45 / 89
豹変みたいです
しおりを挟む
「確かにメイドの手配をレカキスに頼んだが……
まさか自分の娘を寄越すとは思わなくてね。
事態を把握できず失礼した。
カルティア・ノルンだ。
色々迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」
「こちらこそ」
父様の声掛けにファルリアと名乗ったメイドさんは頭を深々と下げます。
よく見ればその傍らには大きな旅行鞄がありました。
乗り合い馬車には持ち込める重量が制限される事から、本当に身の回りの物だけを持参してきたのでしょう。
軽く私とシャス兄様の事を紹介すると、父様は周囲の見送りの人達に礼を述べた後、家に向かいます。
勿論ファルリアさんを案内する為です。
道中会話が弾んでる様子の父様。
……何だか面白くありません。
シャス兄様も父様の朗らかな表情を見ながら複雑そうな顔をしてます。
「それにしても君が来るとはね。
あいつの娘さんがこんな大きく綺麗になってるとは思わず、
本当に見違えてしまったよ。
覚えているかな?
まだ君がウチの娘くらいに小さな時に出会ってるんだが」
「はい。明確に記憶してますわ。
先代勇者のパーティメンバーである<闘刃>カルティア・ノルン。
いくら勇者様達を支えるのがレカキス一族の使命とはいえ、
王都に住む者達にとっては憧れだったのですよ?
忘れる訳がありません」
「……懐かしい名だ。
今は一介の自警団長だよ。
そんな憧憬の対象になる存在じゃない」
「御謙遜を」
「単に事実を述べただけなのだがね。
そういえば、ファルリアは幾つになったんだい?」
「ファルで構いませんわ」
「じゃあわたしもカルでいい」
「それは……」
「不服ならわたしも変えないぞ」
「……承知しました。
では、カル様、と」
「まだ固いな、ファル」
「フフ……慣れるまでが大変そうですわね」
「違いない」
「徐々に慣れていくよう努力致しますわ。
……質問の答えですけど、もう16になります。
昨年成人の儀を終えました」
「そうか。あの時の子が成人か……
わたしも歳を取る訳だ。
皆、変わりはないかい?」
「ええ。カル様も御存知でしょうけど、両親も妹も共に壮健です」
「レカキス達の事は伝文で聞いていたよ。
相変わらず仲が良さそうでなによりだ」
「未だに人前でもイチャつきますし……
少し自重すべきだとわたくしは思いますけど」
「はは。違いない。
ああ、奴が言ってたな。
妹さん……確か、メルファリアとかいったかな?」
「はい」
「その子に後を継がせる、と。
物覚えも良く要領のいい子らしいが……
本当は何でも万全にこなす、君に継がせたかったと嘆いていたぞ」
「わたくしにはこの方が似合いますし」
「メイド職が好きなのかい?
レカキスも疑問に思ってたな」
「そうですわね……わたくしは多分、
然るべき方にお仕えし、御奉仕する……
そういう生き方が好きなんだと思います」
「成程な……それが君の信条か。
共感できる部分は確かにあるな」
「御理解いただきありがとうございます」
「いや、なに。
誰しもが通る通過儀礼だと思うがね。
おっ、話してる内に到着だ。
ここが我が家になる」
「ここが……」
自警団詰所を兼用している大きな我が家。
母様がいなくなった現在、その全ては私が取り仕切っています。
掃除洗濯などの、さしすせそ。
不慣れな作業も多かったですが、そこはそれ。
リーディングとエンドレス・グローリーを活用して凌いでます。
今は季節の花をガーデニングしてる最中です。
花壇には春らしく色取り取りの花が咲いています。
少しドヤ顔でファルさんを見た私でしたが……
思わずぎょっとしてしまいます。
いつも優雅に微笑んでるその表情。
優しさに満ちたその顔が、今は鋭く家を見据えてるからです。
「少しよろしいですか、カル様」
「何かね、ファル」
「今現在この家を手入れしてるのはどなたです?」
「それは……」
ファルさんの冷たい指摘。
父様の目線が私を捉えます。
その視線に従って、ファルさんも私に注視します。
元が美人さんだけにその眼差しは恐ろしい迫力です。
目力というものでしょうか?
正直に感想を言うなら……
こ、怖いです!
穏やかそうなファルさんをここまで不機嫌にさせてしまうもの。
私はいったい何をしてしまったのでしょう……?
まさか自分の娘を寄越すとは思わなくてね。
事態を把握できず失礼した。
カルティア・ノルンだ。
色々迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」
「こちらこそ」
父様の声掛けにファルリアと名乗ったメイドさんは頭を深々と下げます。
よく見ればその傍らには大きな旅行鞄がありました。
乗り合い馬車には持ち込める重量が制限される事から、本当に身の回りの物だけを持参してきたのでしょう。
軽く私とシャス兄様の事を紹介すると、父様は周囲の見送りの人達に礼を述べた後、家に向かいます。
勿論ファルリアさんを案内する為です。
道中会話が弾んでる様子の父様。
……何だか面白くありません。
シャス兄様も父様の朗らかな表情を見ながら複雑そうな顔をしてます。
「それにしても君が来るとはね。
あいつの娘さんがこんな大きく綺麗になってるとは思わず、
本当に見違えてしまったよ。
覚えているかな?
まだ君がウチの娘くらいに小さな時に出会ってるんだが」
「はい。明確に記憶してますわ。
先代勇者のパーティメンバーである<闘刃>カルティア・ノルン。
いくら勇者様達を支えるのがレカキス一族の使命とはいえ、
王都に住む者達にとっては憧れだったのですよ?
忘れる訳がありません」
「……懐かしい名だ。
今は一介の自警団長だよ。
そんな憧憬の対象になる存在じゃない」
「御謙遜を」
「単に事実を述べただけなのだがね。
そういえば、ファルリアは幾つになったんだい?」
「ファルで構いませんわ」
「じゃあわたしもカルでいい」
「それは……」
「不服ならわたしも変えないぞ」
「……承知しました。
では、カル様、と」
「まだ固いな、ファル」
「フフ……慣れるまでが大変そうですわね」
「違いない」
「徐々に慣れていくよう努力致しますわ。
……質問の答えですけど、もう16になります。
昨年成人の儀を終えました」
「そうか。あの時の子が成人か……
わたしも歳を取る訳だ。
皆、変わりはないかい?」
「ええ。カル様も御存知でしょうけど、両親も妹も共に壮健です」
「レカキス達の事は伝文で聞いていたよ。
相変わらず仲が良さそうでなによりだ」
「未だに人前でもイチャつきますし……
少し自重すべきだとわたくしは思いますけど」
「はは。違いない。
ああ、奴が言ってたな。
妹さん……確か、メルファリアとかいったかな?」
「はい」
「その子に後を継がせる、と。
物覚えも良く要領のいい子らしいが……
本当は何でも万全にこなす、君に継がせたかったと嘆いていたぞ」
「わたくしにはこの方が似合いますし」
「メイド職が好きなのかい?
レカキスも疑問に思ってたな」
「そうですわね……わたくしは多分、
然るべき方にお仕えし、御奉仕する……
そういう生き方が好きなんだと思います」
「成程な……それが君の信条か。
共感できる部分は確かにあるな」
「御理解いただきありがとうございます」
「いや、なに。
誰しもが通る通過儀礼だと思うがね。
おっ、話してる内に到着だ。
ここが我が家になる」
「ここが……」
自警団詰所を兼用している大きな我が家。
母様がいなくなった現在、その全ては私が取り仕切っています。
掃除洗濯などの、さしすせそ。
不慣れな作業も多かったですが、そこはそれ。
リーディングとエンドレス・グローリーを活用して凌いでます。
今は季節の花をガーデニングしてる最中です。
花壇には春らしく色取り取りの花が咲いています。
少しドヤ顔でファルさんを見た私でしたが……
思わずぎょっとしてしまいます。
いつも優雅に微笑んでるその表情。
優しさに満ちたその顔が、今は鋭く家を見据えてるからです。
「少しよろしいですか、カル様」
「何かね、ファル」
「今現在この家を手入れしてるのはどなたです?」
「それは……」
ファルさんの冷たい指摘。
父様の目線が私を捉えます。
その視線に従って、ファルさんも私に注視します。
元が美人さんだけにその眼差しは恐ろしい迫力です。
目力というものでしょうか?
正直に感想を言うなら……
こ、怖いです!
穏やかそうなファルさんをここまで不機嫌にさせてしまうもの。
私はいったい何をしてしまったのでしょう……?
0
あなたにおすすめの小説
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
魔王城すこや課、本日も無事社畜です!
ハルタカ
ファンタジー
過労で倒れた社畜女子シオンの転生先は、まさかの魔王城。
無邪気に暴虐無人な上司(魔王)のもとで便利屋事務員としてドタバタな日々を過ごすうちに、寡黙な悪魔レヴィアスの思わぬ優しさに惹かれはじめていた。
ある日、突然変異したモンスターの暴走によって魔王城での生活は一変。
ーーそれは変異か、陰謀か。
事態を解明するために、シオンたちは世界各地で奔走する。
直面したことのない危険や恐怖に立ち向かうシオンは、それを支えるレヴィアスの無自覚で一途な愛情に翻弄されて……?
働くことでしか自分を認められないシオンが、魔王城で働く魔物たちの心をほぐしながら自分の価値を見つけていくファンタジーお仕事じれ恋ストーリー。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる