勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、あらぬ誤解

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「ただいま――」
「お帰り、おっさん!」
「わん!」
「ん。お帰りなさい、ガリウス」
「お帰りなさいませ、ガリウス様」
「ご無事でござったか、ガリウス殿!」
「皆、心配していたんだぞ――貴様の事をな」
「本当に。随分待ち侘びましたよ、主殿」

 控室の扉を開けた俺の視界に飛び込んで来るのは明るい笑みを浮かべた皆の顔。
 シア。
 ルゥ。
 リア。
 フィー。
 カエデ。
 ミズキ。
 ショーちゃん。
 誰もが俺の事を本気で心配し――そして何より無事に戻ってきた事に対する安堵に満ちた態度で迎えてくれる。
 最近は何かと忙しくパーティメンバーが勢揃いになるのは久し振りな気がする。
 そう、まるで一年ぶりに顔を合わせかのようだ。
 神龍眼の能力の一つ、未来記述で視た王都における魔神魔族連合の襲撃に備え別個で色々動いて貰っていたから仕方ないが。
 ベストを尽くして最良の結果を得られた戦い。
 少なからぬ犠牲はあったし、辛い事も苦しい事も色々あった。
 課せられた英雄という重荷を発作的に投げ出したくなる瞬間も確かにある。
 でもこうして皆の傍にいると――穏やかな気持ちになれる。
 変わらないやり取りに、無事帰還したという気持ちがじわじわと湧く。
 ああ、これが家族か……
 こいつらと共に在るのが、もはや掛け替えのない俺の日常なんだな。
 しみじみとおっさんが感慨に耽っていると、目敏く俺が纏う【黒帝の竜骸】に気付いたシアが歓声を上げて近寄ってくる。

「おっさん、それってもしかして噂の【黒帝の竜骸】!?
 首尾は上々だったんだ――」

 ね、と続けようとした視線が俺の背に隠れる様にしているミコンと合う。
 不思議そうに小首を傾げると、俺の方を向き問い掛けてくるシア。

「あれ? おっさん、この娘は?」
「ああ、その娘は――」
「は、初めまして。
 私の名前はミコン……【黒帝の竜骸】に宿る意志、精霊みたいな存在。
 ガリウスに無理を言って同行させて貰ってる……の」

 元気よく応じようとしたミコンの声が次第に尻すぼみになり消える。
 そして下を向いたまま震え始めてしまう。
 緊張のあまり声と身体が上手く働かないようである。
 交流を通し心を許した俺相手ならともかく、初対面の相手に対して挨拶するのは長い間ボッチだったミコンにとってハードルが高かったみたいだな。
 俺には冗談が出るくらい饒舌だったとはいえ、あれはリラックスしてたからだ。
 これは我ながら迂闊だったな……フォローしなくては。

「いきなりこんな事を言われても皆は混乱するかもしれない。
 けど、この娘の言った事は本当だ。
 彼女は【黒帝の竜骸】に宿る、暗黒龍の残留意志に近い存在で――」
「ああ、はいはい(察し察し)。
 大体分かったから。もう大丈夫だよ、おっさん」
「今ので分かったのかよ!」
「ん。おおよその経緯は推測できる」
「ええ。彼女の――ミコンさんの心を解き放ったのでしょう?」
「拙者らも経験者ですからな。すぐに事情を察せます」
「ホント貴様は得意だものな、ナチュラルに誰かを救い――
 その気がないのに誑かす事は(溜息)」
「ねえ?」
「ん。同意」
「ええ、賛同ですわ」
「弁護のし様がないでござる」
「わん!(うんうん)」
「何でだよ!?」

 三者三様どころか五者五様(と一匹)に頷き納得する奴等。
 り、理不尽だ……納得がいかん。
 一人不条理にやさぐれていると、そんな俺を押しのけミコンを囲む一同。
 代表として怯えるミコンの手を取るシア。
 上目遣いに顔を上げたミコンに対し、ニカっと向日葵みたいな笑顔で応じる。
 出たな、シアの特技【サンシャインスマイル】。
 裏表のない屈託のないその笑顔は見る者の心の壁を容易に溶かす。
 仕事柄、親を亡くした子供や戦災孤児などに接する機会が多い為か自然と身に着いた応対だよ、と本人は言うが……俺は本人の持って生まれた気質だと思う。
 金色に煌めく気高き魂の輝き。
 勇者がいつの日か神に至る存在というのも納得がいく。
 シアならば、そそっかしいが人思いの良い女神になるだろう。
 現に警戒心バリバリだったミコンがホッとしたように落ち着く。
 その様子にシアは目尻を下げると膝を折り目線をミコンに合わせる。

「こちらこそ初めまして、ミコン。
 ボクの名前はアレクシア・ライオット、勇者だよ。
 おっさんに見初められたのが運の尽きだと思ってさ、これからもよろしくね!
 あっ、そうそう……この子はルゥ。頼りになるボクの従魔。併せてよろしく」
「わん!」
「ん。ミザリア・レインフィールド、賢者。
 陽キャ面子に陰キャ仲間が増えるのは非常に嬉しい……よろしく」
「もう、なんですのリア。ちゃんと自己紹介をしてくださいな。
 あっ、わたくしはフィーナ・ヴァレンシュア、聖女ですの。
 これからもよろしくお願い致しますわ」
「うむ。拙者は犬神カエデ、忍者……でなく野伏でござる(汗)!
 何卒、良しなにお付き合い願いたい」
「そこはいい加減、くノ一だと認めたらどうなんだ?
 ああ。私はミズキ・クロエ、戦士だ。
 不機嫌そうに見えるらしいが――これが地だからな。遠慮なく話し掛けてくれ」
「あ、あの……その……嬉しい」

 ミコンを取り囲み次々に自己紹介をする一同。
 友好的でアットホームな雰囲気に不安に揺れていたミコンの口に笑みが浮かぶ。
 まったく大した奴等だよ、お前達は。
 こいつらが仲間で本当に良かったと思える。
 しかし――俺は忘れていた。
 我がパーティ最大の地雷を。
 そう、地雷は踏んだだけでは爆発しない。
 地雷は足を離した瞬間、時差を置いて爆発するのである!

「――初めまして、高貴なる龍の姫君。
 主殿の忠実な下僕、ショゴスだ――気安くショーちゃんと呼んでくれ。
 荒ぶる主殿の欲望を肉体的精神的に受け止めるのが我が務め。
 な~に恥じる事はない、共に愛欲に塗れ――寵愛を賜りましょう」

 白黒反転。
 凍り付いたように硬直し静まり返る一同。
 前言撤回、誰だこんな奴をパーティに入れたのは!

「いやああああああああああああああああああああ!
 し、信じてたのに! 
 不潔――やっぱハーレムパーティだったのね!?」

 錯乱し、捕獲された小動物みたいに暴れるミコン。
 動揺する彼女を説得し落ち着かせるのに皆で協力し合い小一時間程掛かったのは――パーティの絆を深める一因に繋がったのは間違いないだろう(とほほ)。








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