勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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戦闘するらしいです

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 慌てふためく私達。
 そんな私達を嘲笑う様にそれは少し距離を置いて着地します。
 異様に手の長い醜い小鬼。
 鍛錬の合間に父様から聞いた話より推測するに、アレは手長ゴブリンという妖魔でしょうか。
 通常のゴブリンより敏捷性に優れるのが厄介らしいです。
 私達の動向を窺うゴブリンでしたが、何も仕掛けてこないとみるや威嚇するように嗤います。
 怯える三人。
 私は震えそうな膝に力を入れ何とか堪えます。
 奴にとっては取るに足らなであろう行動が私達には脅威です。
 そしてその脅えはゴブリンを調子づかせる要因となりました。
 人族の子供が四人。
 ゴブリンにとっては手頃な獲物でしょう。
 下肢に力が籠るや踊り掛かる様に襲ってきます。
 身が竦む皆を庇う為、私は前に出ようとします。
 けど出遅れた私より速くワキヤ君が鉈を振るいます。

「うああああああああああああ!!」

 それは抵抗と云うにはささやかな反撃。
 太刀筋も何もないただ力任せに鉈を振り回すだけ。
 しかしゴブリンを一時退けさせるには充分でした。
 後方に跳躍し、距離を取るゴブリン。
 その間に私とワキヤ君はクーノちゃんとコタチちゃんを後方に庇い、前衛を固めます。
 さらには、

「……祝福されし者の強き集いのうちに、
 我、今新たなる契りによる聖浄の力束ねん! <ブレス>!」

 クーノちゃんにより、聖職者特有の御業、祝福(ブレス)が私達の身体へ掛けられました。
 暖かい波動の中に芽吹く確固たる力。
 やれるという気持ちが湧き上がります。
 これなら……!!
 自信をもってゴブリンを見据えた瞬間、

「あっ……」

 私の自信……いえ、傲慢さは打ち砕かれました。
 そこにいるのは憎悪をこめて私達を睨むゴブリンがいます。
 いかに私達を殺そうと考えてるのが明確に伝わってきます。
 忍び寄る死の気配とでもいうべき濃厚な殺意。
 私の心は萎縮してしまいました。
 自分の意志とは裏腹に身体が震えてしまいます。 
 転生前よりこれまで、誰かにこれほどの殺意を向けられた事はありません。
 この世界に生まれ闘気を覚え、そして鍛錬を続けていたのに私は忘れてました。
 戦う為の技術を身に着ける事と、
 実際に戦う事は違う、という事を。
 戦場に立てば鍛錬や装備など関係ありません。
 如何に相手の命を奪うか、その覚悟が試されます。
 私は……情けない事にその覚悟が足りなかった様です。
 技術を覚え、いい気になっていた。
 その結果がこれです。
 何かあっても私がいるから大丈夫。
 そう考えてた上から目線のお馬鹿さんは、何も出来ず震えるだけ。
 因果とはいえ皮肉なものです。
 私の後悔を余所に、ついにゴブリンはその長い手を振り上げ襲ってきました。
 手先に鋭い爪があるのが見て取れます。
 闘気を纏った私ならともかく、他の子達なら致命傷に成り兼ねません。

(皆を守らないと!)

 そう思うのに、思い通り身体は動いてくれません。
 ただ何とかワキヤ君を後方に下げガードの姿勢を取る事に成功します。
 私なら運が良ければ大怪我で済みます。
 けど……

(ああ、このまま殺されちゃうのかな……)

 這い寄る恐怖。
 走馬灯の様に奔る記憶。
 父様、母様。
 フェイム村のみんなの顔。
 でも一番鮮烈に浮かんだのは、
 歳の離れた大好きな二人の兄様達の顔でした。

(ごめんなさい、兄様達……)

 兄様達の忠告を無視した私には罰が下ります。
 私はぎゅっと目を閉じその瞬間を待ちます。
 が、いつまで経っても衝撃が来ません。
 不思議に思った私は恐る恐る目を開きます。
 目前に迫った手長ゴブリン。
 その頭に、矢が突き刺さっていました。

「え?」

 突然の事態に茫然とする私達。
 やがて力を失ったゴブリンの身体は土煙を上げてその場に倒れ込みます。

「ふう……間に合ったようだな」
「ええ、ギリギリのタイミングでしたけどね」

 そう言って枝から飛び降りてきたのは、

「兄様!!」

 いつになく真剣な顔をしたミスティ兄様と、
 蒼白に近い顔色のシャス兄様の二人でした。

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