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第二十章 “最強”の二つ名は、どちらの戦士に冠されるのか
第二十章其の壱拾伍 終結
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ジュエルは、オリジンの身体を地面に圧しつけると同時に、左掌の能力“捨離の斥力”を発動させた。
それにより、ジュエルの左掌とオリジンの身体との間に強い斥力が発生する。
「がっ……は……ッ!」
ジュエルの左掌からの斥力を受けて、地面に強く圧しつけられたオリジンの口から苦悶の呻き声が漏れる。
それでも、何とか“捨離の斥力”の力から逃れようと、両手を伸ばしてジュエルの腕を掴もうとするが、その両手すら斥力によって逸らされてしまう。
――ボコォッ!
更に強まる斥力によって、遂にオリジンの周りの地面が、まるでクレーターのように陥没した。
同時に、オリジンの全身を覆う装甲にも、無数の亀裂が入る。
「ぐ……!」
「くく……格別ですね。貴方を……最強の戦士・アームドファイターオリジンその人を、まるで昆虫標本のような不様な姿で、地面に磔にしてやる気分は!」
「……」
「このまま、車に轢かれたカエルのようにぺっしゃんこにしてやりたいところですが……残念ながら、貴方の身体を装甲ごと潰し切るには、私の力と――理性を保つ時間が足りないようだ」
そう言うと、ジュエルは覆面の下で顔を顰めながら、右手で頭を押さえた。
「このシャイニーロンズデーライトエディション……最終フォームを超えた究極の装甲なだけあって、恐ろしく精神を疲弊させるようだ……」
そう呟くジュエルの脳裏に、追い詰めたテラが黒い龍の装甲を纏った後に自我を失い暴走した時の光景が浮かび上がる。
ジュエルは、今の自分もあの時のテラと同じ状況に置かれている事を直感的に悟った。
(急がなければいけないな……)
そう考えたジュエルは、眼下の地面に深くめり込むオリジンの姿を見下ろした。
幼少の頃、ブラウン管のテレビ越しに憧憬の眼差しで……そして、この世界に来てからはすぐ間近で、嫉妬と羨望の混じった眼差しで、幾度も見てきた“絶対的正義”の象徴ともいえる装甲。
その装甲を纏った最強の戦士が、見るも無残な姿で目の前に横たわっている……。
「……く、くく、う……」
ジュエルの口から、嘲笑とも嗚咽ともつかない声が漏れた。そして、思わず口元を押さえると、独り言のように呟いた。
「……いけませんね。貴方のその姿を見て、思わず心を動かされましたよ。私の中にもまだ残っていたようですね、感傷という情動が。……正直、驚きました」
「……」
ジュエルの言葉にも、仰向けに横たわったオリジンは、何も応えない。
そんな彼の反応を鼻で嗤ったジュエルは、ふと空を見上げた。
真黒な雲に覆われた空からは、ぽつぽつと雨粒が落ち始めている。
「ああ、いけない。降ってきたようだ」
ジュエルはまるで世間話でもしているかのように呟くと、空を見上げたままの体勢で、ゆっくりと腰を屈めた。
「では……これで終わりにしましょう、オリジン。――これからお見せするのが、このシャイニーロンズデーライトエディションの必殺技――即ち、貴方へ引導を渡す技です!」
彼はそう言い放つと、左掌をオリジンに向けたまま後方に向かって大きく跳んだ。
そして、二十メートルほど離れたところで、開いていた左手を握り込むと同時に、
「輝光の引力」
今度は右掌をオリジンに向けて開いた。
「……ぐ」
先程までとは逆に、強い引力を受けたオリジンの身体が、めり込んでいた地面から無理矢理引きずり上げられ、直立した体勢にさせられる。
オリジンを強引に立たせたジュエルは、握り込んだ左手を身体の前に上げると、
「……ロンズデーライト・パッター」
と静かに言った。
その声に応じるように、彼の手甲パーツが形を変え始め、鋭い切っ先を持つ直刃の手甲剣となる。
「いきますよ」
そうオリジンに告げたジュエルは、右腕を後ろに引くと同時に、今度は前方に向かって跳んだ。
“輝光の引力”の支配下にあるオリジンの身体も、引き合っているジュエルの右腕の動きによって、前方に向けて引っ張られる。
その時、それまで光を失っていたオリジンのアイユニットが、ギラリと光った。
「……うおおおおおッ!」
彼は最後の力を振り絞って、今度は左拳に闘氣を纏わせる。
オリジンは、みるみる近付くジュエルに向かって叫んだ。
「……その左手では、先ほどの能力は使えまい! この拳は避けられんだろう!」
「――そうですね」
オリジンの言葉に対し、意外にもあっさりと頷いたジュエル。そして、接近するオリジンと同じように、彼も左腕を大きく後ろに引きながら叫ぶ。
「でも、避ける必要など無いんですよ、オリジン!」
「ッ! ――アームドファイター・スーパーパァァァンチィィィッッ!」
「おおおおおおっ! ロンズデーライト・スキューア・ストライク!」
互いに技名を叫びながら、渾身の力を込めて左腕を突き出したふたりの身体が重なり合う。
それを合図とするように激しく雨が降り始めた一帯に、凄まじい衝撃音が響き渡った。
「……」
「……」
激しく衝突したふたりの装甲戦士は、互いに一言も発する事無く、まるで時間が止まったかのようにその場で立ち尽くしていた。
そして、
「……ぐ……ぅ」
掠れた呻き声を上げて、その場に崩れ落ちたのは、
――装甲ごと、その胸の真ん中を最硬の刃で刺し貫かれたオリジンだった。
それにより、ジュエルの左掌とオリジンの身体との間に強い斥力が発生する。
「がっ……は……ッ!」
ジュエルの左掌からの斥力を受けて、地面に強く圧しつけられたオリジンの口から苦悶の呻き声が漏れる。
それでも、何とか“捨離の斥力”の力から逃れようと、両手を伸ばしてジュエルの腕を掴もうとするが、その両手すら斥力によって逸らされてしまう。
――ボコォッ!
更に強まる斥力によって、遂にオリジンの周りの地面が、まるでクレーターのように陥没した。
同時に、オリジンの全身を覆う装甲にも、無数の亀裂が入る。
「ぐ……!」
「くく……格別ですね。貴方を……最強の戦士・アームドファイターオリジンその人を、まるで昆虫標本のような不様な姿で、地面に磔にしてやる気分は!」
「……」
「このまま、車に轢かれたカエルのようにぺっしゃんこにしてやりたいところですが……残念ながら、貴方の身体を装甲ごと潰し切るには、私の力と――理性を保つ時間が足りないようだ」
そう言うと、ジュエルは覆面の下で顔を顰めながら、右手で頭を押さえた。
「このシャイニーロンズデーライトエディション……最終フォームを超えた究極の装甲なだけあって、恐ろしく精神を疲弊させるようだ……」
そう呟くジュエルの脳裏に、追い詰めたテラが黒い龍の装甲を纏った後に自我を失い暴走した時の光景が浮かび上がる。
ジュエルは、今の自分もあの時のテラと同じ状況に置かれている事を直感的に悟った。
(急がなければいけないな……)
そう考えたジュエルは、眼下の地面に深くめり込むオリジンの姿を見下ろした。
幼少の頃、ブラウン管のテレビ越しに憧憬の眼差しで……そして、この世界に来てからはすぐ間近で、嫉妬と羨望の混じった眼差しで、幾度も見てきた“絶対的正義”の象徴ともいえる装甲。
その装甲を纏った最強の戦士が、見るも無残な姿で目の前に横たわっている……。
「……く、くく、う……」
ジュエルの口から、嘲笑とも嗚咽ともつかない声が漏れた。そして、思わず口元を押さえると、独り言のように呟いた。
「……いけませんね。貴方のその姿を見て、思わず心を動かされましたよ。私の中にもまだ残っていたようですね、感傷という情動が。……正直、驚きました」
「……」
ジュエルの言葉にも、仰向けに横たわったオリジンは、何も応えない。
そんな彼の反応を鼻で嗤ったジュエルは、ふと空を見上げた。
真黒な雲に覆われた空からは、ぽつぽつと雨粒が落ち始めている。
「ああ、いけない。降ってきたようだ」
ジュエルはまるで世間話でもしているかのように呟くと、空を見上げたままの体勢で、ゆっくりと腰を屈めた。
「では……これで終わりにしましょう、オリジン。――これからお見せするのが、このシャイニーロンズデーライトエディションの必殺技――即ち、貴方へ引導を渡す技です!」
彼はそう言い放つと、左掌をオリジンに向けたまま後方に向かって大きく跳んだ。
そして、二十メートルほど離れたところで、開いていた左手を握り込むと同時に、
「輝光の引力」
今度は右掌をオリジンに向けて開いた。
「……ぐ」
先程までとは逆に、強い引力を受けたオリジンの身体が、めり込んでいた地面から無理矢理引きずり上げられ、直立した体勢にさせられる。
オリジンを強引に立たせたジュエルは、握り込んだ左手を身体の前に上げると、
「……ロンズデーライト・パッター」
と静かに言った。
その声に応じるように、彼の手甲パーツが形を変え始め、鋭い切っ先を持つ直刃の手甲剣となる。
「いきますよ」
そうオリジンに告げたジュエルは、右腕を後ろに引くと同時に、今度は前方に向かって跳んだ。
“輝光の引力”の支配下にあるオリジンの身体も、引き合っているジュエルの右腕の動きによって、前方に向けて引っ張られる。
その時、それまで光を失っていたオリジンのアイユニットが、ギラリと光った。
「……うおおおおおッ!」
彼は最後の力を振り絞って、今度は左拳に闘氣を纏わせる。
オリジンは、みるみる近付くジュエルに向かって叫んだ。
「……その左手では、先ほどの能力は使えまい! この拳は避けられんだろう!」
「――そうですね」
オリジンの言葉に対し、意外にもあっさりと頷いたジュエル。そして、接近するオリジンと同じように、彼も左腕を大きく後ろに引きながら叫ぶ。
「でも、避ける必要など無いんですよ、オリジン!」
「ッ! ――アームドファイター・スーパーパァァァンチィィィッッ!」
「おおおおおおっ! ロンズデーライト・スキューア・ストライク!」
互いに技名を叫びながら、渾身の力を込めて左腕を突き出したふたりの身体が重なり合う。
それを合図とするように激しく雨が降り始めた一帯に、凄まじい衝撃音が響き渡った。
「……」
「……」
激しく衝突したふたりの装甲戦士は、互いに一言も発する事無く、まるで時間が止まったかのようにその場で立ち尽くしていた。
そして、
「……ぐ……ぅ」
掠れた呻き声を上げて、その場に崩れ落ちたのは、
――装甲ごと、その胸の真ん中を最硬の刃で刺し貫かれたオリジンだった。
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