魔獣の求恋〜美形の熊獣人は愛しの少女を腕の中で愛したい〜

森 湖春

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五章

68 薬指の噛み跡

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「ひゃっ⁉︎」

 ぴちゃり。

 ロキースの舌がエディの指に絡みつき、ヌルヌルと舐める。

「やめてよ、どうしてこんなことするの?」

 棒突きキャンディーでも舐めるように、ロキースはエディの指を舐めた。

 まるで獣のように、ロキースの息が荒い。

 一体どんな味がしているのか、その顔は恍惚としていた。

(酔っているみたい) 

 顔は赤らみ、目が据わる。

 酔っているのと違うのは、エディをクラクラさせる濃厚な大人の雰囲気が漂っているという点だろう。

 ロキースの色気に当てられて、エディまで酔ってしまいそうだ。

 抵抗することも忘れて魅入っていたら、今度はアグアグと甘噛みまでされる。

 指の根本に残る噛み跡が、まるで指輪のようだった。

 薬指じゃないのが残念に思えて、エディは無意識に薬指を差し出すようにロキースの口へ運ぶ。 

 カプリ。

 ロキースの綺麗に並んだ歯が、エディの薬指の付け根を噛む。

「あ……」

 エディの唇から、吐息混じりの声が漏れる。

 喘ぐようなその声に、ロキースは劣情を煽られているような気になった。

「エディ……」

 途端、ロキースから表情が消える。

 ゾクゾクするほど獰猛な目で見つめられて、エディはハッとなった。

「ろ、ろろろロキース!」

 力任せに手を奪還すると、エディは慌てて背中に隠した。

 ロキースの目は、獲物を検分するようにエディを見据えたままだ。

(な、ななななに、この雰囲気は! うっかり流れに任せちゃっていたけれど、すっごくすっごくまずい雰囲気なんじゃないのか、これは!)

 エディの思う通りである。

 このままロキースを放置すれば、喰われることは必至。

 ロキース曰く、理性がある魔獣は人を喰わないらしいから、これはたぶん──、

(性的に喰われちゃうー!)

 それはダメだろう。いくらなんでも、早すぎる。

 なし崩しでキスをしてその先もなんて、エディの理想とかけ離れすぎだ。

(そもそもそういうのは、結婚してからっ!)

 そうだ、その通り。

 順番って大事である。

 それにエディは、まだロキースに気持ちを伝えていない。

 ロキースがいなくなったら嫌だと、そんな感じのことは言ったけれど、決定的なものはまだである。

(けど、今ここで言える勇気は、僕にはないっ)

 だってロキースの目は、今もギラギラしているのだ。

 今すぐにでも飛びかかりたいのを我慢しているみたいに、息が荒い。

「ごめん、ロキース! 次! 次こそ言うからー!」

 エディはそう言うと、軽やかにロキースを跳び箱のようにして逃げた。

 鮮やかな逃走に、我に返ったロキースは腹を抱えてベッドへ転がる。

「……っくく。エディ、かわいすぎだろう」

 次が楽しみでならない。

 出来ればすぐ来てくれると良いのだが、とロキースは窓から見えるエディの背中を見つめながら思った。
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