勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
368 / 398

おっさん、脳裏に閃く

しおりを挟む

「この聖域都市の住民ほぼ全てが、同じ場所にいる……だと?」

 カエデの告げた【都市把握】スキルによる、衝撃の結果内容――
 それはまるでこのゴーストタウンの様に人気のないこの都市に住む人々の行く末に関するものだった。
 パーティのメンバーも驚きの顔を隠せない。
 この聖域都市は聖職者数千人とそれを支える信者、そして都市の機能を維持する人々で形成されている。その数は優に5万を超えるだろう。
 そんな莫大な人々を収納可能な建物など――
 とそこまで思い至った時、俺の脳裏に閃くものがあった。
 目線をフィーに向けると力強く頷き返してくる。

「なるほど……【大聖堂(カテドラル)】か……」
「おそらくそうでござるな。
 拙者は窺い知れぬが巡礼の時期には十数万の巡礼者が参られるのでござろう?
 それだけの人数を収納できるのは間違いなくそうかと」
「ん。この都市は教団の総本山であり聖地。
 巡礼者を受け入れるキャパを想定してある故、全て広めに造られている。
 その祭事の一切を取り仕切るのが、かの有名な【大聖堂】。
 この都市の象徴であり中枢。
 確かに【大聖堂】なら住民全員を収納する事が可能と推定できる」
「でもさ、一番気になるのは皆の状態だよ。
 ここの住民さんは無事なの?」
「それが――何とも言い難いのでござる」
「というと?」
「確かに皆、生きている。
 生きてはいるのでござるが……皆、身動き一つせず横になり、生体反応も非常に微弱で……何というか、まるで生きる屍の様な感じなのでござる」
「生きる屍? まさかアンデットになったんじゃないだろうな?」

 清浄に満ちたこの地でアンデットもないだろう(即座に消滅する)が、困惑気なカエデの説明を聞いていると若干心配になってくる。
 死霊であるワイト系や吸血鬼等に生気を吸い取られた際、死蝋化を経て犠牲者がアンデットと化す事があるからだ。
 だが――俺の疑問を払拭するようにフィーが言い切った。

「いいえ。
 それは多分違いますわ、ガリウス様」
「何か心当たりがあるのか、フィー?」
「はい。おそらく住民の方々は、【保存】プリザベーション系の加護下にあると思われますの。
【保存】の祝祷術はご遺体を傷めないよう長期間防護維持するもの。
 その場で癒しきれない重症の人に対し、応急処置的に施す事もあるくらいです」
「なるほど。そういった祝祷術ならば身体の保護は万全だろう。
 しかし……そうなると今度は生体反応の低さが気になるな。
 その祝祷術とやらは個々の代謝を下げる機能はついてないのだろう?」
「ええ、確かに。
 生きている方にも施行できますが……通常通りに動けますわ」
「何だか謎だね。
 どうして皆、身動き一つ取らないのかな? それとも取れない?」
「わ~うん?」
「う~ん拙者の把握した様子では生体反応が低過ぎて……まるで氷のように冷たく感じられたのでござるよ」
「それは……もしかしたら【冷凍睡眠】コールドスリープの術式かもしれない」
「ん? 何か思い当たる節があるのか、リア?」
「サーフォレム魔導学院で最近提唱された学説。
 人間の身体は特殊条件下による極低温状態において代謝が極端に陥る。
 この状態では食料や排泄を必要とせず、それどころか老化すらしない」
「ああ、それ聞いたことがある!
 雪山で遭難した人が稀になる現象だよね!?」
「ん。肯定。
 これを人為的に起こすのが【冷凍睡眠】の術式。
 もしこの術式が汎用化すれば遥か遠方や未来への行程――何より既存の病魔への対処法が生み出されるまでの時間を無視できるなど非常に有益。
 ただ――問題点が一つ」
「それは?」
「優れた祝祷術が無い限り、賦活した細胞が水分が凍結した時に起こる体積膨張によって自身を破壊してしまう。せっかく蘇れても即死しては意味が無い」
「なるほど……だからこそ、か」
「どういうこと、おっさん?」
「何を目的として首脳部が住民全てを巻き込んだのか分からない。
 ただ規則正しく等間隔に並んでいるというカエデの話が本当なら強制じゃなく、おそらくは任意なのだろうがな。
 何かを為すため聖域都市首脳部は住民全てを冷凍睡眠下においた。
 優れた祝祷術の遣い手が多いであろうこの聖域都市でも、5万人を超える人々が相手では術式解除の蘇生時に万が一の事がある。
 だからこそ……【保存】の祝祷術を重ね掛けしたのじゃないか?
 つまり魔術と祝祷術のコラボレーションだ」
「あっ!」
「それは意表を突く発想」
「まさに盲点でござるな……」
「そしてこういった常道を超えた思考を持つ奴等に心当たりが在り過ぎてな。
 おそらくこれを考え出したのは――」
「魔神――もしくは魔族が与している、という事ですわね?」
「ああ、間違いなくな」

 自身の宗派における信用の根底に関わる内容だというのに、フィーは毅然とした態度を崩さずに言った。
 こういったところは昔から彼女の強いところだと思う。
 大事なのは己の属する教団でなく己の信条であるという自覚があるからだろう。
 まったくヴァレンシュアの婆さんは人材育成が巧み過ぎる。
 おっと……本道から逸れては駄目だな。

「カエデ、さっき告げた中には自由に動いている奴もいるのだろう?」
「ええ。
 大聖堂の中枢である【教皇】の間に鎮座している人物。
 その者だけが拙者達を除きこの都市で唯一動いている者でござる」
「ならば決まりだな。
 どのような意図があるか分からんが、敵対する可能性も視野に入れなくては」
「それは誰なの……おっさん?」
「各都市にある教会にいる枢機卿を除き、教皇代理を務める権限を持つのは、ただ一人……福音の使徒【聖者】ソーヤ・クレハ。彼こそが首謀者に違いない」

 現代において最も神に近い男の名に、パーティの面々は顔を曇らせるのだった。







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...