琥太郎と欧之丞・一年早く生まれたからお兄ちゃんとか照れるやん

真風月花

文字の大きさ
74 / 103
四章

4、二人だけで

しおりを挟む
 ぼくは、欧之丞を先に生垣の下をくぐらせた。
 
「いたい。髪がひっかかった」
「こら、声を上げたらあかんて」
「だって、いたいもん。こたにい、外して」

 んもー。内緒で出てきてんのに、騒いでどうするん。「しー、静かにするんやで」と言いながら、暗い中で手さぐりで欧之丞の髪を枝から外してやる。
 欧之丞が無事に外に出てしもてから、ぼくも生垣の前で膝をつく。

 うわ、嫌やな。半ズボンが土で汚れそうや。
 しかもふかふかしてるのに湿ってる苔に手をついてしもて。そこからバッタが跳んで出てきたんや。

「ひ……っ」

 ぼくは悲鳴を飲み込んだ。もし母さんが側に居ったら抱きついとったと思う。正確には二人で抱きしめ合って、恐ろしさに震えとったと思う。

 けどあかん。今日は欧之丞と二人きりやねん。
 むしろ怖がる欧之丞を守ったらなあかん。

 やっぱりぼくも枝に髪をひっかけながら、かろうじて表に出た。
 ああ、もう。髪が乱れるなんて、みっともないやん。
 しかも欧之丞みたいにまっすぐな髪やのうて、ぼくのは癖毛やから。余計にひっかかりやすいねん。

「欧之丞、どうしたん?」

 髪を手で整えながら、ぼくはぼうっと立ってる欧之丞の肩に手を掛ける。何かを見つめている欧之丞の頬は、ぼんやりとした明かりに照らされとった。

「琥太兄。早くいこ」
「え、うん」

 ぼくの手を引っ張って、欧之丞が走り出す。祭囃子の賑やかな音と、大勢の人のざわめきが、風に乗って聞こえてくる。

 わぁ、なんでやろ。
 父さんや母さんに連れてきてもらったことはあるのに。なんかわくわく感が全然違う。
 夜に子どもだけで出かけとうからやろか。
 
 神社の前の石段を上ろうとした欧之丞は、足を止めた。そして石段を指さして、ぼくを見上げてにこっと笑たんや。
 それはとても愛らしい表情やった。

「俺、ここ覚えてる。琥太兄と絲おばさんに助けてもらったとこだ」
「ほんまやな。近いのに、あんまり神社には来ぉへんからな」
「ありがとう、琥太兄。見つけてくれて」

 欧之丞はぼくの腕にしがみついてきた。
 もー、恥ずかしいやん。くっついたら。子どもみたいって笑われるで。子どもやけど。

「ほな、行こか」

 ぼくは小さい手を引いて、歩き出した。
 石段は、欧之丞にはちょっと段差が大きい。せやから、ゆっくりと上るのを待ってあげたんや。

 石段を上りきると、目の前には煌めく世界が広がっとった。
 たくさんの提灯が吊るされて、燈籠にも灯りが入って。暗闇やのに、あっちもこっちも目が眩むくらいに明るくて。
 
 それに食べ物の焼けるいい匂いがしてる。
 お醤油の焦げる匂いとか、どんどん焼きのソースの香ばしい匂い。

 もうお腹がいっぱいやから、入らへんけど。
 大人になったら夜店でいろいろ買ってみたいなぁ。
 今日はお小遣いを持ってきとうけど。何を買おうかなぁ。

 ぼくは欧之丞の手を引いて、いろんな露店を覗いた。
 だいたいどの子も、お母さんに手をつないでもろとうから。ぼくはちょっと大人気分や。

「琥太兄。これなに?」

 桶の中に大きい葉っぱを敷いて、その上に黄色や赤に染まったぺろっとしたものが並べられてる。
 欧之丞はそれを指さした。

「海ほおずきやで。ほおずきの代用品やねん」

 夢で見た通り、やっぱり欧之丞は海ほおずきに興味を示した。

「なんや、坊ちゃん。海ほおずきを知らんのか」

 夜店のおじさんが、海ほおずきを濡らしてそれを口に入れた。ぶぅぶぅという濁った音がする。

「植物のほおずきは、キュッキュッって鳴るんやけどな」
「すっごーい」

 しゃがみこんだ欧之丞は、瞳をきらきらと輝かせとう。
 やっぱりな。こういうの好きやもんな。

「じゃあ、ひとつください」

 ぼくは巾着から小銭を出して、おじさんに渡した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

処理中です...