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九章 シュエット・ミリーレデルの恋人

115 予言の魔導師②

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 改めて、思い出す。

 以前はあれほど困難だったというのに、なぜかすんなりと記憶は戻ってきた。

 それは、シュエットが八歳くらいの時のことだ。

 その頃はまだ、シュエットとグリーヴはそれなりに交流があって、遊ぶこともあった。

 八歳の女の子同士。

 おまじないだとか占いだとか、そういうものに興味を持つ年頃である。

 二人は無邪気に、当時はやっていたカード占いで遊んでいた。

『ねぇ、シュエット。私が王子様と結婚できるか、占ってよ』

『うん、いいよ!』

 シュエットの占いは、よく当たった。

 夕ご飯のメニューとか、来年ツバメはどこに巣を作るのかとか、子どもらしい無邪気な内容だ。

 王子様と結婚するのが夢であるグリーヴの願いを、シュエットは快く引き受けた。

 だけど、何度占ってもグリーヴは王子様と結婚できるという結果にならなかった。

 最初は微笑ましく見守っていたジャキャスもだんだん苛立っていき、「じゃあ一体、誰が王子と結婚できるのか占え!」となったのだ。

 その結果、相手はシュエットだと出た。

 子どものお遊びだ。
 間に受けるのはおかしい。

 だけど、レヴィ家は占星術に長けていた一族。もしかしたらシュエットは本物なのかもしれないという話になった。

 そこでジャキャスは、検証することにしたらしい。

 シーニュは渋ったが、わがままな姉に逆らうと面倒になることはわかっている。了承するしかなかった。

 直近で起こるであろうことをシュエットに占わせて、その結果を確かめる。

 一年にわたって検証した結果、シュエットの力は本物だと証明された。

 つまり、王子様と結婚できるのはシュエット・ミリーレデルであり、グリーヴ・レヴィではないということ。

 そして同時に、次期レヴィ家の当主の座は能力に目覚めたシュエットへ渡されるということである。

『そんなこと、許せない!』

 怒り狂ったジャキャスは、息子同様に孫娘も溺愛していたトログロディット侯爵に泣きつき、侯爵はシュエットへ呪いをかけた。

 三人きょうだいの一番上は、うまくいかない。何かあれば長女が真っ先に、それも手酷く失敗するのだから、と。
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