柳枝✖朱希

高梨美波

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2人の出会いと現在。それから〜未来の話

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【まえがき】
都内の高校に通う
2年と3年の少年
相楽朱希(さがら あき)と
渋澤柳枝(しぶさわ りゅうし)は
順調に交際を続けていた。
朱希視点で、綴っていく

↓ここから本編↓

初めて柳ちゃんに会ったのは
入学式の日だった。

式の後、たまたま廊下で
すれ違って…上履きの色で
先輩だって、すぐに分かった

僕より、背が高くて…
男らしさが滲み出てて…
完全に僕の一目惚れだった。

僕は暫く友達も出来なくて
いつも1人でご飯を食べていた
柳ちゃんは、いつも
そんな僕を気にかけて
一緒に食べてくれたんだ

『ここ、今日も良い?
一緒に食べよ』

『あ…渋澤先輩。はい』

この頃はまだお互い
名字しか知らなくて

それでも柳ちゃんは
食べながら勉強の事とか
色んな話をしてくれた

僕より、背が高くて…
男らしさが滲み出てて…
それで頭も良くて…

僕は柳ちゃんを、どんどん
好きになっていった。 

でも極めつけは…
入学式から、半年が経った頃

家に帰ってもまだ母さん
帰ってなくて、僕はコンビニに
買い物に出かけたんだ

そしたら前から歩いてきた
オジサンとぶつかって…

『あ、すいません』

咄嗟に謝ったけど、オジサンは
何も言わずに行っちゃって

少しして持ってきた
財布がないことに気づいたんだ。
「盗られた」と気づいた僕は…

『泥棒~!』

なんて、叫んでた
走って逃げるオジサンの前に
柳ちゃんが見えて…

気づいたら
オジサンをしっかり
捕まえてくれてた

スリ『離しやがれ…!このクソガキ…!』

『確かに俺はガキだよ~
まだ高校生だもん。けどさ
あんな、いたいけな子供から
財布を盗った、あなたに比べたら
ガキかどうかはともかく
どっちが、クソですかねぇ~
今あの子から盗った財布
直ぐにオレに返してくれたら
このまま逃がしてあげても良いけど…
どうする?』

そう話す柳ちゃんは
口元は笑ってたけど
目は全然…
笑っていなかった。

はじめのうちは
いきがって喚いてた
オジサンも
すっかり変わって…

スリ『わ、分かった!返す!
だから解放してくれ』

『はーい』 

返事をして柳ちゃんが
片腕だけ解放すると
オジサンは
僕の財布を渡して…

『はい、どーもー。』

そう言った柳ちゃんが手を離すと
オジサンは黙って逃げてしまった
柳ちゃんは、僕に近づいて…

『はい、どうぞ~』と

手渡しで返してくれた
ただ、手が触れただけなのに
ドキドキした僕は反応が
少し遅れて…

『…あっ…!
ありがとうございます!
先輩!』

それでも柳ちゃんは
笑顔だった

『どー致しまして
カワイイ後輩が泥棒されて
困ってたら
放っておけないからねぇ
買い物?』

『はい、家…母子家庭で
母さん仕事でいなくて…』

『そうだったんだ…なんか
聞いちゃって、ごめんね』

『いえ、ちっちゃい頃からなんで
慣れてるんで大丈夫です』

『そっかぁ
じゃ、気をつけなよ』

少し話した後、そう言って
柳ちゃんは帰って行った
僕はと言うと…

この瞬間に、恋に落ちた。

僕より、背が高くて…
男らしさが滲み出てて…
頭も良くて、強くて
カッコ良い…
そんな先輩…柳ちゃんに。
それから僕は次の日に
今までで1番の
勇気を絞り出して…

2年生の廊下にいた

『あれ、相楽?
どうしたの?』

『あ、あの…先輩…
今お話…良いですか?』

『いいけど…
ここでも良い?』

『あ、えっと…』

僕が言い淀んでると…

『ダメそうだね
分かった、行こう』

歩き出した柳ちゃんに着いて

僕たちは校舎裏に移動した

『話って、何?』

『あの、先輩
昨日は本当に
ありがとうございました!』

『あー、あれね
たまたまオレが通って
ラッキーだったねぇ~』

『はい!先輩いなかったら
僕…きっと何も出来なくて…』

『まんまと逃げられてたもんねぇ
…それで?まさか
終わりじゃないよね?』

僕はただ頷いて
目をつぶり
後半は、勢いに乗せて…

『あの…えっと…それで…えと
あ、僕朱希って言います
相楽…朱希。えと…
ごめんなさい!僕…先輩のこと
好きになっちゃいました!』

言っちゃった…!
僕、今…先輩に…

男に告白…先輩今

どんな顔してるんだろ…
見れない

きっと、ドン引きされて…
目開けたら、誰もいないかも…

そんなことを思いながら

目を開けられずにいた僕の頭に

先輩の大きな手が乗って…

『…!』

おそるおそる目を開けると
柳ちゃんは笑顔だった

『それで?君はどうしたいの?
もしかして、オレと
付き合いたいの?』

僕は一気に赤面し…

『あ…あの、えっと…はい!
って、男に、はいとか言われても
先輩困りますよね!?だって
普通に女の子が好きですよね?あの
今のは忘れて…』

『いいよ』

『え?』話の途中で
柳ちゃんは
僕に、良い返事をくれた

『だからさ、いいよ
本当にオレで良いなら
付き合おっか。女の子ねぇ~
確かに中には少し魅力的な
子もいるけどオレの中で
シックリ来るのがいなくてね
でも君は…カワイイから。
もちろん選択権は、君にあるよ』

『いいんですか?僕も…
男、ですよ?一応』

柳ちゃんは、少しだけ
びっくりしたような顔をして…

『君は今更何を言ってるの?
オレも男で君も男
それでも、君はオレに
さっき告ったよね。違う?』

『ち、違いません…はい
あの…よろしくお願いします…
先輩』

柳ちゃんは笑顔になって…

『ん、オッケー♪じゃあ、晴れて
両想いになったわけだし、今から
その敬語とか、先輩呼び禁止ね』

『え、でも…』

『…朱希。でもじゃない
先輩後輩ったってオレら歳
1つしか違わないんだし…それに
オレのことは好きに呼んでいいよ』

『えっと…じ、じゃあ…
柳…ちゃん…って、あの
呼んでも…』

『柳ちゃんかぁ~、いいよ
最初好きに呼んで良いって
言ったのオレだし
結構気に入った♪』

と言って琉ちゃんは

頭を撫でてくれた

『あ、ありがとう…柳ちゃん…』

この時初めて、今の呼び方が

定着して、僕はまだ遠慮がち。

それから付き合って…

はじめて、は1ヶ月くらいしてから

だったかな…

その日は

柳ちゃんの部屋に

初めて誘われて

2人でベッドに座って

色々話してたら急に

柳ちゃんの唇が近づいてきて…

僕の唇を覆ったんだ。

すごくビックリしたけど
全然嫌じゃなかった。
僕は目を瞑った

『…ごめんね。朱希の初めて
オレのにしちゃったけど
オレだって初めてだし
朱希だから、だよ』

離れて話す柳ちゃんに
僕は嬉し涙を浮かべて…

『柳ちゃん…うん。あの…
ねぇ…もう1回…』

すると柳ちゃんは急に

僕をベッドに押し倒して…

2回目のキス。

僕はまた目を瞑った

『…好き…柳ちゃん』

今なら何度だって言える

柳ちゃんが、好き…

僕を抱きしめて

『オレだって好きだよ、朱希』

顔も、声も、体も…キスも
僕は柳ちゃんの
全てが好きで…

『僕に、もっと柳ちゃんのこと
色々教えて。知りたい』

『良いよ。朱希も色々オレに
教えること。OK?』

『うん…』

僕たちは、そのまま暫く

くっついていた。

それから、月日は流れ…

ある夜、自分の部屋で柳ちゃんが

急に僕の服を捲りあげて…

胸板にキスをした

『…んぁ…あ』

僕がつい喘いじゃったのが

面白かったのか、柳ちゃんは
また胸にキスをして

『ふーん。朱希は
この辺が好きなんだ
またまた、新発見♪』と

笑っていた

僕の性癖が、バレた瞬間だった

『り…柳ちゃんだから…だよ』

『どーだかねぇ、他の男にも
この辺にキスされたら
イチコロかも?じゃあ次は
逆に嫌いなとこ探索ゲーム♪』

何故か急に

ノリノリになった柳ちゃんは

僕のおでこや
ほっぺ、鼻先に
キスしたと思ったら…

急に耳を咥えてきて…

『∑ひゃあ!!』素っ頓狂な

声が出て、僕は…

気恥ずかしくて

そっぽ向いちゃって

『っ//いや…耳は…嫌…
ぜったい…らめ(だめ)…』

最悪だ、声裏返った
これじゃ柳ちゃん
ますます面白がる…

『ダメって言われると
やりたくなるのは人の…』

僕は気づけば

『ダメっ!耳は、僕の耳は
本当にダメ!それ以上…
耳に何かしたら…
柳ちゃん…嫌いになるから…』

なんて、涙目で怒ってた

それで柳ちゃんは
諦めたみたいで、離れて

『分かったよ、ごめん』と言って

今度は乳首を咥えた

『あぅ…』喘ぐ僕の息を

柳ちゃんはキスで止めた

『…んぅ(息が…出来ない…)』

『朱希、良い子だから
静かにして。親に知られたら
困るでしょ、お互い』

たしかにそれは困る…
これは、家族でも…
他人に知られちゃいけない

“ヒミツの恋…”

目の前の柳ちゃんの笑顔は
優しくて、カッコ良い…

『…うん』

伸びてきた手が

頭に降りて

撫でてくれてる…幸せ…

~現在~

僕の部屋に

二人でいた時、僕は急に

少し笑っちゃって…

柳ちゃんは不思議そうに見てる

『何?どうしたの?朱希』

僕は真っ直ぐに見て

『ごめん、なんでもない
色々…思い出したんだ
入学式の日に、柳ちゃんと
廊下ですれ違って…
一目惚れしたこととか…』

柳ちゃんは、黙って聞いてる

『まだ友達いなかった僕と
いつも柳ちゃん一緒に
ご飯食べてくれたこととか
スリから財布取り返してくれて…
恋…に変わったこと、とか
その後告白…した事とか
それで付き合って…初めてキス…
貰った時、とか…今までのこと
全部…』

『そっかぁ。この短い間に
色々あったよね』

『う、うん…』

僕達の関係は変わらない
変わったことと言えば…

『柳ちゃん。
志望校合格おめでとう!』

そう、受験を終えた柳ちゃんは
志望校に一発合格。
都内有数のすっごい進学校に
それで、卒業も控えて…

『ん、ありがと。
朱希も来年受験だね
頑張りなよ』

僕は…俯いた

『どうしたの?』と聞く柳ちゃん

僕は柳ちゃんが合格したのは
嬉しいけど寂しさもあったから
少し言葉に詰まってしまった

そんな僕の体は柳ちゃんの
腕の中に包まれて……

『柳ちゃんが卒業しちゃったら…
僕たち…離れ離れに…
一人暮らし…するんだっけ?』

柳ちゃんは優しい手つきで
僕の髪を撫でながら…

『うん。大丈夫だよ
少しだけだから。
出来るだけメールはするし
行けたら朱希ん家にも行く
それで…朱希が卒業したら
一緒に暮らそ?』

僕は柳ちゃんの提案が
嬉しくて涙が零れた

『はーい、男の子はこんなことで
泣かないの』言いながら柳ちゃんは
僕の涙を両手で拭ってくれる。

その変わらない優しさに触れて…
僕の涙は止まらなかった
柳ちゃんは黙って抱きしめて
慰めてくれた。僕は暫くして
泣き止んで、自分でも
ビックリするようなことを
話していた。

『僕…初めて、柳ちゃん家で
お泊まりした時は…
「男同士は結婚出来ない」って
言ったけど…』

『うん』

柳ちゃんは、僕の話は
ほとんど途中で口を挟まないで
ちゃんと最後まで聞いてくれる

『けど…僕は…柳ちゃんが好きだから
離れたくない…柳ちゃんと…
結婚…したい…』

そう言って、耳まで真っ赤な僕を

柳ちゃんは笑顔で見て

『朱希…やっとその気に
なってくれたんだね。良いよ
朱希が卒業したら…結婚しよう』

何も言えなくて、頷くだけの

僕の口に柳ちゃんは

少し長いキスをして…

『朱希が卒業したら…
「内縁の妻」ってことで。
オレに美味しいご飯
いっぱい作ってね。あとは…
ずっとそばにいること。
それが条件。分かった?』

僕は声を振り絞って答えた

『うん…分かった』

答えを待って柳ちゃんは

もう一度口にキスをして

ギューって抱きしめてくれた

『好き』とお互い言い合って…

卒業したら、僕達は結婚して

柳ちゃんと2人で暮らします

~Fin
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