ほんとうに君が好き。

カスミソウ

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色付く日常

気がかり

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「デートしようとは言ったものの、どこ行こうかな~」

パラパラと雑誌音をめくる音が風子の部屋に響き渡る。寝転びながら、昨日買った『デートスポット特集』に目を通していた。

やっぱ、映画デートか…?なら、早く席取っとくべきだよね。

思い立ち直ぐにスマホで上映中の映画一覧を開く。

恋愛物、感動物、サスペンス系、コミカル系…。う~ん、やっぱりミステリーかな、相原さんと行くとなると…。

ミステリーの中でも幾つか種類があり、風子はどれが面白いかなんて分からなかった。

そう言えば、私、相原さんの事あんまり知らないなぁ…。

未来は自己主張の激しい女の子では無い。彼女である風子にさえ、必要以上に自分の事を話すことは少ない。
風子は改めて、自分の持っている未来の情報が薄いことに気づいた。

こう言うのって本人に聞くのもいいけど、周りに聞いた方がサプライズ感合って良いよな!

……ん?

「そういや相原さんが学校で誰かと仲良くしてるの見た事ないんじゃね?」

……いや、私が知らないだけでクラブとかに居るかもだし!さすがにぼっちって決めつけんのは良くない!うん!!

…次会ったら聞いてみるのもアリかな?

まあ、とりあえず映画は口コミが良いやつにしとこっ!



「小川さん、こんにちは」
「あ、相原さんやっほー!」

昼頃、二人はショッピングモールの前で落ち合った。今度は時間ちょうどに二人とも待ち合わせ場所に着いたので、少し可笑しくて笑い合った。

ねずみ色のセーターに深い緑のスカート。やはり風子は未来のコーデが好きだ。いつも未来の私服姿を見ると、安心感を覚える。

「言われた通り、ご飯は済ませてきたわ」
「うん、私も!映画終わったらどこかカフェでも入ろっか?」
「ええ。…それと、今日の予定、全部任せてしまってごめんなさい」
「いいよいいよー!あ、じゃあ次のデートは相原さんに任せちゃおっかなぁー」
「…ふふ、ええ。構わないわ」

自信はないけれど、と未来ははにかんだ。キュゥゥと風子の心臓が締め付けられる。

なんで私の彼女はこんなに可愛いんだろう…?ほんと、やばい…っ。

風子は、そっと未来の手の平に触れた。未来が一瞬ビクッと震える。風子は慌てて手を離した。気恥しさが抑えられず、顔をパッと背ける。

「……手、繋ぎたいの?」

……っ!

視線を未来に戻すと、透き通ったビー玉のような瞳が風子を見つめていた。だんだんと近寄ってくるその瞳は、まじまじと揺るぎない力で風子の姿を捉えてくる。

逃げ場が無くなった風子はどうしていいか分からず、あたふたとうろたえるしか無かった。その姿を見て未来の目尻が微かに垂れた。

「すぐに手は出てくるのに、ちょっとからかったら弱いんだから…」

小さな声でそう呟いた未来の手が、スルスルっと風子の腕に絡みつく。

「…っ!?」
「……こんな風に、触れたかったんでしょ?」

い、いや…。そうですけども…!!なんか他の人に見られて急に恥ずかしくなってきたし…。

風子は周りの目が気になり、早くその場から逃げ出したくなった。風子はそっと、未来の腕を外した。

「……は、早く行こっ!映画始まっちゃうかもだし…!」
「……。そうね」

未来はふぅっとつまらなさそうな顔をして、風子と並んで歩き出した。

相原さんって、こういう事には積極的だよね…。私の事悪く言えないじゃん!

二人はそうこうしながらも、劇場へ足を運び、ミステリー映画を楽しんだ。



「いやぁ、最後ヤバかったね!?私めちゃめちゃ騙されてた!」
「ええ。ストーリーの覆し方に圧倒されたわ。とても、面白かった」

二人は近くのカフェで先程見た映画の感想を述べあっていた。

良かった、相原さん満足してくれた!

ムフフと気味の悪い笑い方をした風子に未来は不審感を感じたようだった。

「…何かしら?」
「え?いや。映画喜んでもらえてよかったなって」
「それだけ?ええ、楽しかったわ」

未来はそのままカフェオレを口に運ぶ。風子はその姿をじーっと見つめていた。そして、ある疑問を抱いていたことに気づいた。

「そう言えば、相原さん。クラブとか生徒会に仲良い人居るの?」
「……え?」

未来の眉が少し引きつった。風子はそれに気づかず、そのまま話を続ける。

「んー、なんか相原さんと親しく話してる人って見たことないなーって思って。まあ、相原さん凄いから色んな人から憧れられてんなーとは感じるんだけど!」

未来はしばらく黙った。やっと風子も未来の異変に気づく。

……あれ、聞いちゃダメなやつだったのか…?

その空間にとてつもない緊張感を感じる。風子はそろりと未来の表情を伺おうとする。

しかし、それより先に未来が口を開けた。

「それは…、言わなきゃいけないこと、なの?」
「…え?」

未来の顔がどんどん赤くなっていく。

やば、これ完全にダメなやつだ…!

「ご、ごめん!嫌だったら言わなくていいよ!?全然!!」

「……っ。うぇっ、…」

嗚咽が聞こえた。未来の頬からはらはらと涙が流れ伝う。白いテーブルクロスの上に雫が零れ落ちた。

「……っ、相原さん、ごめ…」
「うぅっ、ぇっ……」

風子の声も掠れて上手く出せなかった。

もう相原さんを泣かせないって、思ってたのに…!なんで、私は…!!

風子はしばらく考えてから、黙って立ち上がり、一緒に店を出るよう促した。未来は黙って顔を手で覆い隠しながら、風子の手に引かれついて行く。
二人は黙って帰りの道を進んだ。

相原さんが泣いた理由は分からない。けど、私は相原さんを泣かせた。
それがどんな理由でも、私に責任があるんだ。

まだ泣き止まない未来の背中を優しくさする。未来の背中は小刻みに震えていた。

きっと、辛い過去があったんだろうなぁ…。

「ね、相原さん。何も返事しなくていいからそのまま聞いて?」

風子は未来に優しく語りかけるように話した。

「私、相原さんの事まだ全然知らない。だから、もっともっと知りたいんだ!」
「だから、嬉しかったことでも、悲しかったことでも、嫌だったことでも、全部二人で共有したい、お互いもっと分かりあっていたい」

未来の泣く声が途切れた。呼吸を整えながら風子の話に耳を傾ける。

「もう、あの時みたいに、意思疎通出来てなくて、避けられるのはごめんだよ…」

話していて、風子の目にも涙の粒が溢れた。未来はそれを見て、はっと息を飲む。

「……、ええ。そう、よね…」

未来は風子の涙を自分の袖で拭いながら、ごめんね、と囁いた。

「また、心の準備が出来たら…、ちゃんと話すわ。私も、…もう、あんな思いはしたくない」

未来の言葉に風子はにっこりと笑った。
少しだけ笑みを浮かべた未来の額に、風子はコツンと自分の額をぶつけた。

お互いに泣きじゃくった顔を見せ合いながら、くすっと笑い合った。

また相原さんの心の深淵を、少しだけ、見れた気がした。


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