勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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新米の面倒を見る事になったおっさん冒険者34歳…… 実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていく③

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「これがメイド喫茶の制服かぁ。
 落ち着いた感じでお洒落だけど……何だか少し動きづらいね」
「仕方がない。
 ここアズマイラグループは大陸全土に広がるメイド喫茶の本家にして大元。
 風俗でやるような、なんちゃってメイドではなく、由緒正しいロングスカートをベースとした制服がフォーマル。シック故に楚々たる振る舞いを求められる」
「あの~ミザリアさん?」
「リアでいい。あと呼び捨てで構わない」
「そうですか?
 ならばわたくしの事も、どうかフィーとお呼び下さい」
「ん。承知した。
 それでフィー、何か?」
「あの……素朴な疑問なんですけど、どうしてそんなにお詳しいのですの?
 女子間ではあまりメジャーではないと思うのですが、メイド喫茶については」
「学院寮で同室だった者がガチ勢だった影響。
 お陰で生きていくのに必要のない無駄な知識が増えたし、興味もあった」
「ああ、分かります分かります。
 幼少期って近くにいる者の影響を受けやすいですよね」
「賛同」
「わたくしも、ちょっと同僚に染め上げられてしまった部分がございまして……
 ちなみにリア、少し伺っても?」
「ん。なに?」
「攻めの反対は?」
「守り」
「あら残念、ノーマルですのね」
「否。この場合は受けと答えるのが正しいとそいつに教わった。意味不明」
「あらあら、うふふ。
 少しは素質がありそうですわ(ぐふふ)」
「フィーの笑みが怖い。
 というか、貴女が着るとメイド服が別物に見える」
「そうですか?」
「うん、腰位置の高さと胸元を突き上げる装甲が特に。
 シックな筈の服装がいかがわしく感じる」
「そんな事を申されましても……
 でも、そう仰るリアの着こなしも様になってますわ」
「学院で着ているローブに似ている。
 であれば着こなすのは難しくない」
「なるほど……って、シアさんどうしたんですの、それ!?」
「じゃじゃ~ん!
 見て見て~スカートを少し折り畳んでみた!
 ミニスカまではいかないけど……動きやすくなったでしょう?」
「メイド喫茶ガチ勢からしたら叱責もの。
 だが素人の自分からはよく似合ってると称賛」
「あはは、ありがとうリアさん」
「お~い、着替えにいつまで掛かってるんだ?」
「ああ、ごめんごめんおっさん!
 今出るから! はい、お待たせ!」
「ん。謝意」
「お待たせして申し訳ございませんでした……って、ガリウス様!?」
「なんだ、どうかしたか?」
「そ、その服装は……?」
「――ん? 男性従業員用の執事服だが。
 お前達ばかりを働かせる訳にはいかないだろう?
 俺はギャルソンとして不慣れなお前達のサポートに入るつもりだ」
「……おっさん、カッコいい(ぼそっ)」
「無精髭を剃って身なりを整えるだけでここまで変わるとは……」
「迂闊でしたわ。また余計なライバルが増えそうです……」
「さっきから何を小声で言ってるんだ、お前らは??
 ほら、もうすぐ開店時間になるぞ。
 店員病欠代理のフォローとはいえ――今日はお前達が主役だ。
 さっき店長から教わった通りに取り組んでくれ」
「「「はい!」」」
「いい返事だ。
 よし、気合は十分だな。
 少し時間は早いが、お客がもう並んでるようだし……開店するぞ!」
「は~い!
 あっ、お帰りなさいませご主人様!」
「ませ~」
「うふふ。
 メイド喫茶アズマイラ……ただいまより開店です♪」

 











「今日は本当に助かったよ、ガリウス」
「なにがだ?」
「それは勿論――あのお嬢さん達を連れて来てくれたことさ」

 無事閉店を迎えた店内――洗い物をする手を止めず、店長は眼を細めて見渡す。
 そこには精魂尽き果てた様子でテーブルに突っ伏す三人の姿があった。
 接客業務は肉体的だけでなく精神的にも疲労が圧し掛かる。
 慣れていたと自負していたフィーでさえそれは想定外だっただろう。
 礼儀正しい信者とは違い喫茶店は色々な客層が来る。
 時に厳しく時に粗暴な者達との対応はメンタルを擦り減らすのだ。
 自分が自覚している以上に疲れてしまうのも無理はない。
 人によっては仕事に対する忌避感を覚える者もいるかもしれない。
 しかし俺はまったく心配してはいなかった。
 何故なら三人の顔には、仕事をやり遂げたという笑みが浮かんでいたからだ。
 誇り高きそれは――汗水を垂らし報酬を得たことに対するシンプルな達成感。
 冒険者として学ぶべき、基礎にして一番大切な事だろう。

「流行り病で正店員の娘らが休みになった時はどうしようかと悩んだが……
 今日も無事に店を開く事が出来た、ありがとう」
「礼には及ばない。
 ちゃんと報酬を頂いているしな」
「それでも窮地に助けられたという恩は忘れないもんさ。
 店のフォローだけでなく、教会の治療院へ紹介までしてくれただろう?
 法術による治癒のお陰で明日には皆出勤出来ると聞いた。
 報酬とは別に、いつかキチンと借りは返すつもりだ」
「相変わらず義理堅いな」
「性分でね。しかし店長業務はそろそろ引退だな。
 激務に身体がついていかない」
「おいおい、大丈夫か?
 まだ結婚したばかりだろう?」
「ああ、今度子供も生まれる」
「そいつはめでたいな!
 出産祝いを用意しないと」
「ありがとう、楽しみにしてるよ。
 まあそういった経緯もあり、これからは家族との時間を大事にしていこうと考えていてな……転職しようと思う」
「当てはあるのか?」
「実は開拓村事業のリーダーを勧められている。
 これを機に乗ってみようかと」
「そいつはいい。出産を控え、奥さんも時間が不定期な仕事よりいつでも傍にいてくれる方が心強いだろうしな。
 何か困った事があったらいつでも相談してくれ――スコット」
「ああ。その時は頼むよ、ガリウス。
 さあ、お嬢さん達――今日は本当によく働いてくれたね。
 お礼に好きなものをご馳走するから、何でも頼みなさい」
「ホント!?」
「ん。確かに言質は取った」
「こうしてはおれませんわ! さあ、メニューと相談の時間です!」

 さっきまでの疲労困憊した姿はどこへいったのか?
 急に活き活きとしだすと、ワンヤワンヤと卓を囲み、メニューを手に熱く注文を語り始める三人。
 まったく賽子の様に多面的で個性豊かな娘達である。
 黙ってれば皆相応の美少女なのに、本当に飽きさせないキャラをしているな。
 その時にふと、脳裏に浮かんだ言葉。
 気紛れな女神たち。
 そのままではアレだから、女神=明けの明星【ヴィーナス】か。
 ギルドに登録するパーティ名は【気紛れ明星】にしようと俺は思った。
 騒ぎ立て姦しい三人を肴に、スコットに振る舞われた酒杯をそっと掲げる。
 こいつらとならば、末永く続いていけるだろうという確証を以て。



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