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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第002話 精神汚染して来るんだけど!?
しおりを挟むまあ、取り敢えず村を探さないとな。
『ちょっと待たんか。あのゴブリン共を倒していかんか』
うわ、面倒臭い事言い出したぞ。頬を膨らませてプンプンしながら俺の目の前を飛び回る精霊剣の精霊。ちょっと可愛い、妹の姿は卑怯じゃないかな?
でも俺は聖人君子じゃないんだよ? 金にならない上に命の危険まである事なんてしたくないぞ?
『むむむ、可愛い顔してなんて奴なのじゃ。……うーむ、仕方がないのう。彼奴らを倒したら村の場所を教えてやるのじゃ。何、洞窟はそんなに深くない。数もそんなにいないから大丈夫なのじゃ』
顔は関係ないだろ。て言うかお前こそなんて奴だよ。人を危険に晒すような事させるなんて精霊剣じゃなくて邪剣じゃないか。
『その前に魔力を回復せんといかんな。もうほとんど空ではないか』
全然聞いてないなコイツ。
ってうわわっ!? この剣勝手に俺の魔力を使って周囲の魔力を吸収してる? その上剣から何か明らかに人には清らか過ぎる魔力が俺の身体に流れ込んで来た!?
うごご、何だゴレ……止め……気持ち悪い……。
吐き気がヤバい。こ、心が無理矢理、清められるっ!
自分じゃなくなるみたいで怖いぃっ!? 誰か助けてぇええーーっ!!
このままじゃ苦味走った草臥れたオッサン傭兵の俺が、心の綺麗なオッサン傭兵になっちゃうじゃんかぁああーーっ!!
『(ちんちくりんな容姿をしとる癖に)お主は自分をどう見とるのじゃ?』
うえーーーーん!
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いぃいいーーっ!! コレやっぱり呪いの邪剣だよぉおおおーーーーっ!!?
『うえーーんて、いや誰が呪いの邪剣なのじゃ! 心が清ければ問題無いのじゃ!!』
ぷんぷん怒る妹精霊を横目に、俺は涙目になりながらゴブリンに向かって駆け出した。このままじゃ頭の中がお花畑になってしまう! 早く倒して終わらせるしかない!
此方に気づく前に不意打ちでゴブリン1匹を斬りつける。
「ぎゃー!」
「「ぎぎー! ぎゃっぎゃっ」」
俺は自分が嫌いだけど、だからって他人に好き勝手作り替えられるなんて嫌なんだよ!?
残りの2匹も突然の襲撃に素手のままだ。1匹を腹を斬り最後の1匹は防御しようとした手ごと肩から胴に斬りつけた。
更に洞窟の中から2匹3匹とゴブリンが出て来る。うぐぐ、まだ剣から清浄な魔力が流れてくる。もうヤダっ! 倒しきるまで魔力を補給するつもりじゃん! 浄化されるゾンビの気分だよ!?
頭の中で泣き言を言いながらも何とか剣からの精神汚染に抵抗していく。ああもうっ! 心がぽかぽかして来る! 本当に気持ち悪いっ!!
『これっ、誰が精神汚染じゃ! 不敬じゃぞ!?』
人生に感謝してしまいそうになりながらゴブリンの相手をしていく。洞窟から出て来たゴブリンは流石に素手ではなく、ボロい剣や木の棒を持って臨戦態勢で向かって来た。
こっちに来るまで待ってられず突っ込んで行って力任せに脳天から叩き斬る。脇から木の棒を持ったゴブリンが来たから潜り込むようにして肘鉄を食らわせてから腹に前蹴りをして突き飛ばす。
「ぎゃっぎゃっぎゃー!」
「「「ぎゃぎゃっぎゃー!!」」」
ゴブリンが囲うように来て死角から攻撃される。コッチは躱し逸らし剣で受けるので精一杯になる。
ごりごり体力が削られる、何とか数を減らさないとジリ貧だよ!?
『お主ダメダメじゃのう。仕方がない、あっちに行くのじゃ』
くっ、会話どころか考える余裕も無くなって言われた通り木々の間を走って行く。て言うか妹の姿で罵って来んなよな! ダメージ倍増するわ!
『少し左じゃ。それ、そこで迎え撃つのじゃ』
振り返って見ると成る程、ゴブリンが縦に1匹ずつ狭い通りを走って来る。1匹ずつなら余裕だ。大きく振りかぶった剣を躱して腹を切り裂き、蹴りつけて後ろから来る奴の盾がわりにしてやる。
そこから後ろの奴の死角に入って首に剣を突き刺していく。後3匹、次は木の棒持ちか、頭に当たらなければ怖くない。魔力を溜めながら両手で剣を握って上から振り下ろし頭蓋骨をかち割る。
「ファイヤーボール!」
残り2匹、手前の奴にファイヤーボールを食らわせてから心臓に剣を突き刺す。最後の1匹が剣を振って来たから跳び避ける。
「ぎゃっぎゃー!」
更に切り掛かって来るのを躱しながら魔力を溜めていく。
「ファイヤーボール!」
「ぐぎゃー!」
顔にファイヤーボールを当て視界を奪って肩から胴に斬りつけてゴブリン共との戦闘を終えた。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
『あの程度の相手に情け無いのう。剣も魔法も立ち回りも全然ダメダメなのじゃ。スタミナも無いし、……コレは難物じゃなぁ』
しみじみ好き勝手言いやがって。でもやっと、――精神汚染を止めたか。
『何が精神汚染じゃ罰当たりがっ!周囲の魔力をそのまま取り込んだらお主が危険なんじゃぞ!?』
分かってんだよそんな事は。周囲の魔力を自分の魔力を使って取り込む魔力回復法は外魔力循環と言われて禁呪扱いになっているからな。
魔力には周りに漂う強い感情が溶け込んでいて、取り込むとその感情に振り回される。戦場でやれば周囲の恐怖や興奮、殺人衝動に振り回される。言わば洗脳に自ら掛かりに行くようなものだ。
近くに魔物がいる場合は更に最悪だ。魔物の魔力は人とは相容れないモノで取り込むと最悪知性を失って魔物のように暴れるだけの化け物になる。
それらに耐え、更に自分の魔力に作り替えて吸収するのにも死ぬ程しんどいんだよな。
『なんじゃ、やった事があるのか?』
魔法が使えるようになった時にな。危険性を分からせる為に魔物を近くに置いてちょっとだけやらされるんだよ。
『危険な事をさせるのう』
そこら辺は配慮してるだろ。まあ二度とやりたくないけど。
『当たり前なのじゃ』
て言うかお前こそ俺の魔力使って変な魔力流し込んできただろ! スッゲー気持ち悪かったんだからな!?
『何を言うか、精霊剣に相応しい綺麗な魔力であろうが』
綺麗過ぎるわ! 危うく日々生きている事に感謝しそうになったぞ!!
『良い事ではないか?』
そんなの俺じゃない! 20年近くソロで傭兵なんてやってる奴がまともな訳ないだろ。何が感謝だ、ふざけんなこの邪剣が。
『我は精霊剣だと言っておろうが!!』
はっ、妹の姿で惑わしておかしな魔力で人を洗脳して来る奴なんて邪剣で充分だ。
『そんなにキツかったなら剣を手離せば良かったのじゃ!』プンプン!
「あっ……」
『…………まさか考えつかなかったのか?』
「………………」
『――お主アホじゃのう』
グハッ!!
剣に馬鹿にされた。いや、しかしコレは流石に仕方ない。何で俺は剣を手放さなかったんだ??
『ふぅむ、しかし善良な人間なら心地よいハズなんじゃがのう?』
俺は善良なんかじゃないんだよ。わざわざコッチから悪行を為したりはしないけど身の危険を感じたら人間相手でも容赦なんてしないしな。
その後倒したゴブリンを集めて燃やした。疫病やゾンビ対策だ。洞窟は浅く、他に敵がいないのは精霊剣の能力で分かっていたからゆっくりやれた。お前も少しは役に立つな。
『あの程度の洞窟なら我の索敵の範囲内じゃ。わざわざ奥まで行く必要もないのじゃ』
臭いから入らなくて済んだのは助かったな。
『しかし意外じゃのう。魔物の処理に洞窟の中まで気にするとは、お主の今までの言動なら捨て置きそうな気がするのじゃが』
ふん、倒す前なら逃げてるさ。金にならないし危険だしな。けどゴブリンが増えると狼や猪みたいな毛皮も肉も有用な魔物が狩り尽くされて傭兵にとっても美味しくないんだよ。
『なるほど、結局自分の為か。腑に落ちたのじゃ』
もう良いだろ。さっさと村に行くぞ。
『うむ』
っと、あれ? ……鞘は?
『無いぞ? 我はこの身に宿っておる故、鞘はお主が用意すると良いのじゃ』
何で偉そうなんだよ。――て言うかそもそも何であんな所に捨てられてたんだ?
『捨てられとりゃせんわ! 恐らく使い手たるお主と結び付くようなっておったんじゃろう』
言っておくが俺は全く剣士としての才能は無いからな? 言っていて悲しくなるけど子供みたいな華奢な体で力も無いし。……だから選ばれるような人間じゃないんだよ。
『我の求める使い手とは悪人で無ければ充分なのじゃ。勇者や英雄である必要等無いのじゃ。だからお主もそんなに己れを蔑むな』
…………うるさい。
そこから30分程歩くと道に出て、更に10分程歩くと村が見えてきた。
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