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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第012話 10階層、拠点にて
しおりを挟む「アイリスちゃん起きたのね。ご飯出来てるわよ」
「野菜スープと雑炊、それと猪の肉を焼いていますけどどうしますか?」
「んん~、にゅ、おにくぅ、いらないー」
「相変わらずお肉嫌いなのねえ。好き嫌いしてると大きくなれないわよアイリスちゃん?」
そんなんで大きく成れるなら世話ないわ。石ころパンも肉も固いんだぞ?
「余計な事言わないで下さいミリアーナ。それで大きくなったらどう責任取るんですか? 小さいからこそ良いと言う事もあるのですよ!」
「はいはい、ごめんって」
何が良いのか。ぼうっとする頭をふらふらさせながらナージャとミリアーナのやり取りを聞き流していく。
うーん、……ダメだな。……頭が働かない。
「では野菜スープと雑炊だけですね。熱いからふーふーして食べましょうねぇ」
「んー、食べゆぅ」
『朝弱いのう(完全に子供扱いに慣れてしまっとるの。他の者等は夜番もしとると言うに)』
「ふーふー、はいあーん。うふふ、可愛いわぁ」
「んゅ、あーん、もぐもぐ」
『……まあ良えか、もう』
朝起きたらもう7階層まで来ていた。アデール王国の迷宮じゃもっと掛かったし此処の迷宮は狭いのかな? 午後から出てこれなら帰りは歩いても良いかも知れないな。
『まあ確かにアデール王国の迷宮よりは狭いとは思うがの。お主の足じゃ急いでも1日で3階層も越えられんじゃろな』
『頑張るなのー?』
キーちゃんの背に乗れたらなあ。……そう言えばキーちゃんの食事は?
『さらっと流しおったの。もうやったのじゃ』
キーちゃんは聖獣と言う事もあって普通の食事は必要としなかった。綺麗な水と俺の魔力やリリィ達の聖素を受け取るだけで充分なのだ。
肉体を持っていても半ば精霊に近い部分もあって、生命としての存在が人とは違うらしい。何か良く分からなかったけどそう言う事だ。
再びトマソンに背負われて走る事数時間、10時過ぎには10階層に到達してそのまま拠点まで来てしまった。これ朝から潜っていたら1日で10階層まで辿り着けるじゃん。
『お主は寝とるだけじゃったがの』
「クルゥ『退屈だったぁー』」
『キーちゃん魔法で魔物をいっぱい倒してたなのー』
え? キーちゃん本当に強いの??
『ヒヒン(この辺の魔物なら余裕ー)』
『まあ子供とは言え聖獣じゃしの』
聞くとどうやら角から霊素の魔力をそのまま撃ち込んだらしい。神聖魔法の矢とでも言うのかな?
10階層にある拠点は幾つものテントが設置されていて20人程の人間が待機していた。
「レイク! また此処に来てたのか!?」
「ああ、姫の捜索を依頼されたんだ。何か知らないか?」
集団の中から一際大きな男が代表してレイク達に声を掛けて来た。以前レイク達がこの迷宮探索をしていた時の知り合いだった。
「あるぞ。ウチの馬鹿が功名心で無茶しやがってな。17階層まで行って大怪我して帰って来やがったのよ」
言葉とは裏腹に口惜しそうに吐き捨てるのは同じクランの仲間だったからだろう。
「そこで姫さんの一団を見たらしい。麻痺毒を喰らってるがどうやら無事らしいぞ。……まあ一昨日の情報だがな」
「救出には行かなかったのか?」
「俺等の到達階層は13階層だぞ? 14階層から出るオーガを安定して倒せなきゃ行くのは馬鹿だろ」
「それで17階層まで行けたってのは凄いな」
「斥候が得意なメンバーを中心に少数精鋭で行ってたからな。戦闘を避けて兎に角姫さんを見つける事に集中してたらしい」
14階層から出るオーガは2m超えと大柄で、更に超筋肉質な身体で力も素早さもある。極めて好戦的で勢いに呑まれるとあっという間にチームごと瓦解してしまう事もある危険な相手だ。
俺達が以前領軍と22階層まで行った時の地図を手にして迷わず行けたらしいが、悪い事に17階層まで行ったのはクランの最高戦力の奴等でそいつ等が失敗した以上無理は出来ないと判断したそうだ。
「それで、……悪いんだが良いポーションがあれば売ってくれないか?」
「大怪我したって奴に使うのか?」
「ああ、一応応急措置をして手持ちのポーション飲ませて安静にさせてはいるんだがな」
「……持ちそうに無いのか?」
「重症だ。替わりのクランが来たら連れ帰るつもりだが、移動に耐えられるかと言うと、……厳しいな」
男の話しを聞いてレイク達は互いを見やった。
「もう6日も経っているんだ。今更1、2時間遅れた所で変わらんだろう」
「エミリアーナ姫は今現在死の淵に立っている可能性もあるのですよ? 先にエミリアーナ姫の救出に向かうべきではないですか?」
話しを聞いてアイリスの治療を受けさせようと言う話しになったが、それに待ったを掛けたのがヴェルンである。ビアンカ付きの執事と言う事もあってレンリート伯爵家の立場に立った考えだが、間違いとは言えない所が話しを難航させていた。
「問答する時間が勿体ないだろ。先ずアイリスに治療してもらって、その間に話し合おうぜ」
と言うリックの発言で俺の了解を得ぬまま治療に駆り出された。
『なんじゃ、不満か?』
いや別に良いんだけどさ。俺だけ話し合いに不参加ってどうなのよ?
『妥当じゃろ』
まあ治療出来るのは俺だけだからな。分かってるけど。
『いや此処までただ背負われていただけじゃし、夜番も食事の準備もしておらんじゃろ。ただのお荷物なのじゃ』
『こう言う所でしか役に立たないなのー』
くっ、言い難い事をズバズバ言いやがって。
『ほれダメージ受けとらんで、話し合いが終わる前に出来るだけ治療してやるのじゃ!』
『役立たずじゃない所を見せるなのー!』
「プルルゥ『見張りは任せるの!』」
おっ、おおー! リリィ、ネネェ、キーちゃん達のやる気に押されてしまったな。まあでも、俺の汚名返上にもなるからな。お荷物だなんて評価は覆しておかないと。
「全員で行くと丸1日掛かるだろうけど、俺ならアイリスさんを背負って全力で走れば2時間もあれば辿り着けるぞ」
「そうであるなら、それこそいち早くエミリアーナ姫の救助に向かうべきです。治療は戻ってからすれば良いでしょう」
「アイリスちゃんに負担が掛かりませんか?」
「行きは兎も角、帰るのは一団を連れてとなるんだぞ? もっと時間が掛かるだろう」
「ならここの怪我人を、命の危険が無いレベルまで治療したら救出に向かうって事で良いんじゃねえか?」
「しかしっ」
「ヴェルン、貴方がビアンカお嬢様やレンリート伯爵家の事を考えているのは分かるけど、ここら辺が妥協点ではないかしら?」
「ナージャ……」
「そうだな。俺等は王族だろうと貴族だろうと特別扱いする気はねえ。シャルロッテ様は別だが、それも能力があって此方もそれなりに恩義があるからだしな」
ヴェルンは味方をしないナージャを責める様に見つめるがリックが追従する事で諦めた。結局レイク達が同意しなければ助けに動けないのだから仕方がないだろう。
「それじゃあアイリスちゃんに伝えて来るわね~」
ミリアーナが微妙な空気を変える様に軽い口調でアイリスの入ったテントの方へ向かって行った。
「おい! 何だあの嬢ちゃん凄えな!!」
だがそれを押し退ける様に男が出て来て騒ぎ出した。
興奮冷めあらぬ様子でキラキラ、……いや厳ついおっさんなのでギラギラといった方が良い目でレイク達のもとに駆け寄って行った。
「何なのよ、もう!」
ミリアーナは男には興味ないが、ぞんざいに扱われて不機嫌になっていた。だがレイク達のもとに戻るにつれ話しが聞こえて納得する。
「――まさかもう治療が終わっているなんてね」
アイリスの治療を受けた人間からレイクが最短で救出に向かう為に姫達の詳しい居場所について聞いている。その間に別の人間からリック達は姫の一団の状況について聞いていた。
「どうだろうな。俺達が13階層で会った時に、これ以上先に進まない様に止めはしたんだけどな。振り切られちまってよ」
「まあ、近付く事すら警戒されてたけどな。立場を考えりゃ寧ろ当然だろうしなぁ?」
「――それで、幾ら待っても此処まで帰って来なくてよ。相手は王族だろ? 下手すりゃ責任取らされかねないからな。だからアイツ等も無茶を分かっていながら無理して深くまで潜っちまったのさ」
「いや、値千金の情報を得られたんだ。シーラさんから無茶した事は怒られるだろうが、上手く救出出来れば褒賞金も出るだろうさ」
「ああ、アイツ等の命懸けの苦労が無駄にならなきゃ良いと思ってるよ」
「んじゃ精々祈ってな。んで上手くいったら感謝しろよ」
「おう、当然だ」
「ギルド長がシャルロッテ様からシーラさんに替わっていた事にもな」
「おう、当然だ! 感謝感激って怖え事言うなよ!? 寒いぼ出たわ!!」
リックのからかいに、シャルロッテの冷笑を幻視して死を予感させられた男であった。
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