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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第011話 アドンの迷宮探索へ
しおりを挟む「本当に行くの? アイリスちゃん」
「ん」コクリ
苦虫を噛み潰したような顔で聞くビアンカに頷くアイリス。
――事は少し前、レイク達が報酬やエミリアーナ姫達と合流出来た場合の対応について話し合われていた時だった。
『お主は行かんのか?』
俺が行っても足手纏いだろ。もぐもぐ。
『キーちゃんがおるじゃろ』
キーちゃん? もぐもぐ、このクッキー美味しいな。
『子供とは言え聖獣じゃからの。強いのじゃ』
んー、でもなあ。俺が足手纏いなのは変わらないじゃん。ジュースジュース、ん、こくこく、ん、ん。
『もし姫や騎士の女達が大怪我を負っておったら、お主の存在が命運を分けるかも知れんじゃろ』
む?
『ビアンカにとっても助けられるのなら、伯爵家として助けて欲しい所じゃろうしな』
むむむー。
『本来聖獣は邪素まみれの迷宮など好まんが、リリィ達精霊剣2本に更にお主と、濃い聖素を持ったモノがおるから迷宮に潜るのも問題ないのじゃ』
『キーちゃんも外に出たいと思うなのー。もう馬車の中は飽きたと思うなのー!』
むぅー、仕方ないかぁ。
――と言うやり取りがあったのだ。
ユニコーンのキーちゃんを馬車から連れ出した時に偉い騒ぎになったけどね。ビアンカお姉様の貴族パワーとシーラさんのギルド長権限で押さえ込んで黙らせてたなあ。(他人事)
カリンもキラキラした瞳で見ていたんだけど、やっぱりユニコーンの聖素に近寄れなくて遠目で見ているだけになってたから問題ない。本当に俺以外ダメなんだよな。俺自身、本当に大丈夫なのか分からないし。
『大丈夫なのじゃ。同じ聖素を纏っている巫女も皆んな大丈夫だったのじゃ』
俺は巫女じゃないんだけどなあ。
迷宮に潜るのはレイク達3人に俺とユニコーンのキーちゃん。それにミリアーナとナージャさんヴェルンさんと言うメンバーである。
『リリィ達も行くのじゃ!』
『主ー、忘れちゃ駄目なのー!』
はいはい、忘れてないよ。
「プルルン『頑張るー!』」
「私達はアデール王国の副都の迷宮で30階層までクランの一員としてですが潜っております。29階層ではグリフォン率いる大角大黒狼などの黒狼の群れと、30階層ではタイタンスネークと戦っております」
「タイタンスネークってのは分からないが、大角大黒狼やグリフォンは俺等の行った22階層より手強いだろうな」
ヴェルンさんがリックと互いの実力の確認の為に擦り合わせをしている。
レイクは脳筋ぎみ、トマソンも口下手でこの手の話し合いはリックがする事になっているそうだ。
ヴェルンさんの方もナージャさんにミリアーナと、基本女性にしか興味無い娘達なのでリックとヴェルンさんが話す事になるのだ。
『いや、別にナージャは女好きと言う訳ではないのじゃが?』
何でだよ。ミリアーナと良く抱き合ってるじゃんか。アリアとカチュアの世話も良くしてるし。
『えぇ? ……お主そう言う認識じゃったの??』困惑
『でも主のお世話も良くしてるなのー?』困惑
いやアレは流石に俺の美容魔法目当てだろ。
ナージャさんは侍女だし世話好きってのもあるかもだけど、ミリアーナも世話してくるしな。そこまでしなくて良いとは思うんだけど、女の美への執念って怖いよな?
『『…………えぇ』』
――因みに当然ながら、アイリスは話し合いをする相手として認識すらされていないのだった。
「シラルの町からの護衛依頼時にあんた等の実力は知ってる。それについては問題ないが、アレをどうするかだな」
皆んなの視線の先は当然アイリスとキーちゃんである。
アイリスはキーちゃんことユニコーンのキュリアリュシュリュアと戯れている。と言うか遊ばれているのだが。
「アイリスは、今回は急ぎの依頼ですから誰かが背負った方が早いでしょう。ユニコーンに乗ってと言うのは、まだ鞍が無いので出来ませんし」
「そんな事もあろうかと紐を持って来ました。ヴェルン、そこにしゃがんで下さい。アイリスちゃーん、ちょーっと此方に来てくれますかぁ?」
「ん? ……来た」
「んん~、良い子ですねぇヨシヨシ。さささっと、こんなモノでどうでしょう?」
ナージャは軽くアイリスの頭を撫でてから、あっという間にアイリスを紐を使ってヴェルンに背負わさせてしまっていた。
「ナージャ、コレは?」
「紐ですが?」
通称抱っこ紐である。背負う事も出来る。
何故そんな物を、とか手際が良すぎないか、とか色々疑問はあるがヴェルンは飲み込んだ。大抵ろくな答えが帰って来ないのだ。
結局ヴェルン、リック、トマソンが代わる代わる交代でアイリスを運ぶ事になった。レイクは主戦力だしナージャ、ミリアーナは流石に他のメンバーに比べると移動に付いて行けなくなる。
自分でやっておいて未練たらたらのナージャであったがミリアーナの「行きは急ぎだから仕方ないけど、帰りなら私達でも抱っこして良いわよね?」と言う言葉で早く救出に向かって帰ろうとやる気を暴走させていた。
アイリスもすんなり受け入れている。アデール王国の副都の迷宮探索やメメントリア王国での精霊樹までの行き来と、もう歩いての移動の苦痛は避けたかったのだ。
(歩かないで良いなら何でも良い)
『一流の剣の使い手に……』渋面
『リリィもう諦めるなのー』ジト目
「一応言っておくけど無理する必要は無いわ。エミリアーナ姫様も大事だけどアイリスちゃんの方が余程重要人物なんだからね」
シーラとしてはアイリスを行かせたくは無かった。
しかしシャルロッテがメメントリア王国で精霊樹の所まで行かせていると聞いてしまった。それなのに部下の自分がアイリスを止める訳にはいかないと考えたのだ。
「ヴェルンさん達には伝えてあるけど、貴方達の方は貴方に言っておくわ。リック」
「分かってますよ。俺等は姫さんには何の思い入れも無いし、既に生きてるかも分からないのに無茶する理由も無いですからね」
「……それはそれで不敬だからね? 仮に無事出会う事があっても言動には注意しなさいよ」
「りょーうかい」
軽い口調で手をひらひらさせてレイク達の下へ行くリックに一抹の不安を感じるシーラだが、シャルロッテが見込んだ人材だし自分に出来る事はもう無いと見送るだけにした。
そうしてアイリスを率いる一団は3時間程で6階層まで来ていた。
ゴブリンやコボルトの上位種も出て来ているが、レイク達に瞬殺されて時間稼ぎにもならずに順調に突き進んでいる。
1階層ごとにアイリスを背負うメンバーを変えていたが3階層からトマソンの専任となった。ヴェルンとリックは「揺れがイヤ」とのアイリスの言葉で解雇となっていたのだ。
「トマソンがアイリスちゃんを一番気遣っていたのですね。リックさんは兎も角ヴェルンまでとは情けない」
ヴェルンはナージャの物言いに背負ってやるだけマシだろう。――とは思ったが賢明にも口にはしなかった。
隊列としてはレイクを先頭にして後ろにアイリスを背負うトマソン。その左右にアイリスを背負わないリックとヴェルン。その後ろにナージャとミリアーナとなっている。
ユニコーンのキーちゃんはアイリスの横に寄り添う様に走っている。キーちゃん自身も聖素を抑えているが、迷宮の邪素がキーちゃんの聖素の影響を抑えてトマソン達もある程度近寄れる様になっていた。
「(アイリスに)強いとは聞いたけどユニコーンってのはどの程度戦えるもんなのかね」
「知っておきたいが、連れて来たアイリスが寝ているのではな」
『って言うておるぞ?』
『戦わないなのー?』
「プルゥ『リリちゃんに頼まれてもないのに必要無いでしょ』」
『アイリスしか見えとらんのじゃ。まあ聖素を好む聖獣らしいと言えばらしいのじゃがの』
「少し暗くなって来ましたね」
基本的に迷宮内にも昼夜の概念は存在する。勿論迷宮によって例外はあるがこのアドンの迷宮ではレイク達の潜った22階層までは昼夜があった。
「7階層に入ったら休憩出来るスペースを探して休みませんか?」
「だな。んで朝イチで出て10階層の中継場所まで行って、補給と小休止してから本格的に探索かな? それで良いかレイク?」
「ああ、それで構わない」
急いだ為にテントは勿論、寝袋すらも持って来ていない。最低限の水と食料だけだ。アイリスはマントにくるまって当に寝ている。と言うかトマソンに背負われて早々から寝っぱなしだった。キーちゃんもアイリスを見守る様に休んでいる。
「小っちゃいアイリスちゃんに小っちゃいキーちゃん、可愛いですねぇ」
「ナージャ、貴女ユニコーンもイケるの?」
「小さい者は大抵何でも可愛いモノですよ? ミリアーナ」
『ネネェは見えなくて良かったなのー』
『……』
「アイリスの食事はどうする?」
「わざわざ起こすのもな。起きて来たら食わせれば良いんじゃないか?」
「そうですね。取り敢えず食事を摂ったら順に仮眠を取って行きましょう」
「そうだな」
「それにしても動きながら回復魔法を受けるってのは不思議な感じがしたな。疲労は感じる筈なのに同時に疲労が取れて行くのも感じるんだよな」
リックの発言にヴェルンとトマソンも同意する。ナージャとミリアーナも体験済みなので同様だ。
「機会があれば俺も体験してみたいな」
レイクだけはいざと言う時の戦闘要員として外せないのでこんな感想になる。
「アイリスちゃんの愛を感じますよね?」
いや、ナージャもまた周りとは違うモノを感じていた様だった。
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