110 / 345
第九章 灰色の象は、憎しみに逸る戦士を退けられるのか
第九章其の伍 開戦
しおりを挟む
「くたばれぇっ!」
憎々しげな叫びと共に、ツールズが手にしたマルチプル・ツール・ガンの銃爪を引く。
その銃口から、眩いマズルフラッシュと同時に白く光る釘が数本立て続けに発射され、地響きを立てながら突進してくるテラ目がけて飛んだ。
「おおおぉぉっ!」
テラはすかさず、マウンテンエレファントのビッグノーズを振り上げる。
カカカン! という乾いた音を立てて、光る釘が全て弾き飛ばされた。
そして、突進の勢いは弱めぬまま右腕を真横に振り上げ、ツールズの首元目がけてラリアットを食らわそうとする。
「エレファ・ラリアットォーッ!」
「……くっ!」
射撃体勢を取ったままだったツールズは、回避行動が遅れた。
咄嗟にリンボーダンスでバーを潜る様に身体を仰け反らせ、テラの巨椀の下を潜り抜けようとする。
――が、
「くっ! ぐうぅっ!」
テラ・タイプマウンテンエレファントが、その怪力で放ったラリアットが巻き起こした衝撃波をまともに浴びたツールズは、苦悶の声を上げながら尻餅をついた。
その隙を、テラは逃さない。
両脚を踏ん張って強引にその場で制止すると、まるで四股を踏もうとするかのように、高々と脚を上げた。
「ビッグフットスタ――!」
「……ネイルスピアモードッ!」
自分の足元に仰向けに倒れた格好のツールズの胸目がけ、テラが巨大な脚を振り下ろそうとする直前、ツールズが叫ぶ。
その叫びに応じるようにマルチプル・ツール・ガンが眩い光に包まれ、たちまち細長い槍に形を変えた。
「串刺しになっちまえ!」
ツールズは、槍を掴んだ右手をテラの股座目がけて振り上げる。江戸時代の磔刑よろしく、股間から脳天までを槍で貫こうというのだ。
「く……! くおおおおおっ!」
不意を衝かれたテラは、咄嗟に振り上げた右脚を横に払い、急所を狙うネイルスピアを蹴り飛ばす。
だが、そのせいで、テラの視線がツールズから一瞬切れる。
「隙ありぃっ!」
ツールズは、槍を蹴り払われた反動を利用してグルグルと身体を回転させながら起き上がり、そのままテラに向けて浴びせ蹴りを放つ。
「グッ!」
肩口にツールズの浴びせ蹴りを食らったテラは、くぐもった呻き声を上げるが――、
「――チィッ、効かねえか!」
ツールズの浴びせ蹴りをまともに食らっても微動だにしないテラの様子に、ツールズは忌々しげに舌を打つ。
不充分な体勢から放ったとはいえ、手応えは充分だった。それにも関わらず、テラ・タイプ・マウンテンエレファントの堅牢な装甲の前には、ツールズの浴びせ蹴りは蟻の一撫でに等しいようだ。
だが、ツールズには、その事を悔しがる暇すら与えられない。
瞬時に伸びたテラのビッグノーズが、蹴りを放って伸び切ったツールズの足首にガッチリと巻き付いた。
「ぐっ! は、離――!」
「グオオオオオオオ――ッ!」
ツールズが怒鳴る間もなく、獣の如き咆哮を上げたテラがビッグノーズの先にツールズを掴んだまま、その場で激しく回転し始める。
「ぐっ……グウウウッ!」
目まぐるしい回転によって、身体に容赦なく加えられる苛烈な遠心力の前に為す術もないツールズは、マスクの下の顔を歪めながら、ネイルスピアを握る手に力を込めた。
「が……ガンモード……ッ!」
ようやくの思いで、ネイルスピアをマルチプル・ツール・ガンへ変形させる事が出来たツールズは、自分の足首に巻き付いたテラのビッグノーズ目がけて乱射した。
殆どの釘弾はビッグノーズの金属装甲に弾かれたが、そのうちの数本が、装甲の僅かな隙間に突き立ち、ツールズの足首への巻き付く力が僅かに緩む。
ビッグノーズから、ツールズの足首がすっぽ抜けた。
「う、うおおわあああ――ッ!」
悲鳴の様な絶叫を残し、ツールズの身体が、灌木を次々薙ぎ倒しつつ宙を舞う。
そして、朦々と土煙を上げて、森の奥の地面に転がった。
一方のテラは、立ち上る土煙に顔を向けるや「……逃がすか!」と叫び、土煙の方に向けて躊躇なく地を蹴る。
地響きを立てながら、その巨体に似合わぬ敏捷さを見せるテラ。薙ぎ倒された灌木を軽々と飛び越えながら、スピードを落とさずに森の中へと足を踏み入れた。
と、その時――、
「おおおおおおおおおっ!」
咆哮と共に、鬱蒼と茂る森の木々が一斉に薙ぎ倒され、テラの方はと倒れ掛かってくる。
「――ッ! ビッグノーズッ!」
一瞬、虚を衝かれたテラだったが、即座にビッグノーズを伸ばし、自分の方へと圧し掛かろうとする太い木の幹を全て弾き飛ばした。
地面を転がる木の幹によって、再び夥しい土煙が上がり、テラの視界を妨げる。
――と、あたりに立ち込める土煙の中で光が瞬き、甲高いモーター音と回転音がテラの耳を打った。
「っ……!」
本能的に危険を察知したテラは、即座に後方へ飛び退る。
その一瞬後、激しく回転するチェーンソーの刀身が、数瞬前にテラが立っていた場所を横一線に薙ぎ払った。
白い火花を散らせ、ガリガリと嫌な音を立てながら、強靭なはずのマウンテンエレファントの胸部装甲に真一文字の傷が刻み込まれる。
「ぐッ……!」
「……ちっ、浅かったか……! 相変わらず、カンのいい野郎だ!」
思わず呻き声を上げて胸部装甲の傷に掌を這わせるテラを悔しそうに睨みつけながら、悠然と土煙の中から姿を現し、右腕のトゥーサイデッド・ソーの刃身を振り払ったのは――、
装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイルだった。
憎々しげな叫びと共に、ツールズが手にしたマルチプル・ツール・ガンの銃爪を引く。
その銃口から、眩いマズルフラッシュと同時に白く光る釘が数本立て続けに発射され、地響きを立てながら突進してくるテラ目がけて飛んだ。
「おおおぉぉっ!」
テラはすかさず、マウンテンエレファントのビッグノーズを振り上げる。
カカカン! という乾いた音を立てて、光る釘が全て弾き飛ばされた。
そして、突進の勢いは弱めぬまま右腕を真横に振り上げ、ツールズの首元目がけてラリアットを食らわそうとする。
「エレファ・ラリアットォーッ!」
「……くっ!」
射撃体勢を取ったままだったツールズは、回避行動が遅れた。
咄嗟にリンボーダンスでバーを潜る様に身体を仰け反らせ、テラの巨椀の下を潜り抜けようとする。
――が、
「くっ! ぐうぅっ!」
テラ・タイプマウンテンエレファントが、その怪力で放ったラリアットが巻き起こした衝撃波をまともに浴びたツールズは、苦悶の声を上げながら尻餅をついた。
その隙を、テラは逃さない。
両脚を踏ん張って強引にその場で制止すると、まるで四股を踏もうとするかのように、高々と脚を上げた。
「ビッグフットスタ――!」
「……ネイルスピアモードッ!」
自分の足元に仰向けに倒れた格好のツールズの胸目がけ、テラが巨大な脚を振り下ろそうとする直前、ツールズが叫ぶ。
その叫びに応じるようにマルチプル・ツール・ガンが眩い光に包まれ、たちまち細長い槍に形を変えた。
「串刺しになっちまえ!」
ツールズは、槍を掴んだ右手をテラの股座目がけて振り上げる。江戸時代の磔刑よろしく、股間から脳天までを槍で貫こうというのだ。
「く……! くおおおおおっ!」
不意を衝かれたテラは、咄嗟に振り上げた右脚を横に払い、急所を狙うネイルスピアを蹴り飛ばす。
だが、そのせいで、テラの視線がツールズから一瞬切れる。
「隙ありぃっ!」
ツールズは、槍を蹴り払われた反動を利用してグルグルと身体を回転させながら起き上がり、そのままテラに向けて浴びせ蹴りを放つ。
「グッ!」
肩口にツールズの浴びせ蹴りを食らったテラは、くぐもった呻き声を上げるが――、
「――チィッ、効かねえか!」
ツールズの浴びせ蹴りをまともに食らっても微動だにしないテラの様子に、ツールズは忌々しげに舌を打つ。
不充分な体勢から放ったとはいえ、手応えは充分だった。それにも関わらず、テラ・タイプ・マウンテンエレファントの堅牢な装甲の前には、ツールズの浴びせ蹴りは蟻の一撫でに等しいようだ。
だが、ツールズには、その事を悔しがる暇すら与えられない。
瞬時に伸びたテラのビッグノーズが、蹴りを放って伸び切ったツールズの足首にガッチリと巻き付いた。
「ぐっ! は、離――!」
「グオオオオオオオ――ッ!」
ツールズが怒鳴る間もなく、獣の如き咆哮を上げたテラがビッグノーズの先にツールズを掴んだまま、その場で激しく回転し始める。
「ぐっ……グウウウッ!」
目まぐるしい回転によって、身体に容赦なく加えられる苛烈な遠心力の前に為す術もないツールズは、マスクの下の顔を歪めながら、ネイルスピアを握る手に力を込めた。
「が……ガンモード……ッ!」
ようやくの思いで、ネイルスピアをマルチプル・ツール・ガンへ変形させる事が出来たツールズは、自分の足首に巻き付いたテラのビッグノーズ目がけて乱射した。
殆どの釘弾はビッグノーズの金属装甲に弾かれたが、そのうちの数本が、装甲の僅かな隙間に突き立ち、ツールズの足首への巻き付く力が僅かに緩む。
ビッグノーズから、ツールズの足首がすっぽ抜けた。
「う、うおおわあああ――ッ!」
悲鳴の様な絶叫を残し、ツールズの身体が、灌木を次々薙ぎ倒しつつ宙を舞う。
そして、朦々と土煙を上げて、森の奥の地面に転がった。
一方のテラは、立ち上る土煙に顔を向けるや「……逃がすか!」と叫び、土煙の方に向けて躊躇なく地を蹴る。
地響きを立てながら、その巨体に似合わぬ敏捷さを見せるテラ。薙ぎ倒された灌木を軽々と飛び越えながら、スピードを落とさずに森の中へと足を踏み入れた。
と、その時――、
「おおおおおおおおおっ!」
咆哮と共に、鬱蒼と茂る森の木々が一斉に薙ぎ倒され、テラの方はと倒れ掛かってくる。
「――ッ! ビッグノーズッ!」
一瞬、虚を衝かれたテラだったが、即座にビッグノーズを伸ばし、自分の方へと圧し掛かろうとする太い木の幹を全て弾き飛ばした。
地面を転がる木の幹によって、再び夥しい土煙が上がり、テラの視界を妨げる。
――と、あたりに立ち込める土煙の中で光が瞬き、甲高いモーター音と回転音がテラの耳を打った。
「っ……!」
本能的に危険を察知したテラは、即座に後方へ飛び退る。
その一瞬後、激しく回転するチェーンソーの刀身が、数瞬前にテラが立っていた場所を横一線に薙ぎ払った。
白い火花を散らせ、ガリガリと嫌な音を立てながら、強靭なはずのマウンテンエレファントの胸部装甲に真一文字の傷が刻み込まれる。
「ぐッ……!」
「……ちっ、浅かったか……! 相変わらず、カンのいい野郎だ!」
思わず呻き声を上げて胸部装甲の傷に掌を這わせるテラを悔しそうに睨みつけながら、悠然と土煙の中から姿を現し、右腕のトゥーサイデッド・ソーの刃身を振り払ったのは――、
装甲戦士ツールズ・パイオニアリングソースタイルだった。
0
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる