迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流

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1日目④

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「さて――
 アドバイザーとして最初の助言です、臥龍。
 まずはこの意識空間を変容させましょうか」
「意識空間の変容?」

 鈴の音の様に心地良く響くアイの言葉に俺は疑問を返す。

「はい。臥龍が今いるここは、貴方とダンジョンの間にある自我境界。
 貴方の中で形成されている意識空間です。
 現実の貴方はあの洞窟で扉に触れた状態で立ち尽くしています」
「それって――大丈夫なのか?
 結構時間が経つし無防備過ぎるぞ?」
「ご安心下さい。
 この空間内では物理的な時間は経過しません。
 ここでどれだけの時を過ごそうとも、現実世界の時間経過は零秒です。
 故に今迄の貴方とのやり取りを含めて時間経過のロスはありません。
 それとレベルアップの際には強制的にここに戻ってきますのでご了承願います」
「便利だな、それ!
 いくらでも食っちゃ寝できるってことか!?」
「いいえ――
 残念ですがここで起きた事は、あくまでここだけに適応される出来事。
 現実にフィードバックされる事はありません。
 例外はスキルの選択など、霊格【アストラル】に作用するモノのみ、です。
 なので意識空間内で幾ら休養をしようが飲み食いをしようが――
 現実の貴方は疲弊し空腹を抱えることになるので注意が必要です」
「そう上手くはいかない、ってことか。
 んで――その意識空間の変容っていうのは?」
「現状何もないこの空間。
 ここに貴方の意志を反映させます。
 私の助力があれば、それだけでこの空間は貴方の望むものに変容するのです。
 さあ、心に強く思い描いてください。
 貴方の望む世界を――」
「俺の望む世界――?」

 脳裏に浮かぶのは我が家。
 都会の喧騒を離れ住み着き――今や掛け替えのない故郷となった自分の家の居間の情景が自然と思い浮かぶ。
 するとどうだろうか?
 古い家特有の無駄に広い――
 しかし大黒柱に支えられガッチリとした大広間。
 前の住人が置いていった、くたびれた来客用の黒革ソファーの上に俺はいつの間にか座っていた。
 どこか曖昧だった身体がしっかりと感じられるようになっている。

「おお、凄いなこれ!
 現実の俺の家と寸分も変わらないぞ!」
「それだけ貴方の思い入れが強い、という事でしょう」
「いや、アイの助言が的確だから――」

 だよ、と続けようと声の方に振り向いた俺は言葉に詰まる。

「――どうしました、臥龍?」

 俺の視界の先にいたのは不思議そうに小首を傾げる女性。
 腰まで流れる銀色に輝く絹糸の様な髪。
 特徴が無い故にまるで天工が作り上げた完璧さを兼ね備える美貌。
 半透明ながらもモデルの様にしなやかな肢体を惜しげもなく晒している。
 誰もが魅了されるであろう蠱惑的なそれはもはや幻想的な美しさを持つだろう。
 だが――

「なんで全裸なんだよ!!」

 最大級の絶叫と共に絞り出された俺のツッコミは、我が家を模した居間の大きなのっぽの古時計をガタガタと震わせるのだった。



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