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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第001話 拾った精霊剣が
しおりを挟む「――ぐずっ……、ひっく、……うう」
泣いて無い。――大丈夫。雨が止んだのに水が頬をポロポロ流れ落ちてるけど、誰も見てないから泣いてない。
森の中、雨が止んだばかりの真冬の2月、泥だらけになった呆然と立ちすくんでいる。
俺の名はアイリス、絶賛迷子中のソロの傭兵だ。
薬草の採取依頼で森に来たんだけど連日の雨で崖崩れにあって方向が分からなくなってしまったんだ。
はぁ、良い歳して迷子とか意味分かんない。武器も落として見つかんないし。まだ2月でクソ寒いってのにどうすんのコレ?
――もう泣きそうだよ?
取り敢えず、……水場を探すしかない、かな?
でも魔物に会ったらなあ。この辺りの魔物は狼系が多いから見つかったら逃げられないんだよな。
悩みながらも目から零れた水を手で拭って歩き出す事にした。
「はあ~……」
ついてない、こんなんばっかだよ俺の人生……ぐす。
俺はもう35歳のおっさんだ。それが何でソロで傭兵なんてやってるかって言うと見た目に問題があるからだ。130cmの子供みたいな身長と華奢な体つき、男女供に何度襲われ掛けた事か。
お陰でフードを深く被って生活をしないと落ち着かなくなってしまった。
今は若い時に比べればマシになって来たけど逆にコッチが人間不信になってソロのまま此処まで来てしまったのだ。傭兵業はチーム前提の仕事だからソロじゃ碌な仕事が無くてまともな稼ぎにならないのに。
――まあ、稼ぎが悪いのは腕が無いのも大きな理由だけど。
「……はぁあ」
コツコツ小銭を貯めても武器防具が壊れたり怪我すれば簡単にお金が吹っ飛んでいく。その度に自分の人生が無価値に感じて絶望してしまう。俺は一体何処で間違えたんだろうか。
――まあ、例え過去に戻ったとしても同じ様な人生を繰り返すんだろうけどな。俺のポテンシャルなんてそんなモンだ。
クタクタになりながらも歩き続けていると岩山の近くに一振りの剣が落ちているのを見つけた。幸運だな。こんな所に落ちてるって事は持ち主は魔物に襲われて落としたか殺されたかだろう。この際贅沢は言わない、ボロでも最低限帰れるまで壊れなければ良い。
辺りを警戒しながら剣の方に歩いて行くと岩山の一部が洞窟になっていて、側にゴブリンが3匹いるのを見つけてしまった。ゴブリンの巣窟になってるのか?
――不味いな。洞窟に隠れていて今まで誰も気づかなかったのかも知れない。
俺はゴブリンにバレない様に注意しながら慎重に歩いて行き、やっとの思いで剣を手にした。丸腰で何時間も歩いた緊張感から剣を手にした事でホッと息をつく。
こんな近くにあったらゴブリンも剣に気づかないハズないよな。ゴブリンが持つにはちょっと大きいけど側に捨てて置く意味が分からない。
《それは我が精霊剣だからなのじゃ》
「(ひゃうっ!?)」
頭の中に声が響いてきた! 余りの驚きに体がビクッと震えて声が出そうになる。慌てて口を押さえて周囲を見渡し、ゴブリン達も何も気づいていないのを確認してから剣を見る。
《やっと精霊剣の使い手が現れたと思ったら随分と華奢な男じゃのう。顔も可愛いしオナゴかと思うたぞ》
「精霊……剣?」
頭の中にジジイ口調の幼い女の声が聞こえて来た。けど見た目はただの打ち捨てられた小汚い剣だ。容姿については散々言われてるから流す。
《無礼な、使い手に語りかける事が出来る剣がただの剣の筈ある訳無いのじゃ》
頭に響くんだよ五月蝿いな。くそっ、変な剣を拾ってしまった。けど他に武器も無いし取り敢えず町に戻るまではコレで我慢するしかないか。
いやそうか、町でコレ売れば新しい剣を手に入れられるかな?
《何と罰当たりな! この精霊剣を売り払うと抜かすかっ!?》
いや、だってお前五月蝿いし汚いじゃん。
《ふん、ちょっと待っておれ……》
うおっ!? 剣から半透明の幼い少女が出て来た、……って言うか。
「ねぇね?」
ねぇねと言うのは俺の妹のアネモネのあだ名だ。俺達はとても仲が良くて家族でもねぇねとあだ名で呼んでいたのは俺だけだった。ねぇねからそう呼んでって言われたんだよな、ふふん。
『どうなのじゃ? お主の潜在意識から貰った姿なのじゃ。これなら念話じゃなくても声が届くのじゃ』ふんす!
手のひらサイズで胸を張ってふんぞり変える10歳頃の妹の姿をした何かがいた。半透明の体に蝶々のような羽をつけた姿は絵本に出て来る精霊そのものなんだけど。
『我は元々精霊なのじゃ。精霊には決まった姿形は無いからの、お主のイメージを借りたのじゃ』
「いや、だから……何で妹……?」
『それはお主がシスコンじゃからかの。我の所為では無いのじゃ』
ねぇねはそんな事言わないよ?
『シスコンは否定せんのか、まあそんな事より我に魔力を込めよ』
いやシスコンじゃないし。もう村を出て20年会ってないんだぞ?
『それで幼子の姿なのじゃな。シスコンだけじゃなくロリコンも入っておるのかと思ってたのじゃ』
そんな知識どこから……ってもう良いや。そう言えば魔法剣とかって魔力を通して使うって聞いた事があるな。コレもそうなのか?
『そんなガラクタ共と一緒にするでないわ! まあ良い、早く魔力を込めるのじゃ!』
ったく、何でそんな偉そうなんだよ。ぶつぶつ言いながらも魔力を流していく。
『足らんぞ。もっと多く一気に流すのじゃ』
くっ、マジかよ。俺魔力はそんなに無いんだぞ。全身から魔力を腹に集めていって、纏めて剣に流し込んでいく。
『おっ、ヨシ。……ふんっ』
殆どの魔力を消費して座り込みながら剣を見ていると、剣が僅かに震えて仄かな光を放ち、汚れが落ちて太陽のような黄色い刀身を見せていた。
『どうよ、コレでも汚いと申すか?』ドヤァ
「いや……」
まあ汚くは無い、……な。ドヤ顔の妹精霊、ちょっと可愛いと思ってしまうのも仕方ないだろう。
『なんじゃその微妙な反応は』
いや、だって魔法剣ってもっと火とか風とか出すイメージあるから、地味かなって。――まあ魔力を通せば手入れ要らずってのは凄いけど。剣は血脂ですぐ切れなくなるからな。
『精霊剣とまで言われている我がそんなチャチな能力1つのハズがないのじゃ!』プンプン!
おお、――他に何が出来るんだ?
『魔力を通せばその分切れ味が強化されるのじゃ。他にも魔法の補助なども出来るがその辺はお主の素質次第じゃな』
うーん。有用なのは分かったけど、俺は魔力少ないんだよなぁ。手の平サイズのファイヤーボール5発も撃てば空になるし。まあ牽制には使えるし、これまでソロでやってこれたのはその魔法が使えたからなんだけど。
『そこら辺は相手を斬りつける瞬間だけ魔力を通すようにすれば良いのじゃ! 魔力を増やすのも我に任せておくのじゃ!』
はあ? 魔力を増やす?? そんな事が出来るのかよ!?
『そう簡単には増えんがの。お主の適正もあるじゃろうし、当面は先に言ったように瞬間瞬間で使うようにするのじゃ』
ううん、まあそりゃそうか。けど瞬間的にってそんな器用な事出来るかよ。ファイヤーボール撃つのも8秒掛かるのに。
『それもまた修行なのじゃ』
「はあ」
――年齢的には引退間近なんだけど?
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