颱風の夜、ヤクザに戀して乱れ咲く【R18】

真風月花

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二章

2、緊縛【2】※これ以降、暴力的な表現があります

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「わたしは殺されるのですか」
「いーや、ぎりぎりのところで生かしておくさ。そして何度でも嬲って犯して。ああ、でも心が病んでしまって死を選ぶ娘もいるなぁ」

 まるで子どもが虫の肢を毟っていくような残酷さ。しかもそれを楽しむだなんて。

「よかったなぁ。お嬢さんのままなら、こんな底の底の世界があるとは知らぬままだったろう? 社会勉強という奴ができるんだ、あんたは幸せだよ」
「嘘です。幸せなはずがないわ」

 口ごたえが気に入らなかったのか、男はわたしの頬をぶちました。
 その力の強さに、わたしの体が飛ばされます。
 古びてささくれだった畳。切れた藺草いぐさが肌に擦れて、頬だけではなく腕も脚も痛みました。

「そんなえらそうな態度をとったら、客は自分が遊女に舐められていると思って怒るぞ。舐めるなら、別なものを舐めないとな」

 くっくっと楽しそうに笑いながら、男はわたしの襦袢の胸をはだけました。
 やめて、何をするの。
 わたしは必死に抗いましたが、そのたびに叩かれて。
 痛みで顔は熱くなり、唇は切れて口の中に血の味が広がりました。

「抵抗するから、痛い目に遭うんだ。素直になった方が、ずっと楽だぞ」

 もう答える元気もありません。
 男はぐったりしたわたしの腕を取り、後ろ手に縛り上げたんです。

「そうだなぁ。お前さんは単に快楽を覚えるよりも、痛みを悦ぶ体に仕立て上げよう。最近は客の注文もうるさくてな」

 何を言っているの? 話す内容が分かりません。
 シュッという音が聞こえ、座敷牢が一瞬明るくなりました。
 
 見れば、男が燐寸を擦って、何かに火を点けています。
 燈? いいえ、違います。
 
 それは碗のような形をした香炉で、そこから細く煙が立ちました。
 その香炉が、わたしの顔の側へ置かれたんです。

「これは……」
「大丈夫。気持ちよくなる香だ。痛いのは嫌だろう? だからたんと吸えばいい」

 そんな言葉を信じられるはずがありません。呼吸を我慢していると、男は今度は薄紅の襦袢に包まれたわたしのお腹を殴ったんです。

「う……っ、げほ……げほっ」
「ほら。息をしないと苦しいぞ」

 お腹が痛くて、痛くて。
 わたしは古ぼけた畳に爪を立てました。
 その時です。男がわたしの背中を踏みつけたのです。

 息苦しさと痛みに、わたしは息を吸ってしまいました。
 顔のすぐ近くにある香炉。そこから流れる煙を直接吸ってしまったのです。

 甘ったるくて、鼻腔にはりつくような香り。
 しだいに頭がぼうっとしてきます。

 どうしてこんな無体な仕打ちを受けないといけないの。家を奪えば、それで済む話ではないの?
 そう訴えようとしても、言葉になりません。

「文句が言いたそうだな。だが恨み言なら甘ちゃんの父親に言うんだな」

 両腕を縛られて自由に動くことも出来ないわたしの足元に、男は何かを落としました。
 かろうじて上体を起こして見れば、それは棒でした。
 
「そろそろ香も効いてくる頃だ。調教をしないとな」
「やめて……後生ですから、やめてください」
「やめるもなにも。ここで馴らしておかないと、客を取った時に痛い思いをするだけだぞ」

 畳を這って逃れようとするわたしの足首を掴み、男は無理やり開きました。

「いやっ。お願いです、見逃してください」

 どんなにもがいても暴れても、男の力に敵うはずがありません。
 
 わたしは襦袢を乱しながら、棒の両端にそれぞれの足首を縄で縛られたのです。
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