勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、動揺する

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「――準備はできたか、シア。
 そろそろ出発するぞ」
「はいは~い。
 待っててね、もうちょっとで終わるから!」

 母屋として使っているログハウスから、シア達の居住スペースとして使っている増築部に声を掛ける。元気な返事と共にシアが慌てた物音が聴こえ俺は苦笑する。
 普段使っている無骨な皮鎧を脱ぎ捨てた今の俺は軽装だ。
 ただ護身用の剣と山歩きの必需品である藪除け用のブーツとマントは忘れない。
 背負った矢筒の位置を調整しながら手にした弓の弦を確かめてみる。
 狩猟用の短弓は極度に固く張り過ぎず、適度に遊びがありながらもよい弦の反応が返ってきており仕上がりは上々だ。
 これなら狩りをする際、絶好の機会を逃さないだろう。
 獲物を射止める流れを脳内で描きながら相方となるシアを待つ事にする。
 皆に賞賛を頂いた朝食の後、俺達は今日の予定を話し合った。
 せっかくの休息日だが――何でも屋としての仕事が溜まっていることもあり、各自バラバラに分かれて取り組むことになった。
 地元で狩人としての経験があるシアは害獣の駆除。
 薬学に通じるリアは不足しがちなポーションの生成。
 癒し手として病気等に詳しいフィーが来訪者の相談・問診兼、露店の店番。
 俺の役目は各自のフォローとオブザーバーだ。
 まずは一番の大仕事になるであろうシアに同行する事にする。
 先の騒動の影響からか、最近天敵が激減して勢いを得た害獣共が我が物顔で畑を荒らし始め、困っているらしい。
 本日中に、最低でも鹿か猪を数匹仕留めようと思う。
 そんな事を徒然なく考えているとバン、と勢いよく扉が開いた。

「お待たせ~♪
 どう? 可愛いかな?」

 トトト、と俺の前に来ると目前でクルリとターンするシア。
 いつも装備している戦闘装束を脱ぎ、実用性第一のパンツスタイル。
 自慢の赤毛を活動的なポニーテールにまとめた姿はまさに女レンジャーだ。
 しかし見慣れないその姿が却って新鮮で――
 俺は思わず返答にまごついてしまう。

「おっさん?」
「あ、ああ……
 え~っと、動きやすくていいんじゃないか?
 ちゃんと俺の助言した通り、虫除けも施したようだし」
「そうじゃなくて……
 もっと気の利いた事とか、さ。もうっ」

 俺の的外れな感想に膨れるシア。
 分かってる分かってる。
 鈍感系英雄譚の主人公みたいに事情を察していない訳じゃない。
 ただシアよ、おっさんになると色々素直に言えない事もあると理解してほしい。
 まさか娘程も歳の離れた女性に――
 見惚れてしまった、とは恥ずかしくて言えないだろう?

「――ほら、行くぞ」
「あ、待ってよおっさん。
 じゃあ、行ってきま~す♪」

 なので俺は強引に話を終わりにし、外へ出る。
 け、決して逃げたわけじゃないぞ?
 自分で自分に語り掛け、取り敢えず自分を騙す事にする。
 シアは奥にいる仲間達に声を掛けると俺の後をついてきた。
 そして――おもむろに腕を絡めてくる。

「おい、シア――」
「駄目?」
「駄目じゃないが――」

 普段は鎧で抑えられてる膨らみが極上の柔らかさで俺の腕を包む。
 かなり大きい。
 ――って、何を考えている俺!
 平常心平常心。
 この娘は早く父親を亡くした事による父性を俺に求めているだけだ。
 だから勘違いするんじゃない!
 俺は心の中で聖句を唱え腕から感じる感触をシャットアウトするよう専念する。
 しかしシアは――傍から見ても滑稽であろう俺の姿を見て――何故か、嬉しそうに微笑むのだった。
 
 

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