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第六章 ふたりの装甲戦士は、何故互いに戦うのか
第六章其の弐 咆哮
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「おうおう! さっさと門開けろやゴラァっ!」
キヤフェの正門の前で仁王立ちした薫は、眉間に皺を寄せ――いわゆるメンチ切り――ながら、固く閉ざされた門の前で声を張り上げた。
「コッチは、わざわざ礼儀正しく玄関から入ってやろうとしてんだよ! ぶっ壊されたくなかったら、大人しく門を開けやこのクソネコ共がぁッ!」
そう捲し立てながら中指を立てて挑発するが、門の中からは何の反応も無い。
薫のこめかみに青筋が浮いた。
「……そうかいそうかい! てめえらが、そういう態度を取ろうってんだったら、無理矢理こじ開けるだけだぜこの野郎!」
そう叫ぶや、薫はズボンのポケットから銀色のツールサムターンを取り出す。
そして、左手に嵌めたツールズグローブの窪みにツールサムターンを嵌め込み、その手を顔の前まで上げた。
――と、その時、彼の前に聳える外壁と正門の上から何名もの猫獣人が一斉に顔を出した。その手に持った大きな弓に矢を番え、薫に向けて狙いを定める。
「……ちっ!」
猫獣人たちの顔を見た瞬間、彼の脳裏に、先ほど健一に言われた言葉がフラッシュバックした。
『キミさ……、もしかして、生身の人間を殺すって事が怖いのかな?』
『はあ……。人を殺すのなんて、ネコと大して違いはないだろうに……』
「……誰がビビってるだと、あのクソガキ!」
彼は、口中で呟くと、ギリリと歯を食いしばる。
「でも……違えだろうが、全然! ネコを殺すのと……人を殺すのはよ!」
彼が毒づくと同時に、門上の猫獣人兵が、一斉に矢を放った。
甲高い風切り音と共に、無数の矢が、生身の薫めがけて迫りくる。
「――だが、今更躊躇なんざしねえんだよ! テメエら相手ならな!」
そう叫ぶや、薫は右手の指で摘まんだツールサムターンを一気に回した。
刹那、ツールサムターンから夥しい白光が溢れ出し、渦を巻いて彼の身体を包み込む。
その身体に迫った矢は、白い光の奔流に阻まれ、悉く弾き飛ばされた。
「――ッ!」
光が収まり、そこには、メタリックシルバーの装甲に身を包み、右手には巨大な回転刃を生やした異形の戦士が立っていた。
『装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイル、スタート・オブ・ワーク』
機械音声が、抑揚の無い声で名乗りを上げると同時に、
「オラァアアアアアアッ!」
装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイルは、まるで獣のように咆哮した。
同時に、右腕のツールズ・トゥーサイデッド・ソーが、ギュルルルル……と、剣呑な唸り声を上げる。
「――に、二の矢を番えろ! ……射て――ッ!」
門の上で彼を見下ろしていた猫獣人の小隊長が、慌てた様子で麾下の弓兵に命じ、即座に第二射が放たれた。
無数の矢の雨が、ツールズただ一人に向けて降り注ぐ――が、
「……そんなナマクラ矢が、オレに当たると、本気で思ってんかゴラァッ!」
ツールズは怒声を上げ、勢いよく回転し続ける右腕のトゥーサイデッド・ソーを、上空に向けて振り払う。
ビュオウ……ッ!
たちまち巻き起こった衝撃波が空気を裂き、彼を狙って飛んできた矢を全て真っ二つにへし折った。
「ぐ――ッ!」
その圧倒的な威力に、門の上で一部始終を見ていた隊長は思わず言葉を失う。
――一方、降り注いだ矢を全て打ち払ったツールズは、地を蹴り、前方に向けて大きく跳躍した。
そして、大きく右腕を振り上げ、
「オラァァアッ!」
という雄叫びと共に、閉ざされたままの巨大な正門の鋼の扉に激しく回転するトゥーサイデッド・ソーの回転刃を叩きつける。
ガガガガガガガガガガガッ!
耳障りな摩擦音と共に、夥しい火花を散らしながら、鋼の扉と回転刃はぶつかり合うが、
ガガガガギィンッ!
「グッ――!」
ひときわ激しい音を立てて、トゥーサイデッド・ソーは鋼の扉に弾かれた。
その表面には無数の傷が刻み付けられているものの、鋼の扉はトゥーサイデッド・ソーの無慈悲な攻撃を食らって真っ二つになる事も無く、依然としてツールズの前に聳え立っている。
固唾を呑んで見守っていた猫獣人の間から、オーッという歓声が上がった。
「……クソがッ!」
一方、分厚い門扉も前に、敢え無く破壊に失敗したツールズは、忌々し気に舌打ちをしながら、右腕のチェーンソーの鎖刃に目を遣る。
……幸い、摩擦熱で煙が薄く上がっている以外は、刃毀れも脱落も無い様だ。
それを確認したツールズは、クルリと背を向け、ゆっくりと扉の前から離れていく。
「……お、悪魔め! 諦めて逃げるつもりか?」
「大口を叩いていた割には、情けないなオイ!」
「ハハハッ! このキヤフェが誇る『凱旋ノ門』の堅牢さには、さしもの悪魔もお手上げと見える!」
彼の背後に、猫獣人たちの罵声が次々と浴びせかけられた。
――と、十歩ほど離れたところで、ツールズの足がピタリと止まる。
彼はくるりと振り返ると、
「……誰が逃げるだと? 情けないだと? お手上げだとッ?」
そう叫び、アイユニットを爛々と輝かせながら、右腕を大きく振り上げた。
「オレが距離を取ったのは……こうする為だよッ!」
そう言い捨てるや、彼はトゥーサイデッド・ソーの刃の回転を最大に上げる。
たちまち熱を持って真っ赤になったトゥーサイデッド・ソーを水平に保持し、ツールズはその場でゆっくりと身体を回転させ始めた。
「な……何だ……?」
門上の猫獣人兵たちが、訝し気な表情を浮かべ、ツールズの始めた奇妙な動きに注目する。
――その目が驚愕で見開かれるのには、さほどの時間を要しなかった。
「な……何だ、アレは!」
回転し続けるツールズの周りにできた空気の流れが渦を巻き、やがて竜巻となって天高く立ち上るのを見た兵たちは、ようやく事態の深刻さに気が付く。
――だが、今更慌てても、もう遅かった。
狼狽える彼らの眼前で、荒れ狂う巨大な真紅の竜巻――。
その中心に居るツールズが咆哮する。
「くたばれや! ツールズ・クリムゾン・トルネードォォォオオオオッ!」
キヤフェの正門の前で仁王立ちした薫は、眉間に皺を寄せ――いわゆるメンチ切り――ながら、固く閉ざされた門の前で声を張り上げた。
「コッチは、わざわざ礼儀正しく玄関から入ってやろうとしてんだよ! ぶっ壊されたくなかったら、大人しく門を開けやこのクソネコ共がぁッ!」
そう捲し立てながら中指を立てて挑発するが、門の中からは何の反応も無い。
薫のこめかみに青筋が浮いた。
「……そうかいそうかい! てめえらが、そういう態度を取ろうってんだったら、無理矢理こじ開けるだけだぜこの野郎!」
そう叫ぶや、薫はズボンのポケットから銀色のツールサムターンを取り出す。
そして、左手に嵌めたツールズグローブの窪みにツールサムターンを嵌め込み、その手を顔の前まで上げた。
――と、その時、彼の前に聳える外壁と正門の上から何名もの猫獣人が一斉に顔を出した。その手に持った大きな弓に矢を番え、薫に向けて狙いを定める。
「……ちっ!」
猫獣人たちの顔を見た瞬間、彼の脳裏に、先ほど健一に言われた言葉がフラッシュバックした。
『キミさ……、もしかして、生身の人間を殺すって事が怖いのかな?』
『はあ……。人を殺すのなんて、ネコと大して違いはないだろうに……』
「……誰がビビってるだと、あのクソガキ!」
彼は、口中で呟くと、ギリリと歯を食いしばる。
「でも……違えだろうが、全然! ネコを殺すのと……人を殺すのはよ!」
彼が毒づくと同時に、門上の猫獣人兵が、一斉に矢を放った。
甲高い風切り音と共に、無数の矢が、生身の薫めがけて迫りくる。
「――だが、今更躊躇なんざしねえんだよ! テメエら相手ならな!」
そう叫ぶや、薫は右手の指で摘まんだツールサムターンを一気に回した。
刹那、ツールサムターンから夥しい白光が溢れ出し、渦を巻いて彼の身体を包み込む。
その身体に迫った矢は、白い光の奔流に阻まれ、悉く弾き飛ばされた。
「――ッ!」
光が収まり、そこには、メタリックシルバーの装甲に身を包み、右手には巨大な回転刃を生やした異形の戦士が立っていた。
『装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイル、スタート・オブ・ワーク』
機械音声が、抑揚の無い声で名乗りを上げると同時に、
「オラァアアアアアアッ!」
装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイルは、まるで獣のように咆哮した。
同時に、右腕のツールズ・トゥーサイデッド・ソーが、ギュルルルル……と、剣呑な唸り声を上げる。
「――に、二の矢を番えろ! ……射て――ッ!」
門の上で彼を見下ろしていた猫獣人の小隊長が、慌てた様子で麾下の弓兵に命じ、即座に第二射が放たれた。
無数の矢の雨が、ツールズただ一人に向けて降り注ぐ――が、
「……そんなナマクラ矢が、オレに当たると、本気で思ってんかゴラァッ!」
ツールズは怒声を上げ、勢いよく回転し続ける右腕のトゥーサイデッド・ソーを、上空に向けて振り払う。
ビュオウ……ッ!
たちまち巻き起こった衝撃波が空気を裂き、彼を狙って飛んできた矢を全て真っ二つにへし折った。
「ぐ――ッ!」
その圧倒的な威力に、門の上で一部始終を見ていた隊長は思わず言葉を失う。
――一方、降り注いだ矢を全て打ち払ったツールズは、地を蹴り、前方に向けて大きく跳躍した。
そして、大きく右腕を振り上げ、
「オラァァアッ!」
という雄叫びと共に、閉ざされたままの巨大な正門の鋼の扉に激しく回転するトゥーサイデッド・ソーの回転刃を叩きつける。
ガガガガガガガガガガガッ!
耳障りな摩擦音と共に、夥しい火花を散らしながら、鋼の扉と回転刃はぶつかり合うが、
ガガガガギィンッ!
「グッ――!」
ひときわ激しい音を立てて、トゥーサイデッド・ソーは鋼の扉に弾かれた。
その表面には無数の傷が刻み付けられているものの、鋼の扉はトゥーサイデッド・ソーの無慈悲な攻撃を食らって真っ二つになる事も無く、依然としてツールズの前に聳え立っている。
固唾を呑んで見守っていた猫獣人の間から、オーッという歓声が上がった。
「……クソがッ!」
一方、分厚い門扉も前に、敢え無く破壊に失敗したツールズは、忌々し気に舌打ちをしながら、右腕のチェーンソーの鎖刃に目を遣る。
……幸い、摩擦熱で煙が薄く上がっている以外は、刃毀れも脱落も無い様だ。
それを確認したツールズは、クルリと背を向け、ゆっくりと扉の前から離れていく。
「……お、悪魔め! 諦めて逃げるつもりか?」
「大口を叩いていた割には、情けないなオイ!」
「ハハハッ! このキヤフェが誇る『凱旋ノ門』の堅牢さには、さしもの悪魔もお手上げと見える!」
彼の背後に、猫獣人たちの罵声が次々と浴びせかけられた。
――と、十歩ほど離れたところで、ツールズの足がピタリと止まる。
彼はくるりと振り返ると、
「……誰が逃げるだと? 情けないだと? お手上げだとッ?」
そう叫び、アイユニットを爛々と輝かせながら、右腕を大きく振り上げた。
「オレが距離を取ったのは……こうする為だよッ!」
そう言い捨てるや、彼はトゥーサイデッド・ソーの刃の回転を最大に上げる。
たちまち熱を持って真っ赤になったトゥーサイデッド・ソーを水平に保持し、ツールズはその場でゆっくりと身体を回転させ始めた。
「な……何だ……?」
門上の猫獣人兵たちが、訝し気な表情を浮かべ、ツールズの始めた奇妙な動きに注目する。
――その目が驚愕で見開かれるのには、さほどの時間を要しなかった。
「な……何だ、アレは!」
回転し続けるツールズの周りにできた空気の流れが渦を巻き、やがて竜巻となって天高く立ち上るのを見た兵たちは、ようやく事態の深刻さに気が付く。
――だが、今更慌てても、もう遅かった。
狼狽える彼らの眼前で、荒れ狂う巨大な真紅の竜巻――。
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