少しこう何というか……オブラートに包めというか……」
スウィッシュが慌ててエラルティスを窘めるが――時既に遅しだった。
「な……な、な……そ、そんな事……さ、サリアが……シュータのこ、事ををを……?」
「まったく……鈍いですわさすが魔王クソ鈍感」
到底受け入れがたい現実を目の当たりにされたショックのあまり、ガクガクと震え出すギャレマスに、エラルティスはジト目を向ける。
「年頃の娘がいるクセに、まったく女心ってヤツを理解してないようですわねぇ。まぁ、冷酷非道な魔王ですから、さもありなんと言ったところですわね……」
「ちょっと! クズ聖女ッ!」
エラルティスのイヤミに、スウィッシュが険しい顔で声を荒げた。
「陛下は冷酷非道なんかじゃないわよ! 直ちに訂正しなさいッ! ……あっ、『女心を理解してない』って方はまったくもってその通りだから訂正しないでいいわむしろもっとドンドン言って!」
「いや……主を擁護したいのか責め立てたいのかハッキリしなさいな……」
最後は興奮して息継ぎ無しで捲し立てるスウィッシュにドン引きするエラルティス。
と、
「まあまあ、アナタの言う事も一理あるけど、雷王ちゃんの事をそんなに責めないであげてぇん」
そうエラルティスに声をかけながら、二種類の照り焼きバーガーを手つかずの彼女の皿の上に置いたのは、エプロン姿のマッツコーだった。
彼は、未だにショックで放心状態に陥っているギャレマスの事をチラリと見てから、胡乱げな目で自分を見上げるエラルティスに囁く。
「雷王ちゃんは、随分前に妃ちゃんが亡くなってからずっと、女を寄せ付けずに独身を貫いてたからねん……。年頃の女の子の気持ちに疎くなっちゃってもしょうがないのよん」
「女を寄せ付けず……ずっと?」
マッツコーの言葉に、エラルティスは目を丸くした。
「魔王なのに? その気になれば、女なんていくらでもとっかえひっかえできるでしょうに……」
「……ああ。その通りじゃ」
聖女の言葉に頷いたのは、照り焼きバーガーを運んできたワゴンカートを片付けて大広間に戻ってきたイータツである。
彼は、胸にかけていたクマさん柄のエプロンを外しながら、少し表情を曇らせた。
「ルコーナ様がお隠れになった後……ワシらも、さんざん後添えを娶って、後継ぎとなる男子をお作りになるよう言上し奉ったのだが、主上は頑として応じて下さらなかった……」
「『忙しい』とか何とか言って、おハゲちゃんたちが訴える度にのらりくらり躱してたけど……あれはやっぱり、亡くなった妃ちゃんに操を立ててた感じよねぇん……」
イータツの言葉に、マッツコーも彼にしては珍しく神妙な顔をしながら頷き、しみじみと呟く。
「妃ちゃんの事、ホントに愛してたのねん……」
「……」
それを聞いたエラルティスは、バツが悪そうに唇を噛み、「何ですの、それ……」と呟いた。
「操を立てるとか、愛してたとか……まるで穢らわしく品性下劣な魔族の王らしくない……!」
「……お主ら人間族にワシら魔族や主上の事がどう伝わっておるのかは知らぬし、興味も無いが……」
と、イータツは、エラルティスの言葉に対して静かに言う。
「人間族の聖女……今まで主上やサリア姫やスウィッシュたちと接してきて、まだ我ら魔族の事を『穢らわしく品性下劣』な生き物だと思うのか?」
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