魔獣の求恋〜美形の熊獣人は愛しの少女を腕の中で愛したい〜

森 湖春

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一章

13 美形の熊獣人

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 熊の襲撃は、とても恐ろしいものだった。

 けれど、あの悲しげな声が耳にこびりついて離れない。

 あれは、なんだったんだろう……?

 そう締め括られた話に、ジョージは深く頷いた。ようやく合点がいったというように。

 ジョージが座るソファの後ろで、話の途中で入室してきた人物が、お茶を持ってきたトレーを抱きしめてガクリと項垂れていた。

 柔らかなそうなハニーブラウンの短髪に、合間から見え隠れする丸い耳。愛嬌のある垂れ目は、春の花園で蜜蜂たちがせっせと集めた蜂蜜みたいな淡い黄色をしている。

 黒の軍服を着ているが、後ろに回ったら腰のあたりにフワフワの茶色い尻尾があるのかもしれない。

(これは……もしかしなくても、熊の獣人さんだろうか? ジョージ様と並んで遜色ないどころか超美形のルーシスさんと張り合えるレベルの顔面偏差値……獣人って、すごい)

 熊は怖いが、獣人だとそう怖さは感じない。

 もしかしたら、人外じみた美貌に恐怖が負けてしまうのかも、とエディは思った。

 大きな体をこれでもかと小さくして、彼は分かりやすく傷ついているようだった。

 お茶を持ってきた時、ひどく慎重な手つきでこぼさないようにおずおずと差し出してきたから、とても心優しい熊さんなのかもしれない。エディが話の途中で礼を言うと、パァァと表情を明るくして「飲んで飲んで」とジェスチャーをしてきたし。

(同族の話を聞いて、自分のことのように反省している、のか?)

 エディはこっそり熊と思しき獣人を観察しながら、置かれていたティーカップに手を伸ばした。

 少し冷めてしまった紅茶には蜂蜜が入っていたのか、優しい甘さがエディの口の中に広がる。

 緊張に強張っていたエディの表情が、ゆっくりと解れていった。

 あれほど嬉しそうに勧めてきたのに、熊の獣人はエディを見向きもしない。

(美味しいですって言ってあげたいんだけどな……)

 きっと、獣人になって間もないのだろう。
 慣れない手つきは、まるで子供の手伝いのようだった。

(こっち、見ないかな……?)

 熊の獣人の形の良い唇は「怖い……怖いか……」と呟いている。
 小さな声だが、その音の低さにエディは驚いた。
 トルトルニアの男性はみな背が低く、反比例するように声も高い。ズンと腹に響くような音は、初めて聞くものだった。
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