勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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お使いらしいです

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 ノルン家は自警団の詰所も兼ねてる為、村からやや外れの位置にあります。
 柵で囲まれた村の境。
 物見櫓も近くにあり、火急の際には砦ともなるからです。
 私の住むフェイム村は、人口500人の中規模な大きさです。
 冒険者の拠点となる禁忌の洞窟がある為、人の出入りは賑やかな方でしょう。
 無論その方達を相手に商売をする為、商店や宿屋兼酒場等は村規模を逸脱して多いです。
 疲労困憊しながらも稽古を終えた私は、シャス兄様と手を繋ぎ、村の中央にあるマイスター商店を目指します。
 マイスター商店は冒険者用の武器防具だけでなく生活雑貨も扱うこの村の何でも屋さんです。
 気難しそうに見えて本当は優しいゴランおじさんと、朗らかで快活なジャレッドおばさんが印象的でしょう。

「あら、ユナちゃん。
 今日はお兄ちゃんとお出掛け?」
「はい、マイスター商店までお使いです」
「あらあら、偉いわね。
 気をつけてね」
「は~い」

 仲良く歩く私達に声を掛けてくれた御近所さん達にはきっちり応じます。
 どこで不穏な噂が立つか分からないですからね。
 父様は腕も立つし人望もありますが、お金もあるので妬まれやすいのです。
 悪意に疎い所があるので私としては少し心配です。

「ユナはどこでも声を掛けられるね」
「そうでしょうか?」

 シャス兄様がにこやかに話しかけてくれます。
 今も目の前にある水たまりをさり気無く手を引いて回避してくれました。
 僅か6歳にして女性に対するこの気遣い。
 兄様がモテるのも理解出来ます。
 転生前は中学生でしたが、周囲にここまで完璧な人はいませんでした。
 シャス兄様は時折美少女に間違われる程の容貌なので女の子達のアイドルです。
 特に綺麗な黒髪を切らずに伸ばしてる事も拍車を掛けてる気がします。
 ミスティ兄様は肩口辺りで切り揃てるのとは対比的です。
 何故かと聞いたら「煩わしいから」とのこと。
 シャス兄様は「切るのが面倒で」とのこと。
 ファンの子達が聞いたらがっかりするような内容でした。

「やっぱり可愛いからかな?」
「そんなことないです」

 そう答えつつも顔がにやけるのは仕方ありません。
 シャス兄様に褒められて嬉しくない筈がないです。
 でもね、兄様。
 その気の無い女性を本気にさせるのは罪ですよ? 
 近い将来、絶対無自覚な女たらしになりそうなシャス兄様に私は内心溜息をつくのでした。


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