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エピソード6 勇魔同舟
氷娘と疑念と事情
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「――なるほど。そうだったんですか……」
ギャレマスから、これまでの事情をざっと聞かされたスウィッシュは、信じられないという表情を浮かべた。
そして、行儀の悪い格好で木苺のジュースを飲み干すシュータの顔を、疑念をありありと浮かべた目で一瞥する。
「うわ~、すごーい!」
そんなスウィッシュとは対照的に、無邪気に明るい声を上げたのは、サリアだった。
サリアは顔を綻ばせると、シュータに向かって言う。
「じゃあ、これからはサリアたちの味方になってくれるんですね? 勇者シュータさん!」
「ちょ! 勘違いしてるんじゃねえよ!」
サリアの口から出た言葉を聞いた途端、シュータは慌てた様子で首を横に振った。
「俺がテメエらに力を貸してやるのは、あくまで今回きりだ! 別に、テメエら魔族の味方になったつもりはねえ! 今回の一件のカタがついたら、俺とテメエらは敵同士に戻るんだ。いいな!」
「え~! 何でですかぁ?」
シュータの否定の言葉に、不満そうな声を上げるサリア。
「別に、これをいい機会にして、これからはお友達として仲良くしていけばいいじゃないですか? 一緒に仲良くご飯も食べた事ですし」
「い、いや……そういう訳にもいかねえだろうが!」
「そうですよ」
シュータの声に大きく頷いたのは、スウィッシュだった。
彼女は、油断なく光らせた紫瞳をシュータに向ける。
「つい数ヶ月前に、魔王国王宮まで押し入って前任の四天王を全滅させた上、その後も何度も魔王国領内に不法侵入して暴れ回ってた“伝説の四勇士”の首魁が、どんな風の吹き回しであたしたちの味方をしようというのよ?」
そう一気に捲し立てたスウィッシュは、険しい表情を浮かべてシュータの事を指さした。
「一体、何を企んでいるの、勇者シュータ! さあ、有体に白状なさい!」
「企むって……別にそんなんじゃねえよ」
「じゃあ、何であたしたちの作戦に協力する気になったのよ? まさか、ヴァンゲリンの丘で、あの娘をひとり置き去りにしてサッサと帰っちゃったあなたが、『ファミィの為だ』なんて言わないでしょうね?」
「何でって、そりゃあ……」
思わず、正直に『日本で愛読していた「ハ〇ター〇ハ〇ター」のラストをヴァートスに教えてもらう為』と答えようとしたシュータだったが、それはさすがに体裁が悪いと思い直した。
そして、床に転がって、ヴァートスの手によって絶賛解凍中のギャレマスに目配せをし、顰めた声で言った。
「……おい、クソ魔王。お前から上手い事言っとけ」
「え? 余がか?」
いきなり説明を丸投げされ、キョトンとした表情を浮かべるギャレマスに激しく苛立ちながら、シュータは大きく頷いた。
「そうだよ! あの氷女の様子じゃ、俺が何を言ったって納得しやしねえよ! ここは、アイツの主であるテメエの口で説得した方が、素直に聞き入れるだろうぜ、多分」
「んな事を言って、本当はめんどくさくなっただけじゃないのかのう?」
と、ギャレマスの身体に向けて炎に包まれた掌を翳したまま、シュータの事を白けた目で見たヴァートスだったが、ふと「あ、それとも……」と呟くと、ニヤリと笑った。
「ひょっとして、初対面の可愛い女子の前じゃ緊張して上手く喋れないから、ギャレの字に代わってほしい……とか?」
「う――うっせえよクソジジイ! そん……んなんじゃねえよ!」
シュータは、ほんの少しだけ慌てた様子で頭を振ると、目を吊り上げてギャレマスを睨みつけた。
「オラ! んな事はどうでもいいから、つべこべ言わずに俺の言う通りにしやがれ! ……あ、さっきの話をバカ正直に話すんじゃねえぞ!」
「分かった分かった……」
ギャレマスは、面倒くさそうに応えると、ムクリと身体を起こした。
そして、先ほどまで凍りついていたせいで、すっかり強張ってしまった全身の筋肉をほぐすように身を伸ばすと、スウィッシュに向けて口を開く。
「のう、スウィッシュよ」
「は……はい、陛下!」
ギャレマスに呼びかけられたスウィッシュは、ハッとして背筋を伸ばした。
そんな彼女に、ギャレマスは宥めるような口調で言う。
「今までのシュータの所業から、こやつの真意を疑うお主の気持ちはよ~く分かる。だが、こやつにはこやつなりの理由があって、余の計画に賛同したのだ」
「だから……その『こやつなりの理由』って、それは一体何なんですか? それを教えてもらわないと、あたしは納得できません!」
「それは……えーと……」
頑ななスウィッシュを前に、言い淀むギャレマス。
それを傍らで見ていたヴァートスが、溜息を吐いて助け舟を出す。
「まあ、そこら辺の事情は、勇者の若造のぷらいばしーに関わる事じゃからお姐ちゃんには言えんのじゃが、此度の作戦が終わるまでの間は味方してくれる事は確実じゃ。それはワシが保証しよう」
「う、うむ! ヴァートス殿の言う通りだ!」
ヴァートスの言葉に乗っかったギャレマスは、力強く頷いた。
「確かに、この男は余と魔族の大敵ではあるが、少なくとも、“エルフ族解放作戦”に関わる間だけは、間違いなく心強い味方となってくれる。それは、雷王イラ・ギャレマスの名に懸けて保証しよう」
そう言い切ると、ギャレマスは掌で自分の胸を叩いた。
「だから、信じてくれ。シュータの事を信じる余の事を、な」
「で……ですけど……」
ギャレマスの言葉に揺らいだスウィッシュだったが、それでもなお懐疑的な態度を崩さない。
「下手をすれば命に係わる事ですから、やっぱりちゃんとした理由が聞きたいです! やっぱり、教えてくだ――」
「スーちゃんスーちゃん」
と、ギャレマスに詰め寄ろうとするスウィッシュの背中を指でつついたのはサリアだった。
彼女は、意味深な微笑みを浮かべながら、スウィッシュに言う。
「お父様やヴァートスさんもああ言ってるんだから、もういいんじゃないかな? 勇者シュータにも、色々な事情があるんだろうし……」
「さ、サリア様まで……。ですから、その事情が何なのかを聞かないと……って――」
「スーちゃんは鈍いなぁ。事情なんて、ひとつしかないに決まってるじゃん」
「え……?」
「だからね……」
サリアはにへらあと笑みを浮かべると、おもむろにスウィッシュの耳元に顔を近付け、何事かを囁いた。
「……え? そ、そうなんですか? うそ……ホントですか? へ、へぇ~……」
スウィッシュは、サリアの耳打ちを聞きながら、しきりに目をパチクリさせながら相槌を打つ。
そして、最後に大きく頷くと、シュータの方を見て、仄かに顔を赤らめながら力強く頷いてみせた。
「そ……そういう事ならしょうがないわね。認めてあげるわよ」
「ん? “そういう事”って、どういう事だよ……?」
スウィッシュの言葉に、怪訝な表情を浮かべるシュータ。だがスウィッシュは、そんな彼の表情の変化にも気付かぬ様子で言葉を継ぐ。
「絶対に作戦を成功させて、あのエッルフ――ファミィの事を喜ばせてあげましょう! それから――」
「……? それから?」
「応援するわ、頑張ってね!」
「――何をっ?」
訳の分からないスウィッシュの言葉に混乱するシュータ。
だが、何となく妙な誤解をされている事は理解できた。――とはいえ、何だか分からないが、スウィッシュは自分の参加を認めてくれたようだ。
ならば、敢えて誤解を解く必要は無さそうだ。
でも、何となく釈然としない……。
だから――、
「ふんっ!」
「痛いッ!」
シュータは、取り敢えず傍らに立つギャレマスの尻を蹴り上げる事で、心の中のモヤモヤを晴らした。
ギャレマスから、これまでの事情をざっと聞かされたスウィッシュは、信じられないという表情を浮かべた。
そして、行儀の悪い格好で木苺のジュースを飲み干すシュータの顔を、疑念をありありと浮かべた目で一瞥する。
「うわ~、すごーい!」
そんなスウィッシュとは対照的に、無邪気に明るい声を上げたのは、サリアだった。
サリアは顔を綻ばせると、シュータに向かって言う。
「じゃあ、これからはサリアたちの味方になってくれるんですね? 勇者シュータさん!」
「ちょ! 勘違いしてるんじゃねえよ!」
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「え~! 何でですかぁ?」
シュータの否定の言葉に、不満そうな声を上げるサリア。
「別に、これをいい機会にして、これからはお友達として仲良くしていけばいいじゃないですか? 一緒に仲良くご飯も食べた事ですし」
「い、いや……そういう訳にもいかねえだろうが!」
「そうですよ」
シュータの声に大きく頷いたのは、スウィッシュだった。
彼女は、油断なく光らせた紫瞳をシュータに向ける。
「つい数ヶ月前に、魔王国王宮まで押し入って前任の四天王を全滅させた上、その後も何度も魔王国領内に不法侵入して暴れ回ってた“伝説の四勇士”の首魁が、どんな風の吹き回しであたしたちの味方をしようというのよ?」
そう一気に捲し立てたスウィッシュは、険しい表情を浮かべてシュータの事を指さした。
「一体、何を企んでいるの、勇者シュータ! さあ、有体に白状なさい!」
「企むって……別にそんなんじゃねえよ」
「じゃあ、何であたしたちの作戦に協力する気になったのよ? まさか、ヴァンゲリンの丘で、あの娘をひとり置き去りにしてサッサと帰っちゃったあなたが、『ファミィの為だ』なんて言わないでしょうね?」
「何でって、そりゃあ……」
思わず、正直に『日本で愛読していた「ハ〇ター〇ハ〇ター」のラストをヴァートスに教えてもらう為』と答えようとしたシュータだったが、それはさすがに体裁が悪いと思い直した。
そして、床に転がって、ヴァートスの手によって絶賛解凍中のギャレマスに目配せをし、顰めた声で言った。
「……おい、クソ魔王。お前から上手い事言っとけ」
「え? 余がか?」
いきなり説明を丸投げされ、キョトンとした表情を浮かべるギャレマスに激しく苛立ちながら、シュータは大きく頷いた。
「そうだよ! あの氷女の様子じゃ、俺が何を言ったって納得しやしねえよ! ここは、アイツの主であるテメエの口で説得した方が、素直に聞き入れるだろうぜ、多分」
「んな事を言って、本当はめんどくさくなっただけじゃないのかのう?」
と、ギャレマスの身体に向けて炎に包まれた掌を翳したまま、シュータの事を白けた目で見たヴァートスだったが、ふと「あ、それとも……」と呟くと、ニヤリと笑った。
「ひょっとして、初対面の可愛い女子の前じゃ緊張して上手く喋れないから、ギャレの字に代わってほしい……とか?」
「う――うっせえよクソジジイ! そん……んなんじゃねえよ!」
シュータは、ほんの少しだけ慌てた様子で頭を振ると、目を吊り上げてギャレマスを睨みつけた。
「オラ! んな事はどうでもいいから、つべこべ言わずに俺の言う通りにしやがれ! ……あ、さっきの話をバカ正直に話すんじゃねえぞ!」
「分かった分かった……」
ギャレマスは、面倒くさそうに応えると、ムクリと身体を起こした。
そして、先ほどまで凍りついていたせいで、すっかり強張ってしまった全身の筋肉をほぐすように身を伸ばすと、スウィッシュに向けて口を開く。
「のう、スウィッシュよ」
「は……はい、陛下!」
ギャレマスに呼びかけられたスウィッシュは、ハッとして背筋を伸ばした。
そんな彼女に、ギャレマスは宥めるような口調で言う。
「今までのシュータの所業から、こやつの真意を疑うお主の気持ちはよ~く分かる。だが、こやつにはこやつなりの理由があって、余の計画に賛同したのだ」
「だから……その『こやつなりの理由』って、それは一体何なんですか? それを教えてもらわないと、あたしは納得できません!」
「それは……えーと……」
頑ななスウィッシュを前に、言い淀むギャレマス。
それを傍らで見ていたヴァートスが、溜息を吐いて助け舟を出す。
「まあ、そこら辺の事情は、勇者の若造のぷらいばしーに関わる事じゃからお姐ちゃんには言えんのじゃが、此度の作戦が終わるまでの間は味方してくれる事は確実じゃ。それはワシが保証しよう」
「う、うむ! ヴァートス殿の言う通りだ!」
ヴァートスの言葉に乗っかったギャレマスは、力強く頷いた。
「確かに、この男は余と魔族の大敵ではあるが、少なくとも、“エルフ族解放作戦”に関わる間だけは、間違いなく心強い味方となってくれる。それは、雷王イラ・ギャレマスの名に懸けて保証しよう」
そう言い切ると、ギャレマスは掌で自分の胸を叩いた。
「だから、信じてくれ。シュータの事を信じる余の事を、な」
「で……ですけど……」
ギャレマスの言葉に揺らいだスウィッシュだったが、それでもなお懐疑的な態度を崩さない。
「下手をすれば命に係わる事ですから、やっぱりちゃんとした理由が聞きたいです! やっぱり、教えてくだ――」
「スーちゃんスーちゃん」
と、ギャレマスに詰め寄ろうとするスウィッシュの背中を指でつついたのはサリアだった。
彼女は、意味深な微笑みを浮かべながら、スウィッシュに言う。
「お父様やヴァートスさんもああ言ってるんだから、もういいんじゃないかな? 勇者シュータにも、色々な事情があるんだろうし……」
「さ、サリア様まで……。ですから、その事情が何なのかを聞かないと……って――」
「スーちゃんは鈍いなぁ。事情なんて、ひとつしかないに決まってるじゃん」
「え……?」
「だからね……」
サリアはにへらあと笑みを浮かべると、おもむろにスウィッシュの耳元に顔を近付け、何事かを囁いた。
「……え? そ、そうなんですか? うそ……ホントですか? へ、へぇ~……」
スウィッシュは、サリアの耳打ちを聞きながら、しきりに目をパチクリさせながら相槌を打つ。
そして、最後に大きく頷くと、シュータの方を見て、仄かに顔を赤らめながら力強く頷いてみせた。
「そ……そういう事ならしょうがないわね。認めてあげるわよ」
「ん? “そういう事”って、どういう事だよ……?」
スウィッシュの言葉に、怪訝な表情を浮かべるシュータ。だがスウィッシュは、そんな彼の表情の変化にも気付かぬ様子で言葉を継ぐ。
「絶対に作戦を成功させて、あのエッルフ――ファミィの事を喜ばせてあげましょう! それから――」
「……? それから?」
「応援するわ、頑張ってね!」
「――何をっ?」
訳の分からないスウィッシュの言葉に混乱するシュータ。
だが、何となく妙な誤解をされている事は理解できた。――とはいえ、何だか分からないが、スウィッシュは自分の参加を認めてくれたようだ。
ならば、敢えて誤解を解く必要は無さそうだ。
でも、何となく釈然としない……。
だから――、
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