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第四章 田中天狼のシリアスな日常・奮闘編
矢的杏途龍のシリアスなホンネ
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「…………何やってんすか?」
体育祭の閉会式が終わり、解散となった後、俺は、当惑と呆れをない交ぜにした言葉を、目の前でうつぶせに寝転がって、バンザイをするかのように手を前に突き出している矢的先輩に投げかけた。
「土下寝ですって。土下座の最終進化形で、最高級の謝罪表現らしいわよ」
隣の撫子先輩が説明してくれた。
「すまねえ……すまねえ……」
よく耳を澄ませば、うつぶせになったまま、矢的先輩はぶつぶつ呟いている。
「……申し訳ないという気持ちの表れというのは理解しましたけど……地球に向かって謝ってる事になるんですがそれは……」
「ってゆーか、別にアンディ先輩が謝る事でもないしー」
春夏秋冬が、慌てて言う。
「……まあ、結果的に、文化部対抗障害物リレーは、ノーゲームになった訳ですし……」
結局、十亀部長が股間を強打して、泡を噴いて昏倒した為、競技は中断し、そのまま中止となった。
担架で運ばれていった十亀部長は、そのまま帰ってくる事は無かった。遠くで救急車のサイレンが鳴っていたので、そのまま病院送りになったのだろう。
――再起不能にならなければいいのだが……。
「そうそう! あたし達は気にしてないからさ~。もういいよ~」
「ほら、他の人たちの目もあるんで、そろそろ起きて下さいよ……」
というか、これ以上、大の高校二年生の伸びてる姿を見ていても、何の意味も得も無い。ホント恥ずかしいんで、そろそろ止めてほしい……と、俺と春夏秋冬は、矢的先輩を引きずり立たせようとする。
「……そ、そうか? うん、ならしゃあないなあ! 今日はこの辺で勘弁し――」
「……でも、そもそも、矢的くんがバットまわりの時に、余計に回ってなければ、私達の優勝で終わってたでしょうしね……」
「「「!」」」
ボソリと呟いた撫子先輩の一言に、俺たちは縮み上がった。
半ば立ち上がりかけていた矢的先輩は、顔面蒼白。慌てて土下寝の姿勢を取り直す。
「す……スミマセン、ナデシコさん……ナデシコ様! 反省しています! どうか……どうかお許しを――」
「冗談よ」
撫子先輩は、プッと吹き出した。
撫子先輩も、そんな冗談を言うんだ……でも、正直冗談に聞こえないので、自重してほしい……。
「――でも、正直残念だったねえ。『優勝して他部の部室ゲットだぜ! 作戦』、失敗しちゃったね……」
春夏秋冬が、しょぼんとした顔で言う。……そういえば、そんな名称だったな、今回の作戦……。
「……すまねえ……すまねえ……」
「まあ、過ぎた事はしょうがないわ。別の手を考えましょう」
「別の手…………そうだ!」
と、春夏秋冬が、顔を輝かせる。
「アクアちゃん、何か思いついた?」
「あのさ! あたし考えたんだけどさ――そもそも部室なんて無くてもいいんじゃない?」
「え――?」
俺たちは、春夏秋冬の言葉に虚を衝かれた。
「――どういう事?」
撫子先輩の問いに、春夏秋冬は、一呼吸おくと、一気にまくし立てた。
「部室はもうキッパリと諦めるの。部屋の空きも無いって、この前に生徒会の人たちも言ってたし……。だから、放課後はさ――、シリウスくん家で集まって、部活動するって事にすればいいんじゃないかな?」
「は――――――――?」
俺の顎は、音を立てて外れた。
「いわゆるひとつの、逆転のハッソウってヤツ!」ドヤ顔の春夏秋冬。
「シリウスくん家、学校から近いしさ。シリウスくんのおかあさんも、『いつでも遊びにおいでね~』って言ってたし! 色々揃ってるし~!」
待て待て待て! お前が言う「揃ってる」って、『炎愛の極星』関連書籍の薄い本だろ!
「……わ、悪くないわね」
撫子先輩!?
マズい。この流れはヒジョーにマズい! このままではなし崩しに春夏秋冬の提案が正式採用されてしまう――!
この流れ、何とかしなければ……。
「ちょ、ちょっと待って――」
「やっぱり、異議あ――――りッ!」
「――――へ?」
春夏秋冬の提案に異議を申し上げたのは――意外にも、矢的先輩だった。
一体、どういう風の吹き回しだろう……。
「それじゃ駄目なんだよ! オレたちには絶対に、校内に部室が必要なんだ! シリウスの家じゃなくな!」
矢的先輩は、いつになく毅然とした態度で強弁した。
「部室が無ければ、昼休みの時にぐっすり昼寝したり、かったるい授業サボる時に寛ぐスペースが無いじゃないか! それじゃあ、意味無いんだよぉ!」
「「「……………………」」」
「…………うわあ……」
「…………え? 何それ?」
あまりに身も蓋もない矢的先輩の発言に、ドン引く俺と春夏秋冬だったが、
「……………………矢的くん?」
俺たちの背後から発せられた……静かな、それでいてドスの効いた低い声が、俺と春夏秋冬を黙らせた。
撫子先輩の全身から、凄まじい殺気が渦を巻いて噴出している――――あ(察し)。
「…………あ」
矢的先輩も、自分が何て事を叫んでしまったのか、遅ればせながら気が付いた様だ。その顔色は、血の気が引いて真っ白になった。
「……貴方、部室が必要な理由を、『皆で集まって、一緒に楽しんだり、親交を温める為だ』って言ってたわよね……」
「あ……いや……」
「だから、私達もその考えに賛成して、貴方の言う通り、毎日毎日、リレーの練習を頑張ったのよ……」
「あ……その……あの……」
「でも、貴方が今まで言っていた事はタダの方便で、本音は今口走ったそれだったって事で、いいのかしら?」
「あ……いや……その……」
「……ちょっと、裏でお話しましょうか、矢的くん?」
「あ――いや、ちょっと待って……誤解……誤解だああぁ! シリウス、アクア! お、お前らなら分かってくれる――」
「田中くん、アクアちゃん――」
撫子先輩が、俺たちの方を向いて、にっこりと微笑って言った。
「お疲れ様」
「…………あ、お疲れ様でーす」
「お、お疲れ様~。なでしこセンパイ、また来週ね!」
「あ、ちょっと、二人とも……! ま、待って――た、助け――」
矢的先輩が、市場へ売られる仔牛の目で、必死でこちらに助けを求めるが――俺たちは目を逸して見ないフリ。
「矢的くん、ちょっとこっちへ」
「あ――――! スミマセンでした、ナデシコさん! 反省してます! だ、だから、ちょっと話を聞――」
ゴキっ
「ぐぇ……」
素早く背後に回った撫子先輩によって、一瞬で絞め落とされた矢的先輩は、彼女に襟を掴まれ、ズルズルと引き摺られながら、体育館の裏へと消えていったのだった……。
体育祭の閉会式が終わり、解散となった後、俺は、当惑と呆れをない交ぜにした言葉を、目の前でうつぶせに寝転がって、バンザイをするかのように手を前に突き出している矢的先輩に投げかけた。
「土下寝ですって。土下座の最終進化形で、最高級の謝罪表現らしいわよ」
隣の撫子先輩が説明してくれた。
「すまねえ……すまねえ……」
よく耳を澄ませば、うつぶせになったまま、矢的先輩はぶつぶつ呟いている。
「……申し訳ないという気持ちの表れというのは理解しましたけど……地球に向かって謝ってる事になるんですがそれは……」
「ってゆーか、別にアンディ先輩が謝る事でもないしー」
春夏秋冬が、慌てて言う。
「……まあ、結果的に、文化部対抗障害物リレーは、ノーゲームになった訳ですし……」
結局、十亀部長が股間を強打して、泡を噴いて昏倒した為、競技は中断し、そのまま中止となった。
担架で運ばれていった十亀部長は、そのまま帰ってくる事は無かった。遠くで救急車のサイレンが鳴っていたので、そのまま病院送りになったのだろう。
――再起不能にならなければいいのだが……。
「そうそう! あたし達は気にしてないからさ~。もういいよ~」
「ほら、他の人たちの目もあるんで、そろそろ起きて下さいよ……」
というか、これ以上、大の高校二年生の伸びてる姿を見ていても、何の意味も得も無い。ホント恥ずかしいんで、そろそろ止めてほしい……と、俺と春夏秋冬は、矢的先輩を引きずり立たせようとする。
「……そ、そうか? うん、ならしゃあないなあ! 今日はこの辺で勘弁し――」
「……でも、そもそも、矢的くんがバットまわりの時に、余計に回ってなければ、私達の優勝で終わってたでしょうしね……」
「「「!」」」
ボソリと呟いた撫子先輩の一言に、俺たちは縮み上がった。
半ば立ち上がりかけていた矢的先輩は、顔面蒼白。慌てて土下寝の姿勢を取り直す。
「す……スミマセン、ナデシコさん……ナデシコ様! 反省しています! どうか……どうかお許しを――」
「冗談よ」
撫子先輩は、プッと吹き出した。
撫子先輩も、そんな冗談を言うんだ……でも、正直冗談に聞こえないので、自重してほしい……。
「――でも、正直残念だったねえ。『優勝して他部の部室ゲットだぜ! 作戦』、失敗しちゃったね……」
春夏秋冬が、しょぼんとした顔で言う。……そういえば、そんな名称だったな、今回の作戦……。
「……すまねえ……すまねえ……」
「まあ、過ぎた事はしょうがないわ。別の手を考えましょう」
「別の手…………そうだ!」
と、春夏秋冬が、顔を輝かせる。
「アクアちゃん、何か思いついた?」
「あのさ! あたし考えたんだけどさ――そもそも部室なんて無くてもいいんじゃない?」
「え――?」
俺たちは、春夏秋冬の言葉に虚を衝かれた。
「――どういう事?」
撫子先輩の問いに、春夏秋冬は、一呼吸おくと、一気にまくし立てた。
「部室はもうキッパリと諦めるの。部屋の空きも無いって、この前に生徒会の人たちも言ってたし……。だから、放課後はさ――、シリウスくん家で集まって、部活動するって事にすればいいんじゃないかな?」
「は――――――――?」
俺の顎は、音を立てて外れた。
「いわゆるひとつの、逆転のハッソウってヤツ!」ドヤ顔の春夏秋冬。
「シリウスくん家、学校から近いしさ。シリウスくんのおかあさんも、『いつでも遊びにおいでね~』って言ってたし! 色々揃ってるし~!」
待て待て待て! お前が言う「揃ってる」って、『炎愛の極星』関連書籍の薄い本だろ!
「……わ、悪くないわね」
撫子先輩!?
マズい。この流れはヒジョーにマズい! このままではなし崩しに春夏秋冬の提案が正式採用されてしまう――!
この流れ、何とかしなければ……。
「ちょ、ちょっと待って――」
「やっぱり、異議あ――――りッ!」
「――――へ?」
春夏秋冬の提案に異議を申し上げたのは――意外にも、矢的先輩だった。
一体、どういう風の吹き回しだろう……。
「それじゃ駄目なんだよ! オレたちには絶対に、校内に部室が必要なんだ! シリウスの家じゃなくな!」
矢的先輩は、いつになく毅然とした態度で強弁した。
「部室が無ければ、昼休みの時にぐっすり昼寝したり、かったるい授業サボる時に寛ぐスペースが無いじゃないか! それじゃあ、意味無いんだよぉ!」
「「「……………………」」」
「…………うわあ……」
「…………え? 何それ?」
あまりに身も蓋もない矢的先輩の発言に、ドン引く俺と春夏秋冬だったが、
「……………………矢的くん?」
俺たちの背後から発せられた……静かな、それでいてドスの効いた低い声が、俺と春夏秋冬を黙らせた。
撫子先輩の全身から、凄まじい殺気が渦を巻いて噴出している――――あ(察し)。
「…………あ」
矢的先輩も、自分が何て事を叫んでしまったのか、遅ればせながら気が付いた様だ。その顔色は、血の気が引いて真っ白になった。
「……貴方、部室が必要な理由を、『皆で集まって、一緒に楽しんだり、親交を温める為だ』って言ってたわよね……」
「あ……いや……」
「だから、私達もその考えに賛成して、貴方の言う通り、毎日毎日、リレーの練習を頑張ったのよ……」
「あ……その……あの……」
「でも、貴方が今まで言っていた事はタダの方便で、本音は今口走ったそれだったって事で、いいのかしら?」
「あ……いや……その……」
「……ちょっと、裏でお話しましょうか、矢的くん?」
「あ――いや、ちょっと待って……誤解……誤解だああぁ! シリウス、アクア! お、お前らなら分かってくれる――」
「田中くん、アクアちゃん――」
撫子先輩が、俺たちの方を向いて、にっこりと微笑って言った。
「お疲れ様」
「…………あ、お疲れ様でーす」
「お、お疲れ様~。なでしこセンパイ、また来週ね!」
「あ、ちょっと、二人とも……! ま、待って――た、助け――」
矢的先輩が、市場へ売られる仔牛の目で、必死でこちらに助けを求めるが――俺たちは目を逸して見ないフリ。
「矢的くん、ちょっとこっちへ」
「あ――――! スミマセンでした、ナデシコさん! 反省してます! だ、だから、ちょっと話を聞――」
ゴキっ
「ぐぇ……」
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