【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

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第4章

49・急転

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「神子殿は話がわかるな」

 国王様は満足げな様子で、ソファにどっかと腰かけた。
 足を組んでこちらを見上げる様はとても高圧的だ。

 ――なんか嫌だな……。

 思うものの口には出さない。

「お前、名前はなんと言う」

「……立花葵です」

 私はニコラスの隣に立ったまま、警戒しながら答えた。
 国王様はそれに対して気にした素振りは見せず、ふむと頷いている。

「ニコラスから聞いた通りだな。この辺では聞かない名に、妙な装束……。まぁ良いだろう」

 やがて国王様は、私の方へ真っ直ぐに視線を向けた。

「アオイ、単刀直入に言う。私のものになれ」

「…………はい?」

 一体何を言い出しているんだ、国王様は。
 私も、もちろんニコラスも唖然としてしまっていた。

「お言葉ですが陛下、彼女はルーチェ神の遣い。ルーチェ神同様、不可侵の存在だと考えます」

 我に返ったニコラスが、私の代わりに反論してくれる。
 
「ふむ、お前たちはこの娘の力が分からないのか? 体のうちに、溜まりつつあるのが……」

 国王様は、持っていた杖の先を私へと向けた。

 ――怖い。

 氷のような国王様の視線が私を射抜く。
 まるで、獲物を狩る猛獣のような視線だと感じた。

「その力を……神子という存在を、有効活用したいと思うのは人として道理」
 
 国王様が、赤い宝石が埋められた杖の先端をくるりと回す。
 たったそれだけで、私もニコラスも動けなくなってしまった。
 体が凍りついてしまったように動かないのだ。

 この世界には、魔法のような力は存在しなかったはずだ。
 あるのは、まじない――。

 ――あ、これは、まずい……。ジェラルドを呼ばなきゃ……。

 そう思うものの、声が出ない。
 国王様はゆらりとソファから立ち上がると、私の方へ近寄ってきた。
 抵抗する力もなく、国王様に横抱きに抱えあげられる。

 ――どうしよう……助けて、神様……!

『……なかなか厄介なことになっているな』

 私が心の中で呼んだと同時、神様がふわりと目の前に現れる。
 姿が半透明に透けているのはいつものことだが、今日はいつもよりも薄い。

『だが、この力は……。なるほどな、そういう事か』

 ――一人で納得してないで助けてよ!

『分かって、……るとも――』

 ――神様……!?

 現れてくれたはいいものの、なんだか神様の姿は揺らいでいるようだった。
 そのまま、ぼやけるようにして消えてしまう。

 国王様は私を横抱きに抱えたまま、庭に面している大きな窓の方へ歩いていく。
 お付きの人が焦った様子で窓を開けたのがわかった。
 外から強く風が吹きこんで、カーテンが強くはためいていた。
 
「アオイ様……!?」

 部屋の異変を扉越しでも察知したのか、ジェラルドが部屋の扉を開けた。

 ――ジェラルド……!!

「何をしているんですか!!」

「神子殿を、貰っていくだけさ」
 
 ジェラルドの激高した声が聞こえる。
 こちらに駆け寄ってくるジェラルドに、国王様は不敵な笑みを浮かべていた。

「ではな」
 
 窓から出てすぐに馬車が止められていて、私は箱の中へと放り込まれる。

 ――ねぇ、なんでこんなことになったの。

 国王様に何故か連れ去られるわ、神様は急に消えるわ、なんだか散々だ。

 帰りたい。
 元の世界よりも先に、とりあえず神殿へ帰りたい。

 あっという間に発車する馬車の中で、私は一人泣きたい心地だった。

 
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