【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

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第2章

28・これはデート?①


「それではエルミナ嬢、失礼いたします。参りましょうか、神子様」

「ジェラルド……!」

 ジェラルドはさりげなく私の手をすくい上げて、騎士らしくエスコートしてくる。
 いや、だからね? お願いだからちょっと待って?

「はいはい。二人とも、デートを楽しんできてね」

 ――で、デートっ!?

 エルミナさんがさらりと放った言葉に、私は驚きで目を見開いてしまった。

 これは、デートなのだろうか。
 街の様子を見ることにばかり気を取られていて、これがデートかどうかなんてまったく意識していなかった。

 日時や場所を決めて異性と過ごすことがデートになるなら、これはデート……?
 今までデートなんてしたことがないからよく分からない。
 だからこそ、急にデートだなんて言われると、意識して少し緊張してしまう。

「アオイちゃん、またね。今度は遊びに来て頂戴!」

 店先で手を振ってくるエルミナさんに手を振り返すと、私は歩き始めたジェラルドに話しかけた。

「あ、あの、ジェラルド。この服のことなんだけど、買ってもらうのは申し訳ないって言うか、その……」

「……代金のことを気にされているのですか? 大丈夫ですよ。神殿騎士というのは給金がいいですし」

 確かにジェラルドは騎士団長だし、お金には困ってなさそうではあるけれども。
 
「い、いやそういう問題じゃなくて……!」

 制服のままだと街の人の注目を集めてしまうから。だから買ってくれたのだと、私だって分かっている。
 制服からワンピースに着替えた途端、街の人は誰も私には注目しない。
 どれだけあの制服が浮いていたのだろう。

 まぁ、ともかく。人の目を逸らすためなら、もっと安物でいいはずだ。それこそ、今しがた素通った露店に飾られているような、薄い生地のちゃちなもので十分。
 服の質なんて、触っただけで分かる。エルミナさんの店のこのワンピースは、間違いなく高い。私みたいな小娘にはふさわしくないものだ。

「……俺が、神子様を着飾りたくなったのです。許してはいただけませんか?」

「……っ」

 ――ずるい。
 
 言おうとしたことはたくさんあったのに、ジェラルドの表情を見たら何も言えなくなってしまった。
 
 ジェラルドが、私を甘やかすように言うから。
 私を見つめるジェラルドの視線が、とても優しいから。

 ……ひどく自分の顔が熱い。

 私、変だ。
 さっきから、ジェラルドにドキドキしてばかりいる。

「……あの、ジェラルド。ありがとう……」

「あなたにそう言っていただけただけで、俺は幸せです」

 目を細めたジェラルドが、言葉通り本当に幸せそうで。
 私は、何を返すのが正解なんだろう。

 私のお礼の言葉なんてワンピースの値段に釣り合うわけがないのに、ジェラルドは「値段以上のお返しをもらいました」といって微笑んでいる。

「ああ、神子様。もう少し先まで行ってみませんか? この先には、食べ物の屋台があるのです」

「そうなの?」

 それは少し……いや、かなり気になる。
 街の人たちがどういうものを好んで食べているのか、よく分かりそうだ。
 あと単純に、エミールくんの作ってくれる料理が美味しかったから、この世界には他にどんな料理があるのか興味がある。

 私はジェラルドの案内のもと、さらに城下町の奥へ進むことになった。

「神子様」

 人混みをゆっくりと進みながら、ジェラルドがぽつりと私を呼ぶ。

「なに?」

「……これはデートだと、あなたは思いますか?」

「は……っ!?」

 ――今その話を蒸し返す!?

 ジェラルドが先導して道を開いてくれているから、後ろを歩く私はとても歩きやすい。
 だけどその代わり、振り返ってくれない限り、私からはジェラルドの表情が分からない。
 ジェラルドはどういうつもりで、私に聞いているのだろう。

「わ、私に聞かれても……」

 困る。
 だって、私にも分からない。
 これはデートなのだろうか。

「……でしたら、俺が勝手にデートだと思っても宜しいでしょうか」

「……え、と?」

 ――それってどういう意味?

 ジェラルドの言葉は、まるでこれを『デートだと思いたい』ように聞こえる。
 私の気のせいだろうか。自意識過剰?

 なんと言葉を返したらいいか戸惑っていると、ジェラルドは自嘲気味に息を吐き出した。

「……すみません。神子様を困らせるつもりはありませんでした。忘れてください」

 ええ……? 今度は忘れろと?
 
 ジェラルドは無茶なことを言う。
 それきりジェラルドは黙ってしまった。
 私はどうしたらいいのか分からないまま、ただジェラルドの後ろをついて行くことしか出来なかった。
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