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第十一章 “DEATH”TINY
駆逐と遭遇
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「ほう……予想通り……だね」
部下から、「牢舎の石壁を破って、捕らえていた三人が脱獄した」という報告を受けたシュダは、大広間の玉座の上で、その白面に不敵な笑みを浮かべた。
「……何だ。予測済みか」
彼の背後に立つ影が、引き延ばした白金のような髪を、手で梳き上げながら呟いた。
「……どうした、ゼラ? 期待外れだったかい? 彼らの脱獄の方を聞いて、慌てふためく私が見たかったのかな?」
シュダは振り返り、皮肉げに口の端を歪めながらゼラを見る。
ゼラは、無表情のまま頭を振った。
「……別に」
「――そう言う君こそ、心なしかウキウキしているように感じるのは気のせいかな? そんなに、あの巨人にご執心かい? ――知らなかったよ。君の趣味が、あんな粗野でごつい巌の如き男だとはね……」
「……からかうな」
ゼラは、軽口を叩くシュダを、ギロリと睨み据える。
「おお、怖い怖い」
シュダは、まるで道化師の様に戯けながら肩を竦めた。
「――どうする。君が彼らをお迎えに行くかい? 判断は、君に任せるよ」
「……」
ゼラは、シュダの問いには答えず、ただ黙って玉座の奥の闇に、溶けるように消えていく。
「……ああ、そうそう」
彼は、玉座の肘置きに頬杖をつき、呟くように言った。
「彼らだが、神官は喰っても構わない。あれには利用価値は見出せないし、私とは相性が悪すぎるからね」
「……了解した」
「君がご執心の巨人の戦士は、半死でも構わないから、出来れば息がある状態で私の前まで連れてきてほしい。――是非とも、私のコレクションに加えたい」
「……ああ」
「いい返事だ。――そして」
シュダは、嗜虐的な笑みを浮かべ、言葉を継いだ。
「……あの軽薄な色事師。――あれは、出来るだけ無傷で捕らえろ。あれには……訊きたい事がある。――苦悶の断末魔と一緒にな」
◆ ◆ ◆ ◆
『ブシャムの聖眼 宿る右の掌 紅き月 分かれし雄氣 邪気を散らさん!』
だだっ広い中庭に響き渡ったパームの聖句と共に、紅い光球が、群れ集まる傭兵達の中央で弾けた。
「「「アアアアアアアアアッ!」」」
細かく砕けた雄氣の欠片を身体に食らった傭兵達が、悲鳴を上げてバタバタと倒れる。
「ひ、怯むな! 弓放てっ!」
傭兵の中から声が上がり、後ろから曲射で、無数の矢が三人に向けて降り注ぐ。
「パーム! オッサン! 寄れっ!」
ジャスミンが叫び、手にした無ジンノヤイバを天に向けて掲げ、柄尻を思い切り押した。
鍔元から目映いマゼンタ色の光が溢れ、彼らの頭上で大きな傘に形を成した。
雨霰のように降り注いだ矢は、マゼンタ色の傘によって悉く弾かれる。
「な――なんだ、それはぁ!」
傭兵達の間から、驚愕の声が漏れ、一瞬その動きが止まる。
「オラオラァッ! 余所見してる場合じゃねえぞぉッ!」
と、地響きを立てながら、大棍棒を振りかざし、ヒースが傭兵達の群れの中に躍り込む。
「オウウウラアアアアァッ!」
と、雄叫びを上げながら、彼は大棍棒を一振りすると、傭兵達が小虫のように容易く吹き飛ばされる。
大棍棒に弾き飛ばされ、紅い光球に打たれ、マゼンタ色の奇妙な光のトリッキーな動きに翻弄され――、傭兵達は為す術も無くその場に倒れ伏すのみだった。
「ひ――退け! 一旦、退却だぁ……!」
遂に、傭兵達は、背中を見せて散り散りに逃げ出しはじめた。
「何でい何でい! 口ほどにもねえな……」
「脆いなぁ。ガイシューイッショクとは、このコトか!」
「……ジャスミンさん、それ、絶対意味分からずに使ってますよね」
三人は、口々に軽口を叩き合いながら、額に浮いた汗を拭った。
「まあ、碌に訓練も受けていないような傭兵の群れ程度じゃ、こんなモンだろうな」
ヒースが、大棍棒を肩に担ぎ上げながら皮肉交じりに言った。
「つうかさ、本当に、あのワイマーレ騎士団を壊滅させたのかね、コイツらは……?」
ジャスミンは、地面に倒れて呻き声を上げる傭兵を無ジンノヤイバでつんつんとつつきながら、呆れ混じりの口調で言う。
パームは、フルフルと頭を振る。
「多分……ワイマーレ騎士団は、傭兵には負けていないと思いますよ。……恐らく、不覚を取ったのは――」
と、口を開きかけたパームが、ハッとその青い眼を見開くと、
「二人とも――伏せてっ!」
顔色を変えて叫んだ。
何で? と思う間もなく、反射的に身体を地面に投げ出すジャスミンとヒース。
「――!」
数瞬後、彼らの頭上を、顎を開けた黒い大蛇の群れが通り過ぎる。
「な……何だ、今のは?」
ゴロゴロと転がって、大蛇の襲来を避けて、起き上がるや目を剥いて驚愕するジャスミン。
――と、その隣で片膝をついたヒースが、冷や汗を浮かべながら不敵な笑みを浮かべる。
「……ワイマーレ騎士団が、壊滅させられた元凶。――それは多分、アイツだろ」
そう言うと、彼は傭兵団本部の建物からゆっくりと近付いてくる人影に向けて、顎をしゃくってみせた。
その人影は、伸ばした幾条もの大蛇を左腕へと戻しながら、銀に光る美しい髪を、吹き上がる風に煽られるまま靡かせていた。
パームの顔色が蒼白に変わり、ジャスミンは思わず天を仰ぎ、――ヒースは不敵な笑みを浮かべた。
――期せずして、三人の口から漏れた呟きが同調する。
「「「――銀の死神……!」」」
と――。
部下から、「牢舎の石壁を破って、捕らえていた三人が脱獄した」という報告を受けたシュダは、大広間の玉座の上で、その白面に不敵な笑みを浮かべた。
「……何だ。予測済みか」
彼の背後に立つ影が、引き延ばした白金のような髪を、手で梳き上げながら呟いた。
「……どうした、ゼラ? 期待外れだったかい? 彼らの脱獄の方を聞いて、慌てふためく私が見たかったのかな?」
シュダは振り返り、皮肉げに口の端を歪めながらゼラを見る。
ゼラは、無表情のまま頭を振った。
「……別に」
「――そう言う君こそ、心なしかウキウキしているように感じるのは気のせいかな? そんなに、あの巨人にご執心かい? ――知らなかったよ。君の趣味が、あんな粗野でごつい巌の如き男だとはね……」
「……からかうな」
ゼラは、軽口を叩くシュダを、ギロリと睨み据える。
「おお、怖い怖い」
シュダは、まるで道化師の様に戯けながら肩を竦めた。
「――どうする。君が彼らをお迎えに行くかい? 判断は、君に任せるよ」
「……」
ゼラは、シュダの問いには答えず、ただ黙って玉座の奥の闇に、溶けるように消えていく。
「……ああ、そうそう」
彼は、玉座の肘置きに頬杖をつき、呟くように言った。
「彼らだが、神官は喰っても構わない。あれには利用価値は見出せないし、私とは相性が悪すぎるからね」
「……了解した」
「君がご執心の巨人の戦士は、半死でも構わないから、出来れば息がある状態で私の前まで連れてきてほしい。――是非とも、私のコレクションに加えたい」
「……ああ」
「いい返事だ。――そして」
シュダは、嗜虐的な笑みを浮かべ、言葉を継いだ。
「……あの軽薄な色事師。――あれは、出来るだけ無傷で捕らえろ。あれには……訊きたい事がある。――苦悶の断末魔と一緒にな」
◆ ◆ ◆ ◆
『ブシャムの聖眼 宿る右の掌 紅き月 分かれし雄氣 邪気を散らさん!』
だだっ広い中庭に響き渡ったパームの聖句と共に、紅い光球が、群れ集まる傭兵達の中央で弾けた。
「「「アアアアアアアアアッ!」」」
細かく砕けた雄氣の欠片を身体に食らった傭兵達が、悲鳴を上げてバタバタと倒れる。
「ひ、怯むな! 弓放てっ!」
傭兵の中から声が上がり、後ろから曲射で、無数の矢が三人に向けて降り注ぐ。
「パーム! オッサン! 寄れっ!」
ジャスミンが叫び、手にした無ジンノヤイバを天に向けて掲げ、柄尻を思い切り押した。
鍔元から目映いマゼンタ色の光が溢れ、彼らの頭上で大きな傘に形を成した。
雨霰のように降り注いだ矢は、マゼンタ色の傘によって悉く弾かれる。
「な――なんだ、それはぁ!」
傭兵達の間から、驚愕の声が漏れ、一瞬その動きが止まる。
「オラオラァッ! 余所見してる場合じゃねえぞぉッ!」
と、地響きを立てながら、大棍棒を振りかざし、ヒースが傭兵達の群れの中に躍り込む。
「オウウウラアアアアァッ!」
と、雄叫びを上げながら、彼は大棍棒を一振りすると、傭兵達が小虫のように容易く吹き飛ばされる。
大棍棒に弾き飛ばされ、紅い光球に打たれ、マゼンタ色の奇妙な光のトリッキーな動きに翻弄され――、傭兵達は為す術も無くその場に倒れ伏すのみだった。
「ひ――退け! 一旦、退却だぁ……!」
遂に、傭兵達は、背中を見せて散り散りに逃げ出しはじめた。
「何でい何でい! 口ほどにもねえな……」
「脆いなぁ。ガイシューイッショクとは、このコトか!」
「……ジャスミンさん、それ、絶対意味分からずに使ってますよね」
三人は、口々に軽口を叩き合いながら、額に浮いた汗を拭った。
「まあ、碌に訓練も受けていないような傭兵の群れ程度じゃ、こんなモンだろうな」
ヒースが、大棍棒を肩に担ぎ上げながら皮肉交じりに言った。
「つうかさ、本当に、あのワイマーレ騎士団を壊滅させたのかね、コイツらは……?」
ジャスミンは、地面に倒れて呻き声を上げる傭兵を無ジンノヤイバでつんつんとつつきながら、呆れ混じりの口調で言う。
パームは、フルフルと頭を振る。
「多分……ワイマーレ騎士団は、傭兵には負けていないと思いますよ。……恐らく、不覚を取ったのは――」
と、口を開きかけたパームが、ハッとその青い眼を見開くと、
「二人とも――伏せてっ!」
顔色を変えて叫んだ。
何で? と思う間もなく、反射的に身体を地面に投げ出すジャスミンとヒース。
「――!」
数瞬後、彼らの頭上を、顎を開けた黒い大蛇の群れが通り過ぎる。
「な……何だ、今のは?」
ゴロゴロと転がって、大蛇の襲来を避けて、起き上がるや目を剥いて驚愕するジャスミン。
――と、その隣で片膝をついたヒースが、冷や汗を浮かべながら不敵な笑みを浮かべる。
「……ワイマーレ騎士団が、壊滅させられた元凶。――それは多分、アイツだろ」
そう言うと、彼は傭兵団本部の建物からゆっくりと近付いてくる人影に向けて、顎をしゃくってみせた。
その人影は、伸ばした幾条もの大蛇を左腕へと戻しながら、銀に光る美しい髪を、吹き上がる風に煽られるまま靡かせていた。
パームの顔色が蒼白に変わり、ジャスミンは思わず天を仰ぎ、――ヒースは不敵な笑みを浮かべた。
――期せずして、三人の口から漏れた呟きが同調する。
「「「――銀の死神……!」」」
と――。
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