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第十一章 “DEATH”TINY
右掌と左掌
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「な――何だ! 何が起こった……って、貴様ら!」
いつもは、虫の声さえ聞こえない重苦しい静寂に包まれているはずのダリア傭兵団本部に突如響き渡った轟音によって眠りを妨げられ、泡を食って音の源へと駆けつけた傭兵達。
彼らは、見るも無惨に崩れ落ちた牢舎の壁と、そこからのそのそと出てきた三人の影を見付けて、驚愕しながら叫んだ。
「やべっ! もう見つかった……っていうか、あんだけデカい音を立ててりゃ当然かぁ!」
と、しまったという顔で舌を出したジャスミンは、背後を振り返ってウインクをしてみせる。
「……つー事で、オッサン! 責任とってよね!」
「やれやれ。新しいボスは、人使いが荒いねえ」
「あ……待って下さい、ヒースさん……まだ、傷が塞がってなくて……」
立ち上がろうとするヒースを、左手を彼の額に翳しながら必死で押し止めるパーム。
彼が目を閉じて集中すると、左手から溢れる蒼い光が強まり、ヒースの額を濡らす傷口がみるみる塞がっていく。
「てめえらぁ! 何してくれてるんじゃぁあ!」
だが、傭兵達に、ヒースの治療を待ってやる理由も義理も無い。彼らは短剣やサーベルを抜き放ち、狭い廊下を一列になって、脱獄者たちへ向かって突進する。
「お……おい、来たぞ! マズいって……。俺、今、無ジンノヤイバ持ってねえんだぞ!」
そう、悲鳴を上げながら、素早くヒースの広い背中の陰へと隠れるジャスミン。
「じゃ……ジャスミンさん……、それは少しみっともない……」
「だってしょうがないじゃん! さすがに丸腰は無理無理無理のカタツムリ!」
ハラエを施しながら呆れ顔のパームに向かって、口を尖らせるジャスミン。
「やれやれ。しょうがねえなぁ」
ヒースは、苦笑いを浮かべると、足元の小さな瓦礫をいくつか拾い上げると、
「――ホラよっ!」
と、迫り来る傭兵達に向かって投げつけた。
「――ぶべらっ!」
カ――――ンと、乾いた音を立てて、何人かの傭兵の頭に瓦礫が命中し、傭兵達は白目を剥いて仰向けに倒れる。
「オイオイ、死んだんじゃないの、あの人たち……?」
ジャスミンが、ヒースの背中から顔だけ出して、思わず相手の安否を心配する。ヒースは、彼の言葉に対して、肩を竦めてみせた。
「いやいや、あれでも、最大限優し~く投げてやったぜ。あれくらいじゃ死なねえだろ……多分」
「オッサンの『優しく』は、常人にとってはぜ~んぜん優しくなさそうなんだよなあ……」
「――って、次、来ましたよ!」
パームの叫んだ通り、仲間の身体の陰に隠れて石礫の直撃を避けた傭兵が、昏倒する仲間の身体を飛び越えて、無謀を顧みずに突っ込んでくる。
「おっとっと……石、石……と」
ヒースは足元を探るが、手頃な瓦礫が見つからない。
「おい! オッサン、前、前っ!」
ジャスミンが悲鳴を上げて、慌ててヒースの背中の後ろに隠れる。
その時、
『ブシャムの聖眼 宿る右の掌 紅き月 集いし雄氣 邪気を滅するっ!』
ミソギの聖句が唱えられると同時に、真っ赤に輝く光球が、傭兵の方に向かって放たれ、彼の身体に到達するや、紅い光の衝撃波と化し、その身体を駆け巡った。
「が、ああああ……!」
傭兵は、くぐもった悲鳴を上げると、白目を剥いて、糸の切れた操り人形のように、その場に頽れる。
「……ふう」
安堵の溜息を吐いたパームは、左手はヒースの頭に翳したまま、“ミソギ”を放ち、仄かに紅く光るブシャムの聖眼が刻まれた右手を下ろした。
「ひゅ――、やるじゃん、パーム君! “ハラエ”しながら“ミソギ”をぶっ放すとか……成長したねえ~! 果無の樹海の頃とは見違えるわ!」
ジャスミンが、思わず口笛を吹いて、パームを絶賛する。パームは照れて、端正な顔の白い頬を真っ赤に染めた。
「……いや、からかわないで下さいよ、ジャスミンさん。――はい、ヒースさん。塞がりました……傷」
「お、すまねえな、坊ちゃん」
パームが翳した左掌をどけると、ヒースの額にパックリと開いていた傷は、嘘の様に消えていた。
「大したもんだな、坊ちゃん。負傷してなんか無かったみてえに、痛みが引いたぜ」
「もう……ヒースさんまで……」
パームは、耳の先まで顔を真っ赤にして照れている。
「――っと、いつまでもこんな所でマッタリしている訳にもいかない。……まずは、得物だ。ずっと石礫で戦う訳にもいかないからな……」
ジャスミンは、そう言うと、スックと立ち上がった。
「行こうぜ。牢舎の詰め所に向かうぞ。……アザリーが、言ってた通りにな」
いつもは、虫の声さえ聞こえない重苦しい静寂に包まれているはずのダリア傭兵団本部に突如響き渡った轟音によって眠りを妨げられ、泡を食って音の源へと駆けつけた傭兵達。
彼らは、見るも無惨に崩れ落ちた牢舎の壁と、そこからのそのそと出てきた三人の影を見付けて、驚愕しながら叫んだ。
「やべっ! もう見つかった……っていうか、あんだけデカい音を立ててりゃ当然かぁ!」
と、しまったという顔で舌を出したジャスミンは、背後を振り返ってウインクをしてみせる。
「……つー事で、オッサン! 責任とってよね!」
「やれやれ。新しいボスは、人使いが荒いねえ」
「あ……待って下さい、ヒースさん……まだ、傷が塞がってなくて……」
立ち上がろうとするヒースを、左手を彼の額に翳しながら必死で押し止めるパーム。
彼が目を閉じて集中すると、左手から溢れる蒼い光が強まり、ヒースの額を濡らす傷口がみるみる塞がっていく。
「てめえらぁ! 何してくれてるんじゃぁあ!」
だが、傭兵達に、ヒースの治療を待ってやる理由も義理も無い。彼らは短剣やサーベルを抜き放ち、狭い廊下を一列になって、脱獄者たちへ向かって突進する。
「お……おい、来たぞ! マズいって……。俺、今、無ジンノヤイバ持ってねえんだぞ!」
そう、悲鳴を上げながら、素早くヒースの広い背中の陰へと隠れるジャスミン。
「じゃ……ジャスミンさん……、それは少しみっともない……」
「だってしょうがないじゃん! さすがに丸腰は無理無理無理のカタツムリ!」
ハラエを施しながら呆れ顔のパームに向かって、口を尖らせるジャスミン。
「やれやれ。しょうがねえなぁ」
ヒースは、苦笑いを浮かべると、足元の小さな瓦礫をいくつか拾い上げると、
「――ホラよっ!」
と、迫り来る傭兵達に向かって投げつけた。
「――ぶべらっ!」
カ――――ンと、乾いた音を立てて、何人かの傭兵の頭に瓦礫が命中し、傭兵達は白目を剥いて仰向けに倒れる。
「オイオイ、死んだんじゃないの、あの人たち……?」
ジャスミンが、ヒースの背中から顔だけ出して、思わず相手の安否を心配する。ヒースは、彼の言葉に対して、肩を竦めてみせた。
「いやいや、あれでも、最大限優し~く投げてやったぜ。あれくらいじゃ死なねえだろ……多分」
「オッサンの『優しく』は、常人にとってはぜ~んぜん優しくなさそうなんだよなあ……」
「――って、次、来ましたよ!」
パームの叫んだ通り、仲間の身体の陰に隠れて石礫の直撃を避けた傭兵が、昏倒する仲間の身体を飛び越えて、無謀を顧みずに突っ込んでくる。
「おっとっと……石、石……と」
ヒースは足元を探るが、手頃な瓦礫が見つからない。
「おい! オッサン、前、前っ!」
ジャスミンが悲鳴を上げて、慌ててヒースの背中の後ろに隠れる。
その時、
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「が、ああああ……!」
傭兵は、くぐもった悲鳴を上げると、白目を剥いて、糸の切れた操り人形のように、その場に頽れる。
「……ふう」
安堵の溜息を吐いたパームは、左手はヒースの頭に翳したまま、“ミソギ”を放ち、仄かに紅く光るブシャムの聖眼が刻まれた右手を下ろした。
「ひゅ――、やるじゃん、パーム君! “ハラエ”しながら“ミソギ”をぶっ放すとか……成長したねえ~! 果無の樹海の頃とは見違えるわ!」
ジャスミンが、思わず口笛を吹いて、パームを絶賛する。パームは照れて、端正な顔の白い頬を真っ赤に染めた。
「……いや、からかわないで下さいよ、ジャスミンさん。――はい、ヒースさん。塞がりました……傷」
「お、すまねえな、坊ちゃん」
パームが翳した左掌をどけると、ヒースの額にパックリと開いていた傷は、嘘の様に消えていた。
「大したもんだな、坊ちゃん。負傷してなんか無かったみてえに、痛みが引いたぜ」
「もう……ヒースさんまで……」
パームは、耳の先まで顔を真っ赤にして照れている。
「――っと、いつまでもこんな所でマッタリしている訳にもいかない。……まずは、得物だ。ずっと石礫で戦う訳にもいかないからな……」
ジャスミンは、そう言うと、スックと立ち上がった。
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