勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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豹変みたいです

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「確かにメイドの手配をレカキスに頼んだが……
 まさか自分の娘を寄越すとは思わなくてね。
 事態を把握できず失礼した。
 カルティア・ノルンだ。
 色々迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」
「こちらこそ」

 父様の声掛けにファルリアと名乗ったメイドさんは頭を深々と下げます。
 よく見ればその傍らには大きな旅行鞄がありました。
 乗り合い馬車には持ち込める重量が制限される事から、本当に身の回りの物だけを持参してきたのでしょう。
 軽く私とシャス兄様の事を紹介すると、父様は周囲の見送りの人達に礼を述べた後、家に向かいます。
 勿論ファルリアさんを案内する為です。
 道中会話が弾んでる様子の父様。
 ……何だか面白くありません。
 シャス兄様も父様の朗らかな表情を見ながら複雑そうな顔をしてます。


「それにしても君が来るとはね。
 あいつの娘さんがこんな大きく綺麗になってるとは思わず、
 本当に見違えてしまったよ。
 覚えているかな?
 まだ君がウチの娘くらいに小さな時に出会ってるんだが」
「はい。明確に記憶してますわ。
 先代勇者のパーティメンバーである<闘刃>カルティア・ノルン。
 いくら勇者様達を支えるのがレカキス一族の使命とはいえ、
 王都に住む者達にとっては憧れだったのですよ?
 忘れる訳がありません」
「……懐かしい名だ。
 今は一介の自警団長だよ。
 そんな憧憬の対象になる存在じゃない」
「御謙遜を」
「単に事実を述べただけなのだがね。
 そういえば、ファルリアは幾つになったんだい?」
「ファルで構いませんわ」
「じゃあわたしもカルでいい」
「それは……」
「不服ならわたしも変えないぞ」
「……承知しました。
 では、カル様、と」
「まだ固いな、ファル」
「フフ……慣れるまでが大変そうですわね」
「違いない」
「徐々に慣れていくよう努力致しますわ。
 ……質問の答えですけど、もう16になります。
 昨年成人の儀を終えました」
「そうか。あの時の子が成人か……
 わたしも歳を取る訳だ。
 皆、変わりはないかい?」
「ええ。カル様も御存知でしょうけど、両親も妹も共に壮健です」
「レカキス達の事は伝文で聞いていたよ。
 相変わらず仲が良さそうでなによりだ」
「未だに人前でもイチャつきますし……
 少し自重すべきだとわたくしは思いますけど」
「はは。違いない。
 ああ、奴が言ってたな。
 妹さん……確か、メルファリアとかいったかな?」
「はい」
「その子に後を継がせる、と。
 物覚えも良く要領のいい子らしいが……
 本当は何でも万全にこなす、君に継がせたかったと嘆いていたぞ」
「わたくしにはこの方が似合いますし」
「メイド職が好きなのかい?
 レカキスも疑問に思ってたな」
「そうですわね……わたくしは多分、
 然るべき方にお仕えし、御奉仕する……
 そういう生き方が好きなんだと思います」
「成程な……それが君の信条か。
 共感できる部分は確かにあるな」
「御理解いただきありがとうございます」
「いや、なに。
 誰しもが通る通過儀礼だと思うがね。
 おっ、話してる内に到着だ。
 ここが我が家になる」
「ここが……」

 自警団詰所を兼用している大きな我が家。
 母様がいなくなった現在、その全ては私が取り仕切っています。
 掃除洗濯などの、さしすせそ。
 不慣れな作業も多かったですが、そこはそれ。
 リーディングとエンドレス・グローリーを活用して凌いでます。
 今は季節の花をガーデニングしてる最中です。
 花壇には春らしく色取り取りの花が咲いています。
 少しドヤ顔でファルさんを見た私でしたが……
 思わずぎょっとしてしまいます。
 いつも優雅に微笑んでるその表情。
 優しさに満ちたその顔が、今は鋭く家を見据えてるからです。

「少しよろしいですか、カル様」
「何かね、ファル」
「今現在この家を手入れしてるのはどなたです?」
「それは……」

 ファルさんの冷たい指摘。
 父様の目線が私を捉えます。
 その視線に従って、ファルさんも私に注視します。
 元が美人さんだけにその眼差しは恐ろしい迫力です。
 目力というものでしょうか?
 正直に感想を言うなら……
 こ、怖いです!
 穏やかそうなファルさんをここまで不機嫌にさせてしまうもの。
 私はいったい何をしてしまったのでしょう……?
 
 


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