184 / 423
エピソード8 謀事魔多し
託児所と子どもたちと警備兵
しおりを挟む
エルフ族収容所の警備兵たちの居住棟に隣接するようにして、一際大きな建物が建っていた。
人間族の警備兵たちから、皮肉と侮蔑を込めて『託児所』と呼ばれているその建物には、その呼称の通り、まだ幼いエルフ族の子どもたちが集められ、収容されている。
だが、その建物は、“託児所”として使われていた訳では無かった。
エルフ族の子どもたちが、強制的に親の元から引き離されて一棟の建物に集められた理由……。それは言うまでもなく、子どもたちをエルフ族に対する“人質”にする為であった。
人間族たちは、まだ幼い子どもたちを自分たちのすぐ手元に置く事で、未だ人間族に対して反抗的な態度を取るエルフ族が収容所内で反乱を起こす事を諦めさせようと考えたのだ。
――そして、その目論見は奏効した。
彼らの両親はもちろん、元々繁殖力が低い上に、かつて大流行した伝染病のせいで人口が激減してしまったエルフ族という種族そのものにとっても、子どもたちは何物にも代えがたいほどに尊く貴重な存在だった。そんな存在をむざむざと危険に晒すような真似は、とても出来ない……。
だが、エルフ族の子どもたちにとっては幸運だった事に、人間族たちは、彼らの事を心の中では秘かに蔑みつつも、表向きはとても丁寧に扱ったのだった。
万が一、子どもたちの内のひとりでも傷ついたり死んだりしてしまったら、エルフ族は怒りに任せて一気に反乱を起こしてしまうかもしれない。
――もちろん、武器になりそうなものは収容所に入る前にあらかじめ没収してはいるが、彼らの中には精霊術を操る者も少なくない。
万が一、彼らが精霊術を以て抵抗しようとしたら、人間族側は武力を以て鎮圧せざるを得なくなり、双方に多大な人的犠牲が発生してしまう事は大いに考えられる。
地属性精霊術によるイワサミド鉱山でのミスチール鉱石増産を果たす為には、術士であるエルフ族の数を減らすような真似は出来るだけ避けねばならない。
そういった打算が働いた結果、エルフ族の子どもたちは、人間族の厳しい監視の下ではあったものの、そこそこ不自由のない暮らしが出来ていたのだった。
――だが、
まだ甘えたい盛りに、大好きな両親の元から無理矢理引き剥がされた子どもたちにとっては、そんな待遇などはどうでも良く、その小さな胸の中には、ただただ『はやくおとうさんとおかあさんにあいたい』という望みだけがあったのだった……。
◆ ◆ ◆ ◆
「うぅ……おかあさん……」
「さみしいよぉ……あいたいよぉ……」
「ヒック……おとうさん、むかえにきて……」
今夜も、“託児所”からは、一番大きな部屋に寝かされたエルフ族の子どもたちのすすり泣く声が、あちこちから上がっていた。
「……チッ!」
部屋の扉の前にどっかりと腰を下ろして暇潰しのカードに興じていた見張りの兵は、扉の向こうから聞こえてくるたくさんの泣き声に、思わず舌打ちする。
「……たくよぉ! よくもまあ、毎夜毎夜飽きもせずにシクシク泣き続けられるもんだ! 辛気臭えったらありゃしねえ!」
「まったく……他の留守番たちは、本隊がアヴァーシに出払ったのをいい事に、今ごろ酒でもかっ食らってるんだろうなぁ……。何でこんな日に限って“子守り”当番なんだよ……ツイてねえ」
彼の勝負の相手であるもうひとりの兵が、手札を選びながらボヤく。その傍らにはジョッキが置かれているが、あいにくと中身はワインではなく、ただの水だった。
と、ふたりの勝負を見守っていた髭面の兵が、声を顰めて言った。
「……おい! こっそりワインを持って来て、一杯飲らねえか? 今日はもう、こんな所にゃ朝まで誰も来ねえだろうからよ。」
「止めとけ止めとけ」
そう言って髭面の兵の事を止めたのは、剣の刃をボロ布で磨いていた白髪頭の兵だった。
彼は、他の兵を牽制するように鋭い目で一瞥すると、声を顰める。
「……つい一昨日も、ここで子守りしながらワインを引っかけてた奴らが、まんまとバレて重営倉を食らったのを忘れたのか? いくら本隊が留守だって言っても……いや、だからこそ、同じ事をしたのが露見したら、もっと重い罰を与えられるぞ」
「うへぇ……でも、そりゃそうか」
最初に声を上げた兵が、手札から一枚抜いた札を場に出しながら、辟易とした声を上げた。
そして、横にある大きくて頑丈な鉄扉をチラリと見てから、溜息交じりの声で言う。
「ここは、他の場所とは重要度がダンチだからな。万が一にも、エルフのガキどもが逃げ出すような事があっちゃあいけねえからな」
「そういう事だ。なにせ、大事な人質様どもだからな」
そう、髭面の兵がおどけた調子で言うと、下卑た笑いが起きる。
――だが、
「……妙だな」
ふと、白髪の兵が怪訝な表情を浮かべ、鋭い目で周囲を見回した。
「……やけに静かじゃないか?」
「えぇ……?」
白髪の兵の言葉を聞いて、他の兵たちも耳を澄ましてみる。
――確かに、夜闇に包まれた周囲は、いつもは聞こえる兵士たちの生活音や会話の声が全く無く、虫と蛙の声しか聞こえなかった。
「確かに……」
異変に気付いた兵たちは、一瞬不安げに顔を見合わせるが、「そらそうよ」という髭面の兵の声に、ハッとした表情を浮かべた顔を向ける。
一斉に視線を浴びた髭面の兵は、涼しい顔でジョッキの水を呷ってから、事もなげな顔で言葉を継いだ。
「今夜は、非番の兵も含めて、収容所の警備兵の殆どがアヴァーシまで駆り出されてるんだぜ。いつもより静かに決まってるじゃねえか」
「ま、まあ……確かに」
「今ここに残ってるのは、あばら屋に押し込んだクソ忌々しいエルフ族どもと、貧乏籤を引いちまった俺たち留守番。――あとは、そこで『かあちゃんが恋しい』って泣いてるクソガキどもだけだよ」
髭面の兵は、そう言って鉄扉を指さすと、不愉快そうに顔を顰めた。
そして、持っていたジョッキを鉄扉に叩きつける。
ジョッキが割れるけたたましい音が上がると同時に、扉の向こうから上がるすすり泣きがピタリと止まった。
「うるせえぞ、虚弱種族のゴミガキどもめが! いつまでもビービー泣いてんじゃねえぞ! 力づくで黙らされたくなかったら、さっさと寝やがれバカヤローッ!」
髭面の兵が張り上げた怒声にも返事はなかったが、それでも、必死で押し殺している様な嗚咽が微かに漏れ聞こえてくる。
と、白髪の兵が、険しい表情を髭面の兵に向けた。
「……おい! やり過ぎだ! エルフ族とはいえ、相手は子どもだぞ!」
「子どもだろうが、相手はエルフ族だぞ!」
白髪頭の兵の叱責に、髭面の兵は不満を露わにして怒鳴り返し、傍らに置いた剣を引っ掴むと、憤然とした様子で立ち上がった。
「おい! 何をする気だ、お前――」
「あぁ? 別に何もしねえよ」
慌てて問い質す同僚たちに、髭面兵は口元に獰猛な笑みを浮かべながら答える。
「――ただ、もう少しお行儀よく眠れるよう、奴らのパパやママの代わりに、クソガキどもを軽く躾けてやろうってだけだよ……」
「……ッ!」
髭面の兵の目が、まるで熱に浮かされた様な狂的な光を宿らせているのを目の当たりにして、その場に居た者は言葉を詰まらせた。
これ以上、彼を苛立たせたら、今度は自分たちが彼の憂さ晴らしの標的になる――そう確信したからだ。
兵たちは黙りこくったまま、気まずげに視線を逸らす。
「……あまりやり過ぎるなよ」
「分かってるよ」
申し訳程度に釘を刺す仲間の声に全く心の籠もっていない返事をしながら、髭面の兵は鉄扉に近付き、外から掛けられた大きな閂を外しにかかる。
――その時、
『応うべし 風司る精霊王 その手を振りて 風波立てよ!』
そう謡う若い女の声が兵士たちの耳朶を打つと同時に、凄まじい轟風が“託児所”に向かって吹きつけた。
「ぐげ――ッ!」
その凄まじい風圧をまともに食らい、その身体を硬い鉄扉に叩きつけられた髭面の兵は、まさにカエルが潰れた時のような悲鳴を上げ、白目を剥いて気を失う。
「うおっ!」
「な……何だッ?」
「くっ……目に砂が……!」
彼以外の兵も、巻き起こる轟風に煽られ、大きくよろめきながら、驚愕の声を上げた。
――と、
彼らの耳に、コツコツと近付くブーツの足音が聞こえてくる。
「だ……誰だ!」
たじろぎつつも、兵たちは一斉に剣を抜き、足音の聞こえてきた闇の向こうに向けて構えた。
「今の風……精霊術だな? き、貴様、エルフか?」
「……」
「お……俺たち人間族に逆らうと、どうなるか分かっているのかっ? こ、後悔する事になるぞ、この狼藉者めが!」
「……狼藉をしているのは、どちらの方だ」
「――ッ!」
闇の向こうから返ってきた若い女の声に漲る怒気に、兵たちは思わず気圧される。
そして、闇の中から姿を現した“狼藉者”の姿を見て、思わず息を呑んだ。
「……はじめは、お前たちも他の人間族たちと同様、気付かない内に眠らせてやろうと思ってたけど――気が変わった」
軽装鎧に身を包んだ若い女のハーフエルフは、その長く美しい金髪を僅かに逆立たせ、蒼玉のような瞳を憤怒で輝かせながら、凛とした声で叫んだ。
「たとえ異種族だろうと、まだ幼い子どもたちに平気で手を上げようとする貴様らには、この私――“伝説の四勇士”ファミィ・ネアルウェーン・カレナリエールが、存分に痛い目を見せてやることにする! 覚悟しろ、この品性劣悪ド外道下衆人間族どもめがッ!」
人間族の警備兵たちから、皮肉と侮蔑を込めて『託児所』と呼ばれているその建物には、その呼称の通り、まだ幼いエルフ族の子どもたちが集められ、収容されている。
だが、その建物は、“託児所”として使われていた訳では無かった。
エルフ族の子どもたちが、強制的に親の元から引き離されて一棟の建物に集められた理由……。それは言うまでもなく、子どもたちをエルフ族に対する“人質”にする為であった。
人間族たちは、まだ幼い子どもたちを自分たちのすぐ手元に置く事で、未だ人間族に対して反抗的な態度を取るエルフ族が収容所内で反乱を起こす事を諦めさせようと考えたのだ。
――そして、その目論見は奏効した。
彼らの両親はもちろん、元々繁殖力が低い上に、かつて大流行した伝染病のせいで人口が激減してしまったエルフ族という種族そのものにとっても、子どもたちは何物にも代えがたいほどに尊く貴重な存在だった。そんな存在をむざむざと危険に晒すような真似は、とても出来ない……。
だが、エルフ族の子どもたちにとっては幸運だった事に、人間族たちは、彼らの事を心の中では秘かに蔑みつつも、表向きはとても丁寧に扱ったのだった。
万が一、子どもたちの内のひとりでも傷ついたり死んだりしてしまったら、エルフ族は怒りに任せて一気に反乱を起こしてしまうかもしれない。
――もちろん、武器になりそうなものは収容所に入る前にあらかじめ没収してはいるが、彼らの中には精霊術を操る者も少なくない。
万が一、彼らが精霊術を以て抵抗しようとしたら、人間族側は武力を以て鎮圧せざるを得なくなり、双方に多大な人的犠牲が発生してしまう事は大いに考えられる。
地属性精霊術によるイワサミド鉱山でのミスチール鉱石増産を果たす為には、術士であるエルフ族の数を減らすような真似は出来るだけ避けねばならない。
そういった打算が働いた結果、エルフ族の子どもたちは、人間族の厳しい監視の下ではあったものの、そこそこ不自由のない暮らしが出来ていたのだった。
――だが、
まだ甘えたい盛りに、大好きな両親の元から無理矢理引き剥がされた子どもたちにとっては、そんな待遇などはどうでも良く、その小さな胸の中には、ただただ『はやくおとうさんとおかあさんにあいたい』という望みだけがあったのだった……。
◆ ◆ ◆ ◆
「うぅ……おかあさん……」
「さみしいよぉ……あいたいよぉ……」
「ヒック……おとうさん、むかえにきて……」
今夜も、“託児所”からは、一番大きな部屋に寝かされたエルフ族の子どもたちのすすり泣く声が、あちこちから上がっていた。
「……チッ!」
部屋の扉の前にどっかりと腰を下ろして暇潰しのカードに興じていた見張りの兵は、扉の向こうから聞こえてくるたくさんの泣き声に、思わず舌打ちする。
「……たくよぉ! よくもまあ、毎夜毎夜飽きもせずにシクシク泣き続けられるもんだ! 辛気臭えったらありゃしねえ!」
「まったく……他の留守番たちは、本隊がアヴァーシに出払ったのをいい事に、今ごろ酒でもかっ食らってるんだろうなぁ……。何でこんな日に限って“子守り”当番なんだよ……ツイてねえ」
彼の勝負の相手であるもうひとりの兵が、手札を選びながらボヤく。その傍らにはジョッキが置かれているが、あいにくと中身はワインではなく、ただの水だった。
と、ふたりの勝負を見守っていた髭面の兵が、声を顰めて言った。
「……おい! こっそりワインを持って来て、一杯飲らねえか? 今日はもう、こんな所にゃ朝まで誰も来ねえだろうからよ。」
「止めとけ止めとけ」
そう言って髭面の兵の事を止めたのは、剣の刃をボロ布で磨いていた白髪頭の兵だった。
彼は、他の兵を牽制するように鋭い目で一瞥すると、声を顰める。
「……つい一昨日も、ここで子守りしながらワインを引っかけてた奴らが、まんまとバレて重営倉を食らったのを忘れたのか? いくら本隊が留守だって言っても……いや、だからこそ、同じ事をしたのが露見したら、もっと重い罰を与えられるぞ」
「うへぇ……でも、そりゃそうか」
最初に声を上げた兵が、手札から一枚抜いた札を場に出しながら、辟易とした声を上げた。
そして、横にある大きくて頑丈な鉄扉をチラリと見てから、溜息交じりの声で言う。
「ここは、他の場所とは重要度がダンチだからな。万が一にも、エルフのガキどもが逃げ出すような事があっちゃあいけねえからな」
「そういう事だ。なにせ、大事な人質様どもだからな」
そう、髭面の兵がおどけた調子で言うと、下卑た笑いが起きる。
――だが、
「……妙だな」
ふと、白髪の兵が怪訝な表情を浮かべ、鋭い目で周囲を見回した。
「……やけに静かじゃないか?」
「えぇ……?」
白髪の兵の言葉を聞いて、他の兵たちも耳を澄ましてみる。
――確かに、夜闇に包まれた周囲は、いつもは聞こえる兵士たちの生活音や会話の声が全く無く、虫と蛙の声しか聞こえなかった。
「確かに……」
異変に気付いた兵たちは、一瞬不安げに顔を見合わせるが、「そらそうよ」という髭面の兵の声に、ハッとした表情を浮かべた顔を向ける。
一斉に視線を浴びた髭面の兵は、涼しい顔でジョッキの水を呷ってから、事もなげな顔で言葉を継いだ。
「今夜は、非番の兵も含めて、収容所の警備兵の殆どがアヴァーシまで駆り出されてるんだぜ。いつもより静かに決まってるじゃねえか」
「ま、まあ……確かに」
「今ここに残ってるのは、あばら屋に押し込んだクソ忌々しいエルフ族どもと、貧乏籤を引いちまった俺たち留守番。――あとは、そこで『かあちゃんが恋しい』って泣いてるクソガキどもだけだよ」
髭面の兵は、そう言って鉄扉を指さすと、不愉快そうに顔を顰めた。
そして、持っていたジョッキを鉄扉に叩きつける。
ジョッキが割れるけたたましい音が上がると同時に、扉の向こうから上がるすすり泣きがピタリと止まった。
「うるせえぞ、虚弱種族のゴミガキどもめが! いつまでもビービー泣いてんじゃねえぞ! 力づくで黙らされたくなかったら、さっさと寝やがれバカヤローッ!」
髭面の兵が張り上げた怒声にも返事はなかったが、それでも、必死で押し殺している様な嗚咽が微かに漏れ聞こえてくる。
と、白髪の兵が、険しい表情を髭面の兵に向けた。
「……おい! やり過ぎだ! エルフ族とはいえ、相手は子どもだぞ!」
「子どもだろうが、相手はエルフ族だぞ!」
白髪頭の兵の叱責に、髭面の兵は不満を露わにして怒鳴り返し、傍らに置いた剣を引っ掴むと、憤然とした様子で立ち上がった。
「おい! 何をする気だ、お前――」
「あぁ? 別に何もしねえよ」
慌てて問い質す同僚たちに、髭面兵は口元に獰猛な笑みを浮かべながら答える。
「――ただ、もう少しお行儀よく眠れるよう、奴らのパパやママの代わりに、クソガキどもを軽く躾けてやろうってだけだよ……」
「……ッ!」
髭面の兵の目が、まるで熱に浮かされた様な狂的な光を宿らせているのを目の当たりにして、その場に居た者は言葉を詰まらせた。
これ以上、彼を苛立たせたら、今度は自分たちが彼の憂さ晴らしの標的になる――そう確信したからだ。
兵たちは黙りこくったまま、気まずげに視線を逸らす。
「……あまりやり過ぎるなよ」
「分かってるよ」
申し訳程度に釘を刺す仲間の声に全く心の籠もっていない返事をしながら、髭面の兵は鉄扉に近付き、外から掛けられた大きな閂を外しにかかる。
――その時、
『応うべし 風司る精霊王 その手を振りて 風波立てよ!』
そう謡う若い女の声が兵士たちの耳朶を打つと同時に、凄まじい轟風が“託児所”に向かって吹きつけた。
「ぐげ――ッ!」
その凄まじい風圧をまともに食らい、その身体を硬い鉄扉に叩きつけられた髭面の兵は、まさにカエルが潰れた時のような悲鳴を上げ、白目を剥いて気を失う。
「うおっ!」
「な……何だッ?」
「くっ……目に砂が……!」
彼以外の兵も、巻き起こる轟風に煽られ、大きくよろめきながら、驚愕の声を上げた。
――と、
彼らの耳に、コツコツと近付くブーツの足音が聞こえてくる。
「だ……誰だ!」
たじろぎつつも、兵たちは一斉に剣を抜き、足音の聞こえてきた闇の向こうに向けて構えた。
「今の風……精霊術だな? き、貴様、エルフか?」
「……」
「お……俺たち人間族に逆らうと、どうなるか分かっているのかっ? こ、後悔する事になるぞ、この狼藉者めが!」
「……狼藉をしているのは、どちらの方だ」
「――ッ!」
闇の向こうから返ってきた若い女の声に漲る怒気に、兵たちは思わず気圧される。
そして、闇の中から姿を現した“狼藉者”の姿を見て、思わず息を呑んだ。
「……はじめは、お前たちも他の人間族たちと同様、気付かない内に眠らせてやろうと思ってたけど――気が変わった」
軽装鎧に身を包んだ若い女のハーフエルフは、その長く美しい金髪を僅かに逆立たせ、蒼玉のような瞳を憤怒で輝かせながら、凛とした声で叫んだ。
「たとえ異種族だろうと、まだ幼い子どもたちに平気で手を上げようとする貴様らには、この私――“伝説の四勇士”ファミィ・ネアルウェーン・カレナリエールが、存分に痛い目を見せてやることにする! 覚悟しろ、この品性劣悪ド外道下衆人間族どもめがッ!」
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる