【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

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第3章

35・麗しき……

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「エルミナさん、どうしてここにっ?」

 私はエルミナさんの近くに駆け寄った。
 どうしてこの神殿にいるのだろう。何か用事でもあったのだろうか。
 エルミナさんがここにいる理由がわからなくて、私はつい尋ねてしまう。
 すると、エルミナさんは一瞬目を丸くしたあと、楽しそうにころころと笑った。

「あら、忘れたの? ほら、これ」

 エルミナさんは持っていた紙袋の口を開いて、中身を私に見せてくれた。

「……? あっ、制服!」

 エルミナが持っていた紙袋の中身。
 それは、私の学校の制服だった。
 そういえば、後日エルミナさんに届けてもらうように手配するってジェラルドが言ってたっけ。
 ……気分が落ち込んでいたこともあって、制服のことなどすっかり忘れてしまっていた。

「勝手にお洗濯しちゃったけど、大丈夫かしら?」

「あ、ありがとうございます……!」

「いえいえー。変わった衣服だけど、アオイちゃんにとっては大切なものなんでしょう?」

「はい……!」

 私は、エルミナさんから受け取った紙袋をぎゅっと抱き締めた。
 制服が手元に戻ってきて、少し安心する。

「エルミナ嬢、ありがとうございます。助かりました」

 ジェラルドが私の後ろで軽く頭を下げる。
 エルミナさんはジェラルドを見て、にやにやとした笑みを浮かべた。

「ジェラルド様、聞いたわよー? 広場で、我らが神殿騎士団長とアオイちゃんが、熱烈なラブシーンを繰り広げてたって!」

「はっ!?」

 ――ね、熱烈なラブシーン!?

 私とジェラルドの驚いた声が偶然にも重なる。
 その様子に、エルミナさんがさらに笑みを深めた。

「街では、庶民の少女と神殿騎士団長様の身分差恋愛だって、もっぱらの噂よー」

 な、なんて噂が流れているんだ!
 まさか、街の広場で最後、ジェラルドが私を引き寄せたことを言っているのだろうか。
 
 エルミナさんの言葉に、どうしても私の頬が熱をもつ。

「え、エルミナさん! あれはただ、ジェラルドに心配をかけてしまって! でも結果何事もなくて! 安心しただけだよね!?」

 ――ねっ!? そうだよね、騎士団長様!

 ジェラルドに同意を求めて振り返ると、ジェラルドは口元を手で押え、顔を俯けていた。

「神子様を庶民だなどと……。だが……俺が、神子様と噂に……? そんな」

 あ、迷惑でしたか。

 ぼんやりと呟いているジェラルドに、私の頬から熱が冷めていく。
 そりゃそうだよね。ジェラルドからしてみれば、私なんて平々凡々な小娘だ。噂になりたくないよね。

「そんな、恐れ多い……。嬉しいですけど……」

 …………。

「…………はっ!?」

 今、この騎士様、なんて言った!?

「あらあらあら。良かったわね、ジェラルド様」

 嬉しい……? 何が……?
 ……私と噂になったのが?

 い、いやいやいや……。

 もはや私の頭の中はパニック状態だ。
 引いたと思ったはずの熱が、またぶり返す。
 頬どころか、体全体が熱い。

、神子様で遊ぶのはそれくらいにされたらいかがですか」

 しばらく黙って会話を聞いていたエミールくんが、静かに口を開いた。
 エルミナさんは、悪気もなく楽しそうに笑う。

「しょうがないでしょ、エミール。アオイちゃんの反応が可愛いのだもの」

「…………」

 エルミナさん私で遊ばないで、とか。
 ジェラルドなんでそんなに嬉しそうなの、とか。
 言いたいことはいろいろある。

 だけどそれよりも、エミールくんがエルミナさんに放った一言を、スルーすることが出来なかった。

「…………姉さん?」

 エミールくんの言葉を繰り返しながら、エミールくんとエルミナさんを交互に見比べる。

 金糸のような、サラサラとした金髪。
 宝石のような、翡翠の瞳。
 違いがあるとすれば、スタイルと髪の長さくらい……?
 エミールくんとエルミナさんは、瓜二つの顔立ちをしている。

 私は恐る恐る尋ねた。

「え……と、二人は、姉弟……なんですか?」

「あら、知らなかったの? 神殿にいるならエミールから何か聞いているかもと思っていたのだけど」

 逆に知らなかった方が不思議だとでも言いたそうに、エルミナさんが言う。
 確かに、苗字というヒントはあったけども。
 
「……し、知りませんでした」

「あら、それじゃあ改めて」

 エルミナさんはそう言うと、エミールくんの肩を抱き寄せた。
 ヒールの高い靴を履いているせいもあるだろうが、背が高いエルミナさんと並ぶとエミールくんが余計小さく見える。
 ……こんなこと、口にしたら絶対エミールくんに怒られるな。

「ちょっと、姉さん!」

「アオイちゃん、私たちリース姉弟をこれからもよろしくね」

 恥ずかしいのか顔を赤くして抵抗しているエミールくんを軽々と押さえ込み、エルミナさんはエミールくんにぴたりとくっついた。
 こうやって二人の顔が並んでいると、むしろどうして気づけなかったのかというくらいにそっくりだ。
  
 ――美形姉弟だなぁ……。

「は、はい……!」

 エミールくんとエルミナさんは、その後も他愛もない言い合いをしていた。
 その光景は、まさに家族のそれで。

 ……仲、いいなぁ。
 
 今会うことの出来ない家族のこと、幼なじみの絵里のことが、ふと私の頭をよぎった。
 
 
 
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