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第6章 びくびくお城の招待と新たな仲間?
第024話 精霊契約
しおりを挟むリリィは私の体を通して回復魔法を使い、1人2人と重傷者達を治療していきます。私も邪魔をしない様にしながらなるべく補助をしていきます。
後は軽傷者ぐらいとなり魔剣の方を見ると魔剣持ちの兵士に熊獣人の方達は苦戦している様でした。
『如何に邪素に慣れているとは言え所詮は子供じゃ。殺すだけなら兎も角、殺さずに取り押さえるとなるとあの熊獣人達には荷が重かろう』
「ちいっ! コイツ只の兵士じゃねえのかよ!! 剣を手放さねえぞ!?」
「魔剣に魅了されてるみたい! 執着が感じられるわ!!」
「伝説級の魔剣だからな!」
邪素の影響か3人とも顔色が悪くなっていますね。兵士の方は最早正気とは思えません。軽傷者の方々も気になりますが先に魔剣をどうにかしなければならない様です。
「ちょっ!? 愛し子ちゃん!??」
「こっちに来ちゃ駄目だ! 危ねえぞ!?」
3人が近付く私を見て止めに入りますが、リリィの魔力を更に循環させて彼等の周囲に放ち邪素を聖素に塗り替えていきます。
周囲が清廉な空気に満たされていきます。ああ、やはり精霊神様の御力は素晴らしいです。慈愛に満ちたその御力に私も自然と笑みがこぼれてしまいます。
「これは! 愛し子ちゃんが!?」
「おい、集中しろ! 戦闘中だぞ!!」
「ぐがああぁぁああ!!」
「「「!!?」」何だ!?」
私とリリィの浄化の魔力を浴びた兵士が苦しそうに魔剣を持ったまま崩れ落ちました。熊獣人のお一人が魔剣を蹴り飛ばして兵士から魔剣を引き剥がしました。
「よし! 魔剣に近付くなよ!!」
「愛し子ちゃん大じょっ!?」
何故か女性の熊獣人の方が此方を見て驚いておりますが、それよりもこの兵士ですね。邪素に当てられ過ぎたのか呼吸も浅く顔色が悪過ぎです。
精霊剣の聖素を送り込み更に回復魔法を掛けていきます。徐々に顔色も良くなり呼吸も深く落ち着いて来ました。
良かったです。素晴らしい力です。流石は精霊神様の御力です。そう思い感謝の祈りを捧げると何だか世界が今までよりも色付いて見えて来ます。
さて、無事魔剣を兵士から取り上げられた様ですが、魔剣からは未だ濃密な邪素が放出され続けています。周囲にリリィの魔力を放出するのを抑え、魔剣に集中させましょう。
床に転がって誰も近付けない、ポツンと打ち捨てられているかの様な魔剣。邪素を放出しながらも寂しげに感じて思わず近付いて魔剣を抱き締めてしまいました。
「おっ! おいおい!!」
「ちょっと大丈夫なの愛し子ちゃん!?」
「おいお前等も近付くな! 俺等じゃ……」
リリィの能力を阻害しない様にして来ましたがそれだけでは足りない様です。そこでリリィの魔力を私自身でも引き出して魔剣に注いでいきます。
ですがこの魔剣を浄化するにはもっともっと力が必要な様です。
『んあっ!?』
目を閉じてリリィの清浄な魔力を引き出して魔剣に注いでいきます。私の魔力とリリィの魔力が一体化していく様です。そのままリリィの、私の魔力を注でいきます。
『ぬあぁっ、ちょっ!?リリィの力を超えてるのじゃ!怖い怖いちょっと待つのじゃああああーーーー!??』
ああ、この感覚は、治癒院で赤ちゃんを癒した時の……そう思った瞬間、神様が寄り添って来たかのような感覚を再び感じました。
『ふあぁぁああああーーーーーー!?』
ああ、この万能感は、私は今、間違いなく神の思いを行使しています。その心地よい万能感に身を委ね言葉を紡いでいきます。
「精霊神の、……御心のままに」
何と素晴らしい事でしょう。
「神の奇跡を」
私は再び、神を身近に感じる事が出来ているのです。
「賜りましょう」
私の全てが愛で満たされていく……、この気持ちを皆に教えてあげたい。こんなにも世界は愛の輝きで満ちていると言う事を。誰もが分かる程の神聖で濃密な魔力が周囲にまで迸っていき、広い城の大広間を満たしていきます。
そうして魔剣の浄化をしていると、何となく魔剣から意思の様なモノを感じました。
その何かが邪素を吐き出している様な、でもそれだけではない様な。これは、そう、魔剣から命の息吹きを感じます。
赤ちゃんを創り治した時の様に、この何かを浄化して本来の形に創り治していきましょう。
しかしこの者は元々肉体を持っていません。けど大丈夫、精霊神様の導きによって私の魔力で存在を形創って行けば良いのです。そうしているとこの子はリリィと同じく剣に宿っている精霊の様な存在だと分かって来ました。
リリィと同じ精霊ですし、このまま浄化して消し去るのは忍びないですね。精霊神様の御力をお借りしてリリィと同じ様な精霊に昇華させてみましょう。
人の正の感情は聖素の要素を、人の負の感情は邪素の要素を多く含んでいる。その存在は邪精霊と呼ばれる精霊で、聖素から生まれる精霊とは違い邪素によって生まれた精霊であった。
特にこの邪精霊はたまたま宿った魔武器が伝説級の魔剣であった為、広範囲から邪素を膨大な量取り込める様になり、周囲の負の感情に引っ張られ手にする人間をより凶悪にしていった。
その邪精霊は取り込んだ邪素で最下級精霊だった存在から次第に希薄ながら知性を持ち下級精霊へと成った。
そしてその経験から更に邪素を取り込もうと言う本能が芽生え、魔剣の所持者に邪素を増やす様に負の感情を増幅させていたのだった。
この邪精霊は希薄な知性ながらアイリスの聖素に包まれ不思議な感情を抱いていた。
普段周囲の魔力から邪素だけを吸収する。その時に触れてしまう聖素は不快な物だけどアイリスの聖素は違う。不快どころか邪素よりも心地良いのだ。邪精霊は不可解に思いながらもこの心地良さに抗えず受け入れていった。
そしてアイリスの聖素によって自身の存在が邪素から聖素に創り変えられていく。その過程でアイリスを通して精霊神の力によって精霊としての格が上がっていった。
下級精霊から中級精霊にまで駆け上がっていく事で存在がより確かなモノへと押し上げられ、人並み以上の知性、感情も得られてしまった。
中級精霊の上には上級精霊、大精霊、更に最上位の精霊神しかいない。その精霊神によって中級精霊にまで押し上げられたのだ。
邪精霊はその存在すら知り得なかった最上位の存在から救い上げられた事に大きな喜びと困惑を感じていた。
だが自身は元邪精霊ながらその存在を許された。精霊神にとっては精霊も邪精霊も変わりなく慈愛の対象なのかも知れない。
元邪精霊は精霊神様に最上位の感謝を、そしてもう1人の恩人にはこれからその恩を返していこう。
そう思い、進化した自身をアイリスの前にその姿を現した。
その瞬間魔剣が光を帯びた様に輝き、その光が収まるとリリィに良く似た精霊が目の前に現れて、魔剣はアイリスか持つ精霊剣と同じ形に変貌していた。
「何だ、……あれは……」
カントラス王国の国王ガントナードは子供達と共にさっさと避難するべきと考えていたが、精霊王国の面々が残っていた為、逃げる訳にもいかずとどまっていた。
アイリスと共に第3王子レグラントスと第2王女アルトレイシアが騒動の渦中に飛び込んで行ってしまった時は何をやっているのだと怒鳴りたくなったが、続きアイリスが致命傷を負っていた様に見えた兵士達を次々と回復させてしまったのを見て目を見開いて驚いた。
(まさか…………本当に巫女なのか? いや、アレは精霊神社の中でしか能力を発揮出来ない筈……、それとも欺瞞情報に踊らされていた?)
次々と起こされる奇跡を前に宰相のレストッドも顎が外れるのではないかと言う位に大口を開けておる。くっ、何と言う顔をしているのだコヤツは、笑ってしまうではないか! いかん、時と場合を考えねば……?
そこでふと周りを見渡すと淀んだ重苦しい空気が弛んでいるのに気付いた。恐怖に駆られていた者達も邪素に苦しめられていた者達も、皆あの子供に目を奪われていた。
しかしこれをどう決着を着ければ良いのだ。教王国商業王国の連中は良い。気が重いが此方が黙っていても後で自分から何かしら請求してくるだろうしな。
しかし精霊王国には事前に魔剣の危険性を訴えられていたのにこの醜態、更にその解決までさせてしまった。気が重いどころではないぞ。
「リリィが増えた」ボソッ
『違うのじゃ! 髪色が違うのじゃ! こやつはリリィじゃないのじゃ!!』
聖素の悪影響が未だ身体に残っている中リリィが五月蝿い。でも確かにリリィとは髪色が違うな。リリィは俺と同じ桃色だけどコイツは淡い紫色だ。
『主、……名を、貰いたい』
あるじ??
『くっ、仕方あるまい。お主と精霊神様によって存在の格を上げられたのじゃ。お主が主になるべきであろうな』
何故話しが勝手に進められているのだろうか。まあ俺が主の主従関係なら別に良いか。しかし名前な。リリィは俺の子供の頃のあだ名、リリから付けたし妹のねぇねから付けるか。
…………。
……………………。
ねぇねはねぇねと呼んでいたけど他の皆んなはアネモネからネネって呼んでたな。…………ネネェで良いかな?
『ん、我ネネェ、よろしく主』コクリ
そう言って笑顔で俺の周りをひらひらと飛び回る姿からはさっき迄の邪素を振り撒いていた凶悪さは感じない。じっくりネネェを見ているとねぇねの幼い頃を思い出して和むなあ。
『リリィの姿を見ても和むじゃろ?』
自信満々で胸を張るリリィ。そう言えばねぇねは余り笑ったりしなかったからな。残念ながらリリィの方がねぇねに似ている気がする。
『残念とはどう言う意味なのじゃ?(妹なのに兄であるコヤツの世話で大変じゃったのじゃろうな)』
『…………主』
リリィとネネェから可哀想な目で見られるアイリス。精霊神の加護とアイリスとの繋がりによってネネェもリリィと同程度アイリスの情報を共有していたのだ。
アイリスはそんな視線に気付きもせずにビアンカの下へと向かって行った。
「そうか、……男の子なのか」
初めは信じて下さいませんでしたが何とかレグラントスお兄様にアイリス様が男の子だと伝える事が出来ました。
レグラントスお兄様、気落ちしてないでしょうか。女神の様に思っていたお相手が男性だったなんて。
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「まあ、あれだけ可愛いければ構わないか」
「……え?」
「アルトレイシアも、あの神聖を帯びた尊い姿を見れば性差なんて些細な事だと思わない?」
「…………え?」
「ああ、アルトレイシアがあの子にアピールするのは止めないよ? ライバルになるけど応援はするからね?」
「………………え?」
爽やかな笑顔で何を言っているのでしょうかこの人は……。
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