3 / 17
第1章 転魂流転~ルーベリス~
第3話 異空間魔法
しおりを挟む
3人目の遺体は酷かった。腹を切り刻まれており、内臓がこぼれ出ている。鎧や剣、そして懐に隠していたであろう貨幣のようなものが数十枚散らばっているが、どれもかなり血まみれだ。
「うっ……さすがにこれは遠慮しておこ……あ、そうか…」
俺は片手をかざし、対象物のみに微量の魔素を纏わせる。
ヒュッ……
剣と鎧、そして貨幣を異空間に収納する。そして再度、今しがた収納した剣や鎧、貨幣を取り出す。
「よし、血や汚れは落ちてるな」
俺が、剣なら剣だけを収納するよう意識し、俺が感じるところの汚れや穢れは収納しないと強く意識する。すると、目の前のように血や汚れだけが残る。
「まぁ、でもさすがに服はいいや……」
服も重ね着すれば少しはましだろうと、一応、他の遺体からも取ってきたが、さすがにいくら血や汚れを落としてもここまでだとな……
今まで取ってきた物も、一度異空間から出し、再度、血や汚れを除いて収納し直す。剣だけでなく鎧も収納したのは、自分で身に付けることができれば重畳だが、それが出来なくても、鉄馬車のように異空間から射出すれば、十分武器になると思ったからだ。そんな考えが自然とできてしまう自分に、心の隅で驚いている。
最後の遺体は小柄だったが、兜も含め頭からつま先まで全身を覆う鎧だった。血などは見えないが、一目で死んでいるのはわかる。なぜなら首が……曲がってはいけない方向に曲がっていたのだ。
『まぁ、さっきの遺体よりはマシかな』などと思いつつ、先ほどの要領で遺体以外の対象物のみを異空間に収納する。
「……うわっ!」
目の前に裸の遺体が現れ、俺は半歩後ずさる。服まで異空間に収納したので裸の遺体が現れるのは今までと変わりないのだが、この遺体は……
「……女性だ」
今まで5人はおそらく中年くらいの男性だったが、目の前の遺体は10代後半から20代くらいの若い女性だ。身体に外傷はなく、白く美しい肌をしている。身長はおよそ160cmくらい。こんな重そうな全身鎧を着て動けたのだろうかと思うくらい、女性らしいボディラインでとても艶めかしい。肩まで金髪を伸ばし、その顔立ちは目を引くほど美しい……はずだ……
顔の造作をみるに誰が見ても美しいと思うはずなのだが、俺は半歩後ずさってしまった。なぜなら、その表情は恐怖で目が見開かれ、おそらくあまりの苦痛で口があり得ないほど歪んでいた。
「…………ふぅ~~」
俺は深く深呼吸をし、心を落ち着ける。首をもとの角度に戻し、瞼と口を閉じさせる。そうすると思ったとおり美しい顔立ちが現れる。
「すみません、服などを拝借します」
今までの遺体と同様、俺は申し訳程度ではあるが、合掌し遺体に手を合わせる。そして埋葬まではできないので、せめてもと雪に埋もれさせる。
「……やばい、手足の感覚がなくなってきた……」
俺は急いで鉄馬車に戻り、服と靴を取り出す。俺の体のサイズ的に、先程の女性の服がちょうどよい。その上に男性の服が重ね着できる感じだ。3人分の服を重ね着したところで、これ以上は動けなくなりそうなのでやめにした。
「……にしても身長縮んだ??」
先程の女性の服がちょうど合うなんて……これでも身長は178cmはあったんだがな。いや、それ以前に……
「……どこだよ、ここ? なんだよ、この状況……?」
そう思う割には、それほどパニックにはなっていない。もっと取り乱すべき状況なんだが、妙に落ち着いてすべきことを淡々とやっている。死体から物を剥ぐなんて……
服を着て靴を履き、やっと人心地ついた。馬車の中も寒いのは寒いが、外よりだいぶマシだし、何より外が暗くなってきた。ここが安全なのかは分からないが、この寒さで暗い中、どこか分からぬまま歩き回るのは危険すぎる。歩き回るのは明るくなってからだな。
「……………………………………」
「…………………って、おかしいからっ!!!! んだよこれっ!!! はああ?? 落ち着く状況じゃないだろっ!!! はい?? ゆめ?? ドッキリ?? ねぇ!! おおーーい!! うおーーー!!!」
「……………………………………」
自ら意識的にパニックになってみるが、自暴自棄になって外に飛び出すほどにはならない。何とかなるかな、くらいに思っている自分がいる。
「……俺ってこんなに図太い人間だったかな」
どちらかというと心配症で、娘の帰りが遅いとすぐに連絡をしてしまう男だったが……
「……っ、そうだよ、美紀、綾香! 俺は出勤しようとして…………」
妻と娘のことを、ここにきて急に思い出す。エレベーターを出たら、なんか雪国で……って、なんだそれっ! 違和感はあったんだ。普段めったに吠えない愛犬のルゥが吠えまくり、なぜかエレベーターが開いていて……でも、俺は行かなければって……どこに?? ん、俺は……俺の名前って……??
「ああ……フィルハーク……フィルハ・ベオルークか……」
「ん?………………い、いやっ、ちがうっ!! 俺はユキア……真田雪阿だろっ!!」
急に恐怖に襲われる。なんなんだ、これ……俺はいったい……
「あっ、そうだ、あのへんな木版に名前……」
「うっ……さすがにこれは遠慮しておこ……あ、そうか…」
俺は片手をかざし、対象物のみに微量の魔素を纏わせる。
ヒュッ……
剣と鎧、そして貨幣を異空間に収納する。そして再度、今しがた収納した剣や鎧、貨幣を取り出す。
「よし、血や汚れは落ちてるな」
俺が、剣なら剣だけを収納するよう意識し、俺が感じるところの汚れや穢れは収納しないと強く意識する。すると、目の前のように血や汚れだけが残る。
「まぁ、でもさすがに服はいいや……」
服も重ね着すれば少しはましだろうと、一応、他の遺体からも取ってきたが、さすがにいくら血や汚れを落としてもここまでだとな……
今まで取ってきた物も、一度異空間から出し、再度、血や汚れを除いて収納し直す。剣だけでなく鎧も収納したのは、自分で身に付けることができれば重畳だが、それが出来なくても、鉄馬車のように異空間から射出すれば、十分武器になると思ったからだ。そんな考えが自然とできてしまう自分に、心の隅で驚いている。
最後の遺体は小柄だったが、兜も含め頭からつま先まで全身を覆う鎧だった。血などは見えないが、一目で死んでいるのはわかる。なぜなら首が……曲がってはいけない方向に曲がっていたのだ。
『まぁ、さっきの遺体よりはマシかな』などと思いつつ、先ほどの要領で遺体以外の対象物のみを異空間に収納する。
「……うわっ!」
目の前に裸の遺体が現れ、俺は半歩後ずさる。服まで異空間に収納したので裸の遺体が現れるのは今までと変わりないのだが、この遺体は……
「……女性だ」
今まで5人はおそらく中年くらいの男性だったが、目の前の遺体は10代後半から20代くらいの若い女性だ。身体に外傷はなく、白く美しい肌をしている。身長はおよそ160cmくらい。こんな重そうな全身鎧を着て動けたのだろうかと思うくらい、女性らしいボディラインでとても艶めかしい。肩まで金髪を伸ばし、その顔立ちは目を引くほど美しい……はずだ……
顔の造作をみるに誰が見ても美しいと思うはずなのだが、俺は半歩後ずさってしまった。なぜなら、その表情は恐怖で目が見開かれ、おそらくあまりの苦痛で口があり得ないほど歪んでいた。
「…………ふぅ~~」
俺は深く深呼吸をし、心を落ち着ける。首をもとの角度に戻し、瞼と口を閉じさせる。そうすると思ったとおり美しい顔立ちが現れる。
「すみません、服などを拝借します」
今までの遺体と同様、俺は申し訳程度ではあるが、合掌し遺体に手を合わせる。そして埋葬まではできないので、せめてもと雪に埋もれさせる。
「……やばい、手足の感覚がなくなってきた……」
俺は急いで鉄馬車に戻り、服と靴を取り出す。俺の体のサイズ的に、先程の女性の服がちょうどよい。その上に男性の服が重ね着できる感じだ。3人分の服を重ね着したところで、これ以上は動けなくなりそうなのでやめにした。
「……にしても身長縮んだ??」
先程の女性の服がちょうど合うなんて……これでも身長は178cmはあったんだがな。いや、それ以前に……
「……どこだよ、ここ? なんだよ、この状況……?」
そう思う割には、それほどパニックにはなっていない。もっと取り乱すべき状況なんだが、妙に落ち着いてすべきことを淡々とやっている。死体から物を剥ぐなんて……
服を着て靴を履き、やっと人心地ついた。馬車の中も寒いのは寒いが、外よりだいぶマシだし、何より外が暗くなってきた。ここが安全なのかは分からないが、この寒さで暗い中、どこか分からぬまま歩き回るのは危険すぎる。歩き回るのは明るくなってからだな。
「……………………………………」
「…………………って、おかしいからっ!!!! んだよこれっ!!! はああ?? 落ち着く状況じゃないだろっ!!! はい?? ゆめ?? ドッキリ?? ねぇ!! おおーーい!! うおーーー!!!」
「……………………………………」
自ら意識的にパニックになってみるが、自暴自棄になって外に飛び出すほどにはならない。何とかなるかな、くらいに思っている自分がいる。
「……俺ってこんなに図太い人間だったかな」
どちらかというと心配症で、娘の帰りが遅いとすぐに連絡をしてしまう男だったが……
「……っ、そうだよ、美紀、綾香! 俺は出勤しようとして…………」
妻と娘のことを、ここにきて急に思い出す。エレベーターを出たら、なんか雪国で……って、なんだそれっ! 違和感はあったんだ。普段めったに吠えない愛犬のルゥが吠えまくり、なぜかエレベーターが開いていて……でも、俺は行かなければって……どこに?? ん、俺は……俺の名前って……??
「ああ……フィルハーク……フィルハ・ベオルークか……」
「ん?………………い、いやっ、ちがうっ!! 俺はユキア……真田雪阿だろっ!!」
急に恐怖に襲われる。なんなんだ、これ……俺はいったい……
「あっ、そうだ、あのへんな木版に名前……」
10
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる