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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第013話 シリアスは仕事しない?
しおりを挟む「後は、……姫さん等はナチュラルに上から目線だったけど傲慢とか我が儘かと言われると分からんかったな。この拠点の利用も言い方はアレだったが無茶な要求は無かったしな。金払いもまあ良かったし」
「もう良いだろ。何かあっても取り敢えず救出してから後の事は考えれば良いんだし」
脳筋な事を言ってレイクはアイリスを抱っこして走り去って行った。抱っこにしたのは背中を守る相手が居なくなるからだ。
「…………速っ」
そのスピードは見送った男の全速力を遥かに凌駕していた。
防具は元より明らかに重いだろう大剣、そこにアイリスまで抱っこしての速さである。余りの速さに話しをしていた男は唖然としてしまっていた。
自分より強い事は知っていたが此処まで人外の動きをするとは思っていなかったのだ。
隣を並走するユニコーンの子供にも突っ込み処があったのだが、同じ探索者と言う事でレイクのその動きの方が衝撃が強かったのだろう。
「てかあの馬何なんだよ!! 頭に角生えてるじゃねえか!? ぬいぐるみかと思ってたわ!!!」
――と言う事ではなく、頭の整理が追い付いていなかっただけの様だった。
(速い速い!! 怖いぃいいい!!!)
アイリスは抱っこされながら横目に見る景色が有り得ない速さで切り替わって行く事に、たまに魔物が真っ二つに分かれて消えて行く事に恐れおののいた。
今までの人生で一番速いスピードだ。それも自分の意図しない動きをしながら危険な迷宮の中を突き進んでいるのである。
更に今の自分が倒せないだろう魔物が次々と死んで行くのだ。恐怖を感じるのも無理ないだろう。
がっちりとレイクにしがみ付いているがそれでも怖い。アイリスは初めてリリィ達に自分から眠らせてもらう様泣き付いた。何時もはリリィ達も驚く程の、大人とは思えない寝つきの良さを見せていたのだが無理もない。
『仕方がないのう』
『主可哀想なのー。早くやるなのー』
「ヒヒン!『やっぱりリリちゃんは早くキーちゃんに乗れる様にならないとダメなんだよ!』」
リリィ達によって途端に脱力するアイリス。レイク以外だったら、リックやトマソンでも気絶させてしまったかと心配しただろうが其処は脳筋気味のレイクである。
「良く寝るお方だ」
愛おしい、微笑ましい者でも見るかの様な目でアイリスを見てそのまま走り続けた。その爽やかイケメン笑顔はアイリスが見ていたら殴り掛かる程ムカつかせていただろう。
エミリアーナ第3王女と白銀騎士隊は17階層の奥地に追いやられ憔悴しきっていた。次の階層への通り道からも外れている為これでは万が一17階層を越える者達が居ても気付かないのだ。
「2日前に見た冒険者、いや此処では探索者か。あの者等が助けを呼んでくれれば良いのだが……」
「だが大怪我を負っていたぞ。10階層の拠点まで戻れているかも分からん」
「それに、……戻れていたとしても、とても此処まで来れる探索者が呼べるとは思えません」
ギルド長のシーラから10階層までの拠点しか出来ていないと聞いていた。それはその先は満足に探索が出来る者達が居ない事を意味するのだ。
その為シーラからもその先に進まない様に言い含められていたから。
伯爵位以下の貴族の令嬢達から厳選して作られた白銀騎士隊は剣に魔法の腕を見込まれた猛者達だ。10階層に留まっている探索者達より強者である事に間違いはない。
だからこそ自分達を助けに来れる者達が居ない事が分かってしまうのだ。
「くそっ! 姫様が我等を庇わなければ! 動ける者達だけで帰る事も考えられたのにっ!!」
17階層は多くが湿地となっていて、リザードマンや様々な水棲魔物が出現するエリアだった。我等はリザードマンの対処に負われている中、麻痺をもたらす麻痺蛙にやられてしまったのだ。
特に問題なのはいち早く気付いたエミリアーナ姫が麻痺蛙の群れに我等を庇う様に立ち向かわれた事だ。当然我等も戦ったのだが結果的に数に圧され、エミリアーナ姫が麻痺の粘液を浴びて大怪我までしてしまったのだ。
その後は我等白銀騎士隊がエミリアーナ姫をお守りしながら何とかリザードマンと麻痺蛙を倒し切って脱出する事が出来た。しかし被害は大きく他にも半数が麻痺や傷を負ってしまったのだ。
「皆、……済まない、な」
「「「姫様!?」」目覚められましたか!」
湿地を抜けた先、岩場の影に寝かされていたエミリアーナは思う様に動かない体をおして何とか口を開いた。
湿地から離れたとは言え安全地帯と言う訳ではない。度々魔物の襲撃を受け続け、肉体的にも精神的にも皆疲れきっていた。
「私の、我が儘に……、巻き込んだ」
「何をっ! 私達は姫様に助けられたのです!!」
「そうです! 皆家の中で立場の無い者達が姫様に引き立てられたのですから。姫様には感謝しかありませんよ!?」
「そう言ってくれると、……救われる」
「「「……」」……姫様」
「全員、帰るのは、無理であろう。――私を含め、……動けない者は残して行け」
「そんな!! 姫様っ!?」
「せめて姫様だけは連れ帰らせて下さい!!」
「そうです! 姫様の居る場所が我等の居場所です!!」
「ならば、……私の剣を、父上に、……頼むデイジー」
「っ! 姫様、……それは卑怯ですよ~……、うう~っ」
エミリアーナの剣を抱き締め泣き腫らす女騎士のデイジーは白銀騎士隊結成当初からの古参のメンバーだ。
下位貴族の女性達で結成された白銀騎士隊の中では伯爵家の次女として地位も高く、元々エミリアーナと幼馴染と言う事もあり副隊長を任されている。
幼い頃からエミリアーナのヤンチャに付き合えるだけあってその実力も確かなモノがあり、仲間の信頼も厚い少女であった。
「ふふっ、これまで……好き勝手やって来たが、……楽しかったな」
「ひっ、姫様っ!」
「残る者達は、……済まない。私と共に、……最後の冒険に、付き合ってくれ」
「「「……はっ……」ぐすっ、姫様、……光栄です!」……私も、です」
皆が涙する中、残留組は寄り添う様に集められ、脱出組は次々とエミリアーナ姫の前に来て跪き、挨拶をしていく。――誰もが分かっていても最後の、とは言わなかった。
そんな重苦しい空気の中、シリアスブレイカーが物凄い速さで接近して来ている事に、まだ誰も気付いていなかった。
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