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エピソード7 魔族が来りて法螺を吹く
蒼髪娘と異議と応募資格
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サリアの自己紹介で一気に盛り上がる観客席だったが、彼女の隣に立っていた蒼髪の娘が拡声貝を受け取り一歩前に出た事で、更に一段階テンションが上がった。
『あ……あの……』
「おおおおおおおおおおおおおおおお~ッ!」
興奮した観客たちが上げた野太い絶叫は、あたかも万雷が落ちたかのように、会場の空気と地面を激しく揺らす。
ギラギラと目を輝かせた観客たちの注目を一身に浴びた蒼髪の娘――スウィッシュは、ギョッとした様子で立ち竦むが、気を取り直すように息を吸い込むと、おずおずと口を開いた。
『えー、と……エントリーナンバー13番……あ、あたしは、す……スーと申します。年齢は……えーと……人間族は大体三分の一だから……じゅ、十八歳……くらい? ……デス、ハイ……』
「「「「「「「「ひょおおおおおおお――っ!」」」」」」」」
拡声貝で増幅された彼女の声が会場に響き渡った途端、サリアの時と同じくらい――いや、それ以上の熱烈な歓声が上がる。
「やべえっ! こっちも負けず劣らず可愛らしいっ!」
「おおおおお! 可憐だ……ッ!」
「無邪気な12番の子もいいけど、この子はお淑やかな雰囲気で、これはこれでいいわよね……」
「いや、むしろ俺は13番の方が好みだわ」
「でもさ、スーちゃんの方が年上だけど、体つきはむしろ……」
「バッカ! むしろそれがいいんじゃねえかっ!」
「分かる」
そんな事を口走りながら、互いに顔を見合わせ、大きく頷き合う観客たち。
スーことスウィッシュは、そんな興奮の坩堝と化した観客席の様子をステージの上から見下ろしながら、作り笑顔をヒクつかせる。
(……何で、こんな事になってるんだろう、あたし……)
数時間前、屋台村でイベントスタッフに声をかけられたのが、全ての始まりだった。
その時、『不慮の事態で参加者が全滅してしまった“伝説の四勇士”オーディションに、人数合わせとしてで構わないので参加してもらえないか』という勧誘を受けたスウィッシュは、即座に断ろうとした。
これから、大事な“エルフ族解放作戦”の決行を控えているという事もあったが、まるで見世物小屋の珍獣のように、不特定多数の好奇の目に晒されたくないという思いもあり、ただ単に“恥ずかしい”というのもあり、――何より、『何で自分たち魔族の敵である“伝説の四勇士”のオーディションに参加しなければならないのよっ?』という不満の気持ちが強かったからだ。
――だが、彼女が断るよりも早く、サリアが『はいはーい! 喜んで~!』と二つ返事で承知してしまった。
もちろんスウィッシュは、論を尽くしてサリアに考え直すように訴えたのだが、彼女を翻意させる事は叶わなかった。
むしろ、
『でも、スタッフさん困ってるし……』
と呟くサリアの哀しそうな顔と、今にも地に額を擦りつけて懇願しそうなスタッフたちの様子を見て、それ以上強く言う事が出来なかったのだった……。
それで、甚だ不本意ながら、オーディション参加者として、このステージに立った訳なのだが――。
(……ていうか、何だかんだで人がいるじゃない)
スウィッシュは、自分の横にずらりと居並ぶ十一人の女性たちを見ながら、不満げに頬を膨らませる。
(『参加者が居なくなって困ってる』って泣きつかれたから、しぶしぶ参加したけど……。これだったら、別にあたしたちがいなくてもいいよね)
別に、自ら望んでこのオーディションに臨んでいる訳ではない。
何より、自分はこれから、主であるギャレマスの右腕として、彼の立てた作戦のサポート役を務めなければならないのだ。本来ならば、こんな茶番に付き合っている暇など無い。
そこまで考えて、彼女は小さく頷いた。
(――よし。棄権しよ)
即座に決断を下したスウィッシュは、司会に向かって手を挙げる。
「あ、あのッ! ごめんなさい! やっぱり、あたしたちは棄け――」
「異議あり~! ですわッ!」
「――ッ!」
唐突に上がった女の声によって、棄権を申し出ようとした自分の声を遮られた形になったスウィッシュは、思わずムッとして、声の主の方に目を向けた。
――大げさな仕草で手を挙げた青白色の神官衣を纏った翠髪の聖女は、敵意に満ちたスウィッシュの視線を浴びても涼しい顔をしていた。
むしろ、睨みつけるスウィッシュを横目で見るや、皮肉気に口の端を吊り上げ、それから涼やかな声で言葉を継ぐ。
「司会殿~。わらわは、その娘がこのオーディションの場にいるのは相応しくないと思いますわよ」
「へ? ふ、相応しくない……ですか?」
突然、ゲストであり、オーディションの審査員のひとりでもあるエラルティスから投げかけられた“異議”に、司会は思わず当惑の声を上げた。
彼は首を傾げながら、おずおずと聖女に向かって訊き返す。
「あ……あの~? い、一体、彼女のどこら辺が相応しくない……と?」
「うふふ、そんなの、一目瞭然じゃあないですの?」
訝しげな表情を浮かべた司会からの問いかけに対し、意味深な含み笑いを漏らしたエラルティスは、目を細めてスウィッシュの顔をジロリと一瞥した。
そして、せせら笑いと共に口を開く。
「……確か、この『“伝説の四勇士”新メンバー発掘オーディション』の応募条件の中に、『巨乳且つ美乳』という一文があったはずですわ」
「……ッ!」
エラルティスの言葉を聞いた瞬間、スウィッシュの表情が変わった。
嫌味たらしい薄笑みをを浮かべている聖女が次に何を口走るか、聞くまでも無く解ったからである。
スウィッシュは、目尻を吊り上げて、エラルティスの事を憎々しげに睨みつける。
だが、エラルティスは、敵意を剥き出しにするスウィッシュの事を当然のように無視しつつ、彼女の胸に向けて形の良い指先を突きつけ、殊更に胸を張りながら声を上げる。
「――でも、この娘の胸を御覧なさいな! こんな貧相でささやかで慎ましやかななちっぱいでは、到底応募条件を満たしているとは言えないのではなくってッ?」
「――ッ!」
エラルティスの上げた声に、会場は先ほどとは違う類のどよめきで覆われる。
そんな異様な雰囲気の中、エラルティスは勝ち誇った顔で叫んだ。
「よって、わらわはこの場違いな貧乳娘の失格と退場を求めますわッ!」
『あ……あの……』
「おおおおおおおおおおおおおおおお~ッ!」
興奮した観客たちが上げた野太い絶叫は、あたかも万雷が落ちたかのように、会場の空気と地面を激しく揺らす。
ギラギラと目を輝かせた観客たちの注目を一身に浴びた蒼髪の娘――スウィッシュは、ギョッとした様子で立ち竦むが、気を取り直すように息を吸い込むと、おずおずと口を開いた。
『えー、と……エントリーナンバー13番……あ、あたしは、す……スーと申します。年齢は……えーと……人間族は大体三分の一だから……じゅ、十八歳……くらい? ……デス、ハイ……』
「「「「「「「「ひょおおおおおおお――っ!」」」」」」」」
拡声貝で増幅された彼女の声が会場に響き渡った途端、サリアの時と同じくらい――いや、それ以上の熱烈な歓声が上がる。
「やべえっ! こっちも負けず劣らず可愛らしいっ!」
「おおおおお! 可憐だ……ッ!」
「無邪気な12番の子もいいけど、この子はお淑やかな雰囲気で、これはこれでいいわよね……」
「いや、むしろ俺は13番の方が好みだわ」
「でもさ、スーちゃんの方が年上だけど、体つきはむしろ……」
「バッカ! むしろそれがいいんじゃねえかっ!」
「分かる」
そんな事を口走りながら、互いに顔を見合わせ、大きく頷き合う観客たち。
スーことスウィッシュは、そんな興奮の坩堝と化した観客席の様子をステージの上から見下ろしながら、作り笑顔をヒクつかせる。
(……何で、こんな事になってるんだろう、あたし……)
数時間前、屋台村でイベントスタッフに声をかけられたのが、全ての始まりだった。
その時、『不慮の事態で参加者が全滅してしまった“伝説の四勇士”オーディションに、人数合わせとしてで構わないので参加してもらえないか』という勧誘を受けたスウィッシュは、即座に断ろうとした。
これから、大事な“エルフ族解放作戦”の決行を控えているという事もあったが、まるで見世物小屋の珍獣のように、不特定多数の好奇の目に晒されたくないという思いもあり、ただ単に“恥ずかしい”というのもあり、――何より、『何で自分たち魔族の敵である“伝説の四勇士”のオーディションに参加しなければならないのよっ?』という不満の気持ちが強かったからだ。
――だが、彼女が断るよりも早く、サリアが『はいはーい! 喜んで~!』と二つ返事で承知してしまった。
もちろんスウィッシュは、論を尽くしてサリアに考え直すように訴えたのだが、彼女を翻意させる事は叶わなかった。
むしろ、
『でも、スタッフさん困ってるし……』
と呟くサリアの哀しそうな顔と、今にも地に額を擦りつけて懇願しそうなスタッフたちの様子を見て、それ以上強く言う事が出来なかったのだった……。
それで、甚だ不本意ながら、オーディション参加者として、このステージに立った訳なのだが――。
(……ていうか、何だかんだで人がいるじゃない)
スウィッシュは、自分の横にずらりと居並ぶ十一人の女性たちを見ながら、不満げに頬を膨らませる。
(『参加者が居なくなって困ってる』って泣きつかれたから、しぶしぶ参加したけど……。これだったら、別にあたしたちがいなくてもいいよね)
別に、自ら望んでこのオーディションに臨んでいる訳ではない。
何より、自分はこれから、主であるギャレマスの右腕として、彼の立てた作戦のサポート役を務めなければならないのだ。本来ならば、こんな茶番に付き合っている暇など無い。
そこまで考えて、彼女は小さく頷いた。
(――よし。棄権しよ)
即座に決断を下したスウィッシュは、司会に向かって手を挙げる。
「あ、あのッ! ごめんなさい! やっぱり、あたしたちは棄け――」
「異議あり~! ですわッ!」
「――ッ!」
唐突に上がった女の声によって、棄権を申し出ようとした自分の声を遮られた形になったスウィッシュは、思わずムッとして、声の主の方に目を向けた。
――大げさな仕草で手を挙げた青白色の神官衣を纏った翠髪の聖女は、敵意に満ちたスウィッシュの視線を浴びても涼しい顔をしていた。
むしろ、睨みつけるスウィッシュを横目で見るや、皮肉気に口の端を吊り上げ、それから涼やかな声で言葉を継ぐ。
「司会殿~。わらわは、その娘がこのオーディションの場にいるのは相応しくないと思いますわよ」
「へ? ふ、相応しくない……ですか?」
突然、ゲストであり、オーディションの審査員のひとりでもあるエラルティスから投げかけられた“異議”に、司会は思わず当惑の声を上げた。
彼は首を傾げながら、おずおずと聖女に向かって訊き返す。
「あ……あの~? い、一体、彼女のどこら辺が相応しくない……と?」
「うふふ、そんなの、一目瞭然じゃあないですの?」
訝しげな表情を浮かべた司会からの問いかけに対し、意味深な含み笑いを漏らしたエラルティスは、目を細めてスウィッシュの顔をジロリと一瞥した。
そして、せせら笑いと共に口を開く。
「……確か、この『“伝説の四勇士”新メンバー発掘オーディション』の応募条件の中に、『巨乳且つ美乳』という一文があったはずですわ」
「……ッ!」
エラルティスの言葉を聞いた瞬間、スウィッシュの表情が変わった。
嫌味たらしい薄笑みをを浮かべている聖女が次に何を口走るか、聞くまでも無く解ったからである。
スウィッシュは、目尻を吊り上げて、エラルティスの事を憎々しげに睨みつける。
だが、エラルティスは、敵意を剥き出しにするスウィッシュの事を当然のように無視しつつ、彼女の胸に向けて形の良い指先を突きつけ、殊更に胸を張りながら声を上げる。
「――でも、この娘の胸を御覧なさいな! こんな貧相でささやかで慎ましやかななちっぱいでは、到底応募条件を満たしているとは言えないのではなくってッ?」
「――ッ!」
エラルティスの上げた声に、会場は先ほどとは違う類のどよめきで覆われる。
そんな異様な雰囲気の中、エラルティスは勝ち誇った顔で叫んだ。
「よって、わらわはこの場違いな貧乳娘の失格と退場を求めますわッ!」
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